基礎から学ぶ級数論 - フーリエ級数入門 -

基礎から学ぶ級数論 - フーリエ級数入門 -

書籍で紹介されている音声・動画ファイルも公開

ジャンル
発行年月日
2021/11/15
判型
A5
ページ数
208ページ
ISBN
978-4-339-06122-2
基礎から学ぶ級数論 - フーリエ級数入門 -
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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  • 内容紹介
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  • 広告掲載情報

本書では,小学校で学んだ簡単な数列の知識から始まり,なだらかな稜線を辿り「フーリエ級数の計算」という名の双頭の一つ目の山頂を目指します。さらにもっと高みを目指したい読者のために,難解な「フーリエ級数の収束性」という基礎論の二つ目の頂上も用意してあります。読者の方々が小学校,中学そして高校レベルの知識へと段階的に進み,徐々に新しい定理や知識を身に付けていくことができるよう,以下の構成としました。

1章「フーリエ級数の導入―フーリエ級数の身近な応用例―」では,ピアノの音をフーリエ解析することで,フーリエ級数が生活の中でどのように利用できるかの概要を学び,目的を明確にします。一つの応用例を通して,目指す一つ目の山頂の目標を明確にします。「なぜ基本的な波で表すことが可能なのか」という疑問をもつことが大切です。理解できない部分があっても,まったく問題ありません。また,級数の基本となる等比数列と等差数列について学びます。
2章「数列の収束性―ε-δ論法への挑戦―」では,高校までで学んだ数列の収束や発散について学びます。しかし,この章では,のちの5.6節で学ぶフーリエ級数の収束性の証明に必要となるε-δ論法が出てきます。でも安心してください,双頭の二つ目の山頂を目指さない人は,ななめ読みあるいは読み飛ばしても構いません。ε-δ論法やそれに続く上極限や下極限などは,数学を専門とする人以外は必要ないからです。
3章「無限級数-べき級数を学ぶ,その前に―」では,べき級数を理解するために必要となる知識として,無限級数の収束の概念,収束するのか発散するのかを調べられるさまざまな判定法などについて学びます。
4章「べき級数―フーリエ級数を学ぶ最後の準備―」では,べき級数,そしてテイラー展開やマクローリン展開を学びます。ここでは,級数が収束する領域を表す収束半径という概念も学びます。
5章「フーリエ級数―目標に到着,フーリエ級数―」では,複雑な関数をf(x)を直交関数系と呼ばれる三角関数を用いて表す方法について考えます。まずそのために必要なオイラーの公式と三角関数のおもな公式,周期の概念,直交関数系の概念を学んでから,フーリエ級数の基本について学びます。最後に,具体的な関数をフーリエ級数に展開する方法についても学びます。

本書では,重要あるいは難解そうな定理には,詳細な証明を載せるように心がけました。そして,それらの定理の使い方を学ぶために例題を用意してあります。例題には,わかりやすい解答過程を載せるようにしました。また,各章の章末には章全体の理解確認の問題を用意してあります。各章末問題の解答は,詳細に計算過程を載せるように心がけました。さらに,基本的な計算過程のほかに理解を補う別解法がある場合には,その過程も載せるようにしています。
なお,本書ではフーリエ級数による身の回りの波の解析としてピアノの音を扱っています。また,例題や問題には,図や動画を用いて説明しています。それぞれQRコードを付してありますので,ぜひ動画を見て理解を深めてください。

ヒトにとってコミュニケーションは,意思などを相手に伝えるための大切な手段です。通常,ヒトは音声によりコミュニケーションを取っています。普段何気なしに使っている言葉(言語)は,母音/a/,/i/,/u/,/e/,/o/,子音/k/,/s/,•••などの有限の音素と呼ばれる単位の組合せから無限の表現を生み出すことができます。楽譜から生み出されるオーケストラの奏でる音楽を想像してみてください。これも有限の記号から生み出される無限の音の世界です。では,数学はどうでしょうか?数学も有限の記号群で数式を構成して数学の深遠な無限の世界を構築しています。数学者やその卵である数学科の学生は,数式を私たちが何気なしに使っている言葉のように理解できるかもしれません。しかし,多くの人は,数式を見てもなかなかなにを表しているのか,現実世界ではどのような意味をもつかまでは理解するのが難しいのではないでしょうか。

そこで本書は,小学校で学んだ簡単な数列の知識から始まり,なだらかな稜線を辿り「フーリエ級数の計算」という名の双頭の一つ目の山頂を目指します。さらにもっと高みを目指したい読者のために,難解な「フーリエ級数の収束性」という基礎論の二つ目の頂上も用意してあります。すなわち本書は,片言の数学言語を駆使して,小学校で学んだ数列の概念から始まり,私たちの身の回りにあふれているさまざまな波を解析するのに必要となるフーリエ級数の基礎を学びたい読者を想定して構成しています。

本書を読み進めるために最低限必要な数学の知識は,小学生の頃の数列の考え方です。本書は5章で構成されています。はじめに,1章においてピアノの音をフーリエ解析することで,フーリエ級数が生活の中でどのように利用できるかの概要を学び,目的を明確にします。一つの応用例を通して,目指す一つ目の山頂の目標を明確にします。「なぜ基本的な波で表すことが可能なのか」という疑問をもつことが大切です。理解できない部分があっても,まったく問題ありません。そして1章では助走として数列の基礎も学びます。つぎに,2章では,高校までで学んだ数列の収束や発散について学びます。しかし,この章
では,のちの5.6節で学ぶフーリエ級数の収束性の証明に必要となる,あの身の毛もよだつε−δ論法が出てきます。でも安心してください,双頭の二つ目の山頂を目指さない人は,ななめ読みあるいは読み飛ばしても構いません。ε−δ論法やそれに続く上極限や下極限などは,数学を専門とする人以外は必要ないからです。3章では,フーリエ級数を理解するための基礎知識として,級数とその収束や発散を判定するための定理を学びます。4章では,フーリエ級数のための最後の準備として,べき級数,そしてテイラー展開やマクローリン展開を学びます。ここでは,級数が収束する領域を表す収束半径という概念も学びます。最後の5章では,フーリエ級数を学ぶときに必要な直交関数の概念を学び,仕上げとしてフーリエ級数へとつなげていきます。でも読者の中には,すぐにフーリエ級数を求めたいという人もいるかもしれません。その場合には,すべて読み飛ばして,5.4節を読み,そこの例題が解ければ十分かもしれません。

ここでは,小学校,中学そして高校レベルの知識へと段階的に進み,徐々に新しい定理や知識を身に付けていきます。各項目とフーリエ級数の計算・理解との関係は,目次の⋆の数で表してありますので,参考にしてください。フーリエ級数の計算をできるようになるためには⋆⋆まで,フーリエ級数の原理を理解したい場合は⋆⋆⋆までの知識が必要となります。そして,双頭の二つ目の山頂を目指すためには,⋆⋆⋆⋆⋆までの知識が必要となります。

級数論とフーリエ級数を学ぶためには,さまざまな定義や定理を理解しなければなりません。重要あるいは難解そうな定理には,詳細な証明を載せるように心がけました。そして,それらの定理の使い方を学ぶために例題を用意してあります。例題には,わかりやすい解答過程を載せるようにしました。また,各章の章末には章全体の理解確認の問題を用意してあります。各章末問題の解答は,なるべく詳細に計算過程を載せるように心がけました。さらに,基本的な計算過程のほかに理解を補う別解法がある場合には,その過程も載せるようにしています。

本書には,フーリエ級数による身の回りの波の解析としてピアノの音を扱っています。また,例題や問題には,図や動画を用いて説明しています。QRコードを付してありますので,ぜひ動画を見て理解を深めてください。これらの動画はすべて,数式処理言語であるMathematica12を用い,計算したり描画したり,そして動画ファイルを生成しています。興味のある人は,Mathematicaにも挑戦して,問題を解いてみてください。数式処理言語を通して,新たな視野が広がり,数学の楽しさの片鱗が見られるかもしれません。

なお,本書は先に出版した『基礎から学ぶ整数論—RSA暗号入門—』の姉妹本です。『基礎から学ぶ整数論』が工学院大学情報学部の1年生共通科目として設置している「情報数学および演習3」の教科書としてまとめたものでした。本書は,そのつぎのクォータに設置されている「情報数学および演習4」の講義と演習の2コマ連続×全7週のクォーター科目の全14コマで扱う内容となっています。実験科目などでは,波形解析はあるものの,その基礎となる講義科目はありませんでした。そこで,2009年に級数論の講義を開始し,フーリエ級数までを教えることになりました。そして,2016年から情報学部全体の1年生基礎科目となり,2020年には,フーリエ級数の収束とその関連知識を追加して,出版準備に取り掛かりました。

本書の校正にご協力をいただいた本学の非常勤講師の渡邉桂子先生,三浦章先生には,わかりにくいところなどいろいろご意見をいただいたことに感謝いたします。また,2020年には,情報数学4に新たなメンバーが入りました。その一人の本学の教育推進機構・数学科の齋藤正顕先生には,数学的な視点でいろいろチェックをしていただき感謝いたします。また,情報学部情報デザイン学科の高橋義典先生には,わかりにくい個所などのコメントをいただき感謝いたします。

最後に,出版を快諾していただくとともにさまざまなコメントをいただいたコロナ社の皆さまに感謝いたします。

2021年9月
長嶋祐二,福田一帆

(QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です)

1. フーリエ級数の導入―フーリエ級数の身近な応用例―
1.1 身近な音の話
 1.1.1 ピアノの音を調べる
 1.1.2 ピアノの和音の分析
1.2 複雑な関数や波を簡単な関数で表す
 1.2.1 べき級数で表す
 1.2.2 三角関数で表す
1.3 数列の基礎
 1.3.1 等差数列
 1.3.2 等比数列
 1.3.3 漸化式
章末問題

2. 数列の収束性―ε-σ論法への挑戦―
2.1 数列の収束
2.2 数列の発散
2.3 有界と上極限・下極限
 2.3.1 有界とは
 2.3.2 上極限と下極限
 2.3.3 コーシー列とは
2.4 数列の極限
 2.4.1 数列の極限の分類
 2.4.2 数列の極限に関する定理
2.5 単調数列
章末問題

3. 無限級数べき級数を学ぶ,その前に
3.1 無限級数
3.2 正項級数
3.3 正項級数の収束判定法
 3.3.1 比較判定法
 3.3.2 コーシーの判定法
 3.3.3 ダランベールの判定法
 3.3.4 積分判定法
3.4 絶対収束と条件収束
 3.4.1 交項級数(交代級数)
 3.4.2 絶対収束
章末問題

4. べき級数フーリエ級数を学ぶ前の最後の準備
4.1 べき級数とは
 4.1.1 べき級数の収束
 4.1.2 収束半径
 4.1.3 収束・発散と収束半径
4.2 べき級数の収束半径を求める定理
 4.2.1 コーシー・アダマールの定理
 4.2.2 ダランベールの定理
4.3 べき級数の項別微分・項別積分と収束半径との関係
 4.3.1 べき級数の収束半径に関する定理
 4.3.2 べき級数の性質と項別微分・項別積分
4.4 関数のべき級数展開
 4.4.1 マクローリン級数
 4.4.2 テイラー級数
章末問題

5. フーリエ級数ついに目標に到着
5.0 三角関数に関する公式
 5.0.1 オイラーの公式
 5.0.2 加法定理と積和変換公式
5.1 周期関数
 5.1.1 周期関数の性質
 5.1.2 周期関数に関するおもな定理
5.2 偶関数と奇関数
 5.2.1 偶関数
 5.2.2 奇関数
 5.2.3 偶関数と奇関数の性質
5.3 直交関数系
 5.3.1 ベクトルの内積と直交
 5.3.2 関数の内積と直交
 5.3.3 関数列の直交関数系
 5.3.4 三角関数の直交関係
5.4 フーリエ級数
 5.4.1 フーリエ係数の導出
 5.4.2 偶関数と奇関数のフーリエ級数
 5.4.3 任意の2π区間I=[c,c+2π]のフーリエ級数
 5.4.4 任意の周期:T=2Lへの応用
5.5 複素フーリエ級数
 5.5.1 フーリエ係数の複素形式
 5.5.2 任意の周期:T=2Lの場合
5.6 フーリエ級数の収束性
 5.6.1 不連続関数のフーリエ級数
 5.6.2 ベッセルの不等式
 5.6.3 チェザロの総和法
 5.6.4 フーリエ級数の収束性
 5.6.5 不連続点での収束

章末問題
引用・参考文献
章末問題解答
索引

読者モニターレビュー【やまけー 様(ご専門:ソフトウェアエンジニア)】

本書はフーリエ級数の導入として、ピアノの音とフーリエ級数の関係性について触れており、
親近感を持つことができた。また、本書のさまざまな場面でQRコードのリンクから
音やさまざまなグラフを視覚的・聴覚的に感じ取れるのは理解を手助けしており、またそれ自身面白いと感じた。
フーリエ級数論を展開していく上で、数学的な準備として数列や級数の基本から扱っており、
高校数学の教科書のような丁寧な説明や例題などで高校数学にあまり自信がない人にも配慮がなされている。
特にε-N論法は数学科の学生でもつまずくポイントであるため丁寧に解説されていて読みやすく感じた。
級数等の収束判定法や、べき級数展開についても丁寧に解説されており安心して読むことができた。
フーリエ級数論については、他の本では省略されるような三角関数の基本的な積分の計算から丁寧に解説されている。
高校数学に自信がある人からすると説明が長いかもしれないが自信がない人にはちょうど良いと思う。
内容としてもフーリエ級数の各点収束性の定理の証明も丁寧に記述されているため、
時間はかかるかもしれないが初学者でも理解することはできると感じた。他にも、初学者向けと思いきや
チェザロ和やフェイエールの定理についても扱っており内容としても十分だと感じた。
総合的に、数学自体はあまり自信がなくてもフーリエ級数の基本を理解したいという人向けにはおすすめできると感じた。

読者モニターレビュー【ボルテージ 様(ご専門:制御工学,制御理論,ロボット工学)】

本書は,フーリエ級数の入門書である.高校数学で学ぶ,数列の基礎や漸化式といったトピックを復習したあと,級数の収束やその判定条件等をわかりやすく説明している.特に,例題が多く収録されており,演習にも最適である.また,私の経験上,数学の専門書には具体的な例や実世界のどこで役に立つかなどの説明がない,もしくは乏しい事が多い.しかしながら本書は,フーリエ級数がどのように役立つかを具体例を用いて説明している.また,QRコード等を読み込むことで教科書内のコンテンツを視覚的また音声等で楽しむこともできる.数学の専門書の性質上,式の計算や,定理,証明等が多いが,コンテンツで得られた知見を噛み締めながら,本書と向き合えばよいでしょう.

amazonレビュー

長嶋 祐二

長嶋 祐二(ナガシマ ユウジ)


「会議・プレゼンテーションのバリアフリー―“だれでも参加”を目指す実践マニュアル ―」(電子情報通信学会 編・発行,情報保障ワーキンググループ 編)の編著者。

※illustration by Takayuki

福田 一帆(フクダ カズホ)

掲載日:2021/12/27

「日本音響学会誌」2022年1月号広告

掲載日:2021/11/01

「電子情報通信学会誌」2021年11月号広告

掲載日:2021/10/18

「数理科学」2021年11月号広告

掲載日:2021/10/14

情報処理学会誌「情報処理」2021年11月号広告