機械系コアテキストシリーズ C-1
熱力学
大学や高専の工学系学生が初めて熱力学を学ぶ際に使用することを念頭に置き,必要最小限の数学の知識で理解できるように工夫した。
- 発行年月日
- 2018/03/28
- 判型
- A5
- ページ数
- 180ページ
- ISBN
- 978-4-339-04534-5
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
熱力学は非常に洗練された理論体系として築かれた結果、初学者には理解し難いものになった。しかし熱力学は、蒸気機関を用いて熱から仕事を取り出す極めて実際的学問である。本書は必要最小限の数学の知識で理解できるよう工夫した。
本書は,大学や高専の工学系の学生が初めて熱力学を学ぶ際に使用することを念頭に書いたものである。熱力学は,工学においてもっとも基本的な学問分野の一つである。また,熱と仕事という,非常に身近な現象を取り扱うものである。しかしながら,熱力学は,学生にとってあまりなじめない科目の一つであり,わかりにくく,おもしろくない科目の代表である。これは熱力学が非常に洗練された理論体系として築き上げられた結果,初めてこれを学ぶ学生にとっては非常に理解が難しいものになってしまっているからである。
熱力学は,いくつかの法則に基づき,厳密な演繹と巧妙な数学的手法を用いて組み立てられており,無味乾燥な印象が避けられない。また,エントロピーや自由エネルギーなど,直接測定したり実際の現象と簡単に結びつけることが難しい物理量を取り扱うことが多く,理解に戸惑ってしまう場合が多い。また,微分量や変分量,多変数関数の微分や積分など,かなり高度な数学的知識を必要とされることも,熱力学の不人気さの一因となっている。
しかしながら,熱力学は,蒸気機関を用いて熱から仕事を取り出すという,きわめて実用的,実際的な技術を理論付けるためにできた学問分野であって,決して難解なものではない。また,熱力学の理論体系を完全にマスターしなければ,熱機関などの熱を利用する機械装置を設計することができないわけではない。特に初めて熱力学を学ぶ人にとっては,あまりにも厳密さを求めては,かえって理解が妨げられることになりかねない。
以上のことから,本書では,熱力学を実際の現象に即して,わかりやすく説明することに力をおいた。また,数学の知識はある程度は必要であるが,必要最小限の知識で理解できるように工夫をしたつもりである。
本書の構成は以下のようになっている。1章で熱力学で用いる重要な物理量である温度,熱,仕事,運動エネルギー,比熱,圧力と単位,熱と仕事の等価性について説明した。2章ではボイル・シャルルの法則から始めて,さまざまな状態や,単位系での温度,圧力,体積を理想気体の状態方程式を用いて計算する方法について説明した。3章では熱力学の第1法則(熱量と仕事の総和の保存)について,さまざまな実例に基づいてわかりやすく説明した。4章では熱力学第2法則について熱機関の最大効率との関係を述べ,エントロピーの概念を説明した。また可逆変化,不可逆変化についてエントロピーを用いて説明した。5章では熱力学の重要な応用の一つであるガスを用いた熱機関であるカルノーサイクル,オットーサイクル,ディーゼルサイクル,ブレイトンサイクルについて,仕事,熱の収支,熱効率の計算方法について解説した。6章では水を中心に相変化の状態図(圧力と体積,温度と体積)について説明し,液相と蒸気相の物性値を与える蒸気表の使い方,気液二相状態(湿り蒸気)の物性値の計算方法についても説明した。7章では相変化に伴う熱の収支と仕事の基礎的事項を説明し,それに基づいて相変化を用いる熱機関であるランキンサイクル,再生サイクル,再熱サイクルについて,熱の収支と仕事のやりとり,熱効率について説明した。8章では冷凍機とヒートポンプの原理を熱力学的に説明し,その熱収支,仕事,および成績係数について説明した。また巻末には,相変化を用いる熱機関において重要な水と蒸気についての物性値を与える蒸気表を掲載した。
本書が工学系の学生がスムーズに熱力学を理解し,熱力学を好きになって,さまざまな技術に応用していく際の手助けになればと考えている。
最後に,本書の執筆に関して大変お世話になりましたコロナ社に感謝の意を表します。
2018年1月 片岡 勲・吉田憲司
1. 熱力学で取り扱う物理量
1.1 熱力学を学ぶこととは
1.2 熱量と温度
1.3 熱と仕事
1.4 気体の膨張による仕事
演習問題
2. 理想気体の状態方程式
2.1 ボイルの法則とシャルルの法則
2.2 理想気体の温度,体積,圧力の関係
演習問題
3. 熱力学の第1法則
3.1 閉じた系の熱力学第1法則と内部エネルギー
3.2 開いた系の熱力学第1法則とエンタルピー
3.3 実際の熱機関における熱力学第1法則
演習問題
4. 熱力学の第2法則
4.1 熱機関の最大効率
4.2 エントロピー
4.3 可逆変化と不可逆変化
4.4 状態量としてのエントロピー
演習問題
5. ガスサイクル
5.1 概説
5.2 気体の膨張と圧縮に伴う仕事と熱
5.2.1 等圧膨張,等圧圧縮
5.2.2 等温膨張,等温圧縮
5.2.3 断熱膨張,断熱圧縮
5.2.4 等積加熱,等積冷却
5.3 カルノーサイクル
5.4 オットーサイクル
5.5 ディーゼルサイクル
5.6 ブレイトンサイクル(ガスタービンサイクル)
演習問題
6. 相変化の熱力学
6.1 液体と蒸気の状態変化
6.2 実在気体の状態方程式
6.3 蒸気表と乾き度
演習問題
7. 相変化を伴うサイクル
7.1 相変化に伴う仕事と熱
7.2 ランキンサイクル
7.3 再熱ランキンサイクル
7.4 再生ランキンサイクル
演習問題
8. 冷凍機とヒートポンプ
8.1 概説
8.2 逆カルノーサイクル
8.3 気液二相サイクルを用いた冷凍機とヒートポンプ
8.4 吸収式冷凍機とヒートポンプ
演習問題
付録
1.飽和蒸気表(圧力基準)
2.飽和蒸気表(温度基準)
3.過熱蒸気表
4.圧縮水
引用・参考文献
演習問題解答
あとがき
索引
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掲載日:2023/09/19
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掲載日:2022/10/06
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掲載日:2021/10/06
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掲載日:2020/11/09