ICTビジネス

メディア学大系 8

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  • 榊 俊吾 東京工科大教授 博士(社会情報学)

社会経済活動データを編集・分析する方法とプログラミングを習得し,統計データを分析してシミュレーションに発展させる方法を学べる。

ジャンル
発行年月日
2015/04/06
判型
A5
ページ数
208ページ
ISBN
978-4-339-02788-4
ICTビジネス
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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【読者対象】
経済の仕組み、社会の実相についてデータをもとに分析したいと考えている学生、社会人。さらに、経済、経営、社会における意思決定、戦略に関して、シミュレーションを通じて切り込んでみたいと考えている人たち。

【書籍の特徴】
今日、ICT技術の進展に伴い、企業間の取引記録や消費者の購入履歴はもちろん、鉄道系ICカードを通じて人々の行動記録も捕捉できるようになってきています。本書は、こうしたデータ利用環境の飛躍的な進展を背景に、行動記録という事実に基づいて(エビデンスベース)、経済社会活動の構造解明や、人々の意思決定を分析していくための方法論を提供します。本書では、データの管理/編集、分析、そしてシミュレーション技法まで解説します。

【各章について】
本書は大きく二つの内容から構成されています。前半部では、経済/社会活動を編集/分析する技術の習得を目的としています。まず、1章では「社会経済を計測する技術」として、経済取引の標準である簿記形式を基礎としたデータ管理/編集/分析を統合したシステム設計のための基本的な考え方を紹介しています。続く2章、3章では、簿記原理に基づく会計処理を基礎とした専用言語によるプログラミングの考え方、具体的な記述の仕方について学習します。
後半部では、前半で学習した設計/プログラミング技術をもとに、実際にデータを編集/分析し、さらに現実のデータによる現状分析だけでなく、シミュレーションに発展させる実例を学習していきます。4章「社会経済データ編集/分析入門(マクロ編)」、5章「社会経済データ編集/分析入門(ミクロ編)」では、それぞれ、行政機関の経済統計と企業の有価証券報告書のデータを利用して、わが国の産業や企業を中心とした経済社会活動の実態を編集し、分析する事例を紹介しています。6章「社会シミュレーション入門」では、複雑で多様な社会の実相に切り込む試みとして、ゲーム理論を基礎に、レプリケータダイナミクスの活用の仕方を学習します。7章「トランザクションベース計測の試み」では、本書のまとめとして、マイクロな取引データからマクロな経済活動を計測する構想について展望します。

【著者からのメッセージ】
経済の仕組みは、確かに複雑で、これを理解するためには経済、経営、会計、数学、統計等の基本的な知識が必要になります。本書でこれらの領域を全て網羅できるはずもありませんが、本書で学習するにあたって必要となる知識については、なるべく省略せずに解説しました。何より、読者自身が、身近なデータを利用しながら、経済社会の複雑な実態に切り込む一助になれば、著者として望外の幸せです。

1.社会経済を計測する技術
1.1 はじめに
1.2 データ代数の概要
1.3 交換代数の概要
 1.3.1 交換代数オペレーションによる会計・データ加工の処理プロセス
 1.3.2 会計処理との親和性
 1.3.3 代数単位のオペレーション
1.4 交換代数による分類概念の変換
 1.4.1 対応関係のオペレーション
 1.4.2 会計・データ加工の処理プロセスとモジュール構造
1.5 データ代数と交換代数の機能分離
演習問題

2.社会経済データを編集・分析するためのプログラミング技術
2.1 ADDL・AADLのインストール
2.2 AADLプログラミングの基礎
 2.2.1 作業領域の作成
 2.2.2 プログラムの記述
 2.2.3 AADLの変数定義とおもなデータ型
 2.2.4 AADLの基本的な演算
 2.2.5 入出力ファイルの割付け
2.3 AADLにおけるデータ操作
 2.3.1 交換代数元の取出し:射影(projection)
 2.3.2 繰返し処理
演習問題

3.社会経済データを利用してシミュレーションするためのプログラミング技術
3.1 AADLによるシミュレーションモデルのひな形
 3.1.1 システムの状態記述
 3.1.2 数値計算型ロジックのひな形
 3.1.3 数値計算型ロジックのコード例:ダモウスキー ミラー写像
3.2 システム構成の設計・記述:AADLマクロの基礎
演習問題

4.社会経済データ編集・分析入門(マクロ編)
4.1 経済統計の見方
 4.1.1 原データ系列
 4.1.2 伸び率と指数化
4.2 データ加工事例
 4.2.1 寄与度
 4.2.2 在庫循環図
演習問題

5.社会経済データ編集・分析入門(ミクロ編)
5.1 会計データの構造
5.2 財務諸表
 5.2.1 貸借対照表
 5.2.2 損益計算書
5.3 財務分析
 5.3.1 代表的な財務指標
 5.3.2 財務分析の事例
5.4 財務データを利用した応用例
 5.4.1 需要予測モデル
 5.4.2 需要予測モデルの推計
演習問題

6.社会シミュレーション入門
6.1 社会現象のモデル化
 6.1.1 囚人のジレンマゲーム
 6.1.2 繰返し囚人のジレンマによる協力関係の維持
6.2 レプリケータダイナミクス
 6.2.1 レプリケータダイナミクスの考え方
 6.2.2 レプリケータダイナミクスの作り方
 6.2.3 レプリケータダイナミクスの具体例
6.3 レプリケータダイナミクスから社会学習ダイナミクスへの展開
 6.3.1 規範逸脱集団に矯正教育を行う
 6.3.2 規範を順守する集団を支援する
 6.3.3 矯正と支援:二つの教育制度の違い
6.4 おわりに
演習問題

7.トランザクションベース計測への試み
7.1 代数的仕様記述による会計・加工統計処理のための基盤技術
7.2 企業トランザクションの品目管理
 7.2.1 交換代数による報告データの標準化:個別勘定と標準的勘定の対応記述
 7.2.2 製造プロセスのトランザクションとフロー・ストック勘定の構成
 7.2.3 品目別原価・資産純増を管理するフロー勘定
 7.2.4 流通(卸売・小売・運輸等)プロセスのトランザクションとフロー・ストック勘定の構成
 7.2.5 品目別仕入原価・資産純増を管理するフロー勘定
7.3 トランザクションベース会計データのマクロ統計加工
 7.3.1 フロー勘定
 7.3.2 ストック勘定
 7.3.3 取引購入者価額の帰属推計
7.4 おわりに:SNAとトランザクションベースエコノミクス
演習問題

引用・参考文献
索引

榊 俊吾

榊 俊吾(サカキ シュンゴ)

学部は経済学、修士は社会学、博士では社会情報学と、異領域をつまみ食いしてきたように見えるかもしれません。しかし、この間一貫して、情報と経済社会の関係について研究してきました。主な研究領域は、学生時代には、情報と企業組織間関係について、その後、持続的な技術革新と経済成長、会計取引データをベースとしたマクロ経済モデルの構築、そしてシミュレーション技術の開発と応用です。
経済社会は、例えて言えば、登場人物が果てしなく多く、その趣味嗜好も多様、利害など関係も複雑で、台本自体を書きながら進行している舞台演劇のようなものです。一見手に負えそうもない相手に、情報技術は、深層学習、エージェントベースシミュレーションなど強力な武器を提供しつつあります。一生かかっても研究テーマは尽きません。

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