生産加工・工作機械学
生産加工・工作機械の両分野を平易に解説。理論のみならず実践的スキルの定着を図る教科書
- 発行年月日
- 2026/03/05
- 判型
- A5
- ページ数
- 240ページ
- ISBN
- 978-4-339-04720-2
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
【書籍の特徴】
本書『生産加工・工作機械学』は,大学の学部3年生レベルを対象に,機械工学における「生産加工」と「工作機械」に関する基礎から応用までを総合的に学べる教科書です。半期の講義(12回分)を意識して構成されており,効率よく学習を進めることができます。さらに,大学院入試の問題を例題や章末問題に取り入れ,入試対策としても役立つ内容になっており,学びのモチベーションを高める工夫がされています。
現代の製造業においては,効率的で高精度な加工技術が不可欠です。それを実現するためには,工作機械とその制御技術に対する深い理解が求められます。本書では,製造業の現場で必要となる知識を包括的に学ぶことができ,学生が卒業後,即戦力として活躍できる技術者となるための重要な一歩をサポートします。また,社会人が学び直しとして基礎から学ぶためにも適した本となっています。
【各章について】
1章:ものづくりとは
2章:工作機械の構造と構成要素
3章:形状創成理論と工作機械の幾何学モデル
4章:工作機械の構造設計
5章:工作機械の制御
6章:切削理論
7章:切削加工の実際
8章:切削の不安定現象
9章:研削加工および砥粒加工
10章:CAMシステム
11章:工程設計と品質管理
12章:生産システム
【読者へのメッセージ】
本書は,「生産加工」と「工作機械」について内容を凝縮し,基礎から応用に至るまで包括的に学べるようにしています。製造業における技術の進化は日々続いており,今後ますます効率的かつ高精度な加工技術が求められる中で,これらの学びは非常に重要です。
本書を通じて,理論的な基盤をしっかりと固め,実務に活かせる技術を身につけて欲しいと思っています。単に理論を学ぶだけでなく,実際の製造現場での課題を解決する力を育むことにも繋がります。そして,学んだ知識を使いこなすことで,即戦力として現場で活躍できる技術者へと成長できることを願っています。
生産加工と工作機械の世界は奥深く,非常に魅力的な分野です。ぜひ本書を活用し,自分の可能性を広げていってください。
【本書のキーワード】
工作機械の構造/設計/制御,形状創成理論,切削理論,びびり振動,研削加工,CAMシステム,工具摩耗・管理
2025年現在,世界的な地政学的および経済的リスクが急速に高まっており,従来の国際的な供給網(サプライチェーン)の脆弱性が改めて浮き彫りになっている。また,国際的にサーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進に対する社会的要請が強まり,製品設計や製造プロセス自体の見直しが迫られている。
加えて,地球規模で進む気候変動への対応として,製造業から排出される二酸化炭素(CO2)の削減にも高い関心が寄せられている。特に,鋳造や鍛造,塗装など,製品製造に伴う工程において,エネルギー効率の向上や低炭素化技術の導入,さらには工程そのものの見直しが喫緊の課題となっている。
また,環境負荷の低減を目指す観点から,加工液や潤滑液といった油剤を使用しないプロセスの導入が強く望まれている。具体的には,切削などの加工プロセスをドライ化することや,精度の高い工作機械を用いることで潤滑液そのものを不要にする取り組みが重要となる。このような状況のなかで,日本の製造業は,生産技術を中心に据えて,持続可能性を踏まえた競争力のあるものづくりのあり方を再考するフェーズを迎えている。
生産技術は機械工学の中核をなす分野の一つであるが,これを初めて学ぶ学生向けの適切な教材が不足しているというのが実情である。現状では,初学者向けの教科書は概論的な内容が中心で理論的な基礎が薄く,他方,研究者や専門技術者向けの専門書は高度に理論化されており,初学者には理解が困難であることが多い。また,生産加工と工作機械についての専門書は,それぞれ独立して出版されることが多く,両者を関連づけて総合的に理解することが難しいという課題もある。
そこで本書では,大学の学部3年生レベルを対象とし,生産加工と工作機械の両分野について,理論と実践の両面をバランスよく学べるように構成を工夫した。生産加工および工作機械は,機械製品を具体的に製造するための基盤技術であり,これらの技術を正しく習得することで,将来の機械技術者や設計者が実務や開発の現場においておおいに力を発揮できるものと確信している。
本書を執筆するにあたり,学部3年生が理解しやすいように,難解な専門用語や理論的記述についても,可能な限り平易な言葉や具体例を用いて説明を試みた。また,理論的背景を正確に理解するために必要な数学の基礎知識についても,丁寧に解説を加えている。加えて,多くの図表や演習問題を掲載し,理論的な理解のみならず実践的なスキルの定着を図ることにも留意した。本書が,生産加工や工作機械を学ぶ学生の理解促進と技術習得の助けとなり,日本の製造業が抱える課題解決に寄与できれば幸いである。
最後に,本書の企画から執筆,そして出版に至るまで,多くの方々より温かい支援と助言を賜り,無事に刊行の運びとなったことに,心より感謝の意を表する。また,本書の執筆に際して引用させていただいた多数の文献の著者各位にも,深甚なる謝意を捧げたい。さらに,本書がこのように形となったのは,ひとえにコロナ社関係者各位の熱意ある協力と尽力の賜物であり,ここに改めて深く感謝の意を表するものである。
2026年1月
著者を代表して 杉田直彦
執筆分担
杉田直彦 1,4,6,8,9,12章
吉岡勇人 2章
河野大輔 3,7章
柿沼康弘 5章
中本圭一 10,11章
1.ものづくりとは
1.1 設計図と加工方法
1.1.1 工程の検討
1.1.2 機械の検討
1.1.3 工具の検討
1.1.4 加工順序の検討
1.2 工作機械のいろいろ
1.3 加工工程と加工法
1.3.1 さまざまな加工方法
1.3.2 除去加工と工具
1.3.3 加工精度
章末問題
2.工作機械の構造と構成要素
2.1 工作機械の基本構造
2.1.1 本体構造に要求される特性
2.1.2 工作機械構造の各部名称
2.2 工作機械の主軸系
2.2.1 主軸系に対して要求される特性
2.2.2 主軸系の構成要素
2.3 工作機械の送り系
2.3.1 送り系に対して要求される特性
2.3.2 送り系の構成要素
2.4 構造形態と多軸工作機械
2.4.1 工作機械における軸
2.4.2 工作機械の多軸複合化
章末問題
3.形状創成理論と工作機械の幾何学モデル
3.1 形状創成理論
3.1.1 工具-工作物間の構造ループ
3.1.2 機構コード
3.2 工具運動のシミュレーション
3.2.1 工具-工作物間の相対運動の定式化
3.2.2 工具形状の定式化
3.2.3 形状創成関数
3.3 運動誤差のシミュレーション
3.3.1 工作機械の直進軸の運動誤差
3.3.2 幾何学モデルによる運動誤差の定式化
3.3.3 形状創成理論を用いた運動誤差の定式化
3.3.4 直交3軸の工作機械の幾何学モデル
章末問題
4.工作機械の構造設計
4.1 工作機械の特性
4.2 静剛性
4.3 動剛性
4.4 熱剛性
章末問題
5.工作機械の制御
5.1 本章の目的
5.2 主軸系・送り系のモデル化
5.2.1 1慣性系のモデル
5.2.2 2慣性系のモデル
5.2.3 2慣性系モデルにおける機械パラメータと振動特性
5.3 サーボ系制御
5.3.1 カスケード型制御系の基本と特徴
5.3.2 速度制御系(PI制御とI-P制御)
5.3.3 位置制御系
5.3.4 フィードフォワード制御
5.3.5 セミクローズド制御とフルクローズド制御
章末問題
6.切削理論
6.1 切削加工とは
6.2 せん断面とせん断角
6.3 理論せん断角
6.3.1 せん断すべりの条件
6.3.2 せん断角の理論的予測
6.4 切削速度
6.5 切削抵抗
6.6 加工エネルギーと切削温度
章末問題
7.切削加工の実際
7.1 切削工具
7.1.1 切削工具の例
7.1.2 切削工具の分類
7.2 エンドミル加工
7.2.1 さまざまなエンドミル
7.2.2 エンドミル加工の基本
7.2.3 エンドミル加工における表面粗さ
7.3 旋削加工
7.3.1 さまざまな旋削加工
7.3.2 旋削加工の基本
7.3.3 旋削加工における表面粗さ
7.4 切りくず形態と実際の表面粗さ
7.4.1 切りくず形態
7.4.2 工具形状の転写
7.4.3 工具の運動軌跡の誤差
章末問題
8.切削の不安定現象
8.1 機械振動の解析
8.1.1 工作機械の振動特性
8.1.2 安定判別
8.2 機械加工における振動の影響
8.2.1 強制振動
8.2.2 自励振動(びびり振動)
章末問題
9.研削加工および砥粒加工
9.1 研削加工とは
9.1.1 研削加工の種類
9.1.2 研削加工の工具
9.1.3 切削加工との違い
9.2 砥石の構造と材料
9.2.1 砥粒の種類
9.2.2 結合剤
9.2.3 その他の要素
9.3 その他の加工
9.3.1 心なし研削(センターレス研削)
9.3.2 ねじ研削
9.3.3 歯車研削
9.4 研削加工の幾何学
9.4.1 平均切れ刃間隔と連続切れ刃間隔
9.4.2 研削加工の運動モデル
9.5 研削中の砥石の状態
9.5.1 目こぼれ
9.5.2 目つぶれ
9.5.3 目詰まり
9.6 研削加工のための工作機械(研削盤)
9.6.1 研削盤の構造
9.6.2 研削盤の種類
9.7 砥粒加工
9.7.1 砥粒加工とは
9.7.2 ラッピング
9.7.3 ホーニング
9.7.4 超仕上げ
9.7.5 化学機械研磨(CMP)
章末問題
10.CAMシステム
10.1 NCプログラムの生成
10.2 メインプロセッサ
10.2.1 工具中心点
10.2.2 工具軸ベクトル
10.3 NCプログラミング
10.3.1 NCプログラム
10.3.2 直線補間
10.3.3 円弧補間
10.4 ポストプロセッサ
10.4.1 座標変換
10.4.2 リニアライゼーション
10.4.3 送り速度修正
章末問題
11.工程設計と品質管理
11.1 加工工程
11.1.1 グループテクノロジー
11.1.2 加工フィーチャ
11.2 工具寿命
11.2.1 工具摩耗
11.2.2 寿命方程式
11.3 最適加工条件
11.3.1 機械加工システム
11.3.2 最適化計算
章末問題
12.生産システム
12.1 生産方式の種類
12.1.1 製品の流れからみた生産方式の種類
12.1.2 生産システムの自動化
12.2 トヨタ生産方式(TPS)
12.2.1 ジャストインタイム
12.2.2 自働化
12.3 Industry4.0時代の生産方式
12.4 スマートファクトリーに向けて
12.4.1 スマートファクトリーの実践
12.4.2 スマートファクトリー時代の生産ライン
12.4.3 スマートファクトリーと超高速通信
12.4.4 生産加工・工作機械の今後
章末問題
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 つねぞう 様(業界・専門分野:工作機械)】
工作機械の設計は「総合格闘技」である。機械工学の基盤となる四力(材料・機械・熱・流体)+制御の知識を総動員して行う必要があるからだ。
本書は「部品を加工する」ことを出発点として、それに必要な工作機械とはどのようなものか、また、工作機械と「四力+制御」がどのように関わっているのかを考える入り口を示してくれる(残念ながら流体力学についての記述はないが)。
もちろん、本書だけで設計のすべてを習得できるわけではないが、これから生産加工や工作機械を学ぼうとする学生にとって、大きな助けとなるはずだ。一人でも多くの学生に、工作機械の設計へ興味を持ってもらえたらと願っている。
読者モニターレビュー【 ビクトール 様(業界・専門分野:機械工学)】
生産加工学や工作機械に関する専門的な知識のみならず、それらに関連する振動工学や材料力学、制御工学そして熱力学の基礎知識の復習もでき、非常に読みやすかった。生産加工・工作機械学といっても、材料を成形する時の加工技術から、ロボットを始めとする工作機械の適切な制御技術まで、幅広い技術を取り上げ紹介しているところが特に良かった。メーカーの生産技術職や、工作機械メーカーへの就職を視野に入れている機械系の学生はぜひ読んでおくべき一冊であると感じた。
読者モニターレビュー【 overload 様(業界・専門分野:機械工学(特に機械工作))】
本書は、機械工学における主要学問分野の一つである、機械工作法・生産加工学のうちで、大量高速高能率生産、多品種少量(高品質)生産、試作や機械部品・機械要素の修理修復など一点モノの製作、あるいは他の生産技術である塑性加工(鍛造)や射出成形・鋳造などにおいて必須である金型の製作のいずれでもコアな技術であるという点で、最も重要な生産技術(除去加工)である切削加工を中心として、その周辺技術としての(切削型)工作機械、CAM、生産システム、研削研磨についても扱われている一冊になります。ふた昔前くらいまでは主にコンピュータの性能や価格、使いにくさの問題から、実験的な切削加工に関する研究開発とコンピュータを駆使した(CAD/CAE/)CAM・シミュレーション技術に関する研究開発との分断が大きかったようですが、近年のコンピュータの爆発的な高性能化と低価格化による普及、社会全体のコンピュータリテラシー向上もあって1研究室・研究チーム(あるいは個人)レベルで実験とシミュレーションそれぞれのアプローチを突き合わせることが可能になってきたようですが、そんな現代的な事情が反映された機械工作法・生産加工学のテキストといえそうです。
機械工作法・生産加工学についての科目は、機械工学がメカトロやVR技術などにも裾野を広げ続けている中にあって、ふた昔前よりかはどこの大学・高専等教育研究機関でも減らされている傾向にあるらしいですが、その中でも半期2セメスター四半期4ターム程度は機械工作法・生産加工学関連科目を設けられ得るとして、本書を主に用いる講義科目の前に、出来れば難しい数学や物理学の素養を必ずしも前提としない知識としての機械工作法・生産加工学に関する科目として、例えば「機械工作法(増補)(機械系 教科書シリーズ 3)」(平井 三友・和田 任弘・塚本 晃久 著、コロナ社)や「はじめての生産加工学1 基本加工技術編」(帯川 利之・笹原 弘之 編著、講談社)などを主なテキストとして用いた科目が事前に半期1セメスターあるいは四半期2タームくらいの時間で開講されていると、本書で網羅できていない溶接(あるいはその現在進行形の発展形である積層造形(Additive Manufacturing,AM)技術)、鋳造、鍛造(塑性加工)、射出成形などをカバーできて良いかもしれません。
上述の事情や、機械力学(振動学)、伝熱(工)学、制御工学といった他の機械系主要科目を事前に学んでおいた方が理解がスムーズな箇所が少なくない、という意味では、本書は学部3年次学生向けの授業用テキストを主な使途として編纂されたとのことですが、本書ベースの講義を開講するとしたら3年次後期(第2セメスター、第3・4ターム)くらいが妥当かなとは思います。そのような事情もあるので、無理に学部での講義で本書レベルの内容を教授しようとせず、大学院博士前期(修士)課程の生産加工・工作機械学特論とでも言えそうな授業科目用テキストとしても通用し得ると思います。その場合は必ずしも機械系学科出身者だけでなく、振動・波動論や制御工学くらいは学部で習得している可能性のある電気電子系・情報系・化学工学系あるいは(理論系はともかく)実験系では実験装置の設計製作運用に当たって高度に工学の素養が求められる理学系などの学生に門戸を広げても良さそうです。
あとは各章末の演習問題や例題では、十数年くらい前のものですが過去の院試(おそらく修士課程)の過去問ベースの問題が幾つも挙げられているので、いわゆる院試(修士課程だけでなく博士課程でも)対策でも有用な可能性があります(もっとも、近年の院試は数学+機械系専門科目(いわゆる4力(材料力学・熱力学・機械力学(振動学)・流体力学)+制御工学の中から幾つか選択)+英語の外部試験スコア(TOEICなど)提出+口頭試問、といった具合に筆記試験の(専門科目)選択の幅が狭まっている大学も少なくないと聞くので、機械工作法・生産加工学に準ずる科目で院試を受けられる大学院はあまり多くないかもしれませんが)。
本書で事実上扱われていない放電加工、レーザー加工、AM技術などについては「はじめての生産加工学2 応用加工技術編」(帯川 利之・笹原 弘之 編著、講談社)などで言及があるので、もし各生産技術についてより網羅的な講義が求められる場合にはそちらを副読本・参考図書に加えても良いかもしれません。
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関連資料(一般)
- 章末問題解答













