電気回路・システム特論

電気回路・システム特論

  • 齋藤 正男 東大名誉教授・東京電機大名誉教授 工博

本書は,システム表現の手段として電気回路を扱った好評の「電気回路・システム入門」の上位の教科書の内容となっている。システム論の骨組みを解説し,学生が思索を楽しみ見識を広められるような話題を入れた。

ジャンル
発行年月日
2011/05/11
判型
A5
ページ数
160ページ
ISBN
978-4-339-00820-3
電気回路・システム特論
在庫あり

定価

2,420(本体2,200円+税)

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本書は,システム表現の手段として電気回路を扱った好評の「電気回路・システム入門」の上位の教科書の内容となっている。システム論の骨組みを解説し,学生が思索を楽しみ見識を広められるような話題を入れた。

電気回路理論の歴史は古い。オーム則やキルヒホッフ則以来,素子の正値性のゆえに回路構造と関数論的表現が見事に対応づけられた。第二次大戦の前後には,「紙と鉛筆」しかない研究者たちがこの理論的問題に情熱を燃やし,線形受動回路と正実関数を主体とする数学体系がほぼ完成した。

しばらくの間,電気回路論は通信工学をはじめ多くの関連工学分野で活用された。しかし予想されたことだが,コンピュータが普及すると,回路解析・設計法,実現可能性の判定,最適化など多様な技法が,コンピュータの腕力に頼る「計算してみればよい」という気分に覆い隠されてしまった。

一方,工学教育の見直しの中で,より普遍的な視野を目指す動きが起きた。その一つとして,電気,制御,機械,土木などの人工システム,あるいは水の流れ,地形の変化などの自然システムに対して,「システムの根底にある共通の特性を理解した上で,個々の事情を論じるべきだ」とする「工学システム論」が芽生えた。しかしその意義をはっきり認識している人は少ない。広い視野を目指すのは大変結構なことだが,いまの学生諸君は入試勉強のときの姿勢のまま,あるいは資格の獲得を目指して,「何を学ぶべきか」などと考えることなく流されている。

最近はメーカーの中堅技術者の相談に乗ると,システム理論の知識が非常に貧弱なことに驚く。現象の本質を見ずにコンビュータ任せで仕事の経験を重ねているが,新しい発展を競うときには,底力がなければ競争に勝てない。技術開発を競う人は,もっと広い視野と洞察力を持って仕事をしてほしい。

システム理論とは単にデータをまとめることだと考える人が多く,そのような講義によく出会う。しかし安定,受動,固有振動,自由度,閉じた性質…といった基本概念を理解することが,本当は重要である。それがない人は,「やってみなければわからない」手探りの世界にいる。ここで電気回路理論は,法則や特性を簡明に記述できるので,多様な基本概念とシステムを表現する共通言語として用いられ,その意味できわめて重要である。

私は数十年にわたってそのような立場から多数の大学で,学部低学年には初等電気回路理論,学部高学年あるいは大学院学生には電気回路特論や工学システム論の講義を担当してきた。しかし最近の学生は,体系の整った講義や定理の証明などを丁寧に話しでも,ついて来ずに眠るだけである。いっぽう,ものの観方としてのシステム理論には興味がある。厳密な話は抜きにして,観光バスから景色を眺めるような大まかな話をすると,「そういうものなのか」と関心を持ってくれる。その程度でよいのかもしれない。

これらの状況を意識し長年の講義経験を基にして,低学年向きには自分の入門書を改訂し,自信作として「電気回路・システム入門」(コロナ杜,2006)を発刊した。しかしその上位の教科書としては適当なものがない。現役のときには自分の古い著作,「回路網理論入門」(東京大学出版会,1967)を使い,省いたり補足したりして講義を進めた。しかし退職すると,長年工夫してきた講義をいま風に整理しておくのもよいと思いついた。

この本は,電気関連学科に限らず,電気回路理論あるいはシステム理論の初歩を学んだ一般の理工系学生諸君を想定し,システムの基本概念について考え,理解を深めることを目的としている。文中に出てくる問題は計算練習のためではない。自分で考え,仲間と討議する材料として利用してほしい。巻末に多少の「ヒント」が用意しである。決意をして鉢巻きで机に向かうような姿勢でなく,暇をみて軽い気持ちで勉強してほしい。

今回の出版でもコロナ杜の方々に大変お世話になった。御好意と御努力に感謝する。そしてこの本が,若者たちに新鮮な刺激を与えることを期待する。

2011年2月
斎藤正男

1.基本的事項
1.1 洞察力が必要
1.2 システムとは
1.3 電気回路は共通言語
1.4 理想化とモデル
1.5 素子の定義
1.6 素子・システムの分類

2.大局的性質と分類
2.1 線形性
2.2 時変と時不変
2.3 集中定数と分布定数
2.4 受動性と能動性
2.5 無損失性
2.6 相反性
2.7 閉じた性質

3.システムのモデリング
3.1 アナロジー
3.2 物理的法則の対応
3.3 空間構造の保存
3.4 さまざまな制約
3.5 システム方程式
3.6 解の存在と一意性
3.7 状態方程式

4.固有振動と安定性
4.1 解法と解釈
4.2 固有振動
4.3 安定性の基本概念
4.4 フルビッツ多項式
4.5 固有振動の数
4.6 隠された固有振動

5.システムの複雑さ
5.1 空間構造
5.2 木と補木
5.3 回路方程式との関係
5.4 回路関数の複雑さ
5.5 次数の拡張

6.受動システム
6.1 受動性と安定性
6.2 実部の正値性
6.3 正実関数
6.4 虚軸上の極
6.5 虚軸に近い極
6.6 正実関数の偶関数部
6.7 正実行列
6.8 正実関数の実現問題

7.2種素子システム
7.1 無損失システム
7.2 リアクタンス回路の構成
7.3 リアクタンス関数の性質
7.4 フルビッツ多項式とリアクタンス関数
7.5 抵抗終端リアクタンス回路
7.6 リアクタンス回路と伝送零点
7.7 RC回路網と共通帰線
7.8 RC回路網の基本的性質
7.9 RC伝達関数の性質
7.10 梯子形回路の拡張
7.11 変圧器なし共通帰線の問題

8.波動の概念
8.1 入射波・反射波
8.2 定義の変更
8.3 s関数
8.4 S行列への拡張
8.5 伝達関数の構成
8.6 伝達関数の実現可能性
8.7 システムの表現可能性

9.能動システム
9.1 能動性の概念
9.2 エネルギー発生の原理
9.3 エネルギー変換
9.4 能動回路の解析
9.5 フィードバック
9.6 回路関数の修飾
9.7 能動性と解の存在
9.8 ヌレータとノレータ
9.9 適度,過大,過小独立
9.10 方程式との関係

10.非相反システムと信号線図
10.1 相反システム
10.2 能動非相反システム
10.3 受動非相反システム
10.4 一方向性の表現
10.5 信号線図の作成
10.6 信号線図の解析
10.7 伝達関数の公式
10.8 信号線図についての注意

11.安定な関数
11.1 安定性の判定
11.2 開ループによる判定
11.3 還送差による判定
11.4 ナイキストの判定法
11.5 1次関数の軌跡
11.6 実部と虚部
11.7 振幅特性と位相特性

12.時変システム
12.1 多周波数成分
12.2 正弦波の複素数表示
12.3 時変システムの計算
12.4 周波数変換と能動性
12.5 不連続な変化

13.非線形システムの動作
13.1 状態方程式による解析
13.2 整流素子
13.3 位相面
13.4 位相面解析の例
13.5 過度の簡単化
13.6 定常波形の近似計算
13.7 振動の立上り

文献
問題のヒント
索引

齋藤 正男(サイトウ マサオ)