Gold Standard 詳解 放射線関係法規

Gold Standard 詳解 放射線関係法規

関係法規を読み解くために必要な専門用語の取扱作法や基礎知識を条文を比較しながら学べる

ジャンル
発行年月日
2022/04/28
判型
B5
ページ数
156ページ
ISBN
978-4-339-07249-5
Gold Standard 詳解 放射線関係法規
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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従来の放射線関係法規の教科書は資格試験に合格するために必要な知識、特に条文を並べたものが主流である。
しかし現代の放射線に関する取扱いや管理に関係しては,個人や法人さらには,国そのものに対応するなど,権利や義務などについても,より広範な知識を求められるようになり,医療法や原子力基本法を基軸にした法解釈だけではすでに足りなくなっている。
放射線関連の専門職種といえども、組織の一員であり、社会の一員である以上、その環境を取り囲む法律や規則により社会秩序が保持されている以上は、円滑な業務執行のためにも法解釈やリーガルマインドを熟知する必要がある。
この目的を達成するために本書は実社会でも活用できる基本的な部分から、私法と公法を融合的に理解できることを目指して執筆されている。
具体的には「総論」と「各論」に分けられており、「総論」では従来の放射線関連法規のテキストに不足していた法の基礎知識を、「各論」では従来の放射線関連の法令・法規について重要事項を抜粋して論述している。

診療放射線技師をはじめとする,放射線職種に関係する法律といえば,かつては,診療放射線技師法と放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(旧法の略称では放射線障害防止法)などが列挙されていた。主として前者は診療放射線技師の国家試験に,そして後者は放射線取扱主任者の試験に関与するといった具合であった。確かに過去にはそれで充足されていた時代もあった。

しかし,「今までこれで足りていたから,今後もそれで必要十分であるというわけではない。」と私は考えている。これに反して,「既定の教育時間内での範囲拡充は無理であり,法律家になるわけではないのだから,放射線に関係する条文や試験に出る用語を理解できれば十分である」という保守的な意見が一方にはあることも否定できない。現代社会において放射線を学修する医療系の人財を育成していくためには,複雑化した社会や人間同士の関係を円滑に構築していくために,広汎な法の理解と活用が必要であり,従来型の狭義の理解から広義の理解へと拡充していく必要があると私は考えている。専門性が日々進歩することへの応用として,ネガティブな保守性にならないように,学問領域も自由に開放する必要があると考えてほしい。

関係法規を無機的なものとして学修するのではなく,まず医療に取り組む人財としては「やらないための方便ではなく,どうすればより一層活用できるのかという視点も持って実践すること」が重要である。このために,実社会でも活用できる基本的な部分から,私法と公法を融合的に理解できるようにするため本書を執筆したのである。なぜなら,英文を読み解くのに英単語の理解が不可欠なように,法律の条文並びに内容を読み解くには,事前の専門用語についての取扱作法や基礎知識が不可欠だからである。しかし,これに対応した十分な時間が充当された専門教育がなされてきたのか否かについては,自己の体験からも,はなはだ疑問である。

国家試験対応のみについて考えるならば,こうした主張については一蹴されてしまうかもしれないが,学生にとって重要なことは,大学教育は「考える力」を養う拠点であり,実践力を身につける場でもある。このため,私は実学としての法解釈や関係法規を身につけ,実用することが大いに意義があると力説したい。

国家試験で求められる要素は,特化した知識を持っているかどうかであり,厚生労働省や文部科学省はそれ以上を求めていないとの主張が一方にあり,カリキュラムやテキストに十分に反映されていないことがその大きな理由だとの主張もある。

こうした意見も一理あるかもしれない。しかし,国家試験に求められていないということと学問の必要性とは比較する次元が異なる。そもそも大学教育では,もっと自由に専門性と常識の両方の知識を融合させ,知識不足の間隙を埋めて,実社会で活用できる知識提供と訓練とをすべきであると私は考えている。したがって,放射線関係法規の学習の中で,柔軟で的確な判断に活用できるリーガルマインド(legal mind)を少しでも身につけることで,専門職としての考え方や放射線マネジメントの拡充を図ることができるはずである。

さて,各種の法文の中で使用される用語は,一般人が理解している通常の用語とは意味内容が全く異なる場合が多くある。社会の中で実用するためには,用語を単純に暗記するだけでは足りず,例えば,「取消」や「無効」などに代表される法律用語の理解では,適用される時期や範囲が全く異なる場合などを,多面的にしっかりと正確に理解した上で,考える習慣を身につけることが必要である。

思うに,人の行為や法人の行為について適用される法律には,専門職のみに関わる法律と盲信していても,刑法や民法など趣旨目的が異なる法律が複合的に関係し,適用される場合が多々ある。複雑な法治社会に生きるわれわれは,初めに基礎知識として法律用語の異同を正確に知ってから,順番に専門分野の法知識との融合した学習を進めるべきであると考える。

繰り返しになるが,英会話の勉強には正しい英単語の勉強が不可欠であるといえば理解しやすいと思う。実際の法律の適用に必要とされるような柔軟で的確な判断(リーガルマインドという)の養成も同様であり,こうした学修方式での訓練が,医療環境を含む実社会の問題解決にも有効であると考える。

法律の作法ともいえる,法律関係性及び解釈の順番についての理解や教育が不足していたことをわれわれは謙虚に反省しなければならない。このため,まず,法律の作法を知り,正確な知識を持ち,そのうえで,これを基礎として考える習慣をつけ,適用範囲や法の趣旨を明確に理解していく必要がある。そこで,従来の放射線関連の法規や法令のテキストに不足していた法の基礎知識を本書の総論に収めたのである。

従来の放射線関連の法令・法規については,各論において重要事項を抜粋して論述する。

各論1においては,診療放射線技師法・診療放射線技師法施行令・診療放射線技師法施行規則・医療法・医療法施行規則・労働安全衛生法・電離放射線障害防止規則・人事院規則について,また各論2においては,原子力基本法・放射性同位元素等の規制に関する法律について主として論述し,放射線取扱主任者試験・診療放射線技師国家試験の二大国家試験について関係する事項を詳細に記載する。

Gold Standardとは,もともと金本位のことであるが,社会の中で人びとがGoldに価値を見出し,価値の基準として取り決めたはずである。法律もまた同様である。法治国家であるわが国においても,人びとは法律の基本価値を認め遵守しているはずである。遵守すべき法律について他人事で,まったく知ることもなく,法遵守の継続だけでは足りない。

本書をGold Standardとした意義については,与えられたものを鵜呑みにすることなく,法律や規則を通じて,物事の本質を熟慮してほしいという思いからである。

放射線関係法規は,従来の考え方では,医療と放射線のみに関係する法律と考えられていた。このため,今までの時代の背景や要請としてはそれで十分であった。しかし現代の放射線に関する取扱いや管理に関係しては,個人や法人さらには,国そのものに対応するなど,権利や義務などについても,より広範な知識を求められるようになり,医療法や原子力基本法を基軸にした法解釈だけではすでに足りなくなっている。

放射線関連の専門職種といえども,組織の一員であり,社会の一員である以上,その環境を取り囲む法律や規則により社会秩序が保持されている以上は,円滑な業務執行のためにも法解釈やリーガルマインドを熟知する必要がある。

2022年2月
著者

総論
【法理解のための基礎的確認項目】

1.人(ひと・自然人・法人・者)
2.法律上のひとの権利能力(自然人・法人)(自然人・法人の誕生と死亡)
3.もの・物(有体物)
4.権利と義務
5.能力(権利能力・意思能力・行為能力)
6.物権と債権
7.法益・保護法益
8.時効(取得時効と消滅時効)
9.構成要件該当性・違法性・責任
10.取消・撤回・無効の意味と効果
11.原状回復義務
12.代理・代理人
13.法・法律
14.法のピラミッド
15.法文の読み方
16.法律・法律施行令・施行規則・通達
17.公法・私法
18.各種の関係法規・関係法令(基本法)
19.放射線
20.放射性同位元素
21.放射線発生装置・診療用放射線照射装置・診療用放射線照射器具
22.健康診断
23.管理区域
24.特許・許可・申請・届出(制)
25.放射線施設
26.使用者
27.特定使用者
28.廃棄物施設
29.廃棄業の許可
30.添付書類
31.施設検査
32.定期検査
33.損害の賠償と補償
34.線量限度
35.業(業務)とは
36.医療訴訟(医療過誤訴訟・医療事故訴訟)

各論

各論1
1.放射線の定義

1-1診療放射線技師法(第一条から第三十七条)【抜粋】
1-2医療法・医療法施行規則(重要条文の列記)【抜粋】
1-3人事院規則
各論2
2.用語の定義

2-1原子力基本法(第一章から第九章まで)
2-2放射性同位元素等の規制に関する法律(略称:RI規制法)
2-3放射性同位元素等の規制に関する法律施行令
2-4放射線同位元素等の規制に関する法律施行規則

理解のまとめ

参考文献
索引

坂野 康昌(サカノ ヤスアキ)

中世古 和真(ナカゼコ カズマ)