性能保証型インフラアセットマネジメント - 道路と道路橋のリスクマネジメント -

性能保証型インフラアセットマネジメント - 道路と道路橋のリスクマネジメント -

性能保証型インフラアセットマネジメントの必要性や課題,今後の展望等実例を交えて解説。

ジャンル
発行年月日
2022/11/18
判型
A5
ページ数
336ページ
ISBN
978-4-339-05278-7
性能保証型インフラアセットマネジメント - 道路と道路橋のリスクマネジメント -
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インフラを構成する構造物の性能は,インフラに求められる機能や役割さらにはそれがもつ社会的価値を保証するための前提条件に過ぎない。そのためインフラアセットマネジメントの最適解を得るためには,個々の構造物の物理的性能のみに着目するのではなく,本来の目的であるインフラそのものの機能や役割といったインフラ性能の保証水準に目標をおいたマネジメントを実現しなければならない。そのとき,道路ネットワークのようなインフラは,自然災害や老朽化のみならず巨大地震のような予測困難な事態に遭遇する可能性がある一方で,その機能の低下や喪失は大きな社会的影響をもたらす。そのため,インフラの性能保証を目標としたアセットマネジメントでは,対処の限界を認めたうえで社会合意の元で限界への対処が適切に行われなければならず,そこには自ずとリスクマネジメントの概念が取り入れられなければならないことになる。
本書では,このようなマネジメントを「性能保証型インフラアセットマネジメント」と名付け,道路と道路橋を題材として,その実現可能性と課題について俯瞰的整理がなされるとともに,その実現の鍵を握る構造物の整備水準や管理水準を制御する技術基準の性能規定化の方法とその意義について詳解される。
構造工学や設計技術,維持管理工学のみならず,インフラ技術基準論,リスク学,公共調達の原理,公共経済学など広範な分野の知見を備えることが望まれる性能保証型インフラアセットマネジメントの実践に関わる実務者や研究者,あるいはそれらを目指す学生にとっても必読の書である。

インフラ構造物に対して,科学的根拠や統計データを用いた将来推計に基づく計画的維持管理(アセットマネジメント)を実践しようとする取り組みが進んでいる。しかし,インフラを構成する構造物の性能は,インフラに求められる機能や役割,さらにはそれがもつ社会的価値を保証するための前提条件にすぎない。そのためインフラアセットマネジメントの最適解を得るためには,構造物の性能のみに着目するのではなく,本来の目的であるインフラの性能保証水準に目標をおいたマネジメントを実現しなければならないはずである。そのとき,インフラのあり様には国土事情やそれが形成されてきた歴史的経緯や経験,インフラを取り巻く社会制度が密接に関係するために,これらを適切にマネジメントに反映させることが重要となる。また,多くのインフラは巨大災害や予測困難な事態に遭遇してその機能が損なわれると,大きな社会的影響をもたらす可能性がある一方で,その社会的役割からは,理由のいかんによらずできるだけ機能し続けてほしいとの期待を背負っている。そのため,インフラのアセットマネジメントでは,対処の限界を認めたうえで社会的合意のもとで限界への対処を行わなければならず,そこにはおのずとリスクマネジメントの概念が取り入れられなければならないことになる。

本書は,このようなマネジメントを「性能保証型インフラアセットマネジメント」と名付け,その実現可能性と課題について,道路を題材として俯瞰的整理を試みたものである。1章ではリセットできないさまざまな制約や課題を継承していくインフラの特徴を概観し,2章ではインフラマネジメントの本質的な制御対象であるインフラの価値とその評価の課題を取り上げる。3章ではインフラの宿命である大規模災害等対処に限界のある状況に対して,リスクマネジメントの概念の導入の必要性とその方法について考察する。4章では,計測困難なインフラの存在価値と,インフラの調達や運用には不可避な経済的価値評価の関係を整理し,リスクマネジメントとアセットマネジメントの両立における課題を明らかにする。5~7章では,インフラとしての性能保証の拠り所としての構造物の物理的性能をそのライフサイクルを通じて保証するための方法論として性能設計・性能診断のあり方について述べるとともに,インフラマネジメントの意思決定に不可欠なリスクコミュニケーションツールとして,構造物の物理的性能とそれによって保証されるインフラ性能の関係を見える化する方法についての提案を試みる。最後の8章では,本書の主旨を総括するとともに今後の展望について述べる。

本書で提案する性能保証型インフラアセットマネジメントの実践には,構造工学や設計技術,維持管理工学のみならず,インフラ技術基準論,リスク学,公共調達の原理,公共経済学等の広範な分野が関係しており,関係者がそのことを理解しているだけに留まらず,できるだけ多くの知見を有していることが重要であることは間違いない。本書がインフラマネジメントの従事者や関連の研究・技術開発に携わる産官学の技術者や研究者に有益な情報を提供するものとなることを期待したい。

本書は,2016年4月から2022年3月まで一般財団法人橋梁調査会の寄附で京都大学経営管理大学院に設置された道路アセットマネジメント政策講座における,小林潔司京都大学名誉教授をはじめ内外の連携研究者との議論を踏まえて著者の考えをとりまとめたものである。関係者の皆様に深く感謝申し上げるとともに,本書の内容はすべて著者個人の見解であることを断っておく。

本書の刊行を快く引き受けていただいたコロナ社には深く感謝申し上げる。また,京都大学経営管理大学院の浅田芙美佳氏には,文献調査から原稿チェック,カバーデザイン制作に至るまで多大なる御協力をいただいた。ここに記して感謝の意を表したい。

2022年9月
玉越隆史

1.はじめに(マネジメント対象としてのインフラの特徴)
1.1 インフラとは何か
 1.1.1 インフラの概念と定義
 1.1.2 インフラの公共的性質
1.2 インフラの成立と発展の経緯
 1.2.1 インフラの成立(日本の道路インフラの歴史を例に)
 1.2.2 近代以降の日本の道路
1.3 インフラを取り巻く状況の変化と影響
1.4 まとめ
引用・参考文献

2.インフラの価値(マネジメントの目的)
2.1 マネジメントの目的と目標
2.2 道路インフラマネジメントの目的関数
 2.2.1 道路インフラの価値
 2.2.2 道路インフラの価値の評価
2.3 まとめ(マネジメントの目標の設定と課題)
引用・参考文献

3.インフラマネジメントの責任と負担
3.1 インフラの障害とその影響
3.2 リスクとリスクマネジメント
 3.2.1 リスクとその定義
 3.2.2 リスクへの対処
3.3 リスクマネジメントとリスクガバナンス
 3.3.1 リスクガバナンスの構成
 3.3.2 リスクアロケーション
 3.3.3 公共財の性能保証体制
 3.3.4 セーフティネット
3.4 リスクコミュニケーション
 3.4.1 リスクコミュニケーションとは
 3.4.2 限界の共有
 3.4.3 リスクコミュニケーションの方法
3.5 まとめ
引用・参考文献

4.インフラの運営と運用(=公共調達)の実際
4.1 目的と目標の設定
 4.1.1 インフラマネジメントの目的と目標
 4.1.2 公共事業の価値の評価
 4.1.3 道路構造物の機能の評価
4.2 資産的価値とその評価
 4.2.1 インフラマネジメントと資産価値
 4.2.2 資産価値評価における論点
4.3 調達と運営の方法
 4.3.1 公共調達制度
 4.3.2 PPP/PFI手法
4.4 まとめ
引用・参考文献

5.インフラの性能とその保証(整備技術)
5.1 インフラの性能と技術基準
 5.1.1 インフラの機能と構造物に対する要求
 5.1.2 要求性能の実現方策
5.2 設計技術
 5.2.1 設計思想と設計哲学
 5.2.2 照査体系
 5.2.3 耐荷性能の評価
 5.2.4 解析手法
 5.2.5 耐久性能
 5.2.6 その他の性能
5.3 まとめ
引用・参考文献

6.インフラの性能とその保証(保全技術)
6.1 現有性能とその評価
 6.1.1 点検の必要性
 6.1.2 点検と診断の関係
 6.1.3 性能評価としての診断
 6.1.4 診断に必要な情報
 6.1.5 診断の限界
6.2 耐荷性能評価の方法
 6.2.1 現有性能推定の前提条件
 6.2.2 状況(荷重条件)の推定
 6.2.3 状態(応答)の推定
 6.2.4 状態評価と対策(補修補強)
6.3 データマネジメント
6.4 まとめ
引用・参考文献

7.性能保証型インフラアセットマネジメント
7.1 インフラアセットマネジメントと性能保証
 7.1.1 パフォーマンス評価とリスク評価
 7.1.2 リスク評価の概要
 7.1.3 道路と道路構造物のリスクの関係
 7.1.4 道路におけるリスク評価(見える化の方法)
7.2 将来推計
7.3 まとめ
引用・参考文献

8.おわりに(インフラマネジメントのあるべき姿)

索引

読者モニターレビュー【 ジャックダニエルテネシーハニー 様(ご専門:建設コンサルタント)】

本書全般にわたり、時代背景や法令、判例、事例などをたくさん挙げ、「インフラとは何か」、「インフラが抱えている課題点」などインフラに関して多方面から丁寧に解説し、インフラマネジメントの必要性や重要性をわかりやすく説明しています。また、それを整備する技術基準や保全技術について、過去からの経緯、最新の設計思想等がコンパクトにまとめられており、設計の基礎知識が学べる書でもあると思います。さらに、参考文献も各章ごとにまとめられ、「深く追求したい」・「学びたい」読者に使いやすいように配慮されています。

そのため本書は、道路管理者を含む実務者だけでなく、土木工学を学んでいる学生など、インフラに関わっている人・これから関わる人の必携の本であると思われ、入門書・参考書として、広く活用されることを望みます。

玉越 隆史(タマコシ タカシ)

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日本オペレーションズ・リサーチ学会誌「オペレーションズ・リサーチ」2023年7月号

掲載日:2023/01/19

読売新聞広告掲載(2023年1月19日)

掲載日:2023/01/11

「日本機械学会誌」2023年1月号

掲載日:2022/12/21

東大土木・社会基盤同窓会 会員名簿(2022-2023)広告

掲載日:2022/11/28

日刊工業新聞広告掲載(2022年11月28日)

掲載日:2022/11/01

「土木学会誌」2022年11月号