バイオインフォマティクスのための生命科学入門

バイオインフォマティクスシリーズ 1

バイオインフォマティクスのための生命科学入門

バイオインフォマティクスを行うために必要な生命科学の基礎について数式を用いずに解説

ジャンル
発行年月日
2022/08/03
判型
A5
ページ数
206ページ
ISBN
978-4-339-02731-0
バイオインフォマティクスのための生命科学入門
在庫あり

定価

3,410(本体3,100円+税)

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【書籍の特徴】
・数理情報学分野の学生・技術者・研究者がバイオインフォマティクスを学ぶために必要な生命科学の基礎について,またそれら生命科学にバイオインフォマティクスが果たしている役割について解説しました。本シリーズのほかの巻を読む前に本書を一読すると,ほかの巻が扱っている生命科学的な内容について理解が深まります。
・生命科学になじみのない読者でもなるべく読みやすく,必要事項を理解できるよう,生命科学データ解析において特に頻出する事項に絞って解説しました。

【各章について】
1章:生命現象を分子的な観点から捉える分子生物学のセントラルドグマについて解説。特に,近年急速に進歩した技術である塩基配列決定技術を中心に,塩基配列ビッグデータがセントラルドグマの過程の解明に果たす役割を紹介しています。
2章:第1章で登場する生体分子が,実際に物理的にどのような構造をとるのか,そしてその構造がどのように生体的な機能と関係するのかについて,生物物理学的な観点を解説しています。
3章:遺伝子配列決定技術の急速な進歩を受けて,分野が変容しつつある進化遺伝学と微生物学について,その基礎とバイオインフォマティクスの果たす役割について解説しています。

【著者からのメッセージ】
生命科学を専門としていない方でも読む事ができる様,なるべくコンパクトに執筆しました。この本をきっかけにバイオインフォマティクス分野へ参入してくださる方が増えれば幸いです。

【キーワード】
分子生物学,セントラルドグマ,オミクスデータ,シーケンサー,ゲノム,エピゲノム,トランスクリプトーム,転写制御,転写後発現制御,プロテオーム,生体分子,高次構造,分子間相互作用,進化遺伝学,比較ゲノム,微生物学, メタゲノム

ゲノムデータをはじめとする生命科学ビッグデータが日常的に産出される現在,その情報解析を担うバイオインフォマティクスはいまや生命科学にとって必要不可欠な存在である。そのため,機械学習やアルゴリズムといった数理情報学的知識を持った技術者・研究者が,生命科学において今後いっそう重要な役割を果たしていくことは間違いない。ただし,ビッグデータ分析においてより適切なモデリングや解析を行うためには,対象となるデータ,つまり生命科学のデータについてある程度のドメイン知識を持っていることが重要となってくる。しかしながら,生命科学の分野は非常に広大であり標準的な教科書は頁数が多く,また,数理情報学分野の研究者にはなじみのない暗記的作業がどうしても必要となる。このため,数理情報学の研究者が生命科学の勉強をすることは容易なことではなく,この点が生命科学への参入障壁となっているといえるだろう。

本書は「バイオインフォマティクスシリーズ」の第1巻として,数理情報学分野の学生・技術者・研究者を対象に,バイオインフォマティクスを行うために必要な生命科学の基礎について解説した教科書である。生命科学になじみのない読者は,本シリーズのほかの巻を読む前に本書を一読すると,ほかの巻が扱っている生命科学的な内容について理解が深まるだろう。なお,本シリーズのほかの巻が,バイオインフォマティクスのさまざまな問題の数理的背景を厳密に記述することを念頭に置いて執筆されているのに対し,本書には数式は一切出てこず,あくまで生命科学の教科書であるという違いがある。ただし,解説事項は生命科学データ解析において特に頻出する事項に絞って解説しており,生命科学になじみのない読者でもなるべく読みやすくコンパクトに必要事項を理解できるように試みた。そのため,いくつかの項目では最先端の研究内容も含まれているが,逆に標準的な生命科学の教科書には当然記載されているような内容にもかかわらず,本書にはまったく記述がないというような事項も存在する。そのため本書では,発生学や神経科学など,生命科学における多くの重要な研究分野を紹介することはできなかった。また解析するデータによっては,本書では紹介しきれなかった内容についてもその分野の知識を必要とする可能性が十分にある。その際にはもちろん各分野の勉強をしなければならないが,本書の内容を十分に理解することは,より進んだ勉強をする上で大きな助けとなることだろう。

本書は三つの章から構成されている。第1章では,生命現象を分子的な観点から捉える分子生物学のセントラルドグマについて解説する。特に,近年急速に進歩した技術である遺伝子配列決定技術を中心に,遺伝子配列ビッグデータがセントラルドグマの過程の解明に果たす役割を紹介する。第2章では,第1章で登場する生体分子が,実際に物理的にどのような構造をとるのか,そしてその構造がどのように生体的な機能と関係するのかについて,生物物理学的な観点を紹介する。第3章では,遺伝子配列決定技術の急速な進歩を受けて,分野が変容しつつある進化遺伝学と微生物学について,その基礎とバイオインフォマティクスの果たす役割について解説する。

なお,大量の配列・数値データを扱うバイオインフォマティクスでは,生命現象を支えているそれぞれの生体分子がどのような大きさ・形をしているかを意識する機会が少ない。そのため,本書では生体分子の立体構造の図をできるだけ多く盛り込んだ。図説に出てくるPDBIDは,生体分子の立体構造データベースであるProtein Data Bank(PDB)のIDである。生体分子の立体構造に興味を持った読者には,自分で構造データを取得し,実際の構造を眺めてみることをお勧めしたい。また本書では,重要な科学的発見を行った研究者の氏名を多く紹介し,特にその研究者がノーベル賞を受賞されている場合,そのことも併せて紹介することとした。これは,本書で紹介している事象が非常に重要な知見であるとみなされていることを伝えるとともに,科学的知見の背後にはそれを発見した研究者が存在すること(すなわち,研究とは人間が行う行為であること),そしてその流れのなかに自身の研究活動が連なることを認識することが重要であると考えたためである。

本書を出版するにあたり多くの方々にご協力を賜った。本シリーズの監修者である早稲田大学の浜田道昭教授には,構成の段階から数多くのコメントをいただいた。関西学院大学の藤博幸教授には,草稿段階における多くの誤記や不正確な点をご指摘いただいた。また,東京大学大学院生の山内駿氏と今野直輝氏にも,原稿の不十分な点を数多くご指摘いただいた。分子の構造や相互作用については,量子科学技術研究開発機構の桜庭俊博士にアドバイスをいただいた。コロナ社には,著者の原稿執筆の遅れにも寛大にご配慮いただき,また執筆に関して多くの助言をいただいた。ご協力いただいた方々に心よりの感謝を申し述べさせていただきたい。本書を読んだことで,生命科学データ解析に挑戦する数理情報学分野の技術者・研究者が一人でも増えるならば,著者の望外の喜びとするところである。

2022年6月
福永津嵩
岩切淳一

1. 分子生物学のセントラルドグマとオミクスデータ
1.1 セントラルドグマの基礎
 1.1.1 DNAと複製
 1.1.2 RNAと転写
 1.1.3 タンパク質と翻訳
 1.1.4 セントラルドグマ
1.2 オミクスデータの測定技術
 1.2.1 DNA操作の一般的実験手法
 1.2.2 サンガー法
 1.2.3 第二世代塩基配列決定法
 1.2.4 第三世代塩基配列決定法
 1.2.5 RNAの配列決定と発現量推定
 1.2.6 質量分析法
1.3 ゲノムと遺伝子
 1.3.1 生体分子としてのゲノム
 1.3.2 配列データとしてのゲノム
 1.3.3 ゲノム配列の多様性と参照ゲノム配列
 1.3.4 遺伝子とアノテーション
 1.3.5 ゲノムサイズと遺伝子数
 1.3.6 ゲノム配列決定
 1.3.7 ゲノム編集
1.4 エピゲノムと転写制御
 1.4.1 転写因子
 1.4.2 クロマチン構造
 1.4.3 ヒストン修飾とヒストンバリアント
 1.4.4 DNAメチル化
 1.4.5 ゲノムインプリンティングとX染色体不活化
1.5 トランスクリプトームと転写後発現制御
 1.5.1 転写産物の種類
 1.5.2 選択的スプライシング
 1.5.3 新規転写産物の発見
 1.5.4 RNAの発現制御
 1.5.5 RNA修飾とエピトランスクリプトーム
1.6 プロテオームとタンパク質機能
 1.6.1 タンパク質の折り畳みと機能
 1.6.2 細胞内局在
 1.6.3 翻訳後修飾
 1.6.4 タンパク質の分類
1.7 データベースとオミクスデータ解析
 1.7.1 生命科学におけるデータベース
 1.7.2 ゲノムブラウザ-複数オミクスデータの可視化-
 1.7.3 生物ネットワーク解析
 1.7.4 遺伝子オントロジー解析

2. 生体分子の高次構造と分子間相互作用
2.1 生体分子の立体構造決定法と構造データ
2.2 生体分子に働く力・化学結合
 2.2.1 静電相互作用
 2.2.2 水素結合
 2.2.3 疎水性相互作用
 2.2.4 スタッキング相互作用
 2.2.5 ファンデルワールス力
2.3 生体分子の高次構造
 2.3.1 DNAの構造
 2.3.2 RNAの構造
 2.3.3 タンパク質の構造
2.4 分子間相互作用
 2.4.1 相互作用の特異性
 2.4.2 DNA-タンパク質相互作用
 2.4.3 RNA-タンパク質相互作用
 2.4.4 RNA-RNA相互作用
 2.4.5 タンパク質-タンパク質相互作用
 2.4.6 化合物-タンパク質相互作用

3. 進化遺伝学・微生物学のためのバイオインフォマティクス
3.1 進化遺伝学のバイオインフォマティクス
 3.1.1 進化遺伝学の基礎理論
 3.1.2 進化遺伝学研究におけるバイオインフォマティクスの重要性
 3.1.3 ゲノムに起こる小規模な変異
 3.1.4 ゲノムに生じる大規模な変異
 3.1.5 系統関係の表現法と系統分類学
3.2 微生物学のバイオインフォマティクス
 3.2.1 微生物学研究の重要性
 3.2.2 微生物学研究におけるゲノム情報解析の重要性
 3.2.3 微生物の系統分類
 3.2.4 微生物の構造的・生理的特徴
 3.2.5 ウイルス
 3.2.6 原核生物ゲノムの特徴とゲノムアノテーション
 3.2.7 微生物の比較ゲノム解析
 3.2.8 微生物の比較ゲノム解析の研究例-プロテオロドプシン保有微生物の生存戦略-
 3.2.9 メタゲノム解析

付録
引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 Tom 様(ご専門:生命医科学 )】

当書は数理情報学分野の研究者や学生がバイオインフォマティクスを学ぶにあたって、生命科学の基礎を解説した教科書と位置付けているが、全くの初学者向けではなく、本内容を理解するためには大学教養程度の生物学の知識を有することが必要である。一般の生命科学系の教科書は分量が多い故に分野間のつながりを把握しにくいが、当書はバイオインフォマティクスに関連したキーワードや要点を絞りつつ、最新の研究成果や論文を引用しているため、ストーリー性を持って内容を理解し読み進めることができる。以下、当書の特徴を列記する。

・おおよそ見開き1ページに1つの図表を用いており、読者の理解を助けている。
・さまざまなエピソードが脚注してあり、読み物として読者を飽きさせない工夫がされている。
・ヒトゲノム全長配列を決定したT2Tコンソーシアムや、Nanopore/Pacbioに代表される第3世代シークエンス法などのトピックを簡潔に取り上げており、また顕性/潜性のなど用語改定を反映しており、2022年時点での本分野の最新情報を把握することができる。
・生命科学分野の書籍にしては図説が少なく、文章による解説に重点を置いている。

浜田 道昭

浜田 道昭(ハマダ ミチアキ)

早稲田大学 理工学術院 教授

2002年 東北大学大学院 理学研究科 数学専攻 修士課程修了
2009年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 知能システム科学専攻 博士後期課程修了(社会人博士),博士(理学)

(株)富士総合研究所 研究員,東京大学大学院 新領域創成科学研究科 特任准教授,早稲田大学 理工学術院 准教授を経て,2018年より現職.

バイオインフォマティクス全般,特に,生物の配列情報を解析するための情報技術の開発とそれらの医学・薬学分野への応用研究を行っている.近年は,タンパク質に翻訳されない天然のRNAであるノンコーディングRNAや人工のRNAを薬とする核酸医薬などを対象にした「RNA情報学」の研究に注力をしている.

福永 津嵩(フクナガ ツカサ)

岩切 淳一(イワキリ ジュンイチ)

日本バイオインフォマティクス学会ホームページ 掲載日:2022/06/16


掲載日:2022/08/01

「電子情報通信学会誌」2022年8月号広告

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