衝撃力学

衝撃力学

衝撃に曝された機械や構造物を対象として,その動的応答解析の理論と方法を解説する。

ジャンル
発行年月日
2020/03/10
判型
A5
ページ数
202ページ
ISBN
978-4-339-04665-6
衝撃力学
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2,860(本体2,600円+税)

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【内容紹介】
著者は、今から48年前東京工業大学機械工学科中原一郎先生の研究室に配属されて以来長い間「材料と衝撃」の研究に関わってきたが、何時までも忘れられないのは初めてサンブナン・オイラー・ティモシェンコといった棒・梁・板などの古典理論を学んだ時の記憶である。著者自身の衝撃の基礎はこれらを学んだことにあると思っており、若い人達にも是非一度はこれらの古典を学んで欲しいと思っている。しかし、残念ながら適当な日本語の入門書が見当たらず、今自分のような古い人間が書かなければ、今後このような本を書く人間は現れないであろうといった危機感みたいなものから、敢えて古典理論とその理論による解析を纏めた「衝撃力学」を書き上げた。専門書というよりは教科書的な本となるように配慮した積もりで、大学や大学院学生あるいは構造解析に取り組む技術者には一度は学んで欲しいと思っている。各所に「考察」を設けてあるが、これらは演習問題的なものから深い思考を必要とするものまで様々である。中には小研究として取り組まなければならない問題もあり、敢えて解答といったものは載せていない。従って、教員にあっては、講義の宿題あるいはレポート課題として活用してもらえれば良いと考えている。
本書「衝撃力学」は、全8章から構成され基礎編と実践編とに分かれている。
「基礎編」は第1章から第5章までで、「第1章弾性基礎方程式」と「第2章板理論および梁理論」では本書で扱う理論を、出発点となる弾性理論から導出する過程を体系的に示すように努力した。第3章から第5章では、棒と梁と板について具体的な問題についての解析法と結果を示すとともに可能な限り数値計算結果も載せて理解を深めてもらうようにした。基礎編では、理論の基礎である第1章と第2章を飛ばして第3章から取り組んでも全く差し支えないように配慮してある。
「実践編」は第6章から第8章までで、第6章では弾性限度を超えた衝撃問題の基礎的な解析法と結果を示し、第7章では本章で扱っている古典理論の適用性について実験結果や有限要素法による数値解析結果などと数値的に比較することにより読者に解析精度に関して一定の理解を与えるようにしている。最後の第8章では構造物を連続体としてではなく、ばね・質点モデルによって近似解析する場合の考え方とその数値結果を示した。
本書では全体を通してラプラス変換が主要な数学的な解析手法となっているので、毛嫌いすることなく取り組んで欲しい。ラプラス変換そのものは難しいものではないが、その逆変換は数学的に決して簡単なものではない。ラプラス逆変換は、数値的に行なうことも可能であるが、本書では本の性格が変わってしまう恐れから意識的に記述対象から外した。数値ラプラス逆変換は数値結果を得るうえで有力な手段と考えられるので、関心のある読書は関連参考書を参照されたい。

本書の題名にある「衝撃」を初めて知ったのは,著者が東京工業大学機械工学科の最終学年となり,中原一郎先生の研究室に卒業研究学生として配属されたとき(1968年)のことである。著者の卒業研究課題は,「衝撃内圧を受ける異方性円筒」の応力解析を動弾性理論によって解析する,といった難問であった。当時研究室の助手であった松本浩之先生のいわれるままに数学の計算に取り組むことになったが,勉強を怠けていた著者にとっては大変な作業であった。それまで知らなかった特殊関数が出てくる長い式が多く,どのような結果を表現しているのか予測などまったくできない理論式であったが,数値計算をしてみると,不思議なことにそれらしい結果が出てきて感激したものである。

それから学園紛争の真っただ中の思いもよらない大学院への進学と,さらに思いもよらない研究室助手へと,想定外の身の丈に余る人生を歩むことになった。この間,研究内容はつねに「衝撃」であり,扱った理論は,波動方程式,あるいはベルヌーイ,オイラー,ラグランジュ,ティモシェンコなどといった,ほとんど歴史上の著名な学者の名前が出てくる世界であった。理論だけでなく,なにかと難しい衝撃の実験,さらにはブラウン管式シンクロスコープやフィルム式高速度カメラを使った計測にも取り組んだ。その後コンピュータの発達によって衝撃解析の主流となってきたのは計算力学によるシミュレーションの世界であるが,そのころには,すでに自分自身では解析をやらない年齢となっていた。振り返ってみれば,「なんと古きよき時代であったことか…」と思うこともある。

この間,47歳になったころ,思いがけず明治大学大学院機械工学専攻の学生を相手に「衝撃」を教える機会を得た(1994年)。これが著者が取り組んできた「衝撃の世界」を若い人達に伝えるきっかけとなり,さらにこの授業は,18年の長きにわたってつづくことになった。これとほぼ同じ時期に東京工業大学でも機械系学部学生に「衝撃」を講義として教えるようになり,徐々にではあるが講義ノートも蓄積していった。この講義ノートを基に教科書出版をすすめて下さる方もいたが,東京工業大学在職中には遂に実現させることができなかった。しかし,定年退職後次第に余裕ができるに従って「このままでは終われない」という気持ちが強くなり,コロナ社からの励ましもあって一念発起して講義ノートの出版に向けて精力を傾けることになった。

本書は,過去の名立たる名著,とりわけティモシェンコの著作には足元にも及ばないが,意外にも日本語の「衝撃」入門となる適当な書がなく,なんとしても世に出さねばという気持ちが掻き立てられてきた。

このような経緯からわかるように,本書は大学で初めて「衝撃」を勉強する機械系学生,あるいは物作りに携わる技術者のための入門書となるよう,意識して書いてきたものである。本編は「基礎編」と「実践編」とに分かれているが,衝撃に対する基礎的な理解は,文字どおり「基礎編」だけで十分に得られるようになっている。「基礎編」には多くの数学式が出てくるが,大学の低学年で勉強する程度の数学であるから「食わず嫌い」にならないよう願っている。衝撃は基本的に過渡応答問題であるため,全体を通して「ラプラス変換」が主流となっているので,この際ラプラス変換と仲よくなってほしい。ラプラス変換は,その逆変換が一般的に面倒なので,本書では数学的厳密さには目をつぶり,非常に限定された条件下(例えば,保存系)でのラプラス逆変換しか扱っていない。したがって,是非とも毛嫌いせずに取り組んでほしい。

また随所に「考察」を設けているが,これは当該箇所の理解を深めてもらうためのもので,是非とも飛ばさないで取り組んでほしい。あえてヒントだけで解答は載せていないが,考えることによって理解が深まるよう配慮しており,実際の講義の場面においても非常に重要と感じた内容でもある。扱っている部材としては棒と梁の衝撃応答問題が大半を占めるが,個々についてさらに高度な勉強をしたい読者には,ティモシェンコの一連の著作を参照されることをおすすめしたい。

「実践編」を読んでいただければわかるように,衝撃応答問題では,構造物に作用する荷重をいかにして正確に見積もるかが最大の課題である。これを正しく見積ることができれば,つぎのステップである応力解析は,理論をはじめさまざまな手法により求めることができる。実際の衝撃問題における見込み違いは,その衝撃荷重の大きさと持続時間の見積りを誤ったことに起因することがきわめて多い。衝撃荷重の見積りは経験豊富な技術者でないと難しいものであるが,まずは衝撃の基本を正しく身に付けておくことが重要である。本書がその入門書となることを願っている。

末筆ではあるが,本書の理論解の精度検証に関して有限要素法による解析をしていただいた伊藤忠テクノソリューションズ株式会社,ならびに根気強く担当していただいた同社の津田徹氏および東出紀子氏に深く感謝いたします。また,東京工業大学大学院学生の田中耕輔君には,理論結果だけで数値結果が不足していた多くの問題について数値計算を行っていただき,たいへん感謝している。

筆者が東京工業大学助手のころの大学院学生であった名古屋工業大学西田政弘教授からは,精密な実験結果の提供をいただき,これにより理論結果の信憑性を高めることができた。ここに深く感謝を申し上げる次第である。

2020年1月著者代表宇治橋貞幸

第I部 基礎編
1.弾性基礎方程式
1.1 三次元基礎方程式
 1.1.1 平衡方程式
 1.1.2 構成式
 1.1.3 連続条件式
 1.1.4 変位の方程式
 1.1.5 変位ポテンシャル
1.2 二次元基礎方程式
 1.2.1 平衝方程式
 1.2.2 構成式
 1.2.3 連続条件式
 1.2.4 変位の方程式
 1.2.5 変位ポテンシャル
1.3 一次元基礎方程式

2.板理論および梁理論
2.1 板理論
 2.1.1 ミンドリン理論
 2.1.2 ラグランジュ理論
2.2 梁理論
 2.2.1 ティモシェンコ理論
 2.2.2 ベルヌーイ・オイラー理論

3.棒の縦衝撃
3.1 波動方程式と棒中を伝播する波動の性質
 3.1.1 衝突速度と発生応力との関係
 3.1.2 応力波の伝播と反射および透過
3.2 図式解法による応力波解析
 3.2.1 衝撃力を受ける一端固定棒の問題
 3.2.2 衝撃力を受ける両端自由棒の問題
 3.2.3 剛壁に衝突する棒の問題
 3.2.4 棒と棒の二体衝突問題
3.3 波動方程式とラプラス変換による応力波解析
 3.3.1 波動方程式の一般解
 3.3.2 一端が固定された棒の衝撃問題
 3.3.3 両端自由棒の衝撃問題
 3.3.4 剛壁に衝突する棒の問題
 3.3.5 棒の二体衝突問題
3.4 棒の縦衝撃問題における逆解析

4.梁の曲げ衝撃
4.1 基礎方程式
4.2 両端単純支持梁の衝撃応答問題
 4.2.1 フーリエ級数による解析
 4.2.2 部分分布荷重の場合
 4.2.3 集中荷重の場合
 4.2.4 等分布荷重の場合
 4.2.5 数値計算例
4.3 さまざまな境界条件を有する梁
 4.3.1 境界条件
 4.3.2 境界条件と固有振動数
4.4 対称な境界条件を有する梁の衝撃応答問題(切断法)
 4.4.1 両端単純支持梁
 4.4.2 両端固定梁
 4.4.3 数値計算例
4.5 片持梁の衝撃応答問題
 4.5.1 先端に集中荷重を受ける場合
 4.5.2 等分布衝撃荷重を受ける場合
 4.5.3 数値計算例
4.6 荷重がさまざまな時間変化をする場合の応答
 4.6.1 時間応答関数の計算
 4.6.2 さまざまなパルス形状に対する時間応答関数
4.7 荷重の持続時間と波形が梁の応答に与える影響
 4.7.1 荷重が長方形パルス状に変化する場合
 4.7.2 荷重が半正弦波パルス状に変化する場合
 4.7.3 荷重パルス形状と持続時間の影響

5.板の曲げ衝撃
5.1 基礎方程式
5.2 周辺単純支持板の衝撃応答
 5.2.1 フーリエ級数による解析
 5.2.2 部分分布荷重の場合
 5.2.3 集中荷重の場合
 5.2.4 等分布荷重の場合
5.3 数値計算例
 5.3.1 集中荷重の場合
 5.3.2 等分布荷重の場合

第II部 実践編
6.弾性限度を超えた衝撃問題
6.1 棒の弾塑性衝撃応答の解析
 6.1.1 特性曲線に基づいた図式解法
 6.1.2 衝撃荷重を受ける半無限長棒の弾塑性応答
 6.1.3 自由端に衝撃を受ける固定棒の弾塑性応答
 6.1.4 剛体壁に衝突する棒の弾塑性応答
6.2 衝撃速度が高い場合の材料の挙動(ひずみ速度の影響)

7.理論解析の適用性
7.1 棒の縦衝撃理論の検証
 7.1.1 インピーダンスが同じ二本の棒の衝突(実験との比較)
 7.1.2 インピーダンスが異なる二本の棒の衝突(実験との比較)
 7.1.3 弾性限度を超える棒の衝突(有限要素法との比較)
7.2 梁の曲げ衝撃理論の検証(有限要素法との比較)
7.3 検証のまとめ

8.ばね・質点モデルによる衝撃応答解析
8.1 棒のばね・質点系へのモデル化と衝撃応答解析(一自由度の場合)
8.2 棒のばね・質点系へのモデル化と衝撃応答解析(二自由度の場合)
8.3 コーシーの留数定理によるラプラス逆変換
 8.3.1 一自由度ばね・質点モデルの場合
 8.3.2 二自由度ばね・質点モデルの場合
8.4 数値計算例

付録A ヘルツの接触理論
付録B 動的有限要素法の基礎理論
 B.1 基礎方程式
 B.2 弱形式
 B.3 有限要素近似
 B.4 時間積分法
 B.5 解析例
付録C 数学公式
 C.1 三角関数と双曲線関数
 C.2 オイラー(Euler)の公式関係
 C.3 ネイピア数(Napier constant,自然対数の底)関係
 C.4 テイラー(Taylor)展開
 C.5 ロピタル(L’Hospital)の定理
 C.6 ラプラス(Laplace)変換関係

引用・参考文献
索引

宇治橋 貞幸

宇治橋 貞幸(ウジハシ サダユキ)

著者は、長い間「材料と衝撃」の研究に関わってきたが、忘れられないのは初めてサンブナン・オイラー・ティモシェンコといった棒・梁・板などの古典理論を学んだ時の記憶である。著者自身の衝撃の基礎はこれらを学んだことにあると思っており、若い人達にも是非一度は学んで欲しいと思っている。しかし、残念ながら適当な日本語の入門書が見当たらず、今自分のような古い人間が書かなければ、今後このような本を書く人間は現れないであろうといった危機感みたいなものから、敢えて古典理論とその理論による解析を纏めた「衝撃力学」を書き上げた。大学や大学院学生あるいは構造解析に取り組む技術者には一度は学んで欲しいと思っている。

宮崎 祐介(ミヤザキ ユウスケ)

掲載日:2020/05/11

「月刊 トライボロジー」2020年5月号広告

掲載日:2020/05/08

「日本機械学会誌」2020年5月号広告

掲載日:2020/04/23

日刊工業新聞広告掲載(2020年4月23日)