半導体光デバイス

半導体光デバイス

半導体光物性と半導体光デバイスについて,その原理や基本特性をわかりやすく解説。

ジャンル
発行年月日
2020/08/07
判型
A5
ページ数
204ページ
ISBN
978-4-339-00934-7
半導体光デバイス
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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高度化する光通信・光情報処理システムは多くの半導体光デバイスに支えられている。本書では,半導体中の電子の状態や挙動,光との相互作用などの基礎物性を学び,光デバイスの動作原理や基本特性をわかりやすく解説した。

地球上には光ファイバが張り巡らされ,電磁波が飛び交い,世界中が大規模な情報網でつながっている。いつでも・どこでも・誰とでもコミュニケーションがとれ,大量の情報を伝送し処理する高度情報化社会が実現されてきた。この高度化する情報通信・情報処理システムは,多くの半導体デバイスに支えられている。情報通信のさらなる高度化には,今後も半導体デバイスの進展は必要不可欠である。半導体物質の性質を利用した電子(電子波),光子(光波)の信号の増幅,検出,導波,変調,さらに光・電気のエネルギー変換の機能を実現するためには,半導体の電子物性,光物性の理解と,デバイス構造の設計指針および作製プロセス技術が重要である。

本書では,半導体工学の基礎と光デバイス応用にフォーカスし,これからこの分野を学ぼうとする高専・専攻科生,大学学部生,大学院前期課程生を想定して執筆した。各章における光電子物性やデバイス動作を理解しやすくするため,なるべく多くの図解を導入した。特に,エネルギーバンド図は基本的な理解にたいへん便利である。バンドエンジニアリングという言葉もあるように,エネルギーバンド図は半導体中の電子の位置,波数,運動量,エネルギーの状態をつかみ,光との相互作用やデバイスの動作原理の基本的な理解に役立つ。特に,半導体の各種接合構造はさまざまな光デバイスに応用されており,エネルギーバンド構造はキャリヤの分布や流れなどを考える上で便利である。さらに,新しいデバイス構造のアイデアも創出しやすいことから,エネルギーバンド図を書いて考える習慣を身に付けておくのも有効である。また,本書の内容を理解していく上で,量子力学の学習も同時に進めてもらいたい。最近では,ナノメートルサイズの半導体微小構造を利用した量子デバイスの進展も著しく,量子力学的性質によりデバイス特性の高性能化,高機能化が期待されている。本書でもいくつかの基本的な量子デバイスを紹介している。

本書は本文十章と付録から構成されている。1 章では,金属および半導体内の電子状態を表すエネルギーバンド構造について学び,半導体中のキャリヤの伝導電子と正孔の概念を解説する。2 章では,真性半導体と不純物をドープした外因性半導体のキャリヤ濃度の解析について説明する。3 章では,キャリヤの輸送現象として熱運動,ドリフト効果,拡散現象,そして散乱機構の基礎を学び,キャリヤの輸送を表すキャリヤの連続の式と誘電緩和現象について解説する。4 章では,金属からの電子放出として,熱電子放出,電界電子放出,二次電子放出,そして光電子放出について概説する。5 章では,光デバイス構造として重要な半導体の接合について解説する。はじめに pn 接合のエネルギーバンド構造を学び,電流-電圧特性を理解する。金属-半導体接合としては,特にショットキー接触について説明する。つぎに半導体ヘテロ接合のエネルギーバンド構造を学び,電流-電圧特性を解説する。最後に,量子井戸構造と超格子構造の電子状態について学び,量子井戸構造の状態密度を導出し,その特徴について述べる。6 章では,発光・受光デバイスの機構の理解に重要な半導体における,発光と光吸収の光学遷移について説明する。7 章では,半導体の発光デバイスとして,発光ダイオード(LED),半導体レーザ,および量子井戸レーザの基本原理,各種構造,および基本特性について解説する。8 章では,半導体の受光デバイスとして,光伝導素子,ショットキー接合フォトダイオード,pn 接合フォトダイオード,pin フォトダイオード,そしてアバランシェフォトダイオードについて説明する。9 章では,pn 接合を基本とした太陽電池の基本原理と特性について解説し,高い変換効率の多接合タンデム型太陽電池,中間バンド型太陽電池について紹介する。10 章では,半導体光導波路と半導体光変調器について解説する。以上の本書にまとめた半導体光デバイスは,今日のインターネット社会を支える光通信技術や各種の光計測,光信号処理などの分野において広く活用されている。本書では関連する章・節に何度も戻れるように,各章・節間での関連事項の連携性にも注意を払った。ぜひ本書全体を体系的に学んでいただきたい。

冒頭でも述べたように,半導体デバイスの展開は,高度情報化社会を支え,今後も地球・自然環境の保全,自然災害対策,エネルギー・環境問題の改善,安心・安全な社会を持続的に発展させていく上でも重要な役割を担っており,革新的な半導体デバイスの開発が期待されている。本書が,半導体光デバイスの基礎の習得を目指す読者のお役に立てれば幸いである。

最後に,本書の執筆では,著者の大学学部および大学院での講義ノートをベースにした。本書の図表や式の作成にご協力いただいた研究室の学生,および秘書の福地真実氏に感謝申し上げる。本書の執筆の機会をくださり,出版まで辛抱強くお世話をいただいたコロナ社に厚く御礼申し上げる。

2020 年 6 月 山口 浩一

1.固体内の電子状態・エネルギーバンド構造
1.1 はじめに
1.2 真空中の電子と水素原子の電子
1.3 金属内の自由電子
1.4 金属内の電子のエネルギー分布
1.5 半導体結晶内の電子状態
1.6 半導体内の伝導電子と正孔の挙動
1.7 半導体のエネルギーバンド構造

2.半導体のキャリヤ
2.1 真性半導体(キャリヤの熱生成と再結合)
2.2 外因性半導体(n型半導体とp型半導体)
2.3 キャリヤ濃度とフェルミ準位

3.キャリヤの輸送現象
3.1 結晶内の電子波の電気伝導
3.2 キャリヤの熱運動
3.3 ドリフト運動・移動度
3.4 キャリヤの散乱
3.5 ホール効果
3.6 キャリヤの拡散
3.7 キャリヤの連続式(ドリフト・拡散モデル)
3.8 キャリヤの誘電緩和

4.金属からの電子放出
4.1 熱電子放出
4.2 電界電子放出
4.3 二次電子放出
4.4 光電子放出

5.半導体の接合
5.1 pn接合
 5.1.1 pn接合のエネルギーバンド図
 5.1.2 空乏層
 5.1.3 擬フェルミ準位
 5.1.4 バイアス印加pn接合のエネルギーバンド図
 5.1.5 直流バイアス印加pn接合の電流-電圧特性
 5.1.6 交流小信号印加pn接合の電流-電圧特性
 5.1.7 空乏層容量
 5.1.8 拡散容量
 5.1.9 逆方向電流
 5.1.10 降伏現象
5.2 金属-半導体接合
 5.2.1 ショットキー接触とオーム接触
 5.2.2 ショットキー接触の電流-電圧特性
5.3 半導体ヘテロ接合
 5.3.1 ヘテロ接合のエネルギーバンド構造
 5.3.2 ヘテロ接合の電流-電圧特性
5.4 量子井戸構造・超格子構造
 5.4.1 量子井戸構造
 5.4.2 量子井戸構造内の電子のエネルギー状態
 5.4.3 量子井戸構造の電子の状態密度
 5.4.4 超格子構造

6.半導体における発光と光吸収
6.1 光学遷移の基礎
6.2 バンド間における光学遷移
6.3 励起子の光学遷移
6.4 不純物準位を介した光学遷移
6.5 非発光性再結合

7.発光デバイス
7.1 発光デバイスの半導体材料
7.2 発光ダイオード(LED)
7.3 半導体レーザ(LD)
 7.3.1 半導体レーザの基本原理
 7.3.2 半導体レーザの基本特性
 7.3.3 半導体レーザの構造
7.4 量子井戸(QW)レーザ

8.受光デバイス
8.1 受光デバイスの半導体材料と光吸収係数
8.2 光伝導素子
8.3 ショットキー接合フォトダイオード
8.4 pn接合フォトダイオード
 8.4.1 pn接合フォトダイオード
 8.4.2 pinフォトダイオード
8.5 アバランシェフォトダイオード(APD)

9.太陽電池
9.1 太陽電池の動作原理
9.2 太陽電池の電流-電圧特性
9.3 太陽光スペクトル
9.4 電力変換効率と損失
9.5 多接合タンデム型太陽電池
9.6 中間バンド型太陽電池

10.半導体の光導波路・光変調器
10.1 半導体光導波路
10.2 半導体光変調器

付録
A.1 シュレーディンガー波動方程式
A.2 波束と不確定性原理
A.3 ダイヤモンド構造と閃亜鉛鉱構造
A.4 物理定数表
A.5 各種半導体の室温における物性定数(バンドギャップの大きい順)

参考文献
索引

山口 浩一(ヤマグチ コウイチ)

掲載日:2023/10/10

日本光学会誌2023年10月号

掲載日:2023/06/01

電子情報通信学会誌2023年6月号

掲載日:2022/11/02

電子情報通信学会誌2022年11月号

掲載日:2020/12/03

応用物理学会誌「応用物理」2020年12月号広告

掲載日:2020/10/30

「電子情報通信学会誌」2020年11月号広告

掲載日:2020/08/03

「電子情報通信学会誌」2020年8月号広告