大学講義テキスト 古典制御

大学講義テキスト 古典制御

古典制御の概念や定理を,数値例や図を多用し丁寧に解説。復習と演習問題で学習効果アップ

ジャンル
発行年月日
2020/04/13
判型
A5
ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-03228-4
大学講義テキスト 古典制御
在庫あり

定価

2,860(本体2,600円+税)

カートに入れる

購入案内

  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

初めて出会った事柄に対して,「なぜだろう」,「どうしてだろう」と思うことで,それをより深く知ろうとする行動に移る。知的活動はその繰り返しである。

古典制御の講義では,「ラプラス変換を道具として,システムを伝達関数G(s)で表す」と宣言され,ラプラス変換の定義式と伝達関数の求め方を習う。
すると,当然のごとく疑問がわく。「ラプラス変換の定義式はどこから来たのだろう?」,「なぜ,伝達関数で表現するんだろう?」などなど。受講生がそう思っていることを講義担当者は気が付いていない。

「部分分数にするには,ヘビサイドの展開定理を使うと便利である。その使い方は・・・」と紹介され,すぐに数値例で説明される。
すると,当然のごとく疑問がわく。「どうしてヘビサイドの展開定理でうまく計算できるの?」,「重根があるときはそのまま適用できないけど?」などなど。受講生がそう思っていることを講義担当者は気が付いていない。

また,「周波数応答を調べるには,伝達関数G(s)のsをjωに置き換える。このG(jω)を周波数伝達関数という」と,一気にまくし立てられる。
すると,当然のごとく疑問がわく。「なぜ,sをjωに置き換えるの?」,「周波数応答と周波数伝達関数はどうちがうの?」などなど。受講生がそう思っていることを講義担当者は気が付いていない。

上記の事柄は,古典制御の前半の講義内容である。このときの「なぜだろう」,「どうしてだろう」が不幸にも解決・解消できなければ,とたんに勉強意欲を無くしてしまう。

本書は,受講生が疑問に感じることを丁寧に解説している。「なんだ,そういうことか」,「これでわかった。すっきりした」と満足いただけるに違いない。気配りが隅々にまで行き届いた本書は,講義テキストのみならず独学書としても存在感のある1冊に仕上がっている。

制御工学は,身近な家電製品から,自動車,電車,化学プラント,人工衛星に至るまで,幅広い分野で活躍する「横糸」学問である。したがって,大学工学部に属するほとんどすべての学科において制御工学の講義が学部2年生の専門基礎科目として配当されているのが現状である。

制御工学が対象とするものを一言でいえば,動く人工物すべてである。そこで,それらのダイナミクスを数式で表現して一般化し,数学を道具に特性解析と制御系設計を行う。大学の講義を受けたとき,内容が進むにつれて専門用語や概念がつぎつぎに出てくるため,定義や内容を覚えるのに精一杯になり,「木を見て森を見ず」のごとく,全体像を見失ってしまいがちである。なんとか単位を取得できたとしても,はっきりと理解できた部分とぼんやりした部分が混ざり,全体としてはまったく自信がないという履修者の声をよく聞く。

講義を担当している者は,自身が研究室に配属された学部4年生から数えると制御工学の専門家として20年,30年のキャリアを有している。あり余る知識を持っていることで,必要以上に補足説明が長くなる場合,脱線して余計なことを喋ってしまう場合などがあり,聴講している学生にとってよかれと思ってのことが,逆に迷惑となってしまうのが事実であろう。すべての講義担当者がそうであるとはいわないが,少なくとも私はこれに相当する。

この反省から,大学講義の教科書を執筆したいという願望が生まれた。学部2年生に制御工学の基礎を教授しようとするとき,半年間で学ぶにふさわしい量とレベルであるのはもちろん,きっちりと体系化されていなくてはならない。すなわち,なにを教え,なにを割愛するか。また,選択した内容については,それぞれをどの程度深く教え,かつ,それらの関連性をどう伝えると全体像が見えるかに工夫すべきである。

本書「大学講義テキスト 古典制御」は,大学の講義を意識して14章からなっている。制御工学の基礎を学ぶのに必要最小限の内容に厳選したうえで,概念や定理の解説をわかりやすく丁寧にしている。また,数値例や図を多用して,定理や法則の使い方の習得を容易にしているなど,制御工学の基礎が効率的に身に付くようにさまざまな工夫を凝らしている。

厳選された内容とそれらを理解させるために編み出した工夫は,著者が助教授となって制御工学の授業を担当して以来,30年間もの長きに渡って継続して講義してきた成果であるといえよう。著者は毎回の講義において,最初の10分間を使って前回の復習を行うのがつねであった。1週間ぶりに本講義を受ける学生に,前回の講義の内容を思い出させたあと,今日講義する内容とその位置づけを説明してから本題に入るのである。この講義のやり方を本書に反映することをねらって,各章の冒頭と末尾に少しずつページを割いている。

本書の特長をもう一つ挙げるとすれば,それは構成である。大学の講義回数に合わせて14章からなっていることは,先に紹介した。また,各章は意識して細かく分割しており,節の数は2~4である。この節がテーマに当たる。各テーマは「基本部分」と「さらに詳しく」の2部に分かれている。講義においては,「基本部分」を押さえたうえで,学生の反応と残り時間を見ながら,必要に応じて「さらに詳しく」を教授して頂きたい。あるいは,学生の自宅学習の材料として提供するのでもよかろう。この場合は,ミニテストを実施して自宅で勉強したか否かを確認することをお勧めする。上記のように,各節に設けた「さらに詳しく」の取扱いは,講義担当者の裁量にお任せしたい。

大学講義の教科書として十分に満足いただけるものを執筆できたと確信している。さらには,講義の副読本としてあるいは大学院入試の際の復習本としての利用も意識して執筆した。制御工学の基礎が丁寧にまとめられている本書が,制御工学を学ぼうとしている人たちに勉学の意欲と勇気を少しでも与えることができれば,著者にとってこれほど幸せなことはない。

2020年3月  森 泰親

1.システムと制御
 はじめに
1.1 制御とは
1.2 フィードバック制御とフィードフォワード制御
1.3 システムの記述
 まとめ,章末問題

2.ラプラス変換
 はじめに
2.1 代表的な時間関数のラプラス変換
2.2 ラプラス変換に関する性質と定理
2.3 ヘビサイドの展開定理
2.4 微分方程式を解く
 まとめ,章末問題

3.伝達関数
 はじめに
3.1 信号の伝達
3.2 時間応答から伝達関数を計算する
3.3 伝達関数から時間応答を計算する
3.4 入力信号から出力信号までの伝達関数
 まとめ,章末問題

4.ブロック線図
 はじめに
4.1 ブロック線図の導入
4.2 等価変換
4.3 入力信号から出力信号までのブロック線図
 まとめ,章末問題

5.周波数応答
 はじめに
5.1 周波数応答とは
5.2 ベクトル軌跡
 まとめ,章末問題

6.ボード線図
 はじめに
6.1 ボード線図とは
6.2 基本要素のボード線図
6.3 二次遅れ要素のボード線図
6.4 ボード線図を折れ線近似を使って手で描こう
 まとめ,章末問題

7.過渡特性と安定性
 はじめに
7.1 一次遅れ要素
7.2 二次遅れ要素
7.3 複素平面における極の位置と過渡応答
 まとめ,章末問題

8.ラウス・フルビッツの安定判別法
 はじめに
8.1 ラウス・フルビッツの安定判別法
8.2 特殊な場合への対応
8.3 補助方程式
8.4 設計への応用
 まとめ,章末問題

9.ナイキストの安定判別法と安定度
 はじめに
9.1 ナイキストの安定判別法
9.2 ゲイン余裕と位相余裕
9.3 設計への応用
 まとめ,章末問題

10.定常特性
 はじめに
10.1 目標値変化に対する定常偏差
10.2 外乱印加に対する定常偏差
 まとめ,章末問題

11.制御器の設計
 はじめに
11.1 進み遅れ補償器
11.2 PID制御
11.3 2自由度制御
 まとめ,章末問題

12.部分的モデルマッチング法
 はじめに
12.1 設計思想
12.2 PID制御
12.3 I-PD制御
 まとめ,章末問題

13.根軌跡法
 はじめに
13.1 作図の基本ルール
13.2 数値例
 まとめ

14.総合演習
 はじめに
14.1 設計例①:安定判別法を用いて制御系を安定化する範囲を求める
14.2 設計例②:フィードバック制御の効果を定量的に評価する
14.3 設計例③:閉ループ系の固有角周波数,減衰係数を決める
14.4 設計例④:電気回路でPID制御装置を作る
 まとめ

参考文献
章末問題の解答
索引

Amazonレビュー

森 泰親

森 泰親(モリ ヤスチカ)

讃岐うどんで有名な香川県生まれです。小学生,中学生の頃は,臨海学習と称して,授業の一環で瀬戸内海の海水浴場にバスで泳ぎに行きました。6万石の丸亀城の脇にある県立丸亀高校を卒業して,早稲田大学に入学,ここで9年間学びました。

学位取得後すぐに東芝に入社し,総合研究所エネルギー機器研究所に配属されました。最初の仕事は,制御系設計CADシステムの開発でした。その後は,具体的な対象の制御系設計を担当しました。一番小さな対象は,CDプレーヤーの読み取りレーザー光の位置制御。大きな対象は,化学プラント。特殊な対象としては,試験衛星ETS-6でした。ETS-6の制御系設計では,航空宇宙技術研究所(NAL),宇宙開発事業団(NASDA)の研究員とチームを組んで取り組みました。

7年後に東芝を退職して大学の助教授になりました。定年退職するまでの30年間,大学において教育と研究に携わり,東芝での実務経験から,「技術は実際に適用されて評価される」を大切にしました。新しい設計理論の展開においても,具体的に制御対象を設定してから取り組みました。陸海空の乗り物と化学プラント,それにロボットを対象に,色々な制御手法を改良しながら適用しました。

学会活動においては,制御分野はもちろんのこと,計測自動制御学会SICE City委員会委員長,研究環 生きがい都市構築委員会委員長なども務めました。

興味対象が広くて,いろいろと手を出しては首を突っ込んだために,時間が足らない時期が長くありました。マレーシアで開催の委員会参加に,片道8時間,ホテル1泊で済ますこともしばしばで,当時は大変でしたが,これも楽しい思い出となりました。

趣味は,映画鑑賞と園芸です。しっかり,シニア料金で観に行きます。

掲載日:2020/03/16

「計測と制御」2020年3月号広告