ロボコニストの「なぜ動かない!」に答えてみた ものづくりのための 回路と無線Q&A
- 発行予定日
- 2026/10/中旬
- 判型
- A5
- 予定ページ数
- 208ページ
- ISBN
- 978-4-339-01506-5
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
まえがき
高等専門学校(高専)や大学などの高等教育機関では,実践的な学びを享受するエンジニアリングデザイン系科目(PBL)の導入が進んでいる。高専では,課外活動においてもアイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)やHonda エコマイレッジチャレンジ(エコラン)などものづくり系の活動が盛んである。教育現場におけるものづくりの技術レベルは,時代の技術的発展とともに変化している。半導体の発展による高効率化や省電力化,コンピュータの性能向上による自動化や高度な信号処理の導入などが具体的な例として挙げられる。時代の最先端技術は書籍やWeb上で数多く紹介され,高専や大学の学生は自らそれを学び,利用している。
著者らは,長年高専の現場でPBL教育やロボコンチームの指導に携わってきた。また,高専ロボコンを競技専門委員として支えてきた。高専ロボコンも時代とともにルールが高度化し,自動ロボットなどが活躍する場面が当たり前になった。一方で,強豪と思われたチームが不具合により敗退するケースが毎年見られ,ロボットを製作した学生自身も原因を突き詰められていないことが多くある。このようなケースを,ロボコン界隈では「国技館の魔物」と呼んでいる。
競技専門委員としてルール作成や大会運営に携わってきた経験から,著者らは,不具合の原因を回路や無線のトラブルであると考えている。しかし,AIやマイコンなどの情報がWeb上にあふれる一方で,トラブル回避のために必要とされる回路や無線の技術を教えてくれる授業は高専内に存在せず,学生の中の情報として非常に不足している。先に紹介した国技館の魔物の正体は,アナログ回路や無線の使い方の問題であるが,電流や無線は目に見えないことから,学生が原因を特定することが困難になっていると考えられる。
同様のケースはロボコンに限らず,授業内で行われるPBLの実験実習でも当たり前のように目にする。「回路図どおり作ったのに動かない」「さっきまで動いていたのに急に動かなくなった」など,相談を受けるケースも多い。
本書は,座学では絶対教えてもらえない,ものづくりの現場での「困った事例」を解決するためのQ&A集である。高専ロボコンに参加する学生たち(通称ロボコニスト)の「なぜ動かない!」という心の叫びに答えた内容になっている。本書が,すべてのものづくりに携わる学生や若手エンジニアの一助となることを願ってやまない。
2026年9月
春日 貴志
高専ロボコン2024寄稿文について
高専ロボコンは1988年に第1回大会が開催され,その後ロボコンは高専から大学へ,そして小中高校生,社会人へと広まっていった。ロボコンの創設に大きく貢献されたのが,東京工業大学(現東京科学大学)名誉教授である森 政弘先生(故人)である。学生たちの技術力低下と「生気のない顔」に危機感を抱き,ものづくりに夢中になることで,非価値の世界へ入ることを体験させようと考えたのが,そのきっかけであった。
著者らが解釈するに,森先生がいう非価値の世界に入るための夢中の状態とは「フロー状態」のことではないかと考える。いわゆる何かに夢中になって,周りのことも忘れて一心不乱に取り組む状態である。著者らは高専教育の現場で,特にロボコンにおいてそのようなフロー状態に入る学生を数多く見てきた。本文中にも書いたが,フロー状態に入るには,スキルアップとチャレンジが繰り返されることが重要である。そしてこのフロー状態こそが,国技館の魔物がもっとも恐れる最強の状態なのである。
しかも,フロー状態に入るのはそんなに大それたことではなく,誰でもできることである。ちょっと面白いなと思ったことを検索したりAIに聞いたり,この本を読んだりして,「へぇーなるほど」となる(スキルアップ)。それを誰かに話してみたり,何かに応用したり,ロボットを作ってみたりして(チャレンジ),「おお,なんかいい感じにできたな。自分も結構やれるじゃん」となる。「それじゃつぎは…。」この繰り返しによって,人はフロー状態に入っていく。そして,これを体現しているのがロボコンなのである。
資本主義社会による文明,つまりお金という道具を巧みに操って,「価値」というものを創造し,ものづくりを進めてきた私たちの文明は,確かに一定の成功を収めた。ものは増え,不足・不便・不快なことは減り,便利で快適な世の中になった。そうした世の中で必要とされた人材とは,お金の計算が早くできて,面白くないことでも飲み込みは早く,すぐに真似ができて,誰かと比べて自分を主張するのが得意で,競争に強く,テストでも点数がとれる,そんな人材だった。しかし,その人たちは本当にハッピーなのだろうか? その人達の顔には生気が宿るのだろうか? フロー状態に至るのだろうか? …ただ一方で,そのような先人達のおかげで,いまやものは簡単に手に入るようになった。スマホでポチりとするだけで,アメリカのトランジスタでも高性能なスペアナでも翌日には手元に届く。「これを活かして,今度こそ本当に面白いことをやろうじゃないか! ロボコンはそんな場だよ。そしてみんな笑顔になろう。ハッピーになろう!」著者らは,森先生の言葉をそう解釈し,金言・格言としている。同時に,ものづくりに携わる多くの方々に,「価値を超えた世界」を見てほしいと願っている。
森先生が抱いたロボコンへの思いは,2025年1月に亡くなる直前に開催された,高専ロボコン全国大会2024への寄稿文に込められている。今回,森先生のご遺族および主催者から許可をいただいたうえで,その寄稿文を謹んでここに掲載させていただく。
2026年9月
桜庭 弘
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
1.はじめての回路と通信
1.1 電位と電池
Q&A 1 電荷と電圧・電流
Q&A 2 一次電池と二次電池
Q&A 3 ニッケル水素電池とリチウムイオン電池
Q&A 4 グラウンド
Q&A 5 グラウンドの種類と役割
1.2 受動素子とアナログ回路
Q&A 6 抵抗の原理
Q&A 7 抵抗の特徴
Q&A 8 インダクタンスの原理
Q&A 9 交流回路のインダクタンス
Q&A 10 RLの過渡現象
Q&A 11 コンデンサの原理
Q&A 12 交流回路のコンデンサ
Q&A 13 RCの過渡現象
Q&A 14 コンデンサの使用法
Q&A 15 コンデンサの種類と特性
1.3 アナログ・ディジタル回路と通信
Q&A 16 アナログ回路とディジタル回路
Q&A 17 アナログ・ディジタル信号とノイズ
Q&A 18 アナログセンサ
Q&A 19 センサの使用法
Q&A 20 通信の基礎
Q&A 21 有線通信と無線通信
引用・参考文献
2.制御回路と駆動回路
2.1 回路システムと制御回路
Q&A 1 ロボットにおける回路システムの構成
Q&A 2 制御回路の通信方式
Q&A 3 シリアル通信の動作方法と特性
2.2 モータ
Q&A 4 ブラシモータの原理
Q&A 5 モータの機械的出力と速度制御
Q&A 6 ブラシレスモータの原理
Q&A 7 コアレスモータの原理
Q&A 8 サーボモータの原理
Q&A 9 ステッピングモータの原理
2.3 半導体とモータ駆動回路
Q&A 10 モータ制御で用いられる半導体
Q&A 11 半導体の仕組み
Q&A 12 p型半導体とn型半導体
Q&A 13 MOSFETとバイポーラトランジスタ
Q&A 14 p型とn型トランジスタの使い方
Q&A 15 モータ制御におけるトランジスタの選定
Q&A 16 半導体素子を使ってPWM制御方法
Q&A 17 モータの半導体素子によるブレーキ操作
Q&A 18 Hブリッジ回路を用いたモータ制御
Q&A 19 ハイサイドn-MOSFETで構成したHブリッジ回路
Q&A 20 MOSFETの選定と使い方
引用・参考文献
3.無線通信
3.1 電波と無線通信方式の種類
Q&A 1 電波の基礎
Q&A 2 電波利用のルール
Q&A 3 変調と多重化
Q&A 4 特定小電力無線
Q&A 5 小電力データ通信システム
3.2 アンテナと電波伝搬
Q&A 6 ダイポールアンテナからの電波放射の基礎
Q&A 7 空中を伝搬する電波の特徴
引用・参考文献
4.EMCとノイズに強い基板設計
4.1 通信品質とEMC
Q&A 1 S/N比
Q&A 2 電磁環境の両立性~EMCとは~
Q&A 3 電磁干渉~EMIとは~
Q&A 4 回路基板上の磁界測定法
Q&A 5 ノイズ対策のポイント
4.2 ノイズに強い回路設計法
Q&A 6 プリント基板材料
Q&A 7 分布定数回路
Q&A 8 プリント基板構造
Q&A 9 ディファレンシャルモードとコモンモード
Q&A 10 コモンモード電流とノイズ放射
Q&A 11 クロストークと自家中毒
引用・参考文献
5.回路・無線システムのトラブル事例集
5.1 駆動系と制御システムの複合的干渉
Q&A 1 回路トラブルで困ったときのチェックリスト
Q&A 2 配線ミス~理論図と実体配線図の違い~
Q&A 3 失敗しないはんだづけのポイント
Q&A 4 電源の電流容量不足による誤作動
Q&A 5 駆動と制御回路への電源供給方法
5.2 無線トラブル
Q&A 6 ロボット内部で発生する電磁干渉
Q&A 7 PWM制御から発生する電磁ノイズ
Q&A 8 ロボット内部におけるノイズ対策
Q&A 9 基板パターンやシールドによるノイズ抑制法
Q&A 10 会場内における電磁干渉
Q&A 11 ディジタル通信のエラー補正と遅延
Q&A 12 確実に動作させるための通信方式の選択
5.3 機械的動作と回路の干渉~コネクタや電気接点~
Q&A 13 基板とケーブル接続で発生するトラブル
Q&A 14 コネクタを使った基板とケーブルの接続
Q&A 15 ケーブルの太さが違うのはなぜか
Q&A 16 配線構造
5.4 安心安全な回路とシステム設計
Q&A 17 回路システムのSOS~フェイルセーフな安全設計~
Q&A 18 回路のSOS~ヒューズとブレーカの役割と仕組み~
Q&A 19 回路のSOS~非常停止スイッチの役割と仕組み~
Q&A 20 電池のSOS~電池の発火の危険性~
Q&A 21 新旧電池の混在利用はとても危険
Q&A 22 値が異なる電位を取り出すには
Q&A 23 回路の過負荷・発煙・発火
Q&A 24 ヒューズの正しい使い方
Q&A 25 適切なPWM制御
引用・参考文献
6.確実に回路・無線を動作させるためのスケジューリング・マネージメント・マインドセット
6.1 スケジューリング
Q&A 1 チームと個人のPDCA
Q&A 2 スケジュール管理とコミュニケーション
6.2 アイデア検討法とそれを実現する設計
Q&A 3 デザイン設計
Q&A 4 独創的なアイデア検討法
Q&A 5 アイデアシートの書き方
Q&A 6 回路の安全運用とチェック
6.3 確実に回路を動作させるためのTry & Error
Q&A 7 目視と音で確認する回路トラブルの対策法
Q&A 8 本番でのトラブル対策
Q&A 9 マネージメント
Q&A 10 ロボコンに臨む意識(マインドセット)
Q&A 11 夢中になるために
引用・参考文献
索引








