電気回路・システム入門

電気回路・システム入門

  • 齋藤 正男 東大名誉教授・東京電機大名誉教授 工博

回路理論が電気工学の基礎として,また工学システムの理解に重要であるとの立場から,多様な学力の学生を想定し,電気回路の基本概念から過渡現象,正弦波交流回路,相互インダクタ,4端子網などの高度な理論の入り口まで記述した。

ジャンル
発行年月日
2006/10/13
判型
A5
ページ数
212ページ
ISBN
978-4-339-00784-8
電気回路・システム入門
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

回路理論が電気工学の基礎として,また工学システムの理解に重要であるとの立場から,多様な学力の学生を想定し,電気回路の基本概念から過渡現象,正弦波交流回路,相互インダクタ,4端子網などの高度な理論の入り口まで記述した。

まえがき

電気回路の理論は電気工学一般の基礎としてきわめて重要である。また電気回路理論は簡単明瞭であり,力学,熱,輸送,社会現象など,広い範囲のシステムを表現し解析するために利用される。電気系の学生は電気回路を深く勉強し,電気現象を実感つきで理解し,計算能力も備える必要がある。また電気系以外の広い専門範囲の学生は,電気回路の基礎を理解すれば,それぞれの分野で知識を深めることができる。

電気回路理論は広く工学一般に応用されるものであり,工学システム理論の基礎として位置づけられるべきものである。その一方では,従来どおりに電気回路自体の計算を重視した講義も行われている。現在多くの大学の講義は,この二つの流れの妥協点を探りつつ進んでいる。

著者は上記のような電気回路講義の変革期を含み数十年間,十校近くの短大,学部,大学院などで電気回路,システム理論の講義を担当した。講義の志向するところは大学ごとにさまざまであるが,学生の基礎学力,意欲,進路もさまざまであり,教師の主義主張だけで講義をしても学生はついてこない。広い範囲の学生に対応できる教科書が必要であると感じてきたが,今回コロナ社のご理解により世に問うこととなった。

この教科書は,学力の低い学生は自習に使い,また意欲ある学生は考えることを学び,高度の理論の入り口まで進む形にしてある。13章に分かれているが,1章を1コマの講義というのではなく,学生の学力や他教科との関連を考えて,各章・節の中でも内容を取捨選択して講義し,例題を試みるようにお願いする。

章末の演習問題も,だいたいにおいて易しいものから難しいものへ並べてあり,学力に応じて選んでほしい。著者は,問題の意味を考えずに計算能力を鍛える方式には賛成しない。各章末の演習問題だけでも理解に十分だと考える。しかし種々の資格試験を目指す人たちには,並行して自分の能力に合った問題集で勉強することをお勧めする。

なお回路素子の記号については,最近国際規格に準じて日本工業規格(JIS)が改定された。この本も原則として新記号を用いている。しかし回路理論を深く勉強する人たちは,古典の中で使われている旧記号も理解しなければならない。新旧記号の大きな相違点については,そのつど脚注で説明した。

コロナ社の方々には出版のお世話をいただいた。ご努力に感謝するとともに,この教科書が,いろいろな意味で実力と講義のミスマッチに悩む学生諸君の役に立つことを願っている。

2006年9月
斎藤正男

1.電気回路の基礎概念
1.1 電気の流れ
1.2 高さということ
1.3 流れの強さ
1.4 電気は仕事をする
1.5 電気抵抗
1.6 電圧の性質
1.7 電流の性質
1.8 エネルギーと電力
1.9 電源
1.10 単位と有効数字
1.11 理想化とモデル
演習問題

2.電気回路の計算
2.1 記号と回路図
2.2 抵抗の電圧・電流
2.3 キルヒホッフの電流則
2.4 キルヒホッフの電圧則
2.5 電圧・電流の決定
2.6 電力の計算
演習問題

3.直観的な技法
3.1 簡単な接続
3.2 抵抗の直列接続
3.3 抵抗の並列接続
3.4 計算練習
3.5 電圧・電流が0の場合
3.6 対称性の利用
演習問題

4.回路方程式
4.1 グラフ
4.2 閉路電流
4.3 閉路方程式
4.4 節点方程式
4.5 電源の問題
4.6 電源の描き換え
4.7 解の存在
4.8 未知数の取り方
4.9 平面上の回路
4.10 木と補木
演習問題

5.電気回路の性質
5.1 回路の重ね合わせ
5.2 線形性
5.3 重ね合わせによる計算
5.4 鳳・テブナンの定理
5.5 鳳・テブナンの定理の応用
5.6 相反の定理
5.7 最小原理
演習問題

6.変化する電圧・電流
6.1 状態の変化
6.2 回路素子
6.3 キャパシタ
6.4 インダクタ
6.5 基本式のまとめ
6.6 過渡現象の方程式
6.7 微分方程式について
6.8 微分方程式の解法
6.9 固有振動
6.10 固有振動の求め方
演習問題

7.過渡現象の計算
7.1 初期条件
7.2 過渡現象の解釈
7.3 重要なパラメータ
7.4 蓄えられるエネルギー
7.5 不連続な変化
7.6 状態方程式
演習問題

8.正弦波の表現
8.1 直流と交流
8.2 正弦波交流
8.3 複素数
8.4 複素数の計算
8.5 オイラーの式
8.6 極座標表示
8.7 正弦波の複素数表示
演習問題

9.正弦波交流回路
9.1 正弦波解の意味
9.2 正弦波交流回路の計算
9.3 インピーダンス
9.4 正弦波交流回路の例題
9.5 ベクトル図
9.6 正弦波の電力
9.7 複素数による電力計算
9.8 電力計算の例題
演習問題

10.相互インダクタと変圧器
10.1 コイルと磁束
10.2 相互インダクタ
10.3 相互インダクタを含む回路
10.4 磁気回路
10.5 変圧器
10.6 変圧器を含む回路
10.7 エネルギーの授受
10.8 固有振動
演習問題

11.4端子網
11.1 4端子網とは
11.2 4・端子網の表現
11.3 Y,Z,F行列
11.4 相反性
11.5 その他の行列
11.6 4端子網の計算
演習問題

12.電圧・電流の変換
12.1 対称分と反対称分
12.2 3相交流
12.3 3端子網と不定Y行列
12.4 電圧・電流と波動
12.5 2端子素子の場合
12.6 S行列
演習問題

13.1次および2次の回路
13.1 1次回路の過渡特性
13.2 1次回路の周波数特性
13.3 伝達関数ベクトル
13.4 周波数特性と過渡応答
13.5 2次回路の固有振動
13.6 共振現象
13.7 共振回路の周波数特性
13.8 共振特性の鋭さとQ
13.9 共振回路の計算
13.10 共振回路のエネルギー
演習問題

演習問題略解
索引

齋藤 正男(サイトウ マサオ)