医用工学入門
本書では,生体現象を工学的に考察し,計測技術と医学的情報の関連や治療装置の物理的な作用を生理学的に理解することを目指して,生体の電気・物理現象の測定装置,医用画像装置,治療機器,安全性などを平易に解説している。
- 発行年月日
- 2001/03/21
- 判型
- B5
- ページ数
- 190ページ
- ISBN
- 978-4-339-07075-0
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
本書では,生体現象を工学的に考察し,計測技術と医学的情報の関連や治療装置の物理的な作用を生理学的に理解することを目指して,生体の電気・物理現象の測定装置,医用画像装置,治療機器,安全性などを平易に解説している。
はじめに
日進月歩の科学技術の発展に,医療の分野も例外なくその恩恵にあずかっている。新しい医用工学技術が医療の発展をもたらし,新医療の進歩がさらに新鮮な思考のもとに,高度な医療技術,医用工学技術を要望する。まさに医学と工学は互いに競合し,協調して医療や福祉に貢献している。このような環境のなかで,臨床工学技士制度(1988年)や救急救命士制度(1991年)が発足し,プレホスピタルケアと院内救急医療体制が充実した。一方で,老人医療,在宅医療,遠隔医療などの医療分野では,医療の専門家や一般市民を問わずいろいろな形で医療に深くかかわることが要求されている。
このように,一般医療の場でも高度医療の領域においても,医学と工学の役割は大きくなっている。遠隔医療のための通信ネットワークや,コンピュータによる医療情報処理は工学技術そのものであり,最先端をいく脳治療の低体温療法や遺伝子治療は医学の独壇場であるがごとく思われるが,これらが最高に効果を発揮するのは医学と工学とが密に融合してはじめて得られるものである。
医用工学は,今までややもすれば医療に役立つ技術という考え方をしがちであるが,本来は,生体を医学の立場から客観的に考察し,工学からは理論的に現象を解明して,その成果をどのように医療に役立てるかを両者が追究する医学と工学の境界領域にあるものである。
このような観点から,医用工学を単なる機器の技術的内容として理解するのでなく,生体とあるいは生理現象とい力汀こ深くかかわっているかを広く理解することが必要ではないかと思われる。
ここでは初歩的・基本的なテーマが中心ではあるが,医学と工学との関係での技術の重要さに少しでも多く接してほしいと願っている。
2001年1月
著者
1. 医用工学とは
2. 医用工学発展の歴史
2.1 心電計…4
2.1.1 心電計の測定原理と構成…4
2.1.2 心臓における興奮伝導と心電図の発生…7
2.1.3 心電信号の検出(電極と皮膚の性質)…8
2.1.4 生体と増幅器の結合…9
2.1.5 心電計の周波数特性…11
2.1.6 心電計の記録方式…13
2.1.7 心電計の規格…15
2.1.8 心電図の利用拡大…17
2.1.9 心電図の解析…17
2.2 脳波計…25
2.2.1 脳波計の構成…25
2.2.2 脳波の性質…28
2.2.3 脳波の発生機序:脳波計はなぜ誘導電極数が多いのか…29
2.2.4 脳波記録で何を知ろうとするか…31
2.2.5 脳波の解析…32
2.3 血圧計…36
2.3.1 観血式血圧計…36
2.3.2 非観血式血圧計…39
2.3.3 血圧は変動するもの(ホルタ自動血圧計)…41
3. 医用電子機器の種類
3.1 生体現象計測・監視機器…42
3.1.1 生体物理現象検査用機器…42
3.1.2 生体電気現象検査用機器…43
3.1.3 生体検査用機器…43
3.1.4 生体現象監視用機器…43
3.2 画像診断装置…44
3.3 生体機能補助・代行機器…44
3.4 治療および手術機器…45
3.5 医用情報システム…45
3.6 その他のシステム…45
4. 人体からの情報収集
4.1 人体にエネルギーを与えないで検出する情報…46
4.1.1 生体電気信号…46
4.1.2 生体振動現象…47
4.1.3 温度情報…49
4.1.4 呼気ガス成分の分析…51
4.1.5 磁気現象の検出…51
4.2 人体にエネルギーを与えて検出する情報…52
4.2.1 光による検出…52
4.2.2 電気インピーダンス法による検出…53
4.2.3 加圧による検出…53
4.2.4 超音波を加える検出…55
4.2.5 磁気の印加による検出…56
4.2.6 放射線による検出…57
5. 生体物性
5.1 電気特性…58
5.1.1 細胞の性質…58
5.1.2 組織の周波数特性…60
5.1.3 電磁波の透過性…61
5.2 磁気特性…62
5.3 放射線特性…62
5.4 機械特性…63
5.5 熱特性…64
5.6 光特性…65
6. 医用電子回路
6.1 差動増幅器…67
6.1.1 差動増幅回路の特性…67
6.1.2 弁別比の向上方法…68
6.1.3 バッファアンプの利用法…69
6.2 フローティングアンプ(アイソレーションアンプ)…70
6.2.1 フローティングの意味…70
6.2.2 フローティングの方法…70
6.2.3 フローティングと弁別比…72
6.3 テレメータ回路…72
6.3.1 送信機…73
6.3.2 受信機…74
6.4 変換素子と増幅回路…76
6.4.1 ストレインゲージ…76
6.4.2 圧電素子…77
6.4.3 可動コイル素子…78
6.4.4 サーミスタ…78
6.4.5 フォトダイオード…79
6.4.6 差動トランス…80
7. 医用機器各論
7.1 筋電計…81
7.2 呼吸流量計(電子式スパイロメータ)…84
7.3 パルスオキシメータ…87
7.4 心拍出量計…90
7.5 炭酸ガスモニタ…92
8. 患者監視システム
8.1 患者監視の情報と測定の特徴…94
8.2 ICU,CCUのモニタ(一人用患者監視装置)…96
8.3 多人数用監視システム…97
8.4 分娩監視装置…98
8.5 新生児監視装置…100
8.6 患者監視と情報ネットワークシステム…103
9. 画像診断装置
9.1 超音波画像診断装置…105
9.1.1 測定原理…105
9.1.2 画像の作り方―パルスエコー法…106
9.1.3 画像の作り方―パルスドップラ法…108
9.1.4 プローブの種類と特性…109
9.1.5 超音波画像の特徴…111
9.2 X線画像診断装置…112
9.2.1 X線の発生と制御…112
9.2.2 透視撮影と直接撮影(実時間DR法)…113
9.2.3 X線CT…115
9.3 RI画像診断装置…119
9.3.1 γ線の性質…119
9.3.2 SPECT…119
9.3.3 PET…122
9.4 MRI装置…122
9.4.1 測定原理…122
9.4.2 装置の構成…124
9.4.3 緩和時間の生理学的意味…125
9.4.4 MRアンギオグラフィ(血流描画法)…125
9.4.5 MRIの長所と短所…126
9.5 内視鏡…127
10. 治療機器
10.1 ペースメーカ…129
10.2 除細動器…131
10.2.1 体外式除細動器…131
10.2.2 植込型除細動器…132
10.2.3 ICD植込者の生活環境…134
10.3 超音波吸引手術装置…135
10.4 電気メス…136
10.5 レーザメス…136
11. 人体機能補助装置
11.1 補聴器…139
11.1.1 補聴の要因…139
11.1.2 体外式補聴器…141
11.1.3 植込式補聴器…142
11.1.4 聴力と大脳の機能…143
11.1.5 新生児・乳幼児の補聴法…144
11.2 人工透析…148
11.2.1 腎機能と血液透析…148
11.2.2 体外式血液透析法…150
11.2.3 腹膜透析法…152
11.3 その他の補助装置…154
11.3.1 人工心肺装置…154
11.3.2 植込式人工心臓…154
11.3.3 大動脈内バルーンパンピング装置…155
12. 医療情報システム
12.1 コンピュータがシステムを作る…156
12.2 システムの広域性…158
12.3 システムの社会的役割…159
13. 安全対策
13.1 安全の概念…162
13.2 人体の電流反応(マクロショックとミクロショック)…163
13.3 電撃の安全対策の保護手段と程度…164
13.3.1 電撃に対する保護の形式(保護手段)による分類…164
13.3.2 電撃に対する保護の程度(使用目的)による分類…164
13.3.3 漏れ電流の許容値…165
13.3.4 単一故障状態…166
13.3.5 医療環境の安全管理(EPRシステム)…166
13.3.6 漏れ電流測定…166
13.4 電磁環境と安全…167
13.4.1 電波障害に対する安全…167
13.4.2 電磁的両立性…168
13.5 治療装置の安全…169
13.5.1 除細動器…169
13.5.2 電気メス…169
13.5.3 レーザメス…170
13.6 システム安全…171
13.6.1 機器に対するシステム安全…171
13.6.2 人為的ミスの安全対策…173
参 考 文 献…175
索 引…176