見える伝熱工学

見える伝熱工学

本書では,熱の移動や起きている現象を図によってイメージとしてつかみ,読者自身が熱の移動を見えるようになることを目指して編集した。このほか,数式の各項の意味を平易に示し,身近な伝熱現象の多くを例題として取り上げた。

ジャンル
発行年月日
2011/10/17
判型
A5
ページ数
240ページ
ISBN
978-4-339-04618-2
見える伝熱工学
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定価

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本書では,熱の移動や起きている現象を図によってイメージとしてつかみ,読者自身が熱の移動を見えるようになることを目指して編集した。このほか,数式の各項の意味を平易に示し,身近な伝熱現象の多くを例題として取り上げた。

まず1章の序論では,身近な熱移動現象を例に挙げて,三つの熱移動の形態を紹介する。そして,伝熱工学の基礎となる熱移動,運動量移動,物質移動の速度方程式を駆動力によって表記する。また,伝熱工学で学ぶこと,ミクロな視点での移動現象について述べる。
2章「熱伝導 ―非流れ系での熱移動―」では,初めに熱伝導で最も重要な基礎式「Fourier の法則」と身近な材料の熱伝導率を示す。つぎに,微小体積要素でのエネルギー収支をもとに「熱伝導方程式」を導く。そして,熱伝導方程式を一次元,二次元の定常熱伝導問題,さらに非定常熱伝導問題に適用した事例を紹介し,熱流束と温度分布を解析的に解く方法を示す。また,伝熱工学において代表的な無次元数であるBiot数,Fourier数の物理的意味を紹介する。
3章「流れ場中での運動量移動と流速分布」では,流れ場中に固体壁面がある場合の流体の運動量移動を扱う。まず,Navier-Stokes方程式をもとにして完全に発達した層流中での物体まわりの流速分布と物体が受ける力を求める。つぎに,境界層近似の考え方とその解法を紹介し,4章で熱移動量を求める際に必要となる速度境界層内の速度分布を示す。
4章「対流熱伝達―流れ系での熱移動―」では,対流熱伝達率の推算式を,層流,乱流,物体の形状,伝熱面の等温条件または等熱流束条件によって区分して示す。また,伝熱工学で用いられる無次元数の物理的な解釈も示す。また,内部流として円管内流れの対流熱伝達率を示し,さらに,浮力により流れが生じた際の自然対流熱伝達も示す。
5章「熱交換器」では,流体どうしが混ざり合わない隔板式熱交換器を取り上げ,温度差がある流体間で移動する熱流量と流体の出口温度を算出する方法を示す。また,対数平均温度差,熱通過有効度,熱通過数Ntuについて述べる。
6章「物質伝達」では,Fickの法則をもとにして移流がない固体中と移流がある混合気体中での物質移動について述べる。また,物質伝達で現れる無次元数のSherwood数,Schmidt 数,Lewis数を対流熱伝達と対比させて説明する。
7章「放射伝熱」では,放射伝熱の基礎となる熱放射の原理と黒体放射,灰色体について概説する。固体壁面間の放射伝熱を対象とし,固体表面の射出率,反射率,吸収率などの定義を示す。二つの固体壁面間で熱移動が生ずるとき,固体壁面間での熱流量の算出法について述べる。

1. 序論
1.1 熱の移動現象:熱移動の形態
1.2 身近な伝熱現象
1.3 産業で利用されている伝熱工学
1.4 伝熱工学で学ぶこと
1.5 現象を伝熱工学の視点から見る
1.6 熱力学と伝熱工学の相違
1.7 伝熱過程の微視的説明
1.8 伝熱過程での速度方程式
1.8.1 熱伝導による熱移動(Fourierの法則)
1.8.2 対流熱伝達による熱移動(Newtonの冷却の法則)
1.8.3 粘性による運動量移動(Newtonの粘性の法則)
1.8.4 物質拡散による物質移動(Fickの拡散法則)  
1.8.5 熱放射による熱移動

2. 熱伝導―非流れ系での熱移動―
2.1 熱伝導の法則(Fourierの法則) 
2.2 身近な物質の熱伝導率
2.3 熱伝導方程式(エネルギー方程式)
2.4 初期条件と境界条件
2.5 無次元化された熱伝導方程式と無次元数 
2.6 熱伝導の定常問題と非定常問題
2.7 熱伝導問題を解くにあたって 
2.7.1 熱伝導問題へのアプローチ法  
2.7.2 熱伝導方程式を解くための方法論
2.8 定常一次元熱伝導 
2.8.1 単層平板内の一次元熱伝導  
2.8.2 多層平板内の一次元熱伝導
2.8.3 単層円管内の半径方向熱伝導  
2.8.4 多層円管内の半径方向熱伝導
2.8.5 平板表面での境界条件が対流熱伝達で与えられる場合の一次元熱伝導
2.8.6 円管外側面での境界条件が対流熱伝達で与えられる場合の一次元熱伝導
2.9 拡大伝熱面(フィン) 
2.10 単層矩形柱内の定常二次元熱伝導 
2.11 非定常熱伝導
2.11.1 単層平板内の非定常一次元熱伝導  
2.11.2 さまざまな非定常熱伝導
2.11.3 Biot数 
2.11.4 集中熱容量法
参考文献 

3. 流れ場中での運動量移動と流速分布
3.1 伝熱工学での流体力学の位置づけ
3.2 運動量移動の微視的概念
3.3 流れ場の方程式:Navier-Stokes方程式 
3.4 完全に発達した層流の速度分布
3.4.1 平板間を流れる定常でかつ完全に発達した層流の速度分布
3.4.2 円管内を流れる定常でかつ完全に発達した層流の速度分布
3.5 物体まわりの流れ場
3.6 動き始めた平板上の流れ場(Rayleighの問題)
3.6.1 Rayleighの問題での方程式  
3.6.2 Rayleighの問題の解法
3.7 境界層近似と速度分布
3.7.1 平板上の流れ:薄い境界層  
3.7.2 速度境界層方程式を導くための考え方
3.7.3 速度境界層方程式の導出(Prandtlの速度境界層方程式)
3.7.4 速度境界層方程式を解く(Blasiusの解)
3.8 乱流の場合の速度境界層内速度分布と摩擦係数
参考文献 

4. 対流熱伝達―流れ系での熱移動―
4.1 対流熱伝達の基本事項 
4.1.1 対流熱伝達の表し方  
4.1.2 高温の平板上を流れる流体中に形成される温度境界層
4.1.3 対流熱伝達率の定義式 
4.1.4 対流熱伝達率の値
4.2 エネルギー方程式(流れ系) 
4.3 平板に沿う流れ場の境界層近似と対流熱伝達率 
4.3.1 エネルギー方程式の境界層近似  
4.3.2 平板上で発達する温度分布の近似解
4.3.3 平板の層流局所対流熱伝達率(Pohlhausenの式)
4.3.4 平板の層流平均対流熱伝達率
4.3.5 熱流束が一定の場合の平板の層流平均対流熱伝達率  
4.3.6 物性値を決める膜温度
4.4 無次元数Pr,Nu,Pe,Stの物理的意味
4.4.1 無次元数Prの物理的意味  
4.4.2 局所Nusselt数Nuxの物理的意味
4.4.3 無次元数Peの物理的意味
4.4.4 流れと熱移動の相似性
4.5 平板に沿う流れでの乱流対流熱伝達 
4.5.1 等温平板に沿う流れでの乱流対流熱伝達率
4.5.2 等熱流束平板に沿う流れでの乱流対流熱伝達
4.6 流れの中に置かれた物体の対流熱伝達 
4.6.1 円柱に直交する流れの円柱まわりの対流熱伝達  
4.6.2 球まわりの対流熱伝達
4.7 円管内流れの対流熱伝達(内部流) 
4.7.1 流体温度についての基礎的な考察(混合平均温度)
4.7.2 無次元温度θの関数形  
4.7.3 エネルギー方程式と温度分布の解
4.7.4 エネルギー収支で熱移動を考えた際の混合平均温度
4.7.5 発達した乱流での対流熱伝達率
4.8 自然対流熱伝達 
4.8.1 自然対流での境界層方程式とGrashof数  
4.8.2 自然対流熱伝達
参考文献 

5. 熱交換器
5.1 熱交換器の概要 
5.2 熱交換器の形式 
5.3 隔板式熱交換器内での熱交換特性 
5.3.1 流体の温度分布と対数平均温度差  
5.3.2 熱通過有効度ε,熱通過数Ntu
参考文献 

6. 物質伝達
6.1 身近な物質移動現象 
6.1.1 身近な物質移動現象  
6.1.2 固体中または流れ場中での物質移動
6.1.3 本章で取り扱う物質移動現象:固体中と気体中の物質移動現象
6.2 濃度,速度,質量流束の定義式 
6.2.1 濃度の定義式    
6.2.2 速度の定義式
6.2.3 質量流束の定義式
6.3 質量保存方程式 
6.3.1 質量保存方程式の導出  
6.3.2 無次元化された質量保存方程式
6.4 固体内での物質移動 
6.4.1 固体内での質量保存方程式  
6.4.2 固体内での非定常一次元拡散
6.5 流れ場中で生ずる物質伝達と濃度境界層 
6.5.1 物質伝達率の定義式
6.5.2 一様流中に置かれた平板上での濃度境界層の進展と物質伝達率
6.5.3 一様流中に置かれた平板上での濃度境界層の厚さ
6.5.4 物質伝達と対流熱伝達の相似性  
6.5.5 乱流時の平板上の物質伝達率
6.6 界面での質量密度 
6.6.1 境界での質量密度が既知である場合
6.6.2 境界で成分Aが蒸発している場合:飽和密度の適用
6.6.3 境界で成分Aが溶解する場合
参考文献 

7. 放射伝熱
7.1 身近な熱放射 
7.2 熱放射の原理と電磁波 
7.2.1 熱放射の原理   
7.2.2 電磁波の種類 
7.2.3 放射強度,全射出能,単色射出能
7.3 黒体放射 
7.3.1 黒体の性質    
7.3.2 Planckの式:黒体から射出される単色射出能
7.3.3 Stefan-Boltzmannの式:黒体の全射出能
7.4 射出率,単色射出率 
7.5 吸収,反射,透過 
7.6 Kirchhoffの法則 
7.7 灰色体 
7.8 太陽放射 
7.9 固体壁面間での放射伝熱 
7.9.1 二つの黒体表面間での放射伝熱  
7.9.2 灰色体表面間での放射伝熱
7.10 形態係数 
参考文献 
索引 

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