生産加工・工作機械学
生産加工・工作機械の両分野を平易に解説。理論のみならず実践的スキルの定着を図る教科書
- 発行予定日
- 2026/02/上旬
- 判型
- A5
- ページ数
- 240ページ
- ISBN
- 978-4-339-04720-2
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
【書籍の特徴】
本書『生産加工・工作機械学』は,大学の学部3年生レベルを対象に,機械工学における「生産加工」と「工作機械」に関する基礎から応用までを総合的に学べる教科書です。半期の講義(12回分)を意識して構成されており,効率よく学習を進めることができます。さらに,大学院入試の問題を例題や章末問題に取り入れ,入試対策としても役立つ内容になっており,学びのモチベーションを高める工夫がされています。
現代の製造業においては,効率的で高精度な加工技術が不可欠です。それを実現するためには,工作機械とその制御技術に対する深い理解が求められます。本書では,製造業の現場で必要となる知識を包括的に学ぶことができ,学生が卒業後,即戦力として活躍できる技術者となるための重要な一歩をサポートします。また,社会人が学び直しとして基礎から学ぶためにも適した本となっています。
【各章について】
1章:ものづくりとは
2章:工作機械の構造と構成要素
3章:形状創成理論と工作機械の幾何学モデル
4章:工作機械の構造設計
5章:工作機械の制御
6章:切削理論
7章:切削加工の実際
8章:切削の不安定現象
9章:研削加工および砥粒加工
10章:CAMシステム
11章:工程設計と品質管理
12章:生産システム
【読者へのメッセージ】
本書は,「生産加工」と「工作機械」について内容を凝縮し,基礎から応用に至るまで包括的に学べるようにしています。製造業における技術の進化は日々続いており,今後ますます効率的かつ高精度な加工技術が求められる中で,これらの学びは非常に重要です。
本書を通じて,理論的な基盤をしっかりと固め,実務に活かせる技術を身につけて欲しいと思っています。単に理論を学ぶだけでなく,実際の製造現場での課題を解決する力を育むことにも繋がります。そして,学んだ知識を使いこなすことで,即戦力として現場で活躍できる技術者へと成長できることを願っています。
生産加工と工作機械の世界は奥深く,非常に魅力的な分野です。ぜひ本書を活用し,自分の可能性を広げていってください。
【本書のキーワード】
工作機械の構造/設計/制御,形状創成理論,切削理論,びびり振動,研削加工,CAMシステム,工具摩耗・管理
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
2025年現在,世界的な地政学的および経済的リスクが急速に高まっており,従来の国際的な供給網(サプライチェーン)の脆弱性が改めて浮き彫りになっている。また,国際的にサーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進に対する社会的要請が強まり,製品設計や製造プロセス自体の見直しが迫られている。
加えて,地球規模で進む気候変動への対応として,製造業から排出される二酸化炭素(CO2)の削減にも高い関心が寄せられている。特に,鋳造や鍛造,塗装など,製品製造に伴う工程において,エネルギー効率の向上や低炭素化技術の導入,さらには工程そのものの見直しが喫緊の課題となっている。
また,環境負荷の低減を目指す観点から,加工液や潤滑液といった油剤を使用しないプロセスの導入が強く望まれている。具体的には,切削などの加工プロセスをドライ化することや,精度の高い工作機械を用いることで潤滑液そのものを不要にする取り組みが重要となる。このような状況のなかで,日本の製造業は,生産技術を中心に据えて,持続可能性を踏まえた競争力のあるものづくりのあり方を再考するフェーズを迎えている。
生産技術は機械工学の中核をなす分野の一つであるが,これを初めて学ぶ学生向けの適切な教材が不足しているというのが実情である。現状では,初学者向けの教科書は概論的な内容が中心で理論的な基礎が薄く,他方,研究者や専門技術者向けの専門書は高度に理論化されており,初学者には理解が困難であることが多い。また,生産加工と工作機械についての専門書は,それぞれ独立して出版されることが多く,両者を関連づけて総合的に理解することが難しいという課題もある。
そこで本書では,大学の学部3年生レベルを対象とし,生産加工と工作機械の両分野について,理論と実践の両面をバランスよく学べるように構成を工夫した。生産加工および工作機械は,機械製品を具体的に製造するための基盤技術であり,これらの技術を正しく習得することで,将来の機械技術者や設計者が実務や開発の現場においておおいに力を発揮できるものと確信している。
本書を執筆するにあたり,学部3年生が理解しやすいように,難解な専門用語や理論的記述についても,可能な限り平易な言葉や具体例を用いて説明を試みた。また,理論的背景を正確に理解するために必要な数学の基礎知識についても,丁寧に解説を加えている。加えて,多くの図表や演習問題を掲載し,理論的な理解のみならず実践的なスキルの定着を図ることにも留意した。本書が,生産加工や工作機械を学ぶ学生の理解促進と技術習得の助けとなり,日本の製造業が抱える課題解決に寄与できれば幸いである。
最後に,本書の企画から執筆,そして出版に至るまで,多くの方々より温かい支援と助言を賜り,無事に刊行の運びとなったことに,心より感謝の意を表する。また,本書の執筆に際して引用させていただいた多数の文献の著者各位にも,深甚なる謝意を捧げたい。さらに,本書がこのように形となったのは,ひとえにコロナ社関係者各位の熱意ある協力と尽力の賜物であり,ここに改めて深く感謝の意を表するものである。
なお,各章の執筆分担は下記のとおりである。
1,4,6,8,9,12章 杉田直彦
2章 吉岡勇人
3,7章 河野大輔
5章 柿沼康弘
10,11章 中本圭一
2026年1月
著者を代表して 杉田直彦
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
1.ものづくりとは
1.1 設計図と加工方法
1.1.1 工程の検討
1.1.2 機械の検討
1.1.3 工具の検討
1.1.4 加工順序の検討
1.2 工作機械のいろいろ
1.3 加工工程と加工法
1.3.1 さまざまな加工方法
1.3.2 除去加工と工具
1.3.3 加工精度
章末問題
2.工作機械の構造と構成要素
2.1 工作機械の基本構造
2.1.1 本体構造に要求される特性
2.1.2 工作機械構造の各部名称
2.2 工作機械の主軸系
2.2.1 主軸系に対して要求される特性
2.2.2 主軸系の構成要素
2.3 工作機械の送り系
2.3.1 送り系に対して要求される特性
2.3.2 送り系の構成要素
2.4 構造形態と多軸工作機械
2.4.1 工作機械における軸
2.4.2 工作機械の多軸複合化
章末問題
3.形状創成理論と工作機械の幾何学モデル
3.1 形状創成理論
3.1.1 工具-工作物間の構造ループ
3.1.2 機構コード
3.2 工具運動のシミュレーション
3.2.1 工具-工作物間の相対運動の定式化
3.2.2 工具形状の定式化
3.2.3 形状創成関数
3.3 運動誤差のシミュレーション
3.3.1 工作機械の直進軸の運動誤差
3.3.2 幾何学モデルによる運動誤差の定式化
3.3.3 形状創成理論を用いた運動誤差の定式化
3.3.4 直交3軸の工作機械の幾何学モデル
章末問題
4.工作機械の構造設計
4.1 工作機械の特性
4.2 静剛性
4.3 動剛性
4.4 熱剛性
章末問題
5.工作機械の制御
5.1 本章の目的
5.2 主軸系・送り系のモデル化
5.2.1 1慣性系のモデル
5.2.2 2慣性系のモデル
5.2.3 2慣性系モデルにおける機械パラメータと振動特性
5.3 サーボ系制御
5.3.1 カスケード型制御系の基本と特徴
5.3.2 速度制御系(PI制御とI-P制御)
5.3.3 位置制御系
5.3.4 フィードフォワード制御
5.3.5 セミクローズド制御とフルクローズド制御
章末問題
6.切削理論
6.1 切削加工とは
6.2 せん断面とせん断角
6.3 理論せん断角
6.3.1 せん断すべりの条件
6.3.2 せん断角の理論的予測
6.4 切削速度
6.5 切削抵抗
6.6 加工エネルギーと切削温度
章末問題
7.切削加工の実際
7.1 切削工具
7.1.1 切削工具の例
7.1.2 切削工具の分類
7.2 エンドミル加工
7.2.1 さまざまなエンドミル
7.2.2 エンドミル加工の基本
7.2.3 エンドミル加工における表面粗さ
7.3 旋削加工
7.3.1 さまざまな旋削加工
7.3.2 旋削加工の基本
7.3.3 旋削加工における表面粗さ
7.4 切りくず形態と実際の表面粗さ
7.4.1 切りくず形態
7.4.2 工具形状の転写
7.4.3 工具の運動軌跡の誤差
章末問題
8.切削の不安定現象
8.1 機械振動の解析
8.1.1 工作機械の振動特性
8.1.2 安定判別
8.2 機械加工における振動の影響
8.2.1 強制振動
8.2.2 自励振動(びびり振動)
章末問題
9.研削加工および砥粒加工
9.1 研削加工とは
9.1.1 研削加工の種類
9.1.2 研削加工の工具
9.1.3 切削加工との違い
9.2 砥石の構造と材料
9.2.1 砥粒の種類
9.2.2 結合剤
9.2.3 その他の要素
9.3 その他の加工
9.3.1 心なし研削(センターレス研削)
9.3.2 ねじ研削
9.3.3 歯車研削
9.4 研削加工の幾何学
9.4.1 平均切れ刃間隔と連続切れ刃間隔
9.4.2 研削加工の運動モデル
9.5 研削中の砥石の状態
9.5.1 目こぼれ
9.5.2 目つぶれ
9.5.3 目詰まり
9.6 研削加工のための工作機械(研削盤)
9.6.1 研削盤の構造
9.6.2 研削盤の種類
9.7 砥粒加工
9.7.1 砥粒加工とは
9.7.2 ラッピング
9.7.3 ホーニング
9.7.4 超仕上げ
9.7.5 化学機械研磨(CMP)
章末問題
10.CAMシステム
10.1 NCプログラムの生成
10.2 メインプロセッサ
10.2.1 工具中心点
10.2.2 工具軸ベクトル
10.3 NCプログラミング
10.3.1 NCプログラム
10.3.2 直線補間
10.3.3 円弧補間
10.4 ポストプロセッサ
10.4.1 座標変換
10.4.2 リニアライゼーション
10.4.3 送り速度修正
章末問題
11.工程設計と品質管理
11.1 加工工程
11.1.1 グループテクノロジー
11.1.2 加工フィーチャ
11.2 工具寿命
11.2.1 工具摩耗
11.2.2 寿命方程式
11.3 最適加工条件
11.3.1 機械加工システム
11.3.2 最適化計算
章末問題
12.生産システム
12.1 生産方式の種類
12.1.1 製品の流れからみた生産方式の種類
12.1.2 生産システムの自動化
12.2 トヨタ生産方式(TPS)
12.2.1 ジャストインタイム
12.2.2 自働化
12.3 Industry4.0時代の生産方式
12.4 スマートファクトリーに向けて
12.4.1 スマートファクトリーの実践
12.4.2 スマートファクトリー時代の生産ライン
12.4.3 スマートファクトリーと超高速通信
12.4.4 生産加工・工作機械の今後
章末問題
引用・参考文献
索引









