語学学習支援のための言語処理

自然言語処理シリーズ 11

語学学習支援のための言語処理

語学学習支援のための自然言語処理について,難しさと解決法を中心に解説し,この分野の研究を始める人の入門書となるよう心掛けた。

ジャンル
発行年月日
2017/11/10
判型
A5
ページ数
222ページ
ISBN
978-4-339-02761-7
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介

語学学習支援のための自然言語処理について,その難しさと解決法を中心に解説した。特に,他の自然言語処理分野と異なるあまり知られていない情報やテクニックに焦点を当て,この分野の研究を始める人の入門書となるよう心掛けた。

言語処理の最終目標は,人間の言語を理解し,人間の言葉を話すコンピュータを実現することにある。ざっくりと言い換えれば,人間の言語をコンピュータに学ばせるための方法を探求している。その結果,自動翻訳や文書要約などの技術が実現される。
本書が対象としているのは,語学学習支援のための言語処理である。すなわち,言語処理を用いて人間が言語を学習するのを支援しようという分野である。コンピュータが言語を学習するための言語処理は,少し考えただけでも,語学学習支援と相性がよさそうである。実際,言語処理と語学学習支援は相性がよく,さまざまな研究・開発がなされている。

一方で,一見相性がよさそうな両者であるが,気を付けないといけない落し穴がいくつもある。場合によっては,相性が悪い部分もある。また,言語処理の他の分野とはいろいろな点で異なる部分が多いため,すでに言語処理の経験があると,逆に妨げになる場合もある。この部分が語学学習支援のための言語処理の難しさであり,面白さでもある。

本書で伝えたいのは正にこの点である。本書では,語学学習支援のための言語処理における難しさを紹介し,その解決法をできるだけわかりやすく説明することを試みた。また,語学学習支援のための言語処理において重要であるが,あまり知られていない情報やティップスを紹介することにも努めた。
今後,言語処理が語学学習支援に大きく貢献すること,また,その成果が実用化され社会に役に立つことを期待している。本書がその一助を担うことができれば幸いである。

本書を著すにあたり,多くの方々にお世話になった。東京工業大学の奥村学先生には,本書を監修していただくと共に,本書への助言をいただいた。首都大学東京の小町守先生には,本書の構成,内容,章末問題などについて多くの助言をいただいた。また,東京工業大学の高村大也先生と東京大学の川崎義史先生に原稿のチェックをお願いし,両先生から多くの改善案をいただいた。コロナ社様には,本書の刊行のためにたいへんなご尽力をいただいた。これらの方々に改めてお礼を申し上げたい。最後に,裕福でない家庭環境にもかかわらず博士課程まで進学させてくれた両親に感謝したい。

2017年9月 永田亮

1. イントロダクション
1.1 語学学習支援の目的
1.2 本書の目的と読者対象
1.3 本書の構成と読み方
章末問題

2. 処理の対象となるデータ
2.1 処理の対象となるデータの概要
2.2 学習者コーパス
 2.2.1 学習者コーパスの重要性と変遷
 2.2.2 学習者コーパスの構築
 2.2.3 学習者コーパスの特徴
2.3 その他の関連するデータ
2.4 この章のまとめ
章末問題

3. 語学学習支援のための言語処理を支える要素技術
3.1 概要
3.2 文分割
 3.2.1 タスク概要
 3.2.2 性能と実例
 3.2.3 学習者の文章を対象にした処理
3.3 トークン同定
 3.3.1 タスク概要
 3.3.2 性能と実例
 3.3.3 学習者の文章を対象にした処理
3.4 品詞解析と形態素解析
 3.4.1 タスク概要
 3.4.2 性能と実例
 3.4.3 学習者の文章を対象にした処理
3.5 句解析
 3.5.1 タスク概要
 3.5.2 性能と実例
 3.5.3 学習者の文章を対象にした処理
3.6 構文解析
 3.6.1 タスク概要
 3.6.2 性能と実例
 3.6.3 学習者の文章を対象にした処理
3.7 この章のまとめ
章末問題

4. ライティング学習支援
4.1 文法誤り検出と訂正
 4.1.1 和文英訳における文法誤り検出/訂正
 4.1.2 自由記述英文における文法誤り検出/訂正
4.2 キーワード推薦
4.3 この章のまとめ
章末問題

5. リーディング学習支援
5.1 難解語の同定
5.2 難解語の言い換え
5.3 この章のまとめ
章末問題

6. 教材作成支援
6.1 スラッシュ・リーディング教材生成
6.2 英語リズム学習用教材の生成
6.3 語彙問題生成
6.4 この章のまとめ
章末問題

7. 学習者の能力/特徴の分析
7.1 言語能力の自動評価
7.2 学習者コーパスからの特徴表現抽出
7.3 母語干渉の分析
7.4 この章のまとめ
章末問題

付録
A.1 コーパス処理のための便利なコマンド類
A.2 語学学習に関する文献リスト

引用・参考文献
章末問題解答
索引

読者モニターレビュー(‎tuxedocat (yu-s)様)

tuxedocat (yu-s)様のブログにて各章の内容紹介含め,詳細なレビューをいただきました。
下記URLより,是非ご覧ください。
https://log.tuxedokatze.com/bookreview-nlp-for-language-learning/

【ブログより一部抜粋】
 自然言語処理を用いた語学学習支援に関しては、今のところ唯一の書籍だと思います。 また、既存の類書(英書)やサーベイ論文と比べても、取り扱う範囲が幅広く、最近の手法がまとまっている点でよかったです。
 まず、本書は、自然言語処理の側から語学学習支援に関わる方にとっては、心強いサーベイ資料となるはずです。 各種の語学学習支援タスクの取り扱いや、基礎解析技術(品詞タグ付けや依存構造解析など)を学習者コーパスに適用した場合の性能や、 評価尺度についての解説は、特に有益だと思います。
 特徴的なのは、論文にはあまり書かれないような話題が、丁寧に説明されている点です。 この分野特有の難しさを強調するだけではなく、どうやってその難しさに向き合うかについての知見が書かれています。
 たとえば、学習者コーパス構築のためのガイドラインや、どのような前処理や解析を適用すればよいか、 といった内容が詳しく説明されています。 KJコーパス構築の事例をはじめ、永田先生自身の経験や知見が反映されている点で、本書のハイライトかもしれません。 実用的な知識であるというだけでなく、研究の指針としても教わることが多いと感じました。
 一方、本書ではあまり触れられていない事項もあります。 本書では、基礎となる構文解析や機械学習アルゴリズムの解説は少なめです。 今すぐ手法を実装したい、という場合には他の文献にあたる必要がありそうです。
 他の分野から語学教育に関わる方と、自然言語処理の側との橋渡しになる点でも、意義があると感じます。 これを契機に、教育効果の測定や、より良いフィードバック提供の方法などの面で、さらに交流が進むことを期待します。

amazonレビュー

奥村 学(オクムラ マナブ)

永田 亮(ナガタ リョウ)

コンピュータを用いた語学学習支援が盛んに研究されるようになり,商用システムも増えてきました.特に,人工知能,機械学習,更にはコンピュータで知的に言語を処理するための自然言語処理に基づいたアプローチは学術的にも実用的にも注目を集めています.
本書では,「語学学習支援のための言語処理」と題し,自然言語処理や人工知能の関連する技術を分かりやすく紹介することを試みました.本書の特色は,語学学習支援の特殊性を意識して,理論と応用の両面で気を付けるべき点を詳しく解説したところにあります.また,実用に関する情報も多く取り入れました.この部分は,システム開発,語学教育,教育工学などの関連する分野の読者の方にも有益な情報となるのではないかと思います.本書が,語学学習支援の発展に繋がれば筆者として幸いです.

執筆者 永田 亮

これまでにわかっている間違い:
図2.2(p.32)グラフの縦軸と横軸のタイトルが逆
文献97)(p.191)誤:茂松本→正:松本茂