広域プラズマ科学入門 - プラズマ特性・診断の基礎と地上から宇宙までの多面的応用展開 -

広域プラズマ科学入門 - プラズマ特性・診断の基礎と地上から宇宙までの多面的応用展開 -

基礎から応用までの広域プラズマ科学の全体像を多角的に解説。カラー口絵と文献も充実。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2026/09/11
判型
B5
ページ数
212ページ
ISBN
978-4-339-06678-4
広域プラズマ科学入門 - プラズマ特性・診断の基礎と地上から宇宙までの多面的応用展開 -
在庫あり
2営業日以内に出荷致します。

定価

4,290円(本体3,900円+税)

カートに入れる

購入案内

  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

展開を続ける広域プラズマ科学の,基礎から先端的応用までを一冊で網羅。診断法も加え,幅広い視点からの解説によってプラズマ現象の多角的・体系的な理解が可能。発展内容についても詳細な説明を付し,レベルに応じて学習できる。

物質は温度が上がると,固体,液体,気体と状態が変化する。さらに高温になると,「プラズマ」と呼ばれる第4の状態となり,これは地上から宇宙まで広い範囲で見られる。例えば,自然現象として観察できるプラズマとしては,地球から遠い宇宙へ向かって,火花,雷,オーロラ,太陽,恒星,銀河群/銀河団がある。より身近な例としては,ローソク,蛍光灯,ガス着火装置などがあり,プラズマが直接見えている。プラズマを応用した技術は,半導体(作製),環境(空気・水の浄化など),核融合(発電),プラズマを用いた電気推進ロケットや,最近では医療や農業関連まで,多くの領域に展開されており,現代生活に欠かせない。

すなわち,現在の「プラズマ」は,従来の放電工学,プラズマ物理学,プラズマ化学などの枠を超え,広域プラズマ科学と呼べるまでに発展しており,21世紀の重点研究分野とも密接に絡んでいる。しかし,このようにプラズマは重要な役割を果たしているにもかかわらず,他分野と比較して目立たず,基本的なプラズマの性質や物理現象については意外と知られていない。

本書は,このプラズマを基礎から丁寧に解説し,広域プラズマ科学分野に興味のある方々に役立つように留意した。主な対象者として,大学学部3年生以上や大学院修士課程学生を想定している。また,プラズマ研究歴が浅い研究者や他分野の方にも役立つよう執筆した。本書を読む前提として,電磁気学,力学,簡単な数学の知識があることを期待しているが,基本的には,本書を読むだけで内容を理解できるようにした。例えば,電磁気学や数学の基礎などは,付録にあるので参照できる。

本書では,幅広くわかりやすく,系統的な記述を目指した。さらに,従来の教科書とは異なり,執筆のうえで幅広い視点を保つよう留意し,特定の分野に偏った記述を避けた。プラズマの基礎分野を幅広く扱い,初学者が理解に困る点にもわかりやすい説明を加え,物理学や自然科学分野の共通性や現象についても意識して記述している。低温プラズマの基礎・応用から,核融合で代表される高温プラズマまでに至る著者の長年の研究・教育経験をベースとして,限られた紙面の中で,理解しやすくかつバランスのとれた内容となるよう構成した。

また,入手しやすい文献(Websiteでダウンロード可能なものも含む)も多く引用,紹介した。便利なQRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)も表示した。文献のURLは,すべて2026年7月時点での情報である。参照しやすいように,付録には実験例を含むユニークな解説,換算式,表や図なども盛り込んだ。他書ではほとんど見られないが,カラーの口絵で種々の分野の興味深いプラズマの例を紹介した。さらに,本書で扱う変数などの記号については,途中から読み始めても理解しやすいように本書の冒頭に「記号の説明」としてまとめている。もちろん,豊富な索引も本書の最後に付した。

冗長を避けるため,補足的な説明は脚注に記している。内容は,追加の理解や簡単な問題・演習に役立つ式の変形,物理量の典型的数値,参考内容(進展した内容や最近の話題も含む)などである。さらに,読者の興味や学習背景によってはやや発展的で難しいかもしれない節や項には(※)記号を付して示した。逆に,より一層興味を持った読者には,多くの参考文献や脚注(†)および(※)を付した節や項が,発展的内容の学習に役立つと考えられる。読者のレベルと興味に応じて,取捨選択すると良い。

今後の学習に役立つため,英語の学術表記も必要な箇所に挿入した。本書では基本的には国際単位系(SI)を用いたが,一部慣例(密度や圧力など)として,CGS系が使われているのは容赦されたい。電場/磁場については電界/磁界の表現もあるが,前者の「場」を用いた。磁束密度Bと磁場Hについては,単に磁場と書いた場合は,本書でも混同がなければBで使う場合もある。

本書の構成を簡単に述べる。1章と2章では,簡単にプラズマを紹介する。3章と4章では,プラズマの粒子と流体としての特長をそれぞれ解説し,発展的内容として5章,6章,7章では,それぞれ輸送現象,平衡と安定性,およびプラズマ波動について説明した。類書では見られない特徴として,8章ではプラズマ診断,9章では種々のプラズマ研究の現状や展望について触れている。プラズマ基礎の入り口と,種々に展開されている現状をひとまず簡単に知りたい場合には,1章と9章をまず読むと参考になる。なお,本書は著者の英語専門書(High-Density Helicon Plasma Science–From Basics to Applications, Springer(2022))の前半部の,プラズマの基礎部分を参照しつつ,よりわかりやすく大幅に加筆・補筆した内容となっている。

執筆にあたり,貴重なコメントをいただいた,東海大学・谷川隆夫名誉教授,九州大学・羽田亨名誉教授/松清修一教授/諌山翔伍助教,中部大学・桑原大介准教授,神戸大学・古川武留助教の各先生に感謝します。口絵資料にご協力くださいました多くの方々にも謝意を表します。長年の私の研究・教育にご助言,ご協力をいただき支えてくださった方々,および多くの参考文献の著者の方々にもお礼を申し上げます。コロナ社の関係者には,最初から最後まで辛抱強くご尽力いただきお世話になりました。最後に,妻仁子の長年のサポートに感謝する。

2026 年 7 月
篠原 俊二郎

1.はじめに
1.1 多様に展開するプラズマの世界 
1.2 プラズマ生成 
 1.2.1 種々のプラズマ生成法 
 1.2.2 定常ガス放電 
 1.2.3 AC・高周波・マイクロ波放電 
1.3 プラズマにおける非線形性 
1.4 温度換算および熱速度と波長の温度依存性 
引用・参考文献

2.プラズマの基本的性質
2.1 プラズマ振動 
2.2 デバイ遮蔽 
2.3 結合係数,プラズマ条件,温度の概念 
引用・参考文献

3.電磁場中の荷電粒子の運動
3.1 サイクロトロン運動 
3.2 種々のドリフト運動 
3.3 磁気モーメント 
 3.3.1 磁気モーメントの保存 
 3.3.2 ミラー磁場配位 
3.4 3つの断熱不変量
引用・参考文献

4.磁気流体としてのプラズマ
4.1 マクスウェル輸送方程式とモーメント 
4.2 磁気流体力学の方程式 
4.3 簡単化した磁気流体力学方程式と磁気レイノルズ数 
 4.3.1 簡単化MHD方程式と電磁場のエネルギー 
 4.3.2 磁場の拡散と磁気レイノルズ数
 4.3.3 簡単化MHDと理想MHDの方程式のまとめとMHD波
引用・参考文献

5.輸送現象
5.1 種々の衝突とプラズマ抵抗 
 5.1.1 衝突と平均自由行程 
 5.1.2 完全電離プラズマでのクーロン衝突 
 5.1.3 弱電離プラズマでの中性粒子との衝突 
5.2 拡散パラメータ 
5.3 両極性拡散 
5.4 磁場を横切る拡散 
5.5 円柱プラズマでの拡散と再結合
5.6 異常拡散
5.7 固体壁での条件 
 5.7.1 固体壁付近の電位構造とイオン速度 
 5.7.2 プラズマ-壁相互作用 
引用・参考文献

6.プラズマの平衡と安定性
6.1 プラズマ平衡 
 6.1.1 平衡と安定性のイメージ 
 6.1.2 磁気流体力学的平衡 
 6.1.3 トーラス系の平衡
 6.1.4 ベータと反磁性電流 
6.2 プラズマ不安定性 
 6.2.1 不安定性の定義と解析法 
 6.2.2 トーラス系の不安定性
 6.2.3 交換不安定性 
 6.2.4 ドリフト波不安定性 
 6.2.5 典型的な低周波不安定性のまとめ 
引用・参考文献

7.基礎プラズマ波動
7.1 波動の基礎 
7.2 冷たいプラズマの分散関係 
7.3 冷たいプラズマでの波動特性 
 7.3.1 無磁場中の波動 
 7.3.2 磁場に平行な伝搬波 
 7.3.3 磁場に垂直な伝搬波 
 7.3.4 共鳴とカットオフ 
 7.3.5 典型的な波動のまとめとCMA図 
7.4 種々のプラズマ波動現象 
 7.4.1 非一様性と境界の効果
 7.4.2 波動のエネルギー
 7.4.3 波動減衰・吸収機構
 7.4.4 波動解析のための分類と特徴
 7.4.5 熱いプラズマの分散関係
 7.4.6 ナイキストの判定条件
7.5 高周波プラズマ源 
 7.5.1 容量性結合型プラズマ 
 7.5.2 誘導性結合型プラズマ 
 7.5.3 表面波プラズマ 
 7.5.4 ヘリコン波プラズマ 
 7.5.5 電子サイクロトロン共鳴プラズマ 
引用・参考文献

8.プラズマ診断法
8.1 電気的測定 
 8.1.1 シングルプローブ 
 8.1.2 ダブルプローブ 
 8.1.3 トリプルプローブ
 8.1.4 マッハプローブ
 8.1.5 そのほかのプローブ 
8.2 磁気的測定 
 8.2.1 磁気プローブ 
 8.2.2 ロゴスキーコイル 
8.3 電磁波による測定 
 8.3.1 受動的な電磁波測定 
 8.3.2 能動的な電磁波測定 
8.4 光と放射による測定 
 8.4.1 受動的な光と放射測定 
 8.4.2 能動的な光と放射測定 
8.5 粒子による測定 
 8.5.1 受動的な粒子測定 
 8.5.2 能動的な粒子測定 
8.6 データ収集と解析 
引用・参考文献

9.広域プラズマ科学の展開
9.1 本書の内容のまとめ 
9.2 現状と今後の展望 
 9.2.1 全体の概観 
 9.2.2 基礎分野 
 9.2.3 種々の応用分野 
9.3 最後に 
引用・参考文献

付録
A.1 基本パラメータ(国際単位系(SI)) 
 A.1.1 物理定数 
 A.1.2 プラズマでの便利な式 
A.2 有用な数学と物理学の公式 
 A.2.1 ベクトル公式 
 A.2.2 ベクトル積分 
 A.2.3 円柱座標での偏微分 
 A.2.4 マクスウェルの方程式 
 A.2.5 ベッセル関数と変形ベッセル関数 
A.3 波動解析用光線追跡法 
A.4 高周波を主とした実験システム 
 A.4.1 実験システム例 
 A.4.2 高周波システム 
 A.4.3 インピーダンス整合 
 A.4.4 アンテナ抵抗 
 A.4.5 ノイズ除去 
引用・参考文献

索引

読者モニターレビュー【 yk 様 (業界・専門分野:神経科学・臨床医療・宇宙物理)】

物理学者によるプラズマ物理の入門書であり、プラズマの生成と制御を支える原理を簡潔に概説した一冊である。プラズマとは一般に荷電粒子から成る多成分系を指すが、今日これは人工的に生成され、工学的に制御されている。本書はその基礎から応用までを一望できるよう構成されている。

プラズマを制御する―プラズマを操作し欲しい性質や挙動を実現させる―には、その状態を観測により推定する必要がある。これがプラズマ診断であるが、その方法としては本書に詳解されているように様々なものが提案されている。巧みなアイデアばかりで眺めるだけでも興味深いが、当然、どの方法を見てもプラズマ物理の理解が不可欠である。

本書ではボルツマン方程式を基礎に磁気流体方程式を導出し、プラズマ生成・制御に不可欠な性質を体系的に調べている。ボトムアップ的な理解を望む読者にとっては親切な構成である。ただ、未定義の記号を使用したり仮定が明言されていなかったりする箇所もあり、本分野の初学者は行間を埋めるのにやや忍耐を要するだろう。

読者層としてはプラズマを専門とする物理・工学の学生や研究者が想定されるが、個人的には物理の様々な分野の研究者に読んでほしい。プラズマ物理はこれまで、特に宇宙物理との相互作用が盛んであり続けてきた。恒星や高エネルギー天体現象の物理、コンパクト星におけるイオン結晶や圧力電離など枚挙に暇がない。いま、宇宙物理の研究者なら本書をどう読むか。境界領域において、新たな視点を提供しうる一冊であると思う。

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報一覧

篠原 俊二郎(シノハラ シュンジロウ)

掲載日:2026/09/10

応用物理学会誌「応用物理」2026年9月号

掲載日:2026/09/01

電子情報通信学会誌2026年9月号