制御基礎理論 - 古典から現代まで -
古典制御の部分は,数式を用いた表現を可能な限りやめ,全てブロック線図と,これの等価変換で説明した。現代制御の部分は,線形システムの基礎理論と,高次制御系を状態方程式や伝達関数を使って設計する方法について説明した。
- 発行年月日
- 2014/09/30
- 判型
- A5
- ページ数
- 238ページ
- ISBN
- 978-4-339-03213-0
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
本書は,株式会社昭晃堂から発行されていた「制御基礎理論―古典から現代まで―」(ISBN978-4-7856-1109-5)を,コロナ社が継続して発行したものである。
制御工学が世の中に定着し,さまざまな分野に適用され,目ざましい成果をあげてから久しい. これにともなって,制御工学に関心を持ち,これを学ぶ人達も多方面にまたがり,またその数も極めて多くなっているのが現状である.
一方,制御工学自体も近年増々発達し,従来の古典的制御論のみならず,現代制御論もその基盤が完全に固まり,この両者の得失を十分に把握した上で,現実の問題に対応することが要求されている.
著者等は,これまでに制御工学を専門にしない,電気技術者,機械技術者等に制御工学を教えてきた経験から,制御工学を理解させ,それを完全に自分自身のものとした上で,それをそれぞれの専門分野に生かしていけるようにするためには次のような点について工夫が必要であることを痛感してきた.
(1) 取り扱う項目を必要最小限に厳選し内容を整理すること
(2) 個々の項目の記述にあたっては,表現上数学的な厳密さよりも,その背後にある考え方の方が極めて重要で,これの理解なしには決して応用力を身につけることができないこと
(3) 厳選した項目について,それらの相互の関係を理解させ,制御工学全体の流れをつかませること
そのため,2章から7章までの,従来から古典制御論といわれている部分の記述にあたっては次のような点に留意した. 数式を用いた表現を可能な限りやめ,全てブロック線図と,これの等価変換で説明した. これによって常に入出力の関係が明確となり具体的なイメージが浮びやすくなるものと思われる. また従来からの古典制御論を,高次制御系の二次系による近似に限定し,これに必要な考え方を主として周波数領威で検討した. その他の部分は思い切って削除した.
8章から11章においては現代制御理論について述べた. この部分では線形システムの基礎理論と,高次制御系を状態方程式や伝達関数を使って設計する方法について説明している.
現代制御理論を使うと,制御系の構造やパラメータがはっきりわかってさえいれば,目標としている制御が可能か否かについてよい見通しが得られる. 記述にあたっては,このことと上述の目的を重視し,最適制御他については省略した.
本書を書くにあたり,著者等のこれまでの講義原稿をもとにして,上記主旨を生かすべく,努力したつもりであるが,これ等の意図がどの程度実現できたか危倶する次第である. 本書が制御工学への入門書として,その機能を発揮できるならば望外の喜びである.
なお,1章,2章,4章~7章は中野が,3章,8章~11章は主として美多が担当した.
最後にグラフ作成に御助力頂いた千葉大学大学院生向田昌幸君に感謝するとともに,本書出版にあたりいろいろ御面倒をおかけした,昭晃堂阿井圏昭,小林孝雄両氏に厚くお礼申し上げます.
昭和57年2月
著者
本書を発行していた昭晃堂が平成26年6月に解散したことに伴い,この度,コロナ社より継続出版することになった. 昭晃堂にて昭和57年4月の1刷発行から47刷までに至ったが,引き続き多くの方にご拝読いただき役に立つならば,著者としてこの上ない喜びである.
平成26年8月
著者
1.自動制御
演習問題
2.信号の伝達と伝達関数
2.1 ブロック線図の構成要素
2.2 ブロック線図の等価変換
2.3 微分・積分要素のブロック線図
2.4 等価変換の応用
2.5 シグナルフロー線図
演習問題
3.ラプラス変換と自動制御
3.1 ラプラス変換とラプラス変換表
3.2 ラプラス逆変換と展開定理
3.3 最終値の定理と初期値の定理
3.4 常微分方程式とラプラス変換
3.4.1 微分・積分関数のラプラス変換
3.4.2 常微分方程式の解法
3.4.3 微分方程式からブロック線図へ
3.5 伝達関数とラプラス変換
演習問題
4.フィードバック制御の基礎
4.1 伝達関数の基本形
4.2 フィードバック制御系のブロック線図
4.3 フィードバック制御系の特性
4.4 フィードバック制御系の定常特性
4.5 フィードバック制御系の過渡特性
演習問題
5.周波数応答
5.1 周波数応答とは
5.2 伝達関数F(s)をもつ系の周波数応答
5.3 周波数応答の表現方法
5.3.1 ベクトル軌跡
5.3.2 ボード線図
演習問題
6.フィードバック制御系の安定性と過渡特性
6.1 安定判別法(ナイキストの安定判別法)
6.2 制御系の安定度
6.2.1 位相余有
6.2.2 ゲイン余有
6.2.3 ボード線図と位相余有・ゲイン余有
6.3 共振値と過渡特性
演習問題
7.フィードバック制御系の特性補償
7.1 特性補償
7.2 過渡特性補償の考え方
7.3 遅れ補償法
7.4 進み補償法
演習問題
8.状態方程式と伝達関数
8.1 状態方程式と伝達関数
8.2 状態方程式の解と状態推移行列
8.3 安定性と安定判別法
8.3.1 安定性と固有値(極)
8.3.2 ラウス・フルビッツの安定判別法
付録 行列関数
演習問題
9.座標変換と可制御性・可観測性
9.1 座標変換とシステムの等価性
9.2 対角正準形式と可制御性・可観測性
9.3 伝達関数と極-零点消去
9.4 可制御正準形式,可観測正準形式とその応用
9.4.1 可制御正準形式,可観測正準形式とその特徴
9.4.2 高次伝達関数の実現
付録 ケーリー・ハミルトンの定理
演習問題
10.安定化の基礎理論
10.1 状態フィードバック制御と安定化
10.2 直接フィードバック制御と根軌跡法
10.3 直列補償器による安定化
10.4 オブザーバによる安定化
10.4.1 オブザーバと状態変数の再現
10.4.2 並列補償器としてのオブザーバ
10.4.3 直列補償器としてのオブザーバ
10.5 フィードバック不変量と閉ループ系の構造
付録 行列式と逆行列の公式
演習問題
11.定常特性と現代制御理論による制御系の設計
11.1 サーボ系の構成条件と内部モデル原理
11.1.1 状態フィードバック制御系とサーボ系
11.1.2 内部モデル原理と制御系の形
11.1.3 頑健性と定値制御系
11.2 サーボ系の設計
11.2.1 直列補償器による方法
11.2.2 並列補償器による方法
11.3 現代制御理論の特徴
演習問題
演習問題解答
索引