マルチエージェントによる自律ソフトウェア設計・開発

マルチエージェントシリーズ B-2

マルチエージェントによる自律ソフトウェア設計・開発

マルチエージェント技術を応用した低コストかつ高品質なソフトウェア開発手法について幅広く紹介した。

ジャンル
発行年月日
2017/07/21
判型
A5
ページ数
224ページ
ISBN
978-4-339-02818-8
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

近年,柔軟性のある高度なソフトウェアの実用化が期待されている。本書では,マルチエージェント技術を応用した低コストかつ高品質なソフトウェア開発手法について,基礎的なものから最新の技術に至るまで幅広く紹介する。

近年のインターネットおよびWebの大規模かつ急速な発展は社会を大きく変えつつある。ハードウェア・ソフトウェア双方の技術の進歩により,さまざまなデバイスをネットに接続して通信させることが可能となり,いわゆるモノのインターネット(Internet of Things:IoT)と呼ばれる環境が急速に普及している。またビッグデータ処理技術,人工知能技術,およびクラウドコンピューティング技術などの急速な進展により,利便性の高いサービスを迅速に提供し,ユーザニーズの変化に応じて柔軟に対応することが求められるようになってきている。しかしWeb環境で稼働するソフトウェアの開発,運用においては,このような大規模かつ急速な変化に的確に対応することはますます困難になりつつある。

本書は,このような課題の解決のために,マルチエージェント技術を活用したソフトウェア,特にWeb 関連のソフトウェアに関する要素技術,開発手法,および応用について解説したものである。エージェントは従来のソフトウェアに比べ,さまざまな先進的な特徴により,近年の大規模複雑なシステムの実現におおいに貢献している。本書ではそれらの特徴のうち,特に「自律性」に着目している。本書においてエージェントの自律性とは,自ら達成を目指す目的を持ち,自ら環境とインタラクションを行うことにより目的を達成する能力のこととする。このような特徴により,急速に変化する環境下でも,可能な限り不具合を発生させたり停止したりすることなく,継続的に機能し続けることが可能となる。Webはまさにそのような変化の激しい環境であり,自律エージェントの活用がおおいに有望である。

1章では,現在のマルチエージェントシステム技術の理解を深めるうえで有用な,自律ソフトウェア開発手法の歴史的背景について解説する。2章では,3章以降で紹介する自律ソフトウェアのアプリケーションの設計に必要な要素技術として,数理論理学,プランニング,ソフトウェア工学,機械学習,自然言語処理,および複雑ネットワークなどについて概説する。3章では,ソフトウェアへの要求を適切に抽出・定義・管理する手法として,マルチエージェントシステムなどの自律ソフトウェア構築にも適したアプローチであるゴール指向要求工学について概説する。4章では,自律ソフトウェアの一種として期待が高まっている,自己適応システム,すなわち環境の変化を検知し,必要に応じて自分自身を再構成することによって環境の変化に適応しようとするシステムを実現する技術について概説する。5章では,Webを発明したTim B. Lee氏によって1998年に新しく提唱されたセマンティックWeb上の情報に基づいてさまざまなサービスを行う,セマンティックWebエージェントについて概説する。6章では,Web上の急速に変化する膨大な情報を有効活用するために,自律ソフトウェア技術を応用したWebアプリケーションについていくつかの事例を紹介する。

本書は,つぎの4名で執筆した。
大須賀昭彦:1,6章
田原康之:2章
中川博之:3,4章
川村隆浩:5章
2章は3~6章の内容を理解するために必要な基礎知識を概説しているので,3~6章の前に読むのが適切と考えられるが,それ以外については比較的独立しているため,必要なところから読んでいけばよい。なお,本書に掲載されているスライドは,本書の書籍詳細ページでダウンロードが可能なので,ぜひ活用いただきたい。

本書は多くの方々のご協力のもとで刊行に至ったものと考えている。まず,本書執筆の機会を与えていただいた,マルチエージェントシリーズ編集委員会に深く感謝する。つぎに,日頃ご指導いただいている,東京大学大学院情報理工学系研究科/国立情報学研究所本位田真一教授,早稲田大学理工学術院基幹理工学部深澤良彰教授,および大阪大学大学院情報科学研究科土屋達弘教授に深く感謝する。また,日頃熱心にご議論いただいている,電気通信大学情報理工学研究科清雄一助教に深く感謝する。そして,本書執筆に際して多大なご協力を頂いた,株式会社コロナ社に深く感謝する。最後に,日頃執筆者一同とともに研究成果を生み出してきた,電気通信大学大須賀・田原・清研究室の学生およびOB・OGに深く感謝の意を表する次第である。

2017年5月 執筆者一同

1. 歴史的背景
1.1 自律ソフトウェアとは
1.2 エージェント技術による自律ソフトウェアの枠組みの登場
1.3 エージェント指向開発方法論
1.4 FIPA標準
1.5 エージェント技術による自律ソフトウェアの進展

2. 自律ソフトウェア設計のためのエージェント技術
2.1 数理論理学:推論技術の基礎
2.2 プランニング:自己適応システムの基礎
2.3 ソフトウェア工学:自律ソフトウェア設計の基礎
2.4 自律Webアプリケーションの要素技術

3. ゴール指向要求工学
3.1 はじめに:要求工学の必要性
3.2 ゴール指向要求分析
3.3 ゴールモデル
 3.3.1 ゴールとは
 3.3.2 ゴールモデル
3.4 ゴールのタイプとカテゴリ
 3.4.1 ゴールタイプ
 3.4.2 ゴールカテゴリ
3.5 ゴールモデルの役割
3.6 形式的アプローチ
 3.6.1 ゴール洗練化の意味論
 3.6.2 洗練パターン
3.7 そのほかのゴール指向要求分析法
 3.7.1 i*
 3.7.2 NFRフレームワーク
3.8 ゴール指向要求工学と自律ソフトウェアとの関係
 3.8.1 Gaia
 3.8.2 Tropos
3.9 応用事例:ソフトウェア変更の局所化
 3.9.1 アプローチ
 3.9.2 ゴールモデルの整形
3.10 まとめ

4. 自己適応システム
4.1 はじめに:自己適応システムとは
4.2 自己適応システムの定義
4.3 自己適応システムの位置付け
4.4 自己適応システムの分類
4.5 主要モデル
 4.5.1 MAPEループ
 4.5.2 3層アーキテクチャ
4.6 自己適応システムとエージェントとの関係
 4.6.1 モデルの類似性
 4.6.2 センサとエフェクタ
 4.6.3 エージェント技術からのアプローチ
4.7 ソフトウェア工学分野からのアプローチ
 4.7.1 ソフトウェアアーキテクチャ領域からのアプローチ
 4.7.2 要求工学領域からのアプローチ
 4.7.3 検証技術領域からのアプローチ
4.8 ケーススタディ:FUSION
 4.8.1 モデル
 4.8.2 適応サイクルと学習サイクル
 4.8.3 実装環境
4.9 ケーススタディ:Zanshin
 4.9.1 開発プロセス
 4.9.2 実行例
4.10 まとめ

5.セマンティックWebエージェント
5.1 セマンティックWebとは
 5.1.1 セマンティックWebの発展段階
 5.1.2 メタデータRDF
 5.1.3 オントロジーOWL
 5.1.4 検索言語SPARQL
 5.1.5 LinkedData
 5.1.6 LOD
 5.1.7 代表的なLOD
5.2 セマンティックWebエージェントの事例
 5.2.1 質問応答システム
 5.2.2 個人スケジュール管理
 5.2.3 スマートシティ
 5.2.4 イベント情報の統合
 5.2.5 メディア情報の統合
 5.2.6 モバイルセンサ活用
 5.2.7 モバイル検索システム
 5.2.8 セマンティックWebサービス

6. 自律Webアプリケーション
6.1 自律Webアプリケーションとは
6.2 情報抽出・予測
6.3 情報推薦

引用・参考文献
索引

川村 隆浩(カワムラ タカヒロ)

関連資料(一般)

関連資料(採用者向け)

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