フーリエ音響学入門

フーリエ音響学入門

ジャンル
発行年月日
2022/06/20
判型
B5
ページ数
198ページ
ISBN
978-4-339-08229-6
フーリエ音響学入門
在庫あり

定価

2,750(本体2,500円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

初学者・若手技術者を主対象とした音響工学とフーリエ変換の入門書。本書終盤にフーリエ変換と親戚関係にあるラプラス変換の基礎を説明し,補章で三角関数・複素指数関数・ベクトル・行列などの初歩数学も解説した。

音響・振動に関する種々多様な分野におけるコンサルティング・ソフト作成・実験代行を業務の一部とする企業の1技術者である筆者は,常に深い専門性と広い総合性を同時に要求され,自身の能力不足を痛感しながら苦闘している.その中で筆者が感じる問題の一つは,客先様における音響分野の先端技術者と新入社員・若手社員・他分野技術者との間の技術力の差である.これを埋めるために用いるべき市販の論文・著書の多くは教育・研究者によって著されたものであり,いずれも学術としては見事に体系化され内容が高度に洗練されているが,ものづくりに直接携わる企業技術者から見れば,どこかしっくりとせず,痒いところに手が届かないもどかしさを感じることがある.

そこで筆者は,関連する技術者・研究者のご協力を得て,特定企業の立場を完全に離れた公正無私な観点から,音響を学ぼうとする初心者・若手技術者を主対象とする入門書を自身で著すことを試みる.本書が上記問題の解決への一助となれば,幸いである.

私達は,会話・情報交換・娯楽に日常使う音響の他,超音波・電流・電磁波・熱波・光波・X線など,あらゆる種類の波動を日々駆使して生きている.産学分野における波動の利用は,機械・電気・制御・医療・建築・土木などで必須であり急増しつつある.

波動は時間と周波数の両領域で表現され,これら両者間の相互変換を担う学術は,上記すべての産業界で重要である.その代表例がフーリエ変換であり,大抵の人は変換の学術・技法への導入口として,フーリエ変換を最初に学ぶ.

本書は,音響工学とフーリエ変換への入門書であり,以下の概要からなる.
第1章 初めての音響学
音響学を初めて学ぶ読者のための章であり,音の定義・特徴・表現方法・種類・性質など,音が有する属性を様々な面から平易・丁寧に紹介している.

第2章 音の物理
音響を物理学の立場から観る章である.2.1節では,1自由度系の振動を運動・変形(力学の初点)とエネルギー・対称性(物理学の原点)の両面から説明する.2.2節では,音を伝搬する振動と捉えてその正体を示す.2.3節では,弦と棒の振動を解析して波動方程式を導き,解を与える.2.4節では,音の伝搬媒体である気体の力学的性質を紹介し,それを伝わる音波のからくりと様相を明らかにする.

第3章 フーリエ解析の基礎
まず,三角関数と複素指数関数で表現するフーリエ級数を紹介する.次にそれから導いた連続フーリエ変換の理論を説明し,その基本性質を述べる.続いてフーリエ解析を実用する際に不可欠な離散フーリエ変換の理論を展開し,基本性質を述べる.その中で,高速フーリエ変換(FFT)の原理と利点を詳しく述べ,現在のフーリエ変換がすべてFFTを用いて実行される理由を述べる.さらに離散フーリエ変換を行う際に発生する種々の誤差の原因を明らかにし,その対処・軽減方法を説明する.

第4章 フーリエ変換の転延
最初に,フーリエ変換の適用例の1つとして合成積(畳み込み積分)の理論を紹介し,入力波形と単位インパルス応答の合成積が入出力間の伝達関数に等しいことを説明する.また,2関数間の関係(類似度)を知るための相関関数とスペクトル密度を紹介し,ある関数と調和関数の相関関数がその関数のフーリエ変換に等しいことを示し,コヒーレンスの概念を導き,誤差を含む入出力関数間の周波数応答関数の推定方法を紹介する.
次に,元来周波数が時間に無関係に一定である波形に用いられるフーリエ変換を音声や自然界の環境音のように変動・変化する波形に転延・適用する手段として有効な,スペクトログラム・ケプストラム解析・ヒルベルト変換を解説し理論展開する.

第5章 ラプラス変換
フーリエ変換と親戚関係にあり音響工学のみでなくシステム論・制御理論・電気工学など多分野で利用される変換手段であるラプラス変換の基礎を分かりやすく説明し,よく使う関数のラプラス変換の公式を紹介し,ラプラス変換の基本性質と応用例を述べる.

補章 三角関数・複素指数関数・ベクトル・行列など,関連分野の理解に必要な初歩数学を極めて平易に解説する.数学の準備が乏しいと感じる方々も,この補章を読破すれば,フーリエ音響学への入口を容易に理解できる構成になっている.

筆者の浅学のため,本書には多くの不足・不正確さ・誤記が存在することを恐れ,これらに関し読者の皆様からご指摘・ご指導・ご教示をいただくことを切に希望いたします.

本書を執筆するにあたり,主に音響工学分野の学協界で活躍され,同時に長年にわたり数多くのご指導を賜っている法政大学教授御法川学博士(工学)に対し,心から敬意と感謝の意を表します.

2022年4月 天津 成美

1. 初めての音響学
1.1 音とは
1.2 音の特徴
 1.2.1 音の高さと音色
 1.2.2 音の強さと大きさ
1.3 音の表現
 1.3.1 波形による表現
 1.3.2 周波数による表現
(1)機器の周波数特性
(2)パワースペクトルとサウンドスペクトラム
1.4 音の分類
 1.4.1 波形による分類
(1)純音
(2)複合音1:調和複合音
(3)複合音2:インパルス
(4)複合音3:白色雑音
 1.4.2 波面による分類
(1)球面波
(2)平面波
(3)定在波
1.5 音の性質
 1.5.1 波動と伝搬
 1.5.2 音速
 1.5.3 波長・周期・周波数
 1.5.4 回折
 1.5.5 屈折
 1.5.6 反射
 1.5.7 干渉
 1.5.8 共鳴
 1.5.9 うなり
 1.5.10 ドップラー効果

2. 音の物理
2.1 振動の力学
 2.1.1 運動と変形(力学の始点)から
 2.1.2 エネルギーと対称性(物理学の原点)から
 2.1.3 エネルギーから見た力学特性
 2.1.4 1自由度系の自由振動
(1)エネルギーの閉ループ
(2)力の釣合と運動方程式
(3)自由振動の発生機構
(3-1)力と速度から
(3-2)エネルギーから
(4)減衰する自由振動
 2.1.5 1自由度系の強制振動
2.2 振動から波動へ
 2.2.1 伝わる振動
 2.2.2 振動の伝達速度
2.3 波動の力学
 2.3.1 弦の振動
(1)支配方程式
(2)波動方程式の一般解
(3)初期条件
(4)境界条件1:一端固定
(5)境界条件2:両端固定
 2.3.2 棒の縦振動
2.4 音波
 2.4.1 気体の力学的性質
 2.4.2 平面波
 2.4.3 音響インピーダンスと音の反射・透過
 2.4.4 音の伝わり方

3. フーリエ解析の基礎
3.1 フーリエ級数展開
 3.1.1 三角関数表現
 3.1.2 フーリエ級数の例
(1)単位インパルス関数
(2)方形波
(3)のこぎり波
 3.1.3 複素指数関数表現
3.2 連続フーリエ変換
 3.2.1 理論
 3.2.2 基本性質
(1)対称性
(2)線形性
(3)時間移動
(4)周波数移動
(5)エネルギーの等価性
 3.2.3 方形波と標本化関数
3.3 離散フーリエ変換
 3.3.1 波形の離散化
(1)標本化
(2)量子化と2進法
 3.3.2 離散フーリエ変換
(1)理論
(2)基本性質
 3.3.3 高速フーリエ変換
3.4 誤差と時間窓
 3.4.1 入力誤差
 3.4.2 折返し誤差
 3.4.3 量子化誤差
 3.4.4 分解能誤差
 3.4.5 漏れ誤差
(1)現象
(2)発生機構
(3)軽減方法1:標本化時間の増加
(4)軽減方法2:ズーム処理
 3.4.6 時間窓
 3.4.7 フーリエ変換と誤差
4. フーリエ解析の転延
4.1 合成積(畳み込み演算)
 4.1.1 インパルス応答
 4.1.2 合成積の原理
(1)離散系
(2)連続系
 4.1.3 合成積のフーリエ変換
4.2 相関関数とスペクトル密度
 4.2.1 相関関数
(1)実関数
(2)複素関数
 4.2.2 スペクトル密度
(1)パワースペクトル密度
(2)クロススペクトル密度
 4.2.3 周波数応答関数とコヒーレンス
4.3 変動・変化するスペクトルの解析
 4.3.1 短い波形の分析
 4.3.2 スペクトログラム
 4.3.3 ケプストラム解析
(1)ケプストラム解析とは
(2)手法の数式説明
(3)音声の声道伝達関数の推定
 4.3.4 ヒルベルト変換

5. ラプラス変換
5.1 ラプラス変換とは
5.2 よく使われる関数のラプラス変換
5.3 ラプラス変換の性質
(1)線形性
(2)相似性
(3)時間領域移動
(4)s領域移動
(5)時間微分1
(6)時間微分2
(7)時間積分
(8)時間t^n積
(9)合成積に関する性質
(10)ガウスの誤差関数に関する性質
5.4 微分方程式への応用

補章A 関数
A1 三角関数
A1.1 基本
A1.2 加法定理
A1.3 微分と積分
A2 複素指数関数
A2.1 複素数
A2.2 指数関数と対数関数
A2.3 テーラー展開
A2.4 複素指数関数
A3 三角関数の直交性
A4 積の微分と積分
A5 いろいろな関数
A5.1 双曲線関数
A5.2 誤差関数
A5.3 ガンマ関数
A5.4 ヘヴィサイドの単位関数
A5.5 ディラックの衝撃関数
A5.6 単位ランプ関数
A6 ロピタルの定理

補章B ベクトルと行列
B1 定義
B2 ベクトルの演算
B3 ベクトルの相関と直交
B4 行列の演算
B5 行列式
B6 固有値と固有ベクトル
B6.1 連立方程式から固有値問題へ
B6.2 固有値問題とは
B6.3 一般固有値問題とは

補章C 音響学の萌芽と進展

参考文献
索引

天津 成美(アマツ ナルミ)

西留 千晶(ニシドメ チアキ)

中野 武史(ナカノ タケフミ)

角田 鎮男(スミダ シズオ)

岩原 光男(イワハラ ミツオ)

長松 昌男(ナガマツ マサオ)

長松 昭男(ナガマツ アキオ)

掲載日:2022/07/04

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