改訂 電気回路入門
電気回路に関連する学習科目の最近の傾向に即して,新しく「ものの考え方」を中心にしてまとめなおした入門書。改訂に際し,状態方程式などの不足分を補い,説明の細部を改良した。
- 発行年月日
- 1967/03/20
- 判型
- A5 上製
- ページ数
- 196ページ
- ISBN
- 978-4-339-00426-7
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
電気回路に関連する学習科目の最近の傾向に即して,新しく「ものの考え方」を中心にしてまとめなおした入門書。改訂に際し,状態方程式などの不足分を補い,説明の細部を改良した。
改訂版への序
本書の前身である「電気回路入門」がコロナ社から発刊されてから,すでに10年以上が経過した. 発刊当時には時代に先がけた教授方法を取り入れ,変わったスタイルだという批評を受けたこの本も,今となると少しも新しくはなく,逆に古い点が自につくようになった.
この10年間に明瞭に生じた変化としては,電気回路の講義が単に電気回路の知識を教えるものではなく,電子回路はもとより工学システム一般に対する基礎的解析法,設計法を教えるものになり,工学システムを扱う共通の「ことば」に昇化しつつある. その意味では,10数年前に本書を書いたときの方針は正しかったといえる.
安定性,アナロジー,信号線図などの手法を回路理論の講義の中に体系づけて教援することは,今日ではむしろ普通のことになってきている. もちろん,わが国の大学の中には,旧態依然とした講義を続けているところもあるけれども,それは問題としなくてもよいであろう.
しかし一方では,10年の聞にはこの本も細かな点で不足が目につくようになった. 特に電子計算機の普及に伴って,工学システムの解析と設計には大きな変化が生じた. この点では,電気回路理論からの思考方法は,最適化,ランダムシミュレーションなどの計算法の技術と協力しなければならない立場にある. この面では,回路理論の講義にはまだまだ大きな変化があるであろうが,計算機だからといって,力づくで計算をするのではなく,回路理論の基本的思考方法を背景にした見通しのよい問題解決の態度が,実は必要である. その意味では,回路理論の大筋の教援法には変化がないと思う.
今回の改討では,旧版の基本方針はそのまま保ちつつ,状態方程式などの不足分を補い,また説明の細かし、点に改良を加えた. この改訂によって,今後10年位の使用には耐えられるのではないかと思う.
改訂の準備に当たっては,数え切れないほど多くの方々から,講義の経験を通しての貴重な御意見をいただいた. ここに厚く感謝の意を表したい. また,改訂作業では,コロナ社横尾一彦氏が大いに努力された. 併して謝意を表したい.
昭和56年1月
齋藤正男
初版のまえがき
電気回路の理論は,線形な系の取り扱い方を習得するという意味で,電気工学においては,もっとも基本的で重要な課目であるが,学校で行なう講義は,限られた時間に多くの内容を盛り込むために,どうしても短期速成科的な教え方になってしまう. こればかりは電気屋を廃業しないかぎり,試験が済んだからといって縁を切るわけにはいかない. 職場に出てからでも,もう一度ゆっくりと電気回路の理論を見直していただけると幸いである.
この本は,初めて電気回路を学ぶ人たちの教科書や参考書として用いてもよいが,そのほかに実際の電気回路について少しばかり親しくなった人たちが,もう一度電気回路について考えてみるのに適当な書き方をしてある. かなり直観的な理解の仕方に重点を置いているから,これから電気回路の理論の専門家になろうとする人たちは,もっとしっかりとした書き方の書物へと進んでいっていただきたい.
電気回路の理論は,本来厳密に組み立てられるものであるが,徹底的に最後まで厳密に論じようとすると,大学の学部や大学院の講義の段階では済むものではない. また,いたずらに厳密さのためだけの議論が多くなって,読者にとってはあまりおもしろくない. そのようなわけで,いつも厳密に考えろと主張するのもあまり意味のない話である. たいていの電気工学家は,電気回路についての整理されたものの考え方,ある程度の計算技術,それに学問の領域としてどのようであるかというだいたいの見通しがあれば,じゅうぶんであろう.
さて,この本で扱っている段階では,電気回路でのものの考え方と計算の技術は,車の両輪のようなものであるから,両方とも身に付けていく心がけが必要である. たしかに理屈だけ知っていれば,あるていどは実際の問題をこなすこともできるが,それで勉強が終わりだと思っている人は,草野球出身の野球の評論家のようなもので,自分がバッターボックスにはいるとなかなか思うとおりにはいかぬものであることを痛感するであろう. 基本法則さえ知っていれば,あとはどういうふうに自己流で計算してもできるという態度ではなく,この本の説明に従って自分で紙と鉛筆を持って練習し,電気工学の専門家らしいすっきりした考え方と計算技術を身に付けてほしい. それはまた,自分の考え方を整理してもっと高度の理論へ進むための準備にもなることである.
この本の出版にあたっては,コロナ社社長藤田末治氏をはじめ,その他多くのかたたちのお世話になった. ここで厚くお礼を申し上げる.
1967年2月
齋藤正男
1.直流回路
1.1 電気回路の計算
1.2 キルヒホッフの法則
1.3 回路方程式
1.4 電圧源と電流源
1.5 重ね合せの理
1.6 相反の定理
1.A1 行列と行列式
演習問題
2.一般の回路
2.1 回路と微分方程式
2.2 回路方程式
2.3 状態方程式
2.4 初期条件
2.5 電力とエネルギー
2.6 相互インダクタンスと変圧器
2.A1 微分方程式
演習問題
3.正弦波交流回路
3.1 正弦波交流
3.2 正弦波交流回路の計算
3.3 電力の表現
3.4 対称座標法
3.5 ひずみ波交流
3.A1 複素数
3.A2 指数関数・三角関数・双曲線関数
3.A3 単振動
演習問題
4.フーリエ変換とラプラス変換
4.1 フーリエ変換
4.2 δ関数
4.3 ラプラス変換
4.4 ラプラス逆変換
4.5 伝達関数
演習問題
5.分布定数回路
5.1 線路の基本方程式
5.2 波動の伝搬
5.3 有限長線路
5.4 反射・定在波・スミスチャート
5.5 線路上の過渡現象
演習問題
6.四端子網
6.1 四端子網の表現
6.2 四端子網の接続
6.3 S行列
6.4 影像パラメータ
6.A1 行列と行列式の計算
演習問題
7.非相反回路網と能動回路網
7.1 受動非相反回路網
7.2 能動回路網
7.3 能動回路網の解析
7.4 能動回路網の安定性
演習問題
8.線形系の解析
8.1 線形系
8.2 機械振動系
8.3 信号線図
8.4 信号線図の解析
演習問題
あとがき
演習問題略解
索引