温度計測 - 基礎と応用 -
温度計測の最新の知見を取り入れ,かつ入門者向けの部分を充実。不確かさ評価について独立した章を設けた。
- 発行年月日
- 2018/02/23
- 判型
- A5
- ページ数
- 452ページ
- ISBN
- 978-4-339-03226-0
- 計測自動制御学会賞著述賞を受賞いたしました。
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 書籍紹介・書評掲載情報
- 広告掲載情報
温度計測に携わる人々に有益な指針を提供することを目的としている。最新の知見を取り入れ,かつ入門者向けの部分を充実させた。また,不確かさ評価について独立した章を設け,温度計測に関連して評価方法に習熟できるようにした。
1981年(昭和56年)に計測自動制御学会温度計測部会編の学術図書『温度計測』が本学会より刊行され,10年以上を経た1992年(平成4年)に改訂版『新編温度計測』が出版された。いずれも,刊行の目的は,温度計測に携わる人々に有益な指針を提供することであった。『新編温度計測』刊行以来22年が経過した2014年に,温度計測部会において新しい温度計測の学術図書の出版の機運が高まった。関係者の緻密な連絡のもとで原稿作成を進め,全面改訂版である本書が刊行されるに至った。
本書の特徴は,前書発行以来20年有余の間に展開されたさまざまな温度計測に関連する知見を取り入れたことに加え,読者層の広がりを考慮し,本書の内容を,温度計測の初学者を対象とした領域と,中・上級者向けの専門領域の二つに分けたことである。前者の領域を読み通すことによって,温度計測に関わる基本的・全体的な内容を把握でき,さらに専門領域において,必要に応じて高度な内容に習熟できるという構成である。
さらに,本書は,近年とみに高まった計測の不確かさ評価の重要性に鑑み,そのための独立した章を設けた。この章では,評価法の背後にある基礎理論を明確に記述し,不確かさ評価に対する理解を深めていただくとともに,温度計測に関連する不確かさ評価を具体的に例示することによって,評価手法に習熟できることを意図した。
ここで各章の内容について簡単に紹介しておく。1章は,初学者向けの通論である。2章は,上記のように温度計側の不確かさ評価に関する解説と評価の具体例を記述している。3章から5章は,温度計測の三つの代表的な専門領域を記述している。すなわち,3章は抵抗温度計,4章は熱電対による温度計側で,いずれも接触式温度計測法に関する。5章は,放射測温で非接触式測温の代表的な手法である。6章は,3~5章の温度計測法以外のさまざまな手法や話題をまとめている。
各章末に,少数ではあるが演習問題を設け,巻末にそれらの詳解を記載した。その意図は,こうした出題を通じて読者にそのテーマの重要性に気づいていただき,あらためてその内容に習熟する機会を提供することである。したがって,これらの演習問題は,執筆者からの強いメッセージとして受け取っていただきたい。
各章の最後には「参考文献と解説」を記載した。読者が原著文献を直接参考にしたいときの便宜を考え,ほとんどの文献の内容を簡単に解説した。
本書の執筆分担はつぎのとおりである。
1章 井内徹,新井優,杉浦雅人,山田善郎
2章 榎原研正,浜田登喜夫,杉浦雅人,佐藤弘康
3章 池上宏一,安田嘉秀,浜田登喜夫
4章 浜田登喜夫,池上宏一,佐藤弘康,安田嘉秀,杉浦雅人
5章 山田善郎,井内徹,清水孝雄,角谷聡,杉浦雅人
6章 大重貴彦,井内徹
本書がさまざまな形で温度計測に関わる人々の座右の書として活用されることを切望する。
最後に,本書の企画・出版にあたりご協力を賜った計測自動制御学会会誌出版委員会,同学会事務局,コロナ社,ならびに貴重な資料を提供してくださった関係各社に厚く御礼申し上げたい。
2017年12月 著者一同
1. 温度計測通論
1.1 温度とはなにか
1.1.1 はじめに
1.1.2 さまざまな温度の定義
1.1.3 熱平衡の概念と温度
1.1.4 温度と熱とエネルギ
1.1.5 熱力学に基づく温度の概念:熱力学温度Φ(θ)
1.1.6 理想気体における温度T
1.1.7 エントロピと温度の関係
1.1.8 統計力学に基づくエントロピと温度の概念
1.2 温度標準と単位
1.2.1 国際単位系(SI)と温度の単位
1.2.2 国際温度目盛
1.2.3 温度計測のトレーサビリティ
1.3 温度計の種類と選択
1.3.1 代表的な温度計
1.3.2 温度測定方法の選び方
章末問題
参考文献と解説
2. 測定の不確かさ
2.1 不確かさとはなにか
2.1.1 不確かさの表現のガイド
2.1.2 不確かさと誤差
2.1.3 真値と測定値
2.2 統計的基礎
2.2.1 測定における母集団と標本
2.2.2 分散と標準偏差の計算
2.2.3 標本平均の統計的性質
2.2.4 相関係数
2.3 測定のモデル化
2.3.1 測定の数学的モデル
2.3.2 誤差の構造モデル
2.4 標準不確かさの評価
2.4.1 標準不確かさのタイプA評価
2.4.2 タイプA評価の実際
2.4.3 標準不確かさのタイプB評価
2.4.4 タイプB評価の例
2.5 不確かさの合成
2.6 不確かさの表現と報告
2.6.1 合成標準不確かさと拡張不確かさ
2.6.2 拡張不確かさの計算
2.6.3 不確かさの報告
2.7 不確かさ評価の実際
2.7.1 記号の用い方
2.7.2 既知のかたよりを補正しない場合の不確かさ評価
2.7.3 入力量間に相関がある場合の伝播則
2.7.4 不確かさのバジェット表
2.7.5 t分布を用いた包含係数の計算
2.8 温度測定における不確かさの評価事例
2.8.1 熱電対による温度測定の不確かさ
2.8.2 工業用白金測温抵抗体の0℃における抵抗値の不確かさ
2.8.3 放射温度計を用いた鋼板表面温度測定の不確かさ
章末問題
参考文献と解説
3. 抵抗温度計測
3.1 原理と特徴
3.1.1 測温抵抗体
3.1.2 NTCサーミスタ
3.2 測温抵抗体の種類と構造
3.2.1 標準用白金抵抗温度計
3.2.2 工業用測温抵抗体の種類
3.2.3 工業用測温抵抗体の構造
3.3 サーミスタ測温体
3.3.1 サーミスタの材料と特性
3.3.2 サーミスタの構造
3.4 測温抵抗体の測定回路
3.4.1 測定回路の原理
3.4.2 測温抵抗体の結線方式
3.4.3 計測器の実例
3.5 使用上の注意と選択基準
3.5.1 自己加熱
3.5.2 導線による測定結果への影響
3.5.3 応答速度
3.5.4 故障と劣化
3.5.5 取り付け方法(挿入長さ)
3.5.6 選択基準
3.6 極低温用温度計
3.6.1 極低温用温度計の種類
3.6.2 磁場中での温度測定
3.7 抵抗温度計の校正
3.7.1 定点校正
3.7.2 比較校正
3.7.3 校正における留意事項
章末問題
参考文献と解説
4. 熱電対による温度計測
4.1 原理と特徴
4.1.1 熱電対の原理
4.1.2 熱電対の特徴
4.2 熱電対の種類と特性・選択基準
4.2.1 貴金属熱電対と卑金属熱電対
4.2.2 各種貴金属熱電対の種類と特徴
4.2.3 各種卑金属熱電対の種類と特徴
4.2.4 その他の熱電対
4.2.5 熱電対の選択基準
4.2.6 熱電対の特殊な応用例
4.3 熱電対の構造
4.3.1 保護管付熱電対
4.3.2 シース熱電対
4.3.3 サーモウェル
4.4 補償導線
4.4.1 補償導線の種類と特徴
4.4.2 補償導線の構造
4.5 熱電対の測定回路
4.5.1 基準接点補償
4.5.2 測定回路と計測器
4.5.3 熱電対測定の留意点
4.6 使用上の注意
4.6.1 熱接触
4.6.2 気体温度計測
4.6.3 表面温度測定
4.6.4 熱電対の不均質
4.6.5 シース熱電対のシャントエラー
4.7 熱電対素線の劣化と寿命
4.7.1 白金系熱電対の劣化
4.7.2 K熱電対の劣化
4.8 熱電対の校正
4.8.1 温度定点による校正
4.8.2 ワイヤブリッジ法によるパラジウム点
4.8.3 金属-炭素共晶点
4.8.4 比較法による校正
4.8.5 標準熱電対
章末問題
参考文献と解説
5. 放射測温
5.1 放射測温の原理
5.1.1 放射の諸法則
5.1.2 放射測温に関わる物理量と単位
5.2 放射温度計の構造
5.2.1 光検出器
5.2.2 放射温度計の構成
5.3 放射率
5.3.1 物質の放射特性・放射率
5.3.2 実用試料のオフライン放射率測定装置
5.4 特殊な放射温度計
5.4.1 熱画像装置
5.4.2 2色温度計
5.4.3 耳用赤外線体温計
5.5 放射測温の実用上の問題
5.5.1 放射温度計測の誤差要因
5.5.2 放射率変動とその対策
5.5.3 背景放射とその対策
5.5.4 測定放射束の減衰
5.5.5 放射温度計の感度特性:n値
5.5.6 放射温度計の選定
5.6 放射温度計の適用例
5.6.1 鍛造プレス工程の加熱温度測定
5.6.2 超高温炉の温度制御
5.6.3 コークス火残り検知・消火システム
5.6.4 硝子/フィルム製造工程
5.6.5 鋼板の連続焼鈍炉の測温システム
5.6.6 水滴飛散環境下における鋼板の放射測温
5.6.7 溶融金属を対象とした放射測温
5.6.8 半導体製造プロセスにおける放射測温
5.6.9 事例のまとめ
5.7 放射温度計の校正
5.7.1 放射温度目盛とトレーサビリティ
5.7.2 放射温度計校正用放射源
5.7.3 標準放射温度計の温度定点によるITS-90目盛設定
5.7.4 放射温度計による熱力学温度測定
5.7.5 放射温度計の面積効果
章末問題
参考文献と解説
6. 温度計測法と温度計の広がり
6.1 プリンタブルなフレキシブル体温計
6.2 微小領域の温度計測
6.2.1 ナノ熱電対
6.2.2 走査型熱顕微鏡における能動的温度計測法
6.2.3 カーボンナノチューブ(CNT)温度計
6.2.4 レーザ測温法
6.3 非線形光学現象の温度計測への応用
6.3.1 時間領域反射光測定法(OTDR)
6.3.2 コヒーレント反ストークス・ラマン散乱(CARS)分光法
6.3.3 レーザ励起熱回折格子分光法(LITGS)
6.4 光ファイバ温度センサ
6.5 蛍光測温法
6.5.1 医療・バイオテクノロジ分野における蛍光測温法
6.5.2 エンジン内における蛍光測定法
6.6 音響測温法
6.6.1 気体の音響測温
6.6.2 液体・固体の音響測温
6.6.3 地球環境測定における音響測温
6.6.4 1次温度計への応用
章末問題
参考文献と解説
各種熱電対の基準関数
章末問題解答
索引
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掲載日:2020/12/03