物質科学を学ぶ人の 空間群練習帳

物質科学を学ぶ人の 空間群練習帳

結晶構造を理解するうえで基本となる230個の空間群を,手を動かして理解できる良書。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2020/10/16
判型
A5
ページ数
178ページ
ISBN
978-4-339-06653-1
物質科学を学ぶ人の 空間群練習帳
在庫あり

定価

2,860(本体2,600円+税)

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結晶構造を理解するうえで基本となる230個の空間群について,簡単な群から複雑な群まで順を追って解説をした。空間群の代数的表現としてアフィン変換を用い,実際に手を動かしながら理解できるように問題を多数用意した。

◆空間群とは?◆
『空間群』とは,空間を埋め尽くす規則的なパターンを分類するための数学的な考え方です。『空間群』の考え方によれば,鉱物や金属,有機化合物の結晶構造は230通りに分類されます。意外と少ないと思われるかもしれませんが,一つずつ把握するには少し多すぎる数ですね。もっとも,有機化合物に限っていえば8割ほどの結晶がたった5種類の『空間群』に収まってしまうといわれています。『空間群』の基礎をほんの少し知っておくだけで,物質科学への理解は格段に深まることでしょう。

◆こんな方にお勧め◆
卒業研究で初めて結晶学にふれる大学生,研究テーマで結晶構造を扱うことになった大学院生,仕事で結晶構造解析に携わることになった企業研究者,そういう方々が必ず耳にするのが『空間群』。結晶構造解析を行う研究者・技術者にとってその知識が必須なのは当然ですが,近年では必ずしも自身では測定しない人でも結晶構造データを利用する機会が増えています。先輩や同僚が「あの結晶『空間群』何だった?」「とりあえずピーワンバーで解きましたけど,なんだかアヤシイです。ピーツーワンオーバーシーかもしれませんけど,何しろ結晶の質が・・・」などと符牒のようなコトバでやり取りするのを聞いて,得体の知れぬ何かに出会ったような不安を感じたことはないでしょうか。そんなときにはぜひ本書を手に取ってみてください。

◆書籍の特徴◆
本書は230個の空間群について,簡単な群から複雑な群まで順を追って解説することを趣旨とし,実際に手を動かしながら理解できるように練習問題を多数用意しました。これから X線構造解析を始める人や,大学院や企業で結晶工学に携わる人はもちろんのこと,単に数学的な対象として空間群に興味をもつ人などにとって,本書が手ごろな練習帳,便利帳,辞書代わりとなることを期待しています。

◆キーワード◆
化学;有機化学;無機化学;固体化学;結晶構造;鉱物;クリスタルエンジニアリング;結晶工学;結晶多形;群論;点群;線形変換;アフィン変換

一つひとつの分子は見えないほど小さいのに,それが液体や固体の「物質」となれば,目にも見えるし手で触れることさえできます(著者が有機寄りの化学者であるため,以後「分子」を多用しますが,金属や金属酸化物などでも個々の原子を「単原子分子」とみなせば事情はほぼ同じです)。これは分子の間に働く相互作用の賜物です。分子間相互作用には引力も斥力もあって,これらがバランスよく働くと分子は規則正しく並びます。これが結晶です。結晶中の分子の充塡をつかさどる分子間相互作用を理解し,その知見を利用して所望の物理的・化学的特性をもつ新しい固体材料を設計する研究分野を結晶工学といいます。結晶工学は医薬品における結晶多形制御や機能性色素材料の設計,有機電子材料の製膜技術などに役立てられています。現代の物質科学(有機・無機化学,材料科学等)では,分子構造ばかりでなく結晶構造までをも考慮した設計が必要とされつつあるのです。

結晶構造を理解するうえで基礎となるのが,分子配列の対称性を記述する「空間群」です。空間群の考え方によれば,空間を規則的に埋め尽くすパターンは230通りに分類されます。意外に少ないと思われるかもしれませんが,一つずつ把握するには少し多すぎる数です。X線構造解析を行う研究者・技術者にとってその知識が必須なのは当然ですが,近年では必ずしも自身では測定しない人でも結晶構造データを利用する機会が増えていることもあり,無縁ではいられなくなっています。X線構造解析についての成書・良書は多数出ているものの,空間群については(おそらく紙面の制限のため)基本的な説明といくつかの代表的な群の説明にとどめられています。空間群の網羅的な解説書としてはInternational Tables for Crystallography,Volume A:Space-groupsymmetry(ITC-A)という大部の書物があるのですが,初学者や非専門家には難度が高く,入門書からのギャップを越えるのは容易ではありません。

本来,空間群は数学でいう代数的構造として,結晶学とは切り離して学びうるものです。本書は230個の空間群について,簡単な群から複雑な群まで順を追って解説することを趣旨としています。空間群の代数的表現としてアフィン変換を用い,実際に手を動かしながら理解できるよう配慮しました。また,有機化合物を扱う研究者・技術者にとっては直方晶までの空間群がわかれば実質的に不自由がないと考え,対称操作および空間群の解説を前編と後編に分けるなど,実用性を重視しました。また最後に付録としてITC-Aの記載例も載せました。これからX線構造解析を始める人や,大学院や企業で結晶工学に携わる人はもちろんのこと,単に数学的な対象として空間群に興味をもつ人などにとって手ごろな練習帳,便利帳,辞書代わりとなることを期待しています。

著者自身,ITC-Aと首っ引きで作業することはまずないのですが,参照頻度の高い群については対称要素や等価点のリストを手元に控えておくようになり,いつしかメモ書きが蓄積されて資料としての形を成していきました。本書の執筆に際しては,その原稿を著者の研究室の輪講資料として用い,スタッフ並びに大学院生諸氏に数々の指摘や提案をしてもらいました。また毛利文仁氏には原稿を通読していただき,貴重なご助言を多々頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。とはいえ本書中の誤記・誤謬についてはすべて著者が責を負います。特に,用語や記法などについては初学者の理解を助けるために著者が勝手に考案したものもあり,必ずしも学術的には通用しない(脚注で適宜言及した)ものも含まれますので,ご留意ください。専門家諸氏のご指摘ご助言を賜れれば幸いに存じます。

2020年8月
北條博彦

1.結晶格子
1.1 単位格子
1.2 分率座標
1.3 7個の晶系
1.4 14個のブラべ格子
1.5 32個の点群
1.6 230個の空間群

2.対称操作と変換行列
2.1 線形変換の群
2.2 対称性と点群
2.3 アフィン変換

3.結晶の対称操作〈前編〉
3.1 並進
3.2 反転
3.3 2回回転
3.4 2_1らせん
3.5 鏡映
3.6 映進

4.空間群の等価点一覧表〈前編〉
4.1 三斜晶
4.2 単斜晶
 4.2.1 単斜晶系の群
 4.2.2 軸の設定と原点の選択
4.3 直方晶
 4.3.1 222点群
 4.3.2 mm2点群
 4.3.3 軸変換
 4.3.4 mmm点群

5.結晶の対称操作〈後編〉
5.1 n回回転
5.2 n_mらせん
5.3 n回回反
5.4 分角2回回転と分角21らせん
5.5 対頂3回回転
5.6 分角鏡映と分角映進
5.7 R格子上での対称要素
5.8 ダイアモンド映進

6.空間群の等価点一覧表〈後編〉
6.1 正方晶
 6.1.1 4点群・4‾点群・4/m点群
 6.1.2 422点群
 6.1.3 4mm点群
 6.1.4 4‾2m点群
 6.1.5 4/mmm点群
6.2 三方晶と六方晶
 6.2.1 三方晶系の群
 6.2.2 R格子の群
 6.2.3 六方晶系の群
6.3 立方晶
 6.3.1 23点群
 6.3.2 m3‾点群
 6.3.3 432点群
 6.3.4 4‾3m点群
 6.3.5 m3‾m点群

付録 (International Tables of Crystallography, Vol.Aの読み方)

索引

北條 博彦

北條 博彦(ホウジョウ ヒロヒコ)

『物質科学を学ぶ人の 空間群練習帳』発行に寄せて
今から20年ほど前に単結晶X線構造解析に出会い「こんなにおもしろい測定があったのか!」と、むさぼるように解析していましたが、『空間群』については何となくわかったフリをしていたことを告白します。大学で有機分子の結晶を研究対象として扱うようになり、「このままではいけない」と思いマジメに空間群を勉強。自分で作った問題を自分で解くという自作の『練習帳』で、どうにか人に説明できるくらいにはなりました。この『練習帳』がほかの誰かの役に立つかもしれない―そんな思いから一念発起して出版させていただくことにしたのがこの『空間群練習帳』です。一度目はとにかく読み進めてください。そして二度目はぜひ問題を解きながら読み進めてください。

Chem-Station(ケムステ)化学書籍レビュー 掲載日:2020/10/14

レビューが掲載されました。上記リンクからご覧ください。
「現代化学」2020年11月号(東京化学同人) 掲載日:2020/10/20