コヒーレント宇宙光通信入門 - 光でつなぐ次世代宇宙ネットワーク -

コヒーレント宇宙光通信入門 - 光でつなぐ次世代宇宙ネットワーク -

宇宙光通信の基礎から装置技術,運用までを実例と数式で体系的に解説する入門書

ジャンル
発行年月日
2026/06/08
判型
A5
ページ数
216ページ
ISBN
978-4-339-01503-4
コヒーレント宇宙光通信入門 - 光でつなぐ次世代宇宙ネットワーク -
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定価

3,960(本体3,600円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

本書では,宇宙光通信の基礎からシステム構成,装置技術,大気影響,運用,標準化までを実例を交えて体系的に解説した。重要項目を丁寧に説明し,数式の導出過程も追跡できる構成としている。著者陣の実務経験に基づいた知見を反映した入門書。

第1章「宇宙光通信への期待」では,世界的規模で進められている宇宙開発や宇宙利用の活動の事例を挙げ,これらの活動を支える宇宙光通信の必要性および課題について述べる。
第2章「電磁波の伝搬と回折」では,電磁波の空間伝搬に関する基礎事項として,偏波,干渉および回折について述べる。また,波動方程式の解となる平面波と球面波,およびガウスビームの基本モードを説明する。
第3章「宇宙光通信システム」では,宇宙光通信システムの概要,主要な構成部位である捕捉追尾系と通信系の機能・性能,ならびに基本的な設計手法について述べる。
第4章「宇宙光通信送受信器」では,コヒーレント方式の光通信を実現するうえで重要な光デバイスについて紹介した後,宇宙環境での運用で必要となる放射線の影響,および衛星運用に用いられるコマンド送受信機について紹介する。
第5章「アンテナ・捕捉追尾系」では,通信装置の構成に不可欠な光アンテナと,信号光と受信光学系の光軸間に生じた角度差を補正するための捕捉追尾機能について述べる。まず,地球を周回しながら通信相手を互いに見込む角度を算出し,光アンテナに求められる指向範囲を例示する。つぎに,光の通信回線を形成する最初の手順となる初期捕捉について説明する。また,受光した信号光の伝搬方向を補正し,高精度な捕捉追尾を実現する機能について紹介する。
第6章「大気の影響」では,大気中の光の減衰,シンチレーション現象,波面歪みといった現象の物理的メカニズムを解析し,これらが通信性能に与える影響について考察する。さらに,これらの影響を定量的にモデル化し,対策技術の基礎を探ることで,空間光通信機器の設計指針を提供することを目指す。
第7章「宇宙光通信の運用」では,宇宙機の運用について述べ,一般的な衛星運用と,光通信の運用に特有の事項について説明する。
第8章「宇宙光通信の技術標準化と研究開発動向」では,宇宙光通信の相互に接続された運用の実現に必要となるその技術標準化と研究開発動向について,光通信技術がどのような経緯を経て標準化が必要となり,どのように標準化が進められてきているのかを述べ,その技術が宇宙通信で実際に使用されている,あるいは,将来,使用されようとしているいくつかの事例を示す。なお,ここでは各宇宙機関が参加する宇宙データシステム諮問委員会における光通信に関する技術標準化に焦点を当てて解説する。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

これまで電波で行われていた宇宙通信への光の適用は,1960年代に検討が始まり,1990年代には人工衛星との通信実験で成功が示されました。その後,多様な研究開発と実験によって,現在は宇宙光通信システムが実用化の段階に迫っています。
 
さまざまな研究開発で得られた知見は多数の論文や書籍として発行されているものの,和文の書籍はわずかであり,その書籍の発行からも長い年月が経っているそうです。本書はこうした状況を背景に,これから宇宙通信および光の空間伝搬を利用した通信技術に関する研究開発を行う技術者や研究者,同技術について学ぼうとしている学生に向けて執筆した入門書です。
 
まず,宇宙通信が必要とされる状況において,これまでの宇宙光通信の実施例や見出されている課題について整理します。2章では,本書で述べられる技術項目に共通する基礎事項として,電磁波の伝搬と回折について述べます。3章では,宇宙光通信システムについて概説し,システムの機能構成,捕捉追尾,通信方式について具体例を示します。4章では,光通信装置に含まれる各機能の詳細を述べ,宇宙環境で使用する装置に考慮することが不可欠な放射線の影響などについても説明を加えます。5章では,光の通信回線を確立するための捕捉追尾について紹介します。6章では,宇宙と地上とを光通信で結ぶ場合に避けられない大気の影響について解説します。7章では,宇宙光通信の運用について述べます。一般的な衛星運用と,光通信の運用に特有の事項について説明します。8章では,各国の宇宙機関が中心的な役割を担って進めている宇宙光通信の技術標準化の議論と,宇宙光通信の研究開発動向として現在進行中の事例および今後の計画について紹介します。
 
それぞれの章においては,重要項目をできるだけ丁寧に説明するとともに,数式も導出過程を容易に追跡できるように意識しました。これにより,各説明に含まれる仮定や条件への理解が促進されると思われます。各章の執筆担当はそれぞれ,宇宙光通信の研究開発,運用および標準化に関する業務を経験しています。実務を通じて得た知見に基づく記述は,宇宙光通信の分野に関わる方々に大いに参考になるものと信じます。
 
最後に,宇宙光通信に関する書籍を発行することの意義を示唆し,執筆作業においても多大なるご協力を頂いたコロナ社の皆さんに御礼を申し上げます。また,互いに異なる組織,機関に所属しながらも,宇宙光通信の魅力と重要性を共有する同朋である本書の執筆者に感謝します。

2026年4月
編著者 高山佳久

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.宇宙光通信への期待
1.1 宇宙活動の状況 
 1.1.1 宇宙領域の利用 
 1.1.2 周波数分配 
 1.1.3 宇宙の環境 
 1.1.4 多層ネットワークの構築 
1.2 宇宙光通信の実施例と宇宙活動への適用 
 1.2.1 宇宙光通信実施例 
 1.2.2 宇宙光通信の適用計画 
1.3 宇宙光通信の課題 
 コラム:衛星通信と宇宙通信

2.電磁波の伝搬と回折
2.1 電磁波の伝搬 
 2.1.1 波動方程式 
 2.1.2 干渉 
 2.1.3 偏波 
 2.1.4 平面波 
 2.1.5 球面波 
 2.1.6 ガウスビーム 
2.2 回折 
 2.2.1 回折理論の進展 
 2.2.2 ホイヘンス-フレネルの原理 
 2.2.3 フレネル回折 
 2.2.4 フラウンホーファー回折 
 コラム:光による音声の伝送

3.宇宙光通信システム
3.1 通信システムの仕組み 
 3.1.1 通信目的 
 3.1.2 衛星間,宇宙・地上間の光通信システム 
3.2 通信機器の構成と機能 
 3.2.1 捕捉追尾系の構成と機能 
 3.2.2 通信系の構成と機能 
3.3 通信システム設計 
 3.3.1 捕捉追尾系設計 
 3.3.2 コヒーレント光通信設計 
 3.3.3 インコヒーレント光通信設計 
3.4 通信方式設計 
 3.4.1 捕捉追尾シーケンス設計 
 3.4.2 コヒーレント光通信設計 
 3.4.3 インコヒーレント光通信設計 
 コラム:背景光の抑圧特性の違い

4.宇宙光通信送受信器
4.1 宇宙機搭載側の光通信機器 
 4.1.1 光通信機器構成 
 4.1.2 ドップラ周波数シフト 
 4.1.3 構成部品 
 4.1.4 放射線の影響 
 4.1.5 民生部品の活用 
4.2 機器制御用の電波通信機器 
 コラム:信頼性とは?

5.アンテナ・捕捉追尾系
5.1 宇宙機に搭載する光アンテナ 
 5.1.1 光アンテナの構成 
 5.1.2 光アンテナの指向制御 
5.2 地上局の光アンテナ 
 5.2.1 光アンテナの構成 
 5.2.2 光アンテナの指向制御 
5.3 捕捉追尾の仕組み 
 5.3.1 衛星-地上間光通信の通信リンク確立手順 
 5.3.2 捕捉におけるその他の捕捉方式 
 5.3.3 精追尾における方式の比較 
5.4 捕捉追尾の例 
 5.4.1 衛星-地上間光通信 
 5.4.2 衛星-衛星間光通信 

6.大気の影響
6.1 大気による現象 
 6.1.1 大気による散乱と吸収 
 6.1.2 大気ゆらぎ 
 6.1.3 大気ゆらぎの高度モデル 
6.2 大気ゆらぎによる影響と解析 
 6.2.1 シンチレーション 
 6.2.2 シンチレーションインデックス 
 6.2.3 ビームワンダー 
 6.2.4 到来角度変動 
 6.2.5 アイソプラナティック角 
6.3 通信システムへの影響と対策 
 6.3.1 受信側における大気ゆらぎ対策 
 6.3.2 送信側における大気ゆらぎ対策 
 6.3.3 空間光通信におけるサイトダイバーシティ技術 
6.4 空間光回線設計への大気ゆらぎの適用 
 6.4.1 C2nとシンチレーションインデックスの計算 
 6.4.2 大気ゆらぎ確率分布モデル 
 6.4.3 大気ゆらぎの確率分布モデルからの適用 
 コラム:大気レンズ

7.宇宙光通信の運用
7.1 宇宙通信の運用種別と構成 
 7.1.1 ハウスキーピング運用 
 7.1.2 ミッションデータ運用 
7.2 光通信技術の応用 
 コラム:光通信の期待
7.3 光地上局の機能と構成 
7.4 光地上局の分散配置 
 7.4.1 雲データ解析 
 7.4.2 衛星画像解析と光サイトダイバーシティ導出 
 7.4.3 環境調査と運用調整 
 コラム:光通信の地上局分散
7.5 雲回避ネットワーク 
 7.5.1 雲観測と判別 
 7.5.2 ネットワーク制御 
 コラム:光通信の雲回避対策

8.宇宙光通信の技術標準化と研究開発動向
8.1 宇宙光通信の技術標準化 
8.2 高速通信の必要性 
 8.2.1 周波数資源の不足 
 8.2.2 研究開発と運用実現 
 コラム:光通信の背景
8.3 光通信技術の技術標準化 
 8.3.1 技術標準の範囲 
 8.3.2 技術課題 
 コラム:技術標準の背景
8.4 研究開発動向 
 8.4.1 宇宙ネットワーク 
 コラム:光通信技術の利用事例
 8.4.2 地上ネットワーク 
 コラム:光地上局ネットワークの運用に必要なもの

付録
引用・参考文献
索引

高山 佳久

高山 佳久(タカヤマ ヨシヒサ)

鋭い光を照射する宇宙光通信では、移動する相手との光回線を確実に形成・維持するために、高精度な光制御技術が不可欠です。さらに、大気の影響を受けた光の扱いも容易ではなく、今後一層の研究開発が求められる分野といえます。空間における光回線の形成は、通信システムを構成する多様な技術を階層的に区分した場合、最下層に位置づけられる重要な要素技術の一つです。自然の応答や物理現象と強く関わるため多くの困難を伴いますが、興味の尽きない対象として研究開発に取り組んでいます。

安藤 俊行

安藤 俊行(アンドウ トシユキ)

1998年に三菱電機株式会社に入社して以来,光位相・波面の計測制御技術や光波とマイクロ波の融合・相互制御技術を基盤に,光空間通信,風計測ライダ,宇宙用望遠鏡,分散型レーダシステム等の研究開発に携わってきました。また,製品の設計・製作に加え,性能検証方法の検討にも幅広く取り組んでまいりました。コヒーレント宇宙光通信のアイデアはレーザの黎明期から存在していましたが,その実現には,指向捕捉制御技術の継続的な性能向上と,最新のデジタルコヒーレント技術との融合が欠かせません。
本書が,新旧さまざまな技術をつなぎながら,コヒーレント宇宙光通信への理解を深める一助となれば幸いです。

向井 達也(ムカイ タツヤ)

宇宙-地上間の光通信の実現には,地球大気の影響低減や雲を回避する技術が地上ネットワークに必要になります。電波通信とは伝送路の影響が異なるため,雲量の少ない場所に光地上局を分散配置することに加えて,光地上局は,望遠鏡を衛星へ高精度に指向を継続し,大気影響を低減し受信品質を高めながら,光地上局と衛星が通信をしている軌道に対して雲や航空機が進入する場合は,観測と判別により,安全を確保し,ネットワーク運用を制御により切り替え,衛星データの受信運用を継続する必要があります。
様々な知見や工夫が必要で困難ではありますが,粘り強く研究開発を継続しています。

原口 英介

原口 英介(ハラグチ エイスケ)

2008年 北海道大学大学院工学研究科応用物理学専攻修了。同年,三菱電機株式会社入社。2020年 北海道大学大学院工学研究科応用物理学専攻博士後期課程修了,博士(工学)。コヒーレント空間光通信,コヒーレントビーム結合,コヒーレントライダといった光の位相を制御する研究開発に従事しています。マイクロ波と比べ波長が短いことから生じる光特有の課題に取り組みつつ,その可能性に魅力を感じています。

竹中 秀樹(タケナカ ヒデキ)

倉 伸宏(クラ ノブヒロ)