センサ・マイクロマシンの基礎 - 物性と場 -

センサ・マイクロマシンの基礎 - 物性と場 -

一般には異なる科目で学ぶ物性や場の内容をセンサ・マイクロマシンの主題のもとにまとめた

ジャンル
発行年月日
2024/07/26
判型
A5
ページ数
196ページ
ISBN
978-4-339-04690-8
センサ・マイクロマシンの基礎 - 物性と場 -
在庫あり
2営業日以内に出荷致します。

定価

2,970(本体2,700円+税)

カートに入れる

購入案内

  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

あらゆる信号を扱おうとするセンサ・マイクロマシンの物理的存在は物質に回帰し,機能は場との関係を通して発揮されているとの考えから,一般には異なる科目で学ぶ物性や場の内容をセンサ・マイクロマシンの主題のもとにまとめた。

デジタル化が進む世界において,われわれ人間が生きてきた物理的なフィジカル空間と,コンピュータを通して新たに広がるサイバー空間の境目ではさまざまな情報がやりとりされている。この情報のやりとりを可能とする情報変換の仕組み,特にハードウェア側の事情を知りたい,本書はそのような関心をもつ方を対象にしている。フィジカル空間とサイバー空間の境目では,センサ・マイクロマシンが情報を変換し,情報の流れを可能にしている。人類がスマートフォン等の情報機器に釘付けになり,人類の多くの時間がサイバー空間にコネクテッド状態となっている。センサ・マイクロマシンは,それら情報機器の中で人とサイバー空間の間の情報を変換する役割を担っている。したがって,われわれがサイバー空間とうまくつながるにはセンサ・マイクロマシンの活躍が不可欠である。

センサ・マイクロマシンが扱うフィジカル空間の対象範囲は広い。サイバー空間に対するフィジカル側の存在は人も含め森羅万象対象になる可能性を持っている。センサ・マイクロマシンと同様に,MEMS(micro electro mechanical systems)という言葉もしばしば使われる。半導体技術はトランジスタを生み出し,さらにコンピュータを誕生させてきたが,機械の分野にも半導体技術を導入したことは,センサ・マイクロマシンの革新的な発展につながった。MEMSという言葉はこの流れを意識して使われることが多い。当初は,加速度や圧力といった機械量を電気信号に変換したり,電気信号によって力を発生させたりといった電気電子と機械の分野における変換機能が主たる研究モチーフであった。機械の分野の熱や流体との相性もよかったことから,その後センサ・マイクロマシンの扱う領域は化学,さらにバイオの分野へと応用範囲を展開していくことになる。

センサ・マイクロマシンの扱う対象が電気電子や光,機械から化学,バイオへと広がる中,センサ・マイクロマシン自体はどのようにその機能を生み出して対応しているのだろうか。センサ・マイクロマシンの具体的なデバイスに着目すると,どうしても応用の多様性に目を奪われがちになる。そこで,本書はセンサ・マイクロマシンの基礎に焦点を当て,“物性と場”に着目することにした。元を辿れば,ありとあらゆる信号を扱おうとするセンサ・マイクロマシンの物理的存在は物質に回帰し,機能は場との関係を通して発揮されているとの考えからである。根底では,物質でつながり,周囲の場に包まれて機能しているセンサ・マイクロマシン。一般には異なる科目で学ぶ物性や場の内容を,センサ・マイクロマシンの主題のもとにまとめることを目指した。既存の学びの体系を横断する部分もあり,1章において本書の構成に関する考え方を説明してあるので,参考にしていただきたい。

本書を執筆するに際し,機械工学,特に材料の力学や結晶工学に関する部分について同僚の鳥山寿之先生にご協力をお願いし,執筆いただいている。また,この場を借りて,執筆の環境づくりに協力してくれた周囲に感謝したい。

最後に,執筆の趣旨を理解していただき,企画から出版に至るまで,明るく伴走いただいたコロナ社の方々に謝意を表する。

2024年5月
小西 聡

1. 序論
1.1 センサ・マイクロマシンの信号・エネルギー変換機能
1.2 センサ・マイクロマシンの機能を生み出す源:物性と場
1.3 センサ・マイクロマシンと物性
1.4 センサ・マイクロマシンとナノテクノロジー
1.5 本書の構成と活用法

2. 身近なセンサ・マイクロマシン
2.1 身の回りで活躍するセンサ・マイクロマシン
2.2 マイクロセンサと物性および場
2.3 マイクロアクチュエータと物性および場
2.4 センサ・マイクロマシンの代表的な事例
 2.4.1 半導体ダイアフラム型圧力センサ
 2.4.2 静電型マイクロミラーデバイス
演習問題

3. 物質を構成する結晶構造と原子
3.1 原子の結合と結晶構造
3.2 結晶面とミラー指数
3.3 X線による結晶構造の観察
3.4 物質(原子)内の電子状態と電子物性
3.5 原子内の電子状態
3.6 電子状態と波動方程式
 3.6.1 時間に依存しない波動方程式
 3.6.2 時間に依存する波動方程式
3.7 電子の波動性とエネルギーバンド構造
3.8 原子内の電子の配置
演習問題

4. 原子から結晶構造,そして物性へ
4.1 原子による結晶構造の形成
 4.1.1 原子中の電子状態と原子間の結合
 4.1.2 原子間結合による結晶構造形成
 4.1.3 結晶内原子のエネルギー状態と物性
4.2 物性と状態変換
 4.2.1 状態変換
 4.2.2 系のエネルギーに基づく考察
4.3 物性の結晶異方性
 4.3.1 弾性特性の結晶異方性
 4.3.2 ピエゾ抵抗効果の結晶異方性
 4.3.3 圧電特性の結晶異方性
 4.3.4 Siの結晶異方性エッチング
演習問題

5. 物質の接触,接合とデバイス機能
5.1 接触によるエネルギーバンド構造の変化
5.2 接合によるデバイス機能の実現
 5.2.1 金属どうしの接合
 5.2.2 金属と半導体の接合によるショットキーダイオード
 5.2.3 p型,n型半導体の接合によるpn接合ダイオード
 5.2.4 金属/絶縁体/半導体の接合によるMOS構造
 5.2.5 接合による各種デバイス機能
演習問題

6. 電磁気的物性と場,そしてデバイス機能へ
6.1 電場と磁場
6.2 電場
 6.2.1 誘導体と電場
 6.2.2 電場のベクトル量による考察
 6.2.3 電場のスカラー量による考察
6.3 静電場による発生力
6.4 静電型センサ・マイクロマシン
 6.4.1 静電容量型センサ
 6.4.2 静電マイクロアクチュエータ
6.5 圧電型センサ・マイクロマシン
 6.5.1 圧電基本特性
 6.5.2 圧電センサ
 6.5.3 圧電マイクロアクチュエータ
6.6 磁場
 6.6.1 磁性体と磁場
 6.6.2 磁界,磁場に関するベクトルとスカラーの表現
6.7 電磁場を利用したセンサとアクチュエータ
 6.7.1 電磁場による力の発生とモータ
 6.7.2 電磁場による起電力発生とセンサ
 6.7.3 マイクロ磁気デバイス,そして電磁マイクロモータ
 6.7.4 ホール効果とホールセンサ
演習問題

引用・参考文献
演習問題解答
あとがき
索引

鳥山 寿之(トリヤマ トシユキ)

掲載日:2024/07/05

日本機械学会誌2024年7月号

掲載日:2024/07/01

応用物理学会誌「応用物理」2024年7月号

掲載日:2024/07/01

電気学会誌2024年7月号