自然災害の発生と法制度

自然災害の発生と法制度

自然災害事例の発生状況を概観し,その特徴から今後の対策を論じた。また,災害対策を検討するために必要な法制度の全体像も学べる。

ジャンル
発行年月日
2018/05/01
判型
A5
ページ数
208ページ
ISBN
978-4-339-05256-5
自然災害の発生と法制度
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定価

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国内外の様々な自然災害事例の発生状況を概観し,その特徴から今後の対策を論じた。また,過去の災害を踏まえて整備されてきた多種多様な法制度の歴史を学び,災害対策を検討するために必要な法制度の全体像も学べるようにした。

わが国は,その位置,地形,地質,気象などの自然的条件から,地震,台風,集中豪雨などの自然災害に対し脆弱な国土となっている。世界有数の地震国でもあり,海岸線が長く津波の被害を受けやすい地勢にある。河川は急勾配で,低地が広がっていることから,洪水,高潮による被害の危険性も高い。また,各地で大雪が降り,特に日本海側の山間部は,世界的な豪雪地帯として知られている。これらがわが国は災害大国であるといわれるゆえんである。したがって,世界およびわが国で発生する地震,津波,火山噴火,洪水,高潮,土砂災害,渇水などの自然災害について,その発生メカニズムを理解し,その特徴を知ることは,災害対策を考えるうえでたいへん重要である。また,これまでに世界およびわが国でどのような災害が発生し,どのような物的・人的被害をもたらしたか,そしてどのような災害対策が講じられ,被害を軽減する努力がなされたかを学ぶことは,今後の災害対策を検討するうえで大いに教訓となるものである。

災害対策としては,災害を未然に防止または軽減しようとする災害予防の取組み,そして災害が発生した際の応急対策などの災害対応が重要である。さらには,災害後の処理のための災害復旧や災害復興などの事後対応も必要になる。これらのそれぞれの段階における対策を講じることができるよう法制度が整備されているので,災害対策を検討するためには,法制度面の知識を身につけておく必要がある。災害と法の関係を見た場合,災害対策基本法のようにこれらを総括的にとらえた法律がある一方で,災害予防のための法制度,災害時のための法制度,災害後の事後処理のための法制度,といった分類ごとに数多くの法律がある。

本書では,第Ⅰ部(1~6章)において,世界およびわが国におけるさまざまな災害の発生状況を概観し,最近の災害の特徴を把握する。そのうえで災害対策の現状や今後の災害発生のおそれ,あるいは今後の対策について論じる。

第Ⅱ部(7~10章)においては,災害に関係する法制度を取りまとめる。過去の災害とそれを踏まえて法制度が整備されてきた歴史を学び,そのうえで,災害予防の法制度として,災害の発生を防止または軽減するための社会資本の整備,管理や土地利用の規制,防災計画などに関する法制度,そして,災害発生時の対応のための法制度として,応急的な救助や保護に関する災害救助法や,避難指示などに関する法制度,さらに災害後の事後処理のための法制度として,災害の復旧,復興のための法制度を論じる。

2018年2月 木下 誠也

第Ⅰ部 自然災害の発生と対策
1. 近年の自然災害
1.1 世界の自然災害
1.2 わが国の自然災害
1.3 自然災害の今後
 1.3.1 地震,火山などの災害
 1.3.2 気象災害

2. 地震と津波の災害
2.1 地震発生のメカニズム
2.2 マグニチュードと震度
 2.2.1 マグニチュード
 2.2.2 震度
2.3 津波の発生
 2.3.1 水面を伝わる波の速さ(波の伝播速度)
 2.3.2 津波の特性
2.4 世界の地震と津波
2.5 わが国の地震と津波
2.6 今後予想される地震と津波の災害
 2.6.1 南海トラフ地震による被害想定
 2.6.2 首都直下地震による被害想定

3. 火山噴火
3.1 火山噴火のメカニズム
3.2 世界の火山噴火
3.3 わが国の火山噴火
3.4 わが国の火山防災
 3.4.1 火山噴火の予知と観測,監視
 3.4.2 火山災害対策

4. 洪水と高潮の災害
4.1 洪水の発生
4.2 高潮および波浪の発生
 4.2.1 高潮の発生
 4.2.2 波浪の発生
4.3 世界の洪水と高潮
4.4 わが国の洪水と高潮
4.5 洪水と高潮の災害防止対策
 4.5.1 洪水防御対策
 4.5.2 高潮および波浪の災害防止

5. 土砂災害
5.1 土砂災害の発生
 5.1.1 土砂災害の形態
 5.1.2 深層崩壊
5.2 近年の土砂災害
5.3 土砂災害の防止

6. 渇水などの水問題
6.1 世界の干ばつと水問題
 6.1.1 世界の干ばつ
 6.1.2 世界の水問題
6.2 わが国の渇水問題
 6.2.1 わが国の水利用と渇水
 6.2.2 わが国の水問題
 6.2.3 今後の水資源対策

第Ⅱ部 災害と法制度
7. 災害法制の歴史と現状
7.1 災害法制の歴史
7.2 災害法制の体系
 7.2.1 災害対策基本法の制定
 7.2.2 防災に関する組織

8. 災害に備える法制度
8.1 災害対策基本法による災害予防
8.2 災害予防のための社会資本の整備,管理のための法制度
 8.2.1 水災害防止に関する法制度
 8.2.2 土砂災害防止に関する法制度
 8.2.3 海岸防災に関する法制度
8.3 建築物の耐震化などのための法制度
 8.3.1 建築基準法
 8.3.2 耐震改修促進法
 8.3.3 密集市街地整備法など
8.4 土地利用の規制などの法制度
 8.4.1 都市計画法および建築基準法による規制
 8.4.2 崖崩れなどの危険区域における行為規制
 8.4.3 その他
8.5 防災計画制度,その他
 8.5.1 国土強靱化基本法
 8.5.2 防災計画制度
 8.5.3 地震関係の個別法
 8.5.4 気象業務法

9. 災害対応のための法制度
9.1 避難,救急,救護,および救助の法制度
 9.1.1 災害対策基本法
 9.1.2 災害救助法
 9.1.3 水防法,地すべり等防止法など
9.2 応急仮設住宅

10. 災害の復旧,復興のための法制度
10.1 災害対策基本法における災害復旧
10.2 災害復旧国庫負担に関する法制度
10.3 災害復興のための法制度
 10.3.1 被災市街地復興特措法
 10.3.2 津波防災地域づくり法
 10.3.3 東日本大震災復興特区法
 10.3.4 復興基金

引用・参考文献
おわりに
用語索引
法律名索引

木下 誠也(キノシタ セイヤ)

掲載日:2020/09/01

「電子情報通信学会誌」2020年9月号広告