身近な音と音波
高校数学で理解できる程度で,物理を通して「音」や「音波」の本質を解説
- 判型
- A5
- ページ数
- 160ページ
- ISBN
- 978-4-339-01505-8
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
【読者対象】
「音」の伝わり方について基本的な考え方や性質を学びたい高校生,高専生,大学生や社会人。
また,中学・高校の理科教師が音や波について理解を深めるのに役立つ。
【書籍の特徴】
日常では音を感覚として聞くだけで,音が波であると考えることは滅多にないだろう。しかし,音がどのように伝わるのか,あるいは音色の違いはどのように生まれるのかなどを知るには,波としての性質を理解する必要がある。本書では,高校物理でわずかにしか触れられていない音の「波」としての側面に注目し,身近な例をひきながら様々な音の伝わり方の特徴を説明する。また,ワイングラスの鳴音,沸騰音などの音についても解明する。
【各章について】
1章は音についての簡単な歴史である。
2章では,基本となる弦を伝わる波について高校レベルの数学を使って説明する。
3章では,音が伝わるとはどういうことか,音圧の大きさ,音速について述べる。
4章では,楽器や声の音色を理解する上で欠かせない定在波や固有モード,そしてスペクトルについて丁寧に解説する。
5,6,7章で,波が伝わるときに起こる屈折・透過・回折・干渉・ドップラー効果を,実験例を織り込みながら説明する。
8章では,発声や聴覚のしくみ,スピーカー・マイクの原理を説明する。
9章で,音階,ペットボトルを吹いたときの音,グラス・ハープ,水滴が水面に落ちるときの音など,身近な音について解明する。
10章では人体を診断する超音波について,11章では,水面波,地震波,宇宙で伝わる音波について紹介する。
【著者からのメッセージ】
音は誰にとっても身近な現象である。それだけにわかっているつもりでも理解していないことが多い。例えば発声はどのように起こるのか,声や楽器の音色はどうして違うのか,ペットボトルはなぜ鳴るのか,など。物理的な考え方を学ぶことで,音の多彩な現象を理解することが容易になるだろう。
【キーワード】
音,音波,超音波,音速,水面波,地震波,定在波,スペクトログラム,ドップラー効果,衝撃波,ヘルムホルツ共鳴,水滴からの音,ワイングラスの音
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
私たちの日常にはいろいろな音が満ちあふれている。朝,時計やスマホからは目覚ましのベル音が聞こえてくる。テレビ・ラジオは世の中の情報を絶え間なく送ってくる。外に出れば自動車の音が騒がしいし,ラッシュアワーの駅ではいろいろな音が洪水のように押し寄せる。一方,好みの音楽を聴くときは至福のときであるし,鳥の鳴き声や小川のせせらぎの音は心をなごませてくれる。楽しい気分のときは口笛を吹くこともある。ときにはカミナリの鳴音にびっくりして怖い思いもする。人とのコミュニケーションにとって音声が欠かせないことは言うまでもない。
耳で聞こえる音を一般的に「音」と呼んでいる。例として挙げた音は,音源の振動が空気を振るわせ,その空気振動が波として伝わり,耳に入ってきたものである。しかし,私たちは音を感覚として感じるだけで,途中の波としての段階は意識していない。一方「音波」と言うときには,音の発生原因や途中の波としての過程を問題にしている。例えばペットボトルを吹くとなぜ鳴るのか,音がどこからどのように聞こえてくるのか,などのときである。また,空気ではない媒質を伝わる音波もある。イルカは泳ぎながら音波を出してエサなどを探すし,クジラも音波で仲間と交信している。これらの音波は水中を伝わっている。また,海面を伝わる波は,サーフィンを楽しむこともできるが,ときには大きな津波として襲ってくる。地震の振動は地中を伝わってきて大きな災害をもたらす。母胎内の赤ちゃんの写真をとったり,身体内部の病気を診断したりする超音波もある。強い超音波でガンを治療することもできる。これらは波が伝わる媒質が水であったり,地殻であったり,あるいは母親のお腹だったりする。伝わる媒質が異なっているというだけで,波としての基本的な性質は空気中の音と変わりがない。
音についての知識は高校で少しは学ぶが,大学で学ぶことはあまりない。さらに深く学びたいとき,音に関する専門的テキストは数式を多用して初心者にはとっつきにくいし,一般の読み物は説明が簡単すぎて物足りない。本書では,1章で音の簡単な歴史を述べた後,2,3章で音の伝わり方の基礎を説明する。4~7章では,反射・屈折・干渉・回折・ドップラー効果など波としての基本的な現象を,実験例を織り込みながら解説する。8章で発声や聴覚のしくみに注目し,9章では身近にある興味深い音を波の立場から考察する。10章で超音波について,11章で地震波や水面波について取り上げ,宇宙での波についても触れた。基本的性質を十分に理解してもらうため数式もある程度使っているが,高校数学で理解できる程度に抑えてある。物理という拡大鏡を通して「音」を見ると,「波」の側面がはっきり見えてくる。そのことで,多くの「音」の共通点が見えてきて,より理解が深まるのではないかと期待している。この見方は音だけでなく光や電磁波など波動全般についての理解を助ける。本書は,音に興味がある高校生や大学生,あるいは中学高校の理科教員などには特に参考になるのではないかと思う。音に対してより広い見方を身につけてもらえれば幸いである。また,2,3章では高校物理の知識が多少必要であるが,4章以降はどなたでも読めるように書いたつもりである。初めて音を学ぶ方への入門書としても適していると考えている。
本書の内容は明治大学在職中に行った教育・研究の中から得たヒントをもとにしている。また,本書に掲載されたイラストは中学生の小林聖奈さんが描いてくれた。渡辺好章,漢那憲一,城之内悦子の各氏からは内容に関して有益な助言をいただいた。そのほかにも多くの方から直接・間接に貴重な示唆を受けた。ご協力いただいた皆様に心から感謝を申し上げたい。さらに,陰ながら支え温かく応援してくれた家族にも感謝したい。
2026年5月
崔博坤
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
1.音の簡単な歴史
1.1 音はどこを伝わるか
1.2 音の速さを測る
1.3 ささやき回廊
2.波とは
2.1 ばね振り子
2.2 単振動と円運動
2.3 弦を伝わる波
2.4 波の速さ
2.5 波の式
2.6 特性インピーダンスと波のエネルギー
2.7 横波と縦波
2.8 弦の伝わり方の基本式
3.音波とは
3.1 音波の伝わり方
3.2 音波が伝わると熱くなる?
3.3 音圧の大きさ
3.4 音の速さ
3.5 平面波と球面波
コラム:大気圧の1013 hPaとは
4.反射と定在波
4.1 波の反射
4.2 弦の定在波
4.3 固有周波数と固有モード
4.4 閉管での音の共鳴
4.5 音色とスペクトル
ピアノとバイオリンの音色
4.6 気柱共鳴のスペクトル
5.屈折と透過
5.1 波の屈折(スネルの法則)
5.2 最も早く到達するには(フェルマーの原理)
溺れそうな波子さんを早く助けるには
全反射
5.3 大気中での音波の屈折
5.4 海岸に打ち寄せる波
5.5 音の反射率と透過率
コラム:蜃気楼(光の屈折)
6.干渉と回折
6.1 波の干渉
ノイズキャンセリングヘッドホン
コラム:川岸での水面波の干渉
6.2 うなり
情報としてのうなり
6.3 回折
ホイヘンスの原理
水面波の回折
回折角
音の指向性
コラム:競馬八百長事件
7.ドップラー効果
7.1 音源が動くとき
7.2 観測者が動くとき
7.3 動く物体の速さを測る
7.4 衝撃波
水面の衝撃波
光の衝撃波
コラム:ドップラーの生涯
8.音の発生と検出
8.1 発声のしくみ
母音の波形とスペクトル
8.2 聴覚のしくみ
8.3 スピーカー
バスレフ型スピーカー
8.4 マイクロホン
コラム:アヒル声
9.いろいろな身近な音
9.1 音階
9.2 ペットボトルの音(ヘルムホルツ共鳴)
9.3 ワイングラスの共鳴音
コラム:ワイングラスを声で割る
9.4 鳴き龍(反響現象)
9.5 空気の流れから生まれる音
リコーダの音
9.6 水滴が落ちる音
気泡から出る音
9.7 シャンパン泡の音
10.超音波
10.1 超音波とは何か
10.2 身体の中を映す超音波
10.3 集束超音波でガン治療
10.4 超音波洗浄器からの騒音
コラム:クジラも歌をうたう?
11.いろいろな波
11.1 水面波
11.2 地震波
11.3 宇宙では音波は存在しないのか
引用・参考文献
索引









