非線形解析入門

現代非線形科学シリーズ 1

非線形解析入門

非線形現象を解析するための数学的道具について,微積分学・線形代数の知識のみを前提として,やさしく解説した。コンピュータを利用して解析することにより,やさしい理論で自然現象の本質が浮き彫りにできることを示した。

ジャンル
発行年月日
1997/04/25
判型
A5 上製
ページ数
254ページ
ISBN
978-4-339-02600-9
非線形解析入門
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定価

3,080(本体2,800円+税)

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  • 内容紹介
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  • 著者紹介

非線形現象の解析は現代理工学の共通の基礎となっている。本書は非線形現象の解析のための方法論を基礎から第一線まで,平易にかつ体系的に展開した。本書の前提は理工系の2年生までの基礎数学である微積分と線形代数である。これのみを前提として,非線形現象のモデル化に現れる微分方程式を解くための数学的方法を展開した。具体的には、線形,非線形関数解析の理論を中心としながら,これらと力学系理論,数値解析の基礎理論を,モデル化によって現れる微分方程式を解くための総合的な方法論として有機的に統合した形で展開した。関数解析が基礎に選ばれているのは,計算機を援用した解析の基本的枠組みをそれが提供するからである。また,存在証明も,それ自身が存在を示すべき対象を計算するためのアルゴリズムとなるように設計されているものがほとんどであるように工夫した。例えば,微分方程式の解の存在定理の証明は,その解を計算するためのアルゴリズムに直接的に変換できるようになっている。
本書の内容についてまとめてみよう。第1章と第2章では,関数解析の入門を行い,第3,4, 5章で非線形解析の理論を展開している。
第1章「関数空間」では,バナッハ空間の定義から始めて,有界線形作用素の埋論を述べ,関数解析の入門的内容を扱っている。そこでは,連続関数がベクトルとみなせること,収束性がノルムによって与えられることを述べている。このような舞台の上では,線形代数の線形変換(行列)の拡張として,微分作用素,積分作用素が扱えることを有界線形作用素の理論として示した。その後,線形代数の理論と関数解析の理論の比較も行って理解が深まるようにしている。つぎに,関数解析の母であるフーリエ級数の理論について述べた。
第2章「線形作用素」では,開写像定理,開作用素の理論から始める。これらは関数解析の中核をなす理論である。続いて閉作用素を少し制限したフレッドホルム作用素の理論を展開した。応用に現れるほとんどの微分作用素はこのクラスに入る。
第3章「非線形作用素」では,非線形関数解析への入門を行う。まず,非線形作用素の微分としてフレッシェ微分の概念を説明した。これはヤコビ行列の概念の自然な拡張である。続いて,バナッハの縮小写像の原理を示した。本書では簡潔で最も強力なこの定理に帰着させて微分方程式を解析するためにさまざまな変奏曲を展開していく。まず,関数空間上のニュートン法を定義し,簡易ニュートン法の収束定理を縮小写像の原理を利用して示す。縮小写像の原理は一見適用範囲が狭いように見えるが,ニュートン法と組み合わせることによって,万能といってよいほどの力を備える。ついで,非線形フレッドホルム作用素の理論を述べた。サード―スメールの定理は非線形作用素の解の存在定理にはきわめて有用である。
第4章「非線形微分方程式」では,具体的な非線形方程式の例として,非線形微分方程式を扱った。力学系の理論の基礎をまず展開したが,この延長上にカオスの理論がある。また,周期解の存在検証法,非線形境界値問題の解の存在検証法を述べた。これらが縮小写像の原理とニュートン法の組合せとしての計算機を念頭においた理論である。
第5章「パラメータ依存方程式」は,大域的解法であるホモトピ一法および分岐理論の入門である。いずれも(非線形) フレッドホルム作用素の理論を仲立ちとしてニュートン法と縮小写像の原理の応用として解析を行う方法について論じた。
なお,演習問題は本文の理解のチェック用に基本的なものを集めた。
本書の内容は理工系共通専門必修数学となり得るよう配慮した。これをマスターすれば,応用に現れる非線形常微分方程式の解析を行うための基礎力は十分身についたと考えてよい。後は,ゲームをクリアするときのように具体的な方程式をその個性に応じて楽しみながら攻略して欲しい。

非線形現象の解析は現代理工学の共通の基礎となっている。本書は非線形現象の解析のための方法論を基礎から第一線まで,平易にかつ体系的に展開した。

本書の前提は理工系の2年生までの基礎数学である微積分と線形代数である。これのみを前提として,非線形現象のモデル化に現れる微分方程式を解くための数学的方法を展開した。具体的には、線形,非線形関数解析の理論を中心としながら,これらと力学系理論,数値解析の基礎理論を,モデル化によって現れる微分方程式を解くための総合的な方法論として有機的に統合した形で展開した。関数解析が基礎に選ばれているのは,計算機を援用した解析の基本的枠組みをそれが提供するからである。また,存在証明も,それ自身が存在を示すべき対象を計算するためのアルゴリズムとなるように設計されているものがほとんであるように工夫した。例えば,微分方程式の解の存在定理の証明は,その解を計算するためのアルゴリズムに直接的に変換できるようになっている。

本書の内容についてまとめてみよう。第1章と第2章では,関数解析の入門を行い,第3,4,5章で非線形解析の理論を展開している。

第1章ではバナッハ空間の定義から始めて,有界線形作用素の埋論を述べ,関数解析の入門的内容を扱っている。そこでは,連続関数がベクトルとみなせること,収束性がノルムによって与えられることを述べている。このような舞台の上では,線形代数の線形変換(行列)の拡張として,微分作用素,積分作用素が扱えることを有界線形作用素の理論として示した。その後,線形代数の理論と関数解析の理論の比較も行って理解が深まるようにしている。つぎに,関数解析の母であるフーリエ級数の理論について述べた。

第2章では,開写像定理,開作用素の理論から始める。これらは関数解析の中核をなす理論である。続いて閉作用素を少し制限したフレッドホルム作用素の理論を展開した。応用に現れるほとんどの微分作用素はこのクラスに入る。

第3章は非線形作用素の理論を展開している。まず,非線形作用素の微分としてフレッシェ微分の概念を説明した。これはヤコビ行列の概念の自然な拡張である。続いて,バナッハの縮小写像の原理を示した。本書では簡潔で最も強力なこの定理に帰着させて微分方程式を解析するためにさまざまな変奏曲を展開していく。まず,関数空間上のニュートン法を定義し,簡易ニュートン法の収束定理を縮小写像の原理を利用して示す。縮小写像の原理は一見適用範囲が狭いように見えるが,ニュートン法と組み合わせることによって,万能といってよいほどの力を備える。ついで,非線形フレッドホルム作用素の理論を述べた。サード-スメールの定理は非線形作用素の解の存在定理にはきわめて有用である。

第4章は具体的な非線形方程式の例として,非線形微分方程式を扱った。力学系の理論の基礎をまず展開したが,この延長上にカオスの理論がある。また,周期解の存在検証法,非線形境界値問題の解の存在検証法を述べた。これらが縮小写像の原理とニュートン法の組合せとしての計算機を念頭においた理論である。

第5章は大域的解法であるホモトピ一法および分岐理論の入門である。いずれも(非線形)フレソドホルム作用素の理論を仲立ちとしてニュートン法と縮小写像の原理の応用として解析を行う方法について論じた。

なお,演習問題は本文の理解のチェック用に基本的なものを集めた。

本書の内容は理工系共通専門必修数学となり得るよう配慮した。これをマスターすれば,応用に現れる非線形常微分方程式の解析を行うための基礎力は十分身についたと考えてよい。後は,ゲームをクリアするときのように具体的な方程式をその個性に応じて楽しみながら攻略して欲しい。

本書の執筆に当り,編者各位ならびにコロナ社の関係各位に大変お世話になったことを深謝する。

1997年春
大石進一

1. 関数空間
1.1 ノルム空間とバナッハ空間
  1.1.1 ベクトル空間
  1.1.2 ノルム空間
  1.1.3 バナッハ空間
  1.1.4 開集合と閉集合
  1.1.5 順序付きバナッハ空間
1.2 有界線形作用素
  1.2.1 作用素
  1.2.2 線形作用素
  1.2.3 連続作用素
  1.2.4 連続線形作用素
  1.2.5 有界線形作用素
  1.2.6 線形作用素の逆作用素
1.3 有限次元バナッハ空間
  1.3.1 有限次元空間のノルムの同値性
  1.3.2 有限次元ノルム空間はバナッハ空間
  1.3.3 有限次元線形作用素は連続
1.4 連続関数のフーリエ級数
  1.4.1 ワイエルシュトラスの近似定理
  1.4.2 フーリエ級数の収束定理
  1.4.3 フーリエ射影作用素
  1.4.4 ソボレフノルム
1.5 第1章の文献案内
章末問題
2. 線形作用素
2.1 閉グラフ定理と一様有界性の定理
  2.1.1 ベールの定理
  2.1.2 開写像定理
  2.1.3 閉作用素
  2.1.4 一様有界性の定理
2.2 コンパクト作用素
  2.2.1 コンパクト集合
  2.2.2 コンパクト作用素
  2.2.3 ハウスドルフの測度
2.3 位相的直和
  2.3.1 商空間
  2.3.2 直和
  2.3.3 位相的直和と射影作用素
2.4 フレッドホルム作用素
  2.4.1 リース-シャウダーの理論
  2.4.2 フレッドホルム作用素の安定性定理
  2.4.3 フレッドホルムの交代定理
2.5 第2章の文献案内
章末問題
3. 非線形作用素
3.1 非線形作用素の微分
  3.1.1 フレッシェ微分
  3.1.2 偏微分
3.2 平均値の定理
  3.2.1 連続性
  3.2.2 微分
  3.2.3 平均値の定理
3.3 縮小写像原理
  3.3.1 縮小写像原理
  3.3.2 バナッハの摂動定理
3.4 ニュートン法
  3.4.1 ニュートン法とは
  3.4.2 簡易ニュートン法の収束定理
  3.4.3 陰関数定理
  3.4.4 逆関数定理
3.5 非線形フレッドホルム作用素
  3.5.1 非線形コンパクト作用素
  3.5.2 非線形フレッドホルム作用素
  3.5.3 サード-スメールの定理
  3.5.4 リャプノフ-シュミット法
3.6 第3章の文献案内
章末問題
4. 非線形微分方程式
4.1 微分方程式の基礎
  4.1.1 解の存在と一意性
  4.1.2 線形微分方程式
4.2 連続力学系の理論
  4.2.1 フロー
  4.2.2 解の安定性とシンク
  4.2.3 安定多様体定理
  4.2.4 ホモクリニック軌道
4.3 非線形微分方程式の周期解の存在検証
  4.3.1 占部-ガレルキン法
  4.3.2 近似解
  4.3.3 周期解の存在検証
  4.3.4 グラフノルム評価
  4.3.5 ダフィング方程式の周期解
4.4 非線形常微分方程式の境界値問題
  4.4.1 区間解析からの準備
  4.4.2 多項式展開法
  4.4.3 近似解の誤差評価
  4.4.4 事後誤差評価アルゴリズム
  4.4.5 検証例
4.5 第4章の文献案内
章末問題
5. パラメータ依存方程式
5.1 ホモトピー法
  5.1.1 シャウダーの不動点定理
  5.1.2 ホモトピー法
  5.1.3 ホモトピー法による周期解の存在の証明
5.2 分岐
  5.2.1 サドル-ノード分岐
  5.2.2 単純折り返し点
  5.2.3 単純孤立特異解の求解
  5.2.4 対称性破壊分岐
  5.2.5 単純対称性破壊分岐点
  5.2.6 ダフィング方程式の周期解の分岐
5.3 第5章の文献案内
章末問題
索引

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