金属バイオマテリアル - 医療用金属材料 -

金属バイオマテリアル - 医療用金属材料 -

金属材料工学や医歯学の知識がなくても金属バイオマテリアルの全体像を概観できる。

ジャンル
発行予定日
2025/06/下旬
判型
A5
ページ数
168ページ
ISBN
978-4-339-07283-9
金属バイオマテリアル - 医療用金属材料 -
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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  • 内容紹介
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  • 広告掲載情報

2007年に発刊した「金属バイオマテリアル」(バイオマテリアルシリーズ1)を大幅に改訂しました。材料工学を専門とする学生,大学院生,技術者などで金属バイオマテリアルに関する知識を必要としている方々,また工学系他分野や医歯学系で金属材料を学んでいない方々を対象として,金属材料工学や医歯学の知識がなくても全体像を概観できるという同書の趣旨は引き継ぎ,めざましい進展を遂げている金属バイオマテリアルの研究開発の現状を踏まえて,現状と一致しなくなった箇所を最新の内容に差し替えました。

1章:バイオマテリアルとしての金属
2章:どこに使われるのか ―臨床応用例と課題―
3章:どんな材料が使われているのか ―金属バイオマテリアルの種類と性質―
4章:人体内でどのように変化するのか ―耐久性とその評価―
5章:金属材料は人体に安全か ―安全性と生体適合性―
6章:金属材料を生体適合化・生体機能化する ―表面処理・表面形態制御―
7章:いかにして製品となるか ―承認・認証制度―
付録:金属材料の内部構造と機械的性質/金属材料の表面構造と腐食/金属バイオマテリアルの規格

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

材料としての金属の歴史は古く,今日の材料科学・工学の基礎は,金属材料の研究によって形作られたといっても過言ではない。しかし,重金属による環境破壊や人体への被害などの記憶から,金属材料はバイオマテリアルとして“好ましくない材料”であると考える人は多い。医療用に金属材料を使用する場合には,安全性を向上させることが第一義であり,そのため,耐食性を向上させ,体内での破壊をなくすことに努力が注がれてきた。さらに,金属は典型的な人工材料であり生体機能性がないと認識されており,生体材料として魅力のないものと考えられることも多い。

一方,セラミックスと高分子におけるこの半世紀の急激な技術革新は,これらの医療機器への幅広い応用を可能にした。特に,セラミックスや高分子の優れた生体組織適合性や生体機能性は,バイオマテリアルとして大きな期待を抱かせるものであり,事実多くの金属製医療機器がセラミックスや高分子で代替されてきた。それにもかかわらず,金属材料は優れた強度と靭じん性せいから依然として多くの医療機器に使用され,体内埋植型医療機器(インプラント)の70%以上を占め,整形外科に限れば95%以上が金属製である。一時期は,すべての医療機器がセラミックス製や高分子製になるのではないかと考えられたこともあったが,力学的信頼性から金属材料の必要性はまったく衰えていない。また,再生医療の進歩によって人工材料は淘汰されるかのように考えられたこともあったが,その実現には相当な時間がかかることも明らかになっており,現実的な問題として金属材料の重要性が再認識されている。金属製医療機器をセラミックスや高分子で代替しようとする試みは続けられているが,近年はこれがほとんど研究レベルにとどまり,実用化に至っていない。金属材料の性質と金属材料が使用されている理由を理解した上での開発の動機付けが必要であろう。

本書は,材料工学を専門とする学生,大学院生,技術者などで金属バイオマテリアルに関する知識を必要としている方々,また工学系他分野や医歯学系で金属材料を学んでいない方々を対象として,金属材料工学や医歯学の知識がなくても通読できることを目標に執筆した。金属バイオマテリアルの全体像を限られた紙面に収め,全体の理解の流れを妨げないようにしたため,材料工学的にみて記述が曖昧になっている点がある。一方,医療応用に関する記述では医学的な説明に不十分な点が多々あることを認識している。さらに,各章の内容は互いに密接に関係しているため,用語の説明を初出時ではなく後の章で説明している場合がある。その場合には参照すべき箇所を示し,脚注と付録を設けることで,全体の流れを妨げないようにした。金属バイオマテリアルの全貌を理解するためには,金属工学・金属材料学,生命科学,臨床医学に関する知識が必要だが,これらを限られた紙面で説明することは困難であり,またわれわれ執筆者の浅薄な知識だけでは不可能である。本書の内容に関して,さらに深い内容を勉強される場合は,それぞれの専門書にあたっていただきたい。

本書を金属バイオマテリアル総論の教科書として,大学学部あるいは大学院の講義で使用すると90分講義7回分程度に相当するが,周辺知識も含めた講義を行えば15回は必要となろう。

本書は,2007年にコロナ社から発刊された「バイオマテリアルシリーズ1金属バイオマテリアル」を基に,大幅に書き改めたものであり,一部に重複する部分があることをご了解いただきたい。この17年間における金属バイオマテリアルに関する研究開発の進捗はめざましく,前版の内容が現状と必ずしも一致しない箇所が散見され,これらの内容は最新と思われるものに差し替えた。一方で,金属バイオマテリアルを理解するための基盤となる科学・工学は普遍であり,この内容は本書でも維持されている。本書の内容は,われわれ執筆者が教育研究活動に携わる間に業務上得た知識をまとめたものであり,この過程で長年にわたって多くの方々にご教示いただいた。この場を借りて感謝いたします。また,図や写真を提供いただいた日本ストライカー株式会社,帝人ナカシマメディカル株式会社,株式会社ジーシー,国立研究開発法人物質・材料研究機構 山本玲子博士,廣本祥子博士,独立行政法人国立高等専門学校機構鈴鹿工業高等専門学校 黒田大介教授,元独立行政法人物質・材料研究機構 丸山典夫博士,元東京医科歯科大学歯学部附属病院 浜野英也博士,元同生体材料工学研究所 土居壽博士に深く感謝いたします。

2025年5月
塙隆夫
米山隆之

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.バイオマテリアルとしての金属
1.1 バイオマテリアルとは何か
1.2 バイオマテリアルの種類
 1.2.1 セラミック材料
 1.2.2 高分子材料
1.3 なぜ金属が使われるのか―金属材料の長所―

2.どこに使われるのか―臨床応用例と課題―
2.1 臨床応用
2.2 整形外科
 2.2.1人工関節
 2.2.2骨固定材
 2.2.3脊椎固定
2.3 循環器科
 2.3.1 カテーテル,ガイドワイヤー
 2.3.2 ステント,ステントグラフト
 2.3.3 脳動脈瘤クリップ,塞栓コイル
 2.3.4 人工心臓,人工弁
2.4 歯科
 2.4.1 成形加工法
 2.4.2 インレー,クラウン
 2.4.3 ブリッジ
 2.4.4 有床義歯
 2.4.5 歯科インプラント(人工歯根)
 2.4.6 歯科矯正
 2.4.7 歯内療法
 2.4.8 口腔外科
2.5 内視鏡,手術用ロボット,造影機器

3.どんな材料が使われているのか―金属バイオマテリアルの種類と性質―
3.1 金属バイオマテリアルの諸特性
3.2 CP Ti,Ti合金
3.3 Co基合金
3.4 ステンレス鋼
3.5 貴金属,貴金属合金
 3.5.1 歯科鋳造用金合金
 3.5.2 歯科鋳造用銀合金
 3.5.3 陶材焼付用合金
 3.5.4 Pt基合金
3.6 形状記憶合金,超弾性合金
3.7 その他の金属材料
 3.7.1 磁石合金
 3.7.2 Ta,Nb
 3.7.3 Zr合金
3.8 研究開発中の合金
 3.8.1 生分解性金属
 3.8.2 MRI対応低磁性合金
 3.8.3 ハイエントロピー合金

4.人体内でどのように変化するのか―耐久性とその評価―
4.1 生体環境因子
 4.1.1 化学的環境
 4.1.2 力学的環境
4.2 疲労,フレッティング疲労
4.3 摩擦摩耗,トライボロジー
4.4 人的因子による破壊
4.5 腐食
 4.5.1 腐食とは何か
 4.5.2 摩耗による腐食促進
 4.5.3 人体中での腐食

5.金属材料は人体に安全か―安全性と生体適合性―
5.1 毒性評価
 5.1.1 毒性の考え方
 5.1.2 生命元素(生体必須元素)と毒性
 5.1.3 毒性評価方法
 5.1.4 発がん性
5.2 金属アレルギー
5.3 MRIアーチファクト
5.4 金属材料表面の反応と生体適合性
 5.4.1 生体適合性の定義
 5.4.2 生体適合性に影響する因子
 5.4.3 硬組織適合性―骨形成,骨結合―
 5.4.4 軟組織適合性―軟組織接着性―
 5.4.5 血液適合性―抗血栓性―

6.金属材料を生体適合化・生体機能化する―表面処理・表面形態制御―
6.1 表面処理
6.2 ドライプロセス
6.3 ウェットプロセス
6.4 表面処理の変遷,表面形態制御
6.5 生体機能表面形態

7.いかにして製品となるか―承認・認証制度―
7.1 医療機器承認制度
7.2 申請内容,規格

付録
A.1 金属材料の内部構造と機械的性質
A.1.1 合金とは何か
A.1.2 合金の結晶構造
A.1.3 相変態と結晶組織
A.1.4 金属材料の強度と変形
A.1.5 結晶構造の欠陥
A.1.6 すべり変形と双晶変形
A.1.7 塑性変形と転位の基礎
A.1.8 金属の酸化
A.1.9 製造プロセスが機械的性質に及ぼす影響
A.2 金属材料の表面構造と腐食
A.2.1 金属材料の表面
A.2.2 不動態皮膜―腐食から金属を守る―
A.2.3 金属材料の表面反応―腐食反応の基礎―
A.2.4 電位-pH線図
A.2.5 局部腐食
A.2.6 耐食性評価―腐食を計る―
A.3金属バイオマテリアルの規格
引用・参考文献
索引

塙 隆夫(ハナワ タカオ)

掲載日:2025/05/26

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