広域プラズマ科学入門 - プラズマ特性・診断の基礎と地上から宇宙までの多面的応用展開 -
基礎から応用までの広域プラズマ科学の全体像を多角的に解説。カラー口絵と文献も充実。
- 発行予定日
- 2026/08/上旬
- 判型
- B5
- ページ数
- 212ページ
- ISBN
- 978-4-339-06678-4
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
展開を続ける広域プラズマ科学の,基礎から先端的応用までを一冊で網羅。診断法も加え,幅広い視点からの解説によってプラズマ現象の多角的・体系的な理解が可能。発展内容についても詳細な説明を付し,レベルに応じて学習できる。
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
物質は温度が上がると,固体,液体,気体と状態が変化する。さらに高温になると,「プラズマ」と呼ばれる第4の状態となり,これは地上から宇宙に及ぶまで広い範囲で見られる。例えば,自然現象として観察できるプラズマとしては,地球から遠い宇宙へ向かって,火花,雷,オーロラ,電離層,太陽,恒星,銀河群/銀河団がある。より身近な例としては,ローソク,蛍光灯,ガス着火装置などがあり,プラズマが直接見えている。プラズマを応用した技術は,半導体(作製),環境(空気・水の浄化など),核融合(発電),プラズマを用いた電気推進ロケットや,最近では医療や農業関連まで,多くの領域に展開されており,現代生活に欠かせない。
すなわち,現在の「プラズマ」は,従来のプラズマ物理学,プラズマ工学,放電工学などの枠を超え,広域プラズマ科学と呼べるまでに発展しており,21世紀の重点研究分野とも密接に絡んでいる。しかし,このようにプラズマは重要な役割を果たしているにもかかわらず,他分野と比較して目立たず,基本的なプラズマの性質や物理現象については意外と知られていない。
本書は,このプラズマを基礎から丁寧に解説し,広域プラズマ科学分野に興味のある方々に役立つように留意した。おもな対象者として,大学学部3年生以上や大学院修士課程学生を想定している。また,プラズマ研究歴が浅い研究者や他分野の方にも役立つよう執筆した。本書を読む前提として,電磁気,力学,簡単な数学の知識がある事を期待しているが,基本的には,本書を読むだけで内容を理解できるようにした。例えば,電磁気や数学の基礎などは,付録にあるので参照できる。
本書では,幅広くわかりやすく,系統的な記述を目指した。さらに,従来の教科書とは異なり,執筆のうえで幅広い視点を保つよう留意し,特定の分野に偏った記述を避けた。プラズマの基礎分野を幅広く扱い,初学者が理解に困る点にもわかりやすい説明を加え,物理や自然科学分野の共通性や現象についても意識して記述している。低温プラズマの基礎・応用から,核融合で代表される高温プラズマまでに至る著者の長年の研究・教育経験をベースとして,限られた紙面の中で,理解しやすくかつバランスのとれた内容となるよう構成した。
また,入手しやすい文献(Webでダウンロード可能なものも含む)も多く引用,紹介した。便利なQRコード((株)デンソーウェーブの登録商標)も表示した。文献のURLは,すべて2026年6月時点での情報である。参照しやすいように,付録には実験例を含むユニークな解説,換算式,表や図なども盛り込んだ。他書ではほとんど見られないが,カラーの口絵で種々の分野の興味あるプラズマの例を紹介した。さらに,本書で扱う変数や記号については,途中から読み始めても理解しやすいように本書の冒頭にまとめている。もちろん,充実した索引も本書の最後に付した。
冗長を避けるため,補足的な説明は脚注に記している。内容は,追加の理解や簡単な問題・演習に役立つ式の変形,物理量の典型的数値,参考内容(進展した内容や最近の話題も含む)などである。さらに,読者の興味や学習背景によってはやや発展的で難しいかもしれない節や項には※記号を付して示した。逆に,より一層興味を持った読者には,多くの参考文献や脚注,※を付した節や項が発展的内容の学習に役立つと考えられる。読者のレベルと興味に応じて,取捨選択されたい。
今後の学習に役立つため,英語の学術表記も必要な箇所に挿入した。本書では基本的には国際単位系(SI)を用いたが,一部慣例(密度や圧力など)として,CGS系が使われているのは容赦されたい。電場/磁場については電界/磁界の表現もあるが,前者の「場」を用いた。磁束密度Bと磁場Hについては,単に磁場と書いた場合は,本書でも混同がなければBで使う場合もある。
本書の構成を簡単に述べる。1章から3章では,プラズマの基本的性質を紹介する。4章と5章では,プラズマの粒子と流体としての特長をそれぞれ解説し,発展的内容として6章と7章では,平衡と安定性,およびプラズマ波動についてそれぞれ説明した。類書では見られない特徴として,8章ではプラズマ診断,9章では種々のプラズマ研究の現状や展望について触れている。プラズマ基礎の入り口と,種々に展開されている現状をひとまず簡単に知りたい場合には,1章と9章をまず読むと参考になる。なお,本書は著者の英語専門書(High-Density Helicon Plasma Science–From Basics to Applications, Springer(2022))の前半部の,プラズマの基礎部分を参照しつつ,よりわかりやすく大幅に加筆・補筆した内容となっている。
執筆にあたり,貴重なコメントをいただいた,東海大学・谷川隆夫名誉教授,九州大学・羽田亨名誉教授/松清修一教授/諌山翔伍助教,中部大学・桑原大介准教授,神戸大学・古川武留助教の各先生に感謝します。口絵資料にご協力くださいました多くの方々にも謝意を表します。長年の私の研究・教育にご助言,ご協力をいただき支えてくださった方々,および多くの参考文献の著者の方々にもお礼を申し上げます。コロナ社には,最初から最後まで辛抱強くご尽力くださりお世話になりました。最後に,妻の長年のサポートに感謝する。
2026年6月
篠原 俊二郎
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
記号の説明
1.はじめに
1.1 多様に展開するプラズマの世界
1.2 プラズマ生成
1.2.1 種々のプラズマ生成法
1.2.2 定常ガス放電
1.2.3 AC・高周波・マイクロ波放電
1.3 プラズマにおける非線形性
1.4 温度換算および熱速度と波長の温度依存性
引用・参考文献
2.プラズマの基本的性質
2.1 プラズマ振動
2.2 デバイ遮蔽
2.3 結合係数,プラズマ条件,温度の概念
引用・参考文献
3.電磁場中の荷電粒子の運動
3.1 サイクロトロン運動
3.2 種々のドリフト運動
3.3 磁気モーメント
3.3.1 磁気モーメントの保存
3.3.2 ミラー磁場配位
3.4 三つの断熱不変量
引用・参考文献
4.磁気流体としてのプラズマ
4.1 マクスウェル輸送方程式とモーメント
4.2 磁気流体力学の方程式
4.3 簡単化した磁気流体力学方程式と磁気レイノルズ数
4.3.1 簡単化MHD方程式と電磁場のエネルギー
4.3.2 磁場の拡散と磁気レイノルズ数
4.3.3 簡単化MHDと理想MHDの方程式のまとめとMHD波
引用・参考文献
5.輸送現象
5.1 種々の衝突とプラズマ抵抗
5.1.1 衝突と平均自由行程
5.1.2 完全電離プラズマでのクーロン衝突
5.1.3 弱電離プラズマでの中性粒子との衝突
5.2 拡散パラメータ
5.3 両極性拡散
5.4 磁場を横切る拡散
5.5 円柱プラズマでの拡散と再結合
5.6 異常拡散
5.7 固体壁での条件
5.7.1 固体壁付近の電位構造とイオン速度
5.7.2 プラズマ-壁相互作用
引用・参考文献
6.プラズマの平衡と安定性
6.1 プラズマ平衡
6.1.1 平衡と安定性のイメージ
6.1.2 磁気流体力学的平衡
6.1.3 トーラス系の平衡
6.1.4 ベータと反磁性電流
6.2 プラズマ不安定性
6.2.1 不安定性の定義と解析法
6.2.2 トーラス系の不安定性
6.2.3 交換不安定性
6.2.4 ドリフト波不安定性
6.2.5 典型的な低周波不安定性のまとめ
引用・参考文献
7.基礎プラズマ波動
7.1 波動の基礎
7.2 冷たいプラズマの分散関係
7.3 冷たいプラズマでの波動特性
7.3.1 無磁場中の波動
7.3.2 磁場に平行な伝搬波
7.3.3 磁場に垂直な伝搬波
7.3.4 共鳴とカットオフ
7.3.5 典型的な波動のまとめとCMA図
7.4 種々のプラズマ波動現象
7.4.1 非一様性と境界の効果
7.4.2 波動のエネルギー
7.4.3 波動減衰・吸収機構
7.4.4 波動解析のための分類と特徴
7.4.5 熱いプラズマの分散関係
7.4.6 ナイキストの判定条件
7.5 高周波プラズマ源
7.5.1 容量性結合型プラズマ
7.5.2 誘導性結合型プラズマ
7.5.3 表面波プラズマ
7.5.4 ヘリコン波プラズマ
7.5.5 電子サイクロトロン共鳴プラズマ
引用・参考文献
8.プラズマ診断法
8.1 電気的測定
8.1.1 シングルプローブ
8.1.2 ダブルプローブ
8.1.3 トリプルプローブ
8.1.4 マッハプローブ
8.1.5 そのほかのプローブ
8.2 磁気的測定
8.2.1 磁気プローブ
8.2.2 ロゴスキーコイル
8.3 電磁波による測定
8.3.1 受動的な電磁波測定
8.3.2 能動的な電磁波測定
8.4 光と放射による測定
8.4.1 受動的な光と放射測定
8.4.2 能動的な光と放射測定
8.5 粒子による測定
8.5.1 受動的な粒子測定
8.5.2 能動的な粒子測定
8.6 データ収集と解析
引用・参考文献
9.広域プラズマ科学の展開
9.1 本書の内容のまとめ
9.2 現状と今後の展望
9.2.1 全体の概観
9.2.2 基礎分野
9.2.3 種々の応用分野
9.3 最後に
引用・参考文献
付録
A1 基本パラメータ(SI単位)
A1.1 物理定数
A1.2 プラズマでの便利な式
A2 有用な数学と物理の公式
A2.1 ベクトル公式
A2.2 ベクトル積分
A2.3 円柱座標での偏微分
A2.4 マクスウェルの方程式
A2.5 ベッセル関数と変形ベッセル関数
A3 波動解析用光線追跡法
A4 高周波を主とした実験システム
A4.1 実験システム例
A4.2 高周波システム
A4.3 インピーダンス整合
A4.4 アンテナ抵抗
A4.5 ノイズ除去
引用・参考文献
索引








