金属ポルフィリン錯体を用いたバイオインスパイアード材料
生体を新たな材料開発の発想の源とする「バイオインスパイアード材料」の基礎から応用まで
- 発行年月日
- 2022/11/18
- 判型
- A5
- ページ数
- 186ページ
- ISBN
- 978-4-339-06663-0
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
- 広告掲載情報
『金属ポルフィリン錯体を用いたバイオインスパイアード材料』と題した本書は,血液のヘモグロビンのような哺乳類の酵素や金属タンパク質などの活性中心である金属ポルフィリン錯体に焦点を当て,関連する生物無機化学,バイオミメティックケミストリー(生体模倣化学)そしてバイオインスパイア―ド材料についてまとめたものである。
バイオインスパイアード材料とは,一般に生体分子,細胞,またそれらの集合体を含め,生体系を新たな材料開発の発想の源とする材料のことをいう。これはスーパーバイオシステムを構築する領域(生物が持つ優れた機能を人工の物質およびそれらの組み合わせで実現しようとする新しい化学の領域)で新しく提案された言葉であり,本領域では生体を発想の源とするさまざまな新しいバイオ材料およびそれらの関連材料の創製が目指されている。
バイオインスパイアード材料とは,一般に生体分子,細胞,またそれらの集合体を含め,生体系を新たな材料開発の発想の源とする材料のことをいう。これはスーパーバイオシステムを構築する領域(生物が持つ優れた機能を人工の物質およびそれらの組み合わせで実現しようとする新しい化学の領域)で新しく提案された言葉であり,本領域では生体を発想の源とするさまざまな新しいバイオ材料およびそれらの関連材料の創製が目指されている。
『金属ポルフィリン錯体を用いたバイオインスパイアード材料』と題した本書は,血液のヘモグロビンのような哺乳類の酵素や金属タンパク質などの活性中心である金属ポルフィリン錯体に焦点を当て,関連する生物無機化学,バイオミメティックケミストリー(生体模倣化学)そしてバイオインスパイア―ド材料についてまとめたものである。
本書では,まず,バイオインスパイアード材料の基本概念となる金属生体分子およびその機能,すなわち,物質輸送,物質貯蔵,物質認識および物質変換について解説し,それらに関連してバイオミメティックケミストリーやバイオインスパイアード材料の研究・開発について説明する。さらに,金属生体分子の模倣とその作動安定性について,その活性中心の基本となる錯体系(非大環状錯体系,大環状錯体系および高分子金属錯体系)について述べ,金属ポルフィリン錯体系の分類,命名法,合成法,構造,特性,性質および環境評価(例えばヘモグロビンなどは,活性中心である鉄ポルフィリン錯体が存在する内側は水に溶けにくい(疎水性である)タンパク鎖(グロビン鎖)に守られている環境だが,外側は水に溶けやすい(親水性である)ので,環境評価は重要となる)などについても説明する。その後に,四つのトッピクスとして
・金属ポルフィリン錯体による酸素分子の運搬・貯蔵(酸素分子の結合・解離平衡反応)
→バイオインスパイアード材料の例として,人工血液
・金属ポルフィリン錯体による酸素分子の還元(酸素分子の還元反応)
→バイオインスパイアード材料の例として,燃料電池酸素還元触媒
・金属ポルフィリン錯体による活性酸素の検出(活性酸素の酸化反応あるいは活性酸素の検出反応)
→バイオインスパイアード材料の例として,活性酸素センサー
・金属ポルフィリン錯体による活性酸素の利用(活性酸素の添加触媒反応)
→バイオインスパイアード材料の例として,抗酸化型抗がん剤
について述べる。
本書の執筆にあたり,企画の段階から内容の検討など,刊行に至るまで,コロナ社の方々に多くの助言をいただいた。コロナ社の関係諸氏に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
2022年9月
湯浅 真
1.金属生体分子の機能
1.1 金属生体分子とは
1.2 金属生体分子の機能
1.2.1 物質輸送
1.2.2 物質貯蔵
1.2.3 物質認識
1.2.4 物質変換
1.2.5 バイオミメティクスケミストリーからバイオインスパイアード材料へ
2.金属生体分子の模倣とその作動安定性
2.1 金属生体分子の模倣とは
2.2 非大環状錯体系
2.3 大環状錯体系
2.3.1 M-サイクラム錯体,M-ペンタアザシクロペンタデカン錯体
2.3.2 M-サレン錯体
2.3.3 M-ポルフィリン錯体
2.4 高分子金属錯体系
2.5 金属ポルフィリン錯体系の基礎
2.5.1 分類および命名法
2.5.2 合成法
2.5.3 X線結晶構造解析
2.5.4 特性と性質,および環境評価
コラム① DSCのデータ
コラム② A-P曲線のデータ
3.金属ポルフィリン錯体による酸素分子の運搬・貯蔵-酸素分子の結合・解離平衡反応-
3.1 ヘモグロビン・ミオグロビンの酸素分子の運搬・貯蔵
3.1.1 ヘモグロビン・ミオグロビンの酸素分子の結合・解離平衡
3.1.2 ヘモグロビン・ミオグロビンの酸素分子の結合・解離速度
3.2 金属ポルフィリン錯体による酸素分子の運搬・貯蔵認識
3.2.1 酸素分子の運搬・貯蔵とその代替物
3.2.2 酸素分子の運搬・貯蔵の代替技術
コラム③ リポソーム包埋ヘムのリバースボーア効果
コラム④ ストップドフロー測定のデータ
4.金属ポルフィリン錯体による酸素分子の還元-酸素分子の還元反応-
4.1 呼吸と呼吸鎖電子伝達系
4.2 シトクロムc酸化酵素の機能
4.3 シトクロムc酸化酵素のモデル系と燃料電池電極触媒としての利用(焼結系)
4.3.1 学術的な検討(モデル系)
4.3.2 これまでの図のまとめ
4.3.3 電極触媒を視野に入れた検討:熱処理によるCoPor/CおよびCoPPy/C系の応用展開
コラム⑤ カーボン表面のCo構造(Co-N4構造)が地球の未来を変える
5.金属ポルフィリン錯体による活性酸素の検出-活性酸素の酸化反応あるいは活性酸素の検出反応-
5.1 生体における活性酸素
5.2 金属ポルフィリン錯体-配位子系による活性酸素計測:活性酸素センサー
5.2.1 invivoリアルタイム測定
5.2.2 糖尿病ラットの前脳虚血再灌流試験
5.2.3 コリン作動性作動薬投与ラットの前脳虚血再灌流試験
5.2.4 中等度低体温症に関するラットの試験
3.2.5 子牛血液中の活性酸素計測
5.2.6 本活性酸素センサーの活用
コラム⑥ 健康で,長寿で,有意義な社会の実現に向けて
6.金属ポルフィリン錯体による活性酸素の利用-活性酸素の添加触媒反応:抗酸化型抗がん剤-
6.1 抗酸化型抗がん剤とは
6.2 現在使用されている抗がん剤
6.3 SOD-バイオインスパイアード材料とその分子設計:新規抗酸化型抗がん剤の検討
6.3.1 SOD-バイオインスパイアード材料とは
6.3.2 高分子系SOD-バイオインスパイアード材料の分子設計のための基本要件
6.3.3 修飾ヘムタンパク質
6.3.4 高分子結合金属ポルフィリン錯体
6.3.5 金属ポルフィリン錯体導入リポソーム(ベシクル)
コラム⑦ "かぜ"は万病のもと
付録:2章に出てくる化合物の一覧
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 ななな 様(ご専門:化学・有機合成 )】
今回この本を読み、金属ポルフィリンはさまざまなバイオインスパイアード材料に応用されている化合物であることがよく分かり、金属ポルフィリンの将来性がとても楽しみになりました。特に、金属ポルフィリンを用いることによる活性酸素の検出は、体内の活性酸素の量を定量的に測定できることから、活性酸素が一因となる病気に対する治療には非常に実用的で、とても魅力的なセンサーであり、また、金属ポルフィリンと活性酸素を用いることで抗がん剤にも応用できることから、その機能性の高さにとても感銘を受けました。
読者モニターレビュー【 まい 様(ご専門:化学系 )】
本書は酵素や金属タンパク質などの活性中心である金属ポルフィリン錯体とバイオミメティクスケミストリーとバイオインスパイアード材料について詳細に記されており、深い理解を得られました。特に身体検査や健康診断などの1項目の方法として生体内でかつその場で活性酸素の検出が可能な測定手段である活性酸素センサー法を取り入れることができれば容易に健康状態の確認ができるため、病気の早期発見に貢献できる有意義な方法であると感じました。
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