材料の数理モデリング - マルチスケール材料シミュレーション -
材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するための入門書。
- 発行年月日
- 2026/05/07
- 判型
- B5
- ページ数
- 166ページ
- ISBN
- 978-4-339-06677-7
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
本書では,読者がマルチスケールなものの見方を習得することを目的とし,電子・原子レベルのミクロスケールから,工業製品が実際に利用されるマクロスケールまでのさまざまな計算機シミュレーション手法の詳細を順に解説する。
第1章では,本書の構成および具体的な内容について詳しく述べている
第2章「量子化学計算」では,原子核1個,電子1個からなる水素様原子に関する説明から入り,多電子系に対するハートリー・フォック近似など,いくつかの近似法の詳細を説明する。
第3章「第一原理計算」では,結晶学の基礎,周期系でのシュレーディンガー方程式,逆空間での電子状態(バンド構造)の記述などを説明し,その後多電子系のシュレーディンガー方程式を解く近似法として,密度汎関数法を用いた計算事例を紹介する。
第4章「分子動力学計算」では,原子間ポテンシャル,運動方程式の数値計算,結果の解析法などを説明したあと,液体からのアモルファス形成に関する計算例を示す。
第5章「有限要素法」では,変位とひずみの関係,応力とひずみの関係に始まり,仮想仕事の原理を満たす節点変位と節点力の関係のマトリックス表示を説明し,その後シミュレーションによる実例を示す。
第6章「伝熱・凝固解析」では,熱伝導方程式の基礎から入り,有限差分法,境界条件,凝固潜熱補正のいくつかの手法を紹介し,最後に解析の実例を示す。
第7章「粒子法による流体運動の計算」では,流体の基礎に始まり,流体運動を記述するナビエ-ストークス方程式の説明,これを離散化して数値計算する手法であるSPH法およびMPS法の解説を行う。SPH法では空間離散化のためにカーネル近似とよばれる方法を採用しているのに対し,MPS法では,関数のテイラー展開に基づいた微分についての近似モデルを用いることが特徴である。章の最後に,材料プロセスにおける応用例を示す。
第8章「状態図計算」では,状態図の基礎から始まり,CALPHAD法とよばれる手法を中心に,状態図の原理と計算アルゴリズムについての解説を行い,その後市販ソフトウェアの紹介をする。
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
科学,工学の分野では,実験と理論をもとにした理解が基本となっているが,現代においては,それらを支える手段として計算シミュレーションが大きな役割を果たしている。特に,近年ではシミュレーション技術の発展が著しく,多くのソフトウェアが開発されており,材料科学の分野においても必須の道具の一つとなっている。材料科学の特性として,単一のスケールや現象にフォーカスした理解だけではなく,俯瞰して複数の側面から物質を眺める必要がある。本書の副題にもしているように,「マルチスケール」で物質を見ることが材料科学分野においては特に重要であり,それぞれのスケールにおける指導原理を理解したうえで,シミュレーションを行うことが要求される。多くの場合,シミュレーションを行う者自身のバックグラウンドに近い分野のみのシミュレーションに精通するだけにとどまり,ほかのスケールにおけるシミュレーションに対しては経験がない,もしくはきわめて理解が乏しくなってしまっている。得意とする分野ではない分野のシミュレーションに挑戦するためには,そのシミュレーション技術の専門書を一つずつ当たることになってしまい,新しい挑戦に対して高い障壁を感じてしまうことも多いと思われる。本書は,さまざまなスケールにおけるシミュレーションに対して,個々のスケールにおける基本を理解することを目指して,1冊の書籍にまとめたものである。本書で採用した内容は,早稲田大学基幹理工学研究科材料科学専攻修士課程における必修科目「数理の材料モデリング」の講義,実習内容を中心に構築したものである。大学教養課程における数学,物理,化学を履修済みで,材料科学におけるマルチスケールでの種々のシミュレーションに対する基本を習得することを目指している,学部高学年の大学生および大学院生,ならびに材料のシミュレーションを実際に行っている,またはこれから行いたいと考えている研究者,技術者を読者として想定している。
なお,本書の構成および具体的な内容については,第1章に詳しく述べているので,参照いただきたい。
2026年3月
著者一同
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
1.本書の目的,全体像
1.1 はじめに
1.2 各シミュレーション手法の概説
1.3 まとめ
2.量子化学計算
2.1 古典の波動方程式からの展開
2.2 水素様原子の波動関数とエネルギー
2.3 磁石としての電子
2.4 多電子原子
2.5 多電子・多核分子の波動関数とエネルギー
2.6 分子の位置エネルギーと最適構造
2.7 分子振動と光との相互作用
2.7.1 分子の振動と赤外線吸収スペクトル
2.7.2 分子の振動と回転による赤外線吸収スペクトルの複雑化
2.8 連続体の量子化学計算
章末問題
3.第一原理計算
3.1 第一原理計算に必要な基礎知識
3.1.1 結晶構造
3.1.2 周期系に対するシュレーディンガー方程式
3.1.3 電子状態密度
3.1.4 逆空間
3.1.5 結晶の電子状態の見方
3.1.6 第一原理計算の分類
3.1.7 計算手順
3.2 第一原理計算の実際
3.2.1 結晶構造の最適化
3.2.2 相安定性の評価
3.2.3 欠陥をもつ結晶の計算
3.2.4 圧力印加時の計算
3.2.5 電子状態計算
章末問題
4.分子動力学計算
4.1 分子動力学計算の原理
4.1.1 初期条件および境界条件
4.1.2 原子間に働く力
4.1.3 運動方程式の数値計算
4.1.4 温度および圧力の制御
4.1.5 計算結果の解析
4.2 分子動力学計算の実例
章末問題
5.有限要素法
5.1 有限要素法の原理
5.1.1 形状関数(Nマトリックス)
5.1.2 変位とひずみの関係(Bマトリックス)
5.1.3 応力とひずみの関係(Dマトリックス)
5.1.4 要素剛性マトリックス(Kマトリックス)
5.1.5 全体剛性マトリックス
5.2 シミュレーションによる実例
5.2.1 解析モデル形状
5.2.2 要素分割および境界条件設定
5.2.3 応力解析
章末問題
6.伝熱・凝固解析
6.1 伝熱・凝固解析の計算原理
6.1.1 熱伝導方程式
6.1.2 有限差分法
6.1.3 境界条件
6.1.4 凝固潜熱補正
6.2 伝熱・凝固解析の実例
6.2.1 凝固潜熱補正を伴わない1次元熱伝導問題における温度分布変化の計算
6.2.2 接触熱抵抗を取り入れた計算
6.2.3 凝固潜熱補正を伴わない2次元熱伝導問題における温度分布変化の計算
6.2.4 凝固潜熱補正を伴う2次元熱伝導問題における温度分布変化の計算
章末問題
7.粒子法による流体運動の計算
7.1 流体運動の方程式
7.1.1 流体運動の記述法
7.1.2 連続の式
7.1.3 ナビエ-ストークス方程式
7.1.4 ニュートン流体
7.1.5 流体方程式の数値計算
7.2 粒子法の計算原理
7.2.1 SPH法
7.2.2 SPH法による非圧縮性流体の計算
7.2.3 MPS法
7.3 材料プロセスにおける応用例
7.3.1 流体の大変形計算
7.3.2 熱伝導方程式や化学反応速度式との連成
7.3.3 非ニュートン流体の計算
章末問題
8.状態図計算
8.1 状態図概説
8.1.1 2成分系状態図
8.1.2 3成分系状態図
8.1.3 化学ポテンシャル状態図
8.2 状態図計算の原理
8.2.1 ギブスエネルギーと状態図
8.2.2 CALPHAD法
8.2.3 溶液モデルによるギブスエネルギーの計算法
8.2.4 熱力学データベース
8.3 状態図計算の実例
8.3.1 正則溶液モデルを用いた2元系状態図の作成
8.3.2 市販ソフトウェアの紹介
章末問題
引用・参考文献
章末問題解答
索引








