マルチメディア情報符号化の基礎と応用 - 情報伝達の効率化と信頼性の確保 -

マルチメディア情報符号化の基礎と応用 - 情報伝達の効率化と信頼性の確保 -

マルチメディア情報通信の基礎となる情報数学や,情報理論,符号理論の基礎と応用を紹介。

ジャンル
発行年月日
2020/10/23
判型
A5
ページ数
252ページ
ISBN
978-4-339-02913-0
マルチメディア情報符号化の基礎と応用 - 情報伝達の効率化と信頼性の確保 -
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マルチメディア情報通信の基礎となる情報数学や,情報理論,符号理論について,基礎と応用を結び付けられるように工夫して執筆しました。初学者の理解を促すため,基礎部分では例題等具体的な記述を多くし,応用部分では実用例を多く盛りこみました。

【各章について】
1章では,2章以降で説明する情報量や符号化などを理解するための数学的基礎知識について説明します。集合を情報源とみなすと情報源記号の出現確率を集合の元の存在確率として議論することができます。このような観点も含めて,集合・確率についての数学を解説します。行列は情報理論や符号理論を理解するための数学ツールで,符号理論では行列代数を用いた理論展開のツールとして有用です。また符号理論の説明では,群・環・体の数学概念を必要とするのでガロア体についても説明します。

2章では,確率に基づく情報量の定義と情報量にまつわる各種概念・諸量について述べます。具体的には,情報量の定義から平均情報量,エントロピー関数,冗長度などについて説明し,二つの事象が重なった場合の結合エントロピーおよび条件付エントロピーについて詳しく解説します。また相互情報量については,天気予報の当たり具合を評価する例などを用いてわかりやすく説明します。

3章では,記憶のない情報源と記憶のある情報源,マルコフ情報源,情報源符号化を取り上げ,情報源符号化定理を説明します。とくに記憶のある情報源としての単純マルコフ情報源については,定常状態や極限状態について行列を用いてわかりやすく解説します。また情報源符号化については,符号化や符号長,情報伝達速度と通信路容量について詳しく説明します。そして情報源符号化法としては,シャノンの符号化やハフマンの符号化などの幾つかの符号化手法について,具体例を交えてわかりやすく解説します。

4章では,通信モデルと伝達情報量,通信路容量と通信路符号化定理,加法的通信路,非加法的通信路とモンディホール問題について解説し,次に送信時に付加されてしまう雑音に対する対処方法について説明します。通信路容量と通信路符号化定理においては,誤り率の改善についても解説します。また誤りが生じる通信路のモデルとしての加法的通信路を記憶のない誤り源と記憶のある誤り源に分けて説明します。そして少し変わった例ですが,モンティホール問題を非加法的通信路での情報伝達の問題として取り上げ説明します。

5章では,符号理論について,誤り訂正符号を中心に暗号への応用についても詳解します。ここでは情報代数をベースに,前章までとは異なるアプローチから,情報の符号化について説明します。符号理論の展開が解りやすくなるように,代表的な誤り訂正符号の関係と原理を示しながら解説します。また数式による説明だけでなく,例示,図表,練習問題を用いることで,理論を解りやすくイメージできるように工夫しました。

6章から8章では,情報理論や符号理論の応用として,身の回りで利用されているマルチメディア情報の符号化方式について詳解します。6章では,スマートフォンやデジタル機器で利用されている,マルチメディア情報の符号化や通信方式について,基礎となる情報圧縮技術について説明します。7章では,音声やオーディオの符号化方式について紹介し,さらに音の高能率符号化のために適用される人間の声の特徴や聴覚の特性についても解説します。8章では,画像や映像の符号化方式について紹介し,画像や映像の符号化で適用される人間の視覚特性についても解説します。

【関連するキーワード】
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近年の情報通信技術はすさまじいスピードで進化している。スマートフォンに代表される通信機器が普及し,身のまわりでマルチメディア情報通信を利用しない日はない。本書は,工学・情報系の大学生・高専生に対して,マルチメディア情報通信で利用されている技術要素と基礎原理をわかりやすく解説するものである。

マルチメディア情報通信の基礎となる情報数学や,情報理論,符号理論といった理論系の科目を長年にわたり担当し,基礎や理論に対する理解こそが新しい技術やブレークスルーを産んでいると実感している。一方で,最新技術と基礎原理をつなげる教科書が多くない点についても痛切に感じている。そこで,本書は基礎と応用を結び付ける教科書として執筆することにした。

本書の半分は,情報理論や符号理論の基礎となる数学や理論について岡村先生と小暮先生に担当していただき,杉浦が応用との関係性を前半で述べることで,基礎と応用の結び付きをもたせる構成をとっている。これまで大学生や高専生に講義をしてきた経験から,身のまわりでどう利用されているか知ったうえで基礎を学ぶことの有用性は高いものと信じ,本書の執筆を進めた。

本書では,初学者の理解を促すために,基礎部分では例題など具体的な記述を多くし,応用部分では実用例や例え話などを多く盛りこみ,基礎と応用のつながりが見えやすくなるように工夫した。また,読者の理解を促すことを優先し,簡素化した例などを挙げて解説し,例外などの説明は省略している。同じ理由で極端な比喩表現なども取り入れているが,見苦しい点があったなら御容赦願いたい。

また本書では,実用化されている音声や画像の符号化方式について,規格化の経緯や基礎原理の説明を中心に述べている。マルチメディア情報通信の規格化は,周辺技術や利用形態により日々変化してしまうが,基礎的な考え方には普遍的な部分も多く,新携帯電話方式に代表される新たな通信に適したアプリケーションを考えるうえでもおおいに役に立つと考えている。

また,マルチメディア情報処理は,通信分野に限らず,さまざまな方面で活用されている。例えば,医学の分野では遠隔医療診断支援や在宅ケアシステムなど,教育分野では遠隔教育やeラーニングなど,職場ではテレワークやテレビ会議など,分野・応用例は数えきれない。本書は,マルチメディア情報通信技術を活用する皆様にも,符号化方式の特性や限界などを熟知してもらい,応用・開発をスムーズに進めていただくのにも役立てていただければと願っている。

2020年9月
杉浦彰彦

1.情報のための数学基礎
1.1 情報理論と集合・確率
 1.1.1 集合表現
 1.1.2 事象と確率概念
 1.1.3 確率変数の平均と分散
 1.1.4 結合確率
 1.1.5 条件付確率
1.2 行列
 1.2.1 和と積
 1.2.2 逆行列
 1.2.3 対角化および固有値,固有方程式
1.3 ガロア体
 1.3.1 群
 1.3.2 環と体
 1.3.3 ガロア体と素体
 1.3.4 ガロア体の拡大体

2.情報に関する諸量
2.1 情報の伝達
2.2 情報量
2.3 平均情報量(エントロピー)
 2.3.1 エントロピー
 2.3.2 シャノンの補助定理
 2.3.3 エントロピー関数
 2.3.4 冗長度
 2.3.5 結合エントロピー
 2.3.6 条件付エントロピー
 2.3.7 エントロピーの性質
2.4 相互情報量

3.情報源と符号化
3.1 情報源とエントロピー
3.2 記憶のない情報源(無記憶情報源)
3.3 記憶のある情報源(マルコフ情報源)
 3.3.1 シャノンダイアグラムと遷移確率行列
 3.3.2 状態の存在確率が変化しない場合(定常状態)
 3.3.3 初期時点後の状態確率分布
 3.3.4 エントロピー計算
3.4 単純マルコフ情報源
 3.4.1 情報源のモデル
 3.4.2 定常状態
 3.4.3 極限状態
 3.4.4 エントロピー
 3.4.5 出力パターン
3.5 情報源符号化
 3.5.1 情報伝送速度と通信路容量
 3.5.2 クラフトの不等式
 3.5.3 第一符号化定理
 3.5.4 ブロック符号
 3.5.5 一意復号可能な符号
 3.5.6 クラフト・マクミランの不等式
 3.5.7 平均符号長の下限と情報源符号化定理
3.6 情報源符号化法
 3.6.1 シャノンの符号化
 3.6.2 ハフマンの符号化
 3.6.3 ハフマン符号構成法
 3.6.4 ハフマンブロック符号
 3.6.5 ランレングスハフマン符号

4.通信路と情報量
4.1 通信モデルと伝達情報量
 4.1.1 ビット誤り率
 4.1.2 通信モデル
 4.1.3 情報量伝達
4.2 通信路容量と通信路符号化定理
 4.2.1 通信路容量
 4.2.2 誤り率の改善
 4.2.3 通信路符号化定理
4.3 加法的通信路
 4.3.1 記憶のない加法的通信路
 4.3.2 BSCにおける誤りの統計的性質
 4.3.3 記憶のある加法的通信路
 4.3.4 誤り訂正符号化
4.4 非加法的通信路とモンティ・ホール問題

5.符号理論
5.1 誤り訂正符号
5.2 線形符号
5.3 巡回符号
5.4 BCH符号
5.5 リード・ソロモン符号(RS符号)
5.6 畳み込み符号
5.7 連接符号とターボ符号
5.8 暗号への応用
 5.8.1 暗号と鍵
 5.8.2 ヒル暗号
 5.8.3 RSA暗号

6.マルチメディア符号化の基礎
6.1 符号化の基礎
6.2 標本化と量子化
6.3 可逆圧縮と非可逆圧縮
6.4 波形符号化
 6.4.1 線形PCM
 6.4.2 ベクトル量子化
6.5 周波数変換と符号化
 6.5.1 相関とスペクトル
 6.5.2 周波数変換と画像符号化
 6.5.3 量子化による情報圧縮

7.音声・オーディオの符号化
7.1 音声の特性
 7.1.1 音声信号の振幅
 7.1.2 音声信号のスペクトル成分
 7.1.3 音声の生成モデル
7.2 音声の符号化
 7.2.1 線形予測分析法
 7.2.2 偏相関分析法
 7.2.3 生成源符号化の応用
7.3 オーディオ符号化
 7.3.1 人間の聴覚の特性
 7.3.2 MPEG1 Audio

8.画像・映像
8.1 画像・映像の特性
 8.1.1 画像・映像情報
 8.1.2 画像・映像符号化の原理
 8.1.3 画像・映像符号化の考え方
 8.1.4 冗長度削減
 8.1.5 量子化
 8.1.6 2進符号化
8.2 静止画像の圧縮
8.3 準動画の圧縮
8.4 映像の圧縮
 8.4.1 MPEGの概要
 8.4.2 MPEG1
 8.4.3 MPEG2
 8.4.4 MPEG4
 8.4.5 MPEG2システム

引用・参考文献
索引

杉浦 彰彦

杉浦 彰彦(スギウラ アキヒコ)

マルチメディア情報通信で使われている高能率符号化とワイヤレス伝送方式について研究しています。最近では,機械学習によるパターン認識に適応した画像符号化方式の開発や,多数の簡素なワイヤレス端末を集めたネットワーク通信で周辺環境を認識するシステムの研究を進めています。大学では主に情報理論,符号理論,通信理論,コンピュータネットワーク関連の授業を担当しています。情報誤りが少なく高速な通信方式の実用化は,正確で解りやすい授業の実現にも通じるところがあるので,日々,研究と教育のために頭を悩ませています。豊田工業大学(助手時代),豊橋技術科学大学(助教授時代),静岡大学(教授現職)とタイプの異なる3つの大学での教育経験を活かして,理・工・情報系の高専・大学生の皆さんに活用してもらえるように本書をまとめました。

岡村 好庸(オカムラ ヨシノブ)

プログラミングを楽しむ日々です。

小暮 悟

小暮 悟(コグレ サトル)

静岡大学情報学部情報科学科にて日本語対話学習支援やプログラミング学習支援に関する研究に携わっています。学生時代からの専門分野は音声対話システムであり各種学習支援への音声対話利用を計画しています。

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