フォトニクスの基礎
光波の性質,基礎的な受動素子,光通信と光変調技術等,将来エンジニアに必要となる最低限の内容に絞り,1冊で学べるように工夫。
- 発行年月日
- 2019/06/10
- 判型
- A5
- ページ数
- 200ページ
- ISBN
- 978-4-339-00922-4
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 書籍紹介・書評掲載情報
- 広告掲載情報
本書は,フォトニクスを専門分野としてすでに活躍している技術者,研究者を対象とした学術書,専門書ではなく,理工系大学の学部生のレベルの知識を有する学生が授業で使う教科書を想定して,幅広い分野の学生でも理解できるような表現や構成を心がけている。なお,数学,電気回路,材料物性などですでに基礎的な知識を有していることを前提にしているが,数式の展開などを使ってできるだけ論理的に説明を行い,丸暗記ではなく,数式で物理現象を理解できるよう配慮した。
フォトニクスは,百年以上前から営々と蓄積された学問分野である光学の知識や,現在も日々刻々進歩する先端的で実用的な技術を含んでいる。本書ではこのような,古くて新しい技術分野をコンパクトにまとめることに努めた。前半は基本的な光学や受動素子について,中盤は半導体レーザを中心とした発光・受光素子,後半は光通信などの先端的な応用技術で構成している。
1章「光波の伝搬」では,これから学んでいくうえで基礎となる光波の表現方法を解説したのち,光波の最も基本的な形態である平面波の伝搬や偏光について,さらに,光波のエネルギーの流れについても述べていく。
2章「光波の性質」では,1章で学んだ光波の伝搬についての知識を用いて,光波の波動としての重要な性質である屈折,回折,干渉などの現象を解析する。ここで学ぶことは,光学を応用する際の最も基礎的な内容であり,3章以下を理解するうえでも不可欠であるので,十分に理解して欲しい。
3章「光導波」では,光導波の基本的な原理を学び,チャネル光導波路,光ファイバについて解説する。
4章「受動素子」では,発光や増幅などの能動的な機能を含まない,受動的な動作をする光学素子について考えていく。
5章「レーザ」では,レーザの動作原理と,情報通信分野などで幅広く用いられている半導体レーザの動作の詳細について解説する。
6章「受光素子」では,半導体のpin接合を用いた光検出器を中心に,光信号を電気信号に変換する受光素子について解説する。
7章「光変調」では,光変調のためのデバイスである光変調器とその応用について説明する。
8章「光通信」では,光通信システムの概要とシステムを構成する各要素について説明する。
9章「光記録」では,光ディスクの原理と概要を説明する。
10章「光計測」では,光による距離や長さの測定について説明する。
フォトニクス(photonics)は,基本的な光学から半導体レーザや光通信,光計測まで,また,見方を変えれば,材料・デバイスからシステムまで,光波を用いた幅広い技術分野を含んでいる。本書では,この1冊でフォトニクスの基本的事項から応用までを学べるように工夫している。また,専門的な解析方法や現在では使われることが少なくなった技術に関する部分を思い切って省略し,将来のエンジニアとして触れておくべき最低限必要な内容に絞り込んだつもりである。前半では,光波の性質,偏光制御や波長選択などの基礎的な受動素子について,後半では,半導体レーザを中心にその原理や特性,さらに,光通信とそのための最新の光変調技術などの応用技術について解説している。
本書は,フォトニクスを専門分野としてすでに活躍している技術者,研究者を対象とした学術書,専門書ではなく,理工系大学の学部生のレベルの知識を有する学生が授業で使う教科書を想定して,幅広い分野の学生でも理解できるような表現や構成を心がけている。なお,数学,電気回路,材料物性などですでに基礎的な知識を有していることを前提にしている。そのため,基礎知識の無い一般の人には難しく,深い専門知識を求める専門家には物足りないかもしれないが,本書を基にして,講師の専門知識を織り交ぜた講義をしていただければ,良い授業が行えるものと考えている。また,数式の展開などを使ってできるだけ論理的に説明をしている。丸暗記ではなく,数式で物理現象を理解できるよう心がけている。
光波と無線通信で利用されている電波はともに,同じ電磁波であるがその性質は大きく異なる。しかし,レーザの発明により,電波と同じように位相や周波数が均一な光波が得られるようになった。レーザ光は電波とは周波数が数桁高いので,従来の電波の代わりにレーザ光を変調して送ることで,膨大な情報を伝送することが可能となった。インターネットを通じて,モバイル端末などからでも海外の情報や映像が瞬時に見られるようになり,このようなフォトニクス技術が現在の情報化社会をもたらしたと言っても過言ではない。フォトニクス関連の授業を受ける学生の中には,将来,応用数学,機械工学など他の分野に進む人も多いであろうが,現在の情報社会を支えている技術に触れることは,エンジニアとしての知識の幅を広げるためにもきわめて重要であると思う。
フォトニクスは,百年以上前から営々と蓄積された学問分野である光学の知識や,現在も日々刻々進歩する先端的で実用的な技術を含んでいる。本書ではこのような,古くて新しい技術分野をコンパクトにまとめることに努めた。前半は基本的な光学や受動素子について,中盤は半導体レーザを中心とした発光・受光素子,後半は光通信などの先端的な応用技術で構成している。執筆については,おもに,1~6章を榎原が,7~10章を川西が,それぞれ担当した。また,半導体レーザと受光素子に関する5章と6章では,国立研究開発法人情報通信研究機構の赤羽浩一氏から多くの貴重な助言をいただいて執筆した。ここで,赤羽氏に深く感謝する。
本書でフォトニクスの知識に触れて,エンジニアとしての技量を深め,将来,さまざまな分野で活躍していただくことを切に望む。
2019年4月 著者ら記す
1. 光波の伝搬
1.1 波の表現
1.2 平面波
1.2.1 マクスウェルの方程式
1.2.2 平面波の導出
1.2.3 光波の伝搬に関する量
1.2.4 観測方向による平面波の特性
1.3 偏光
1.4 光波のエネルギーと電力
演習問題
2. 光波の性質
2.1 反射と屈折
2.1.1 屈折率境界面での反射と透過
2.1.2 屈折率境界面への斜め入射
2.2 干渉
2.2.1 同一周波数の二光波の干渉
2.2.2 斜め交差による二光波の干渉
2.2.3 異なる周波数の二光波間の干渉
2.3 回折と集光
2.3.1 単スリットからの回折
2.3.2 円形開口からの回折
2.3.3 レンズによる集光
演習問題
3. 光導波
3.1 三層スラブ導波路
3.1.1 導波構造と全反射
3.1.2 導波条件
3.1.3 電磁界分布と固有方程式
3.1.4 導波モードとカットオフ
3.2 チャネル光導波路
3.3 光ファイバ
3.3.1 光ファイバの種類
3.3.2 光波の入力
3.3.3 電磁界分布
3.3.4 伝搬モード
3.3.5 単一モード伝送
3.3.6 LPモード
演習問題
4. 受動素子
4.1 干渉計
4.1.1 マッハ・ツェンダー干渉計
4.1.2 マイケルソン干渉計
4.2 偏光制御
4.2.1 偏光子
4.2.2 波長板
4.2.3 ファラデー効果
4.2.4 光アイソレータ
4.3 波長フィルタ・回折素子
4.3.1 多層膜フィルタ
4.3.2 回折素子
4.4 光共振器
4.4.1 共振条件
4.4.2 縦モードとフィネス
演習問題
5. レーザ
5.1 レーザ発振の原理
5.1.1 レーザ発振の条件
5.1.2 光波と電子の相互作用
5.1.3 自然放出と誘導放出
5.1.4 反転分布と利得係数
5.1.5 光子寿命
5.2 各種レーザ
5.2.1 気体レーザ
5.2.2 固体レーザ
5.2.3 半導体レーザ
5.3 半導体レーザ
5.3.1 基本構造
5.3.2 レート方程式としきい値電流
5.3.3 光出力と効率
5.3.4 直接変調
5.4 モード同期
5.5 さまざまなレーザおよび発光ダイオード
5.5.1 分布帰還形レーザ
5.5.2 面発光レーザ
5.5.3 材料と構造による発光波長の違い
5.5.4 発光ダイオード
演習問題
6. 受光素子
6.1 pinフォトダイオード
6.1.1 構造と感度
6.1.2 応答特性
6.1.3 応答速度
6.1.4 雑音
6.2 イメージセンサ
6.3 太陽電池
演習問題
7. 光変調
7.1 変調と帯域幅
7.1.1 変調動作のモデル化
7.1.2 振幅変調
7.1.3 角度変調
7.1.4 被変調信号の帯域幅
7.2 直接変調と外部変調
7.2.1 直接変調
7.2.2 外部変調
7.3 電気光学効果による光変調
7.3.1 ニオブ酸リチウムのもつ電気光学効果
7.3.2 電気光学効果による光変調の原理
7.3.3 光位相変調器の実際
7.3.4 マッハ・ツェンダー干渉計による振幅変調
7.3.5 二並列マッハ・ツェンダー(MZ)変調器による直交振幅変調
演習問題
8. 光通信
8.1 光ファイバの特性と伝送性能
8.1.1 光損失
8.1.2 波長分散
8.1.3 非線形性
8.2 高速化のための多重化と多値化
8.2.1 波長多重
8.2.2 時分割多重
8.2.3 空間多重
8.2.4 多値変調
8.2.5 デジタルコヒーレント
演習問題
9. 光記録
9.1 光ディスクの概要
9.2 光ピックアップ
9.3 各種光ディスクの規格
演習問題
10. 光計測
10.1 光による距離計測の原理
10.2 光の干渉による高精度距離計測
10.3 周波数変調による距離計測
10.4 コヒーレンス
演習問題
引用・参考文献
演習問題解答例
索引
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「OplusE」2019年7・8月号(アドコム・メディア株式会社) 掲載日:2019/07/30
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掲載日:2024/08/01
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掲載日:2023/10/10
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掲載日:2023/06/01
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掲載日:2022/11/02
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掲載日:2020/12/03
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掲載日:2020/10/30
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掲載日:2020/04/01
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掲載日:2019/10/01