画像診断装置学入門
超音波,X線,磁気共鳴(MRI),核医学を利用した画像診断装置について,撮像方法と生体組織の関係,あるいは撮像方法の特徴や臨床的な利用法について平易に解説した,臨床検査技師,放射線技師必携の画像診断装置学の入門書。
- 発行年月日
- 2007/02/22
- 判型
- B5
- ページ数
- 192ページ
- ISBN
- 978-4-339-07092-7
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
超音波,X線,磁気共鳴(MRI),核医学を利用した画像診断装置について,撮像方法と生体組織の関係,あるいは撮像方法の特徴や臨床的な利用法について平易に解説した,臨床検査技師,放射線技師必携の画像診断装置学の入門書。
画像診断は,現在の医療には欠かすことができないほどに重要な情報を提供してくれる。しかも,画像撮像の技法は多岐にわたっており,画像診断の確定も一つの方法のみでは十分でない場合が多く,X線単純画像,X線CT,MRI,超音波画像,RI画像など種々の情報を組み合わせて,より精度の高い診断を行うことが要請されている。
数多く存在する画像診断法あるいは画像診断装置は,近年急速に発展した高速度コンピュータによる操作と情報処理技術に大きく依存している。撮像原理が発見されてから,試行錯誤を重ねつつ実用化され,普及するまでには半世紀を必要としたものが大半である。したがって,撮像に関するさまざまな技術の進歩と,それと同時に出現した安価で小型の高速度コンピュータが現在の画像診断装置をもたらしたともいえる。
しかし,これらの装置は生理学,基礎医学,臨床医学,物理学,工学の各専門分野の科学者,医師,技術者の知恵の結晶を具現化したものであり,装置に内蔵されているソフトウェアは携わった人々の知識の集積であるといえる。さらに,この種の画像は,生体に外部からX線,磁気,超音波,γ線などの物理的エネルギーを加えたとき,生体の組織への作用形態およびそれによって組織がもたらす情報を検出して構成される。そのことが,それぞれ測定原理の難しさを伴いながらもおのおの異なった画質の特徴を表現している。最終目的は,得られた画像から臨床的にいかに有効な情報を得,診断に役立てるかである。
最初に生体の画像に挑戦したのは,1895年X線を発見したドイツの物理学者W.K.Rontgen(1845~1923)である。夫人の手のX線写真を添付して論文を発表したのが生体画像の最初である。この成果に対してノーベル賞が与えられている。このX線の平面写真は後のX線CTによる人体の断層画像へと発展していく基礎になっていく。後に人体断層画像は超音波断層画像,MRI,RI画像へと大きく発展していくが,撮像に際して加えられる物理的エネルギーが生体組織に与える作用とそこから得られる組織反応情報を工学と生理学の両面から解明して画像化し,かつ臨床的にその情報がどのように有用かということを画像診断上で明らかにすることが大切である。
これらの画像の撮像装置の技術的方法および臨床的意味と診断法については多くの優れた専門書が提供されており,その内容が高度で部分的に多少難解であっても,それぞれの研究者あるいは特定の専門を目指す学徒にとっては誠に良書といえる。
ここでは,特に断層画像の撮像方法と生体組織の関係,画像の撮像方法および特徴や臨床的な利用法について,初歩的で基本的な内容を平明に紹介することを目指している。内容的に高度な専門書を理解するための予備的手段となることを願っている。また撮像のために生体に与えるエネルギーが生体内でどのように作用し,どのようにして画像情報を提供するかを理解する一助になれば更なる幸いである。
2006年12月
木村雄治
1. 超音波診断装置
1.1 発展の歴史
1.2 超音波の性質
1.3 超音波と生体物性
1.4 超音波の発生と受信
1.5 連続波の利用
1.6 パルス波法と画像構成
1.7 パルス波の走査法と分解能
1.7.1 リニア電子走査法(linear electronic scanning)
1.7.2 セクタ電子走査法(sector electronic scanning)
1.7.3 コンベックス電子走査法(convex electronic scanning)
1.7.4 プローブの種類
1.8 電子走査法のアーチファクト
1.8.1 サイドローブとグレーティングローブ
1.8.2 多重反射
1.8.3 鏡面現象(ミラーイメージ)
1.8.4 レンズ効果
1.8.5 後方エコー増強
1.9 超音波ドップラ画像
1.9.1 パルスドップラ法
1.9.2 カラードップラ法
1.9.3 血流情報のカラー表示法
1.10 超音波画像診断装置と臨床応用
1.10.1 心臓の撮像
1.10.2 腹部の撮像
1.10.3 産科領域の撮像
1.11 超音波の安全性(超音波出力の定義と安全限界)
1.12 超音波画像診断装置の特徴
2. X線画像診断装置
2.1 X線の発見とX線装置発展の歴史
2.2 X線の発生
2.2.1 連続X線
2.2.2 特性X線
2.3 X線管の構造
2.4 X線の生体作用
2.4.1 光電効果
2.4.2 コンプトン効果
2.4.3 電子対生成
2.4.4 原子番号によるX線減衰
2.4.5 減弱係数
2.4.6 吸収線量
2.5 X線直接撮影装置
2.6 X線透視撮影装置
2.6.1 X線I.I.とX線TVカメラ
2.6.2 X線透視撮影装置の構成
2.6.3 直接変換方式X線フラットパネル検出器とフィルムレス
2.7 X線CT
2.7.1 装置発展の歴史
2.7.2 測定原理
2.7.3 画像再構成
2.7.4 CT値と画像
2.7.5 CT装置の基本構成(R-R方式を中心として)
2.7.6 ヘリカルスキャン(シングルヘリカルスキャン)CT装置
2.7.7 マルチスライスヘリカルスキャンCT装置
2.7.8 マルチスライスCTの特徴
2.7.9 X線CTの性能評価
3. 磁気共鳴画像診断装置(MRI)
3.1 発展の歴史
3.2 NMRの原理
3.2.1 静磁場と歳差運動
3.2.2 共鳴現象(エネルギーの吸収)
3.2.3 共鳴現象(エネルギーの放出)
3.3 緩和現象
3.4 緩和時間
3.5 パルスシーケンス法
3.5.1 90°パルス-90°パルス法
3.5.2 180°パルス-90°パルス法(反転回復法)
3.5.3 スピンエコー法
3.5.4 パルスシーケンス法による画質
3.6 MRI画像構成法
3.6.1 スライス断面の設定
3.6.2 画素信号の検出
3.6.3 高速撮像法Ⅰ(高速スピンエコー法)
3.6.4 高速撮像法Ⅱ(グラジエントエコー法)
3.6.5 エコープラナーイメージング法
3.7 MR血管撮影
3.7.1 TOF法
3.7.2 PC法
3.8 MRI装置
3.8.1 静磁場発生装置
3.8.2 傾斜磁場
3.8.3 高周波送受信システム
3.8.4 RFコイル
3.8.5 NMR受信コイル
3.9 MRIの画質
3.9.1 SN比の測定
3.9.2 コントラスト雑音比の測定
3.9.3 アーチファクト
3.10 使用上の留意点
4. 核医学画像診断装置(RI)
4.1 RI発展の歴史
4.2 γ線の発生
4.3 γ線の検出
4.3.1 シンチレータ
4.3.2 光電子増倍管(PMT)
4.3.3 光ダイオードと半導体検出器
4.4 シンチレーションカメラ装置
4.4.1 カメラの構成
4.4.2 体内から放射されるγ線
4.4.3 ライトガイドとシンチレータ
4.4.4 位置演算機構
4.5 SPECT装置
4.5.1 シンチカメラ回転型SPECT装置とその分類
4.5.2 リング型SPECT
4.5.3 回転型ガンマカメラのデータ収集モード
4.5.4 データ処理と画像化
4.5.5 回転型ガンマカメラの画像表示法
4.6 PET装置
4.6.1 検出原理
4.6.2 装置の種類
4.6.3 2D-PETおよび3D-PETのデータ収集
4.6.4 SPECTとPETの比較
4.6.5 画像再構成
4.7 SPECT-RIの臨床的意義
4.7.1 脳神経系
4.7.2 内分泌系
4.7.3 呼吸器系
4.7.4 循環器系
4.7.5 消化器系
4.7.6 骨・カルシウム系
4.8 PET-RIの臨床的意義
4.9 核医学装置の安全・保守管理
引用・参考文献
索 引