電気設備の絶縁診断入門

電気設備の絶縁診断入門

  • 江原 由泰 東京都市大名誉教授 博士(工学)
  • 江藤 計介 出光興産(株)生産技術センター 電気分野シニアエンジニア
  • 末長 清佳 一般社団法人電気科学技術アカデミー代表理事

絶縁診断に必要な,設備の構造や絶縁材料の特性,劣化メカニズムなどを体系的に解説する。

ジャンル
発行年月日
2022/11/15
判型
A5
ページ数
174ページ
ISBN
978-4-339-00985-9
電気設備の絶縁診断入門
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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【書籍の特徴】
著者らは長年,電力機器の絶縁診断に携わってきました。初めて経験する絶縁材料の劣化状態を見たとき,その要因を考えたり,その状態を精度よく診断する方法を見出したりするには,多くの労力と時間を要しました。そして,一つの絶縁診断技術を理解するにも,基礎から実践までの体系的な知識が必要であることを実感しています。

絶縁材料の劣化現象を理解するには,その材料の電気的特性だけでなく,機械的や化学的特性も考慮する必要があります。また高電界中では,物質は非線形な現象を示すことなど,高電圧特有の知識も必要です。

本書では上記のことを踏まえて,これから電気設備の絶縁診断を学ぶ人に対して,できるだけわかりやすく解説した入門書です。絶縁材料の劣化メカニズムの基礎から,代表的な電気設備の絶縁構造や絶縁診断法,実際に起こったトラブル事例などについて,図や写真を使いわかりやすく解説しました。

【読者に伝えたいメッセージ】
SDGsが各分野で注目されており,一個人のSDGsに対する意識も高くなっています。SDGsの中では,産業と技術革新の基盤をつくる目標があり,強靱なインフラ構築などを図ることをテーマとしています。これは,災害が起きても早急に復旧することでもありますが,災害を未然に防ぐ手段も特段重要です。

電力機器は産業インフラ維持のための根幹であり,停電事故による災害の影響は企業や社会にとって大きいものとなります。そのため,電力機器などの絶縁状態を把握する診断法は,常に重要視されています。電力機器は種類も多く,その絶縁劣化診断法は多岐にわたります。絶縁診断を極めるためには,絶縁材料の特性や劣化メカニズム,診断原理の把握が必要です。これは決して容易なことではありませんが,社会にとって非常に重要で意義深いことですので,ぜひとも挑戦して修得してほしい技術です。

電気設備の信頼性は,絶縁の良否で決まるといっても過言ではない。重要部位にもかかわらず,絶縁はきわめて地味な存在で,トラブルを経験して初めて,責任者はその重要性を認識する。絶縁とは「空気」のようなものである。

ひとたび,電気設備の絶縁が破壊して停電事故を引き起こすと,社会的波及は大きく,企業の経済的損失は甚大なものとなる。したがって,電気設備のメンテナンスは,社会的にも企業的にも重要であり,絶縁診断に関する技術の修得は意義深い。

電力用の電気設備は,電気的には共通して高電圧が課電されている。しかし,機械的には発電機や電動機などつねに動いている回転機や,変圧器やケーブルのように停止している静止器,さらにときどき作動する開閉装置などさまざまである。したがって,電気設備はそれぞれの目的に合った仕様により,形や大きさなどの構造が異なり,適用される材料も異なっている。そして,各電気設備の絶縁材料は,製造年代や電圧階級ごとに変遷を遂げている。天然材料から人工材料へ転換し,さらに高度に複合化して絶縁設計も変更となっている。一方,設計精度の向上により絶縁材料の厚さは薄くなったが,過負荷時の絶縁耐力は低下し,電気設備の寿命も短くなった。これら絶縁材料の変化に伴い,劣化部位や劣化モードが変わる場合があり,適用する絶縁診断も変更が必要となっている。

このような電気設備において,その絶縁診断を理解するには,対象とする設備の構造や絶縁材料の特性,さらには劣化メカニズムなどの専門知識が必要である。これらの知識を得るためには,電気設備の絶縁診断に関する技術を体系的にまとめた教本が必要となる。残念ながら現在,絶縁診断に関する出版物は少なく,特にこれらを初めて理解しようとする,技術者や学生にとっての良書はほとんどない。かつては,速水敏幸先生の著書『電気設備の絶縁診断』が出版され,多くの技術者が入門書として活用していた。著者らもこの本を読み,絶縁診断技術の修得に役立てていたが,すでに絶版となっている。速水先生が執筆されてからすでに20年以上経ち,その間に絶縁診断技術も大きく進歩している。このようなことから,著者らは電気設備の絶縁診断に関する入門書として,新たに本書を執筆することにした。

本書の対象者は電気主任技術者や保全技術者を目指す人たちで,特に一般企業の電力ユーザや電力会社の保守・点検従事者,電気設備メーカの設計者,メンテナンス会社の技術者らで,大学の博士前期・後期課程におけるテキストとしても活用できる。また,本書は絶縁診断技術に関する実用書やハンドブックなどの記載内容をよく理解するために,できるだけ専門用語や絶縁診断のポイントをわかりやすく解説している。

電気設備にとって適切な絶縁試験方法を選択し,精度の高い診断を行うためには,多くの現場経験も必要で,技術者の育成には長い年月を要することになる。それらを軽減するために,本書は著者らが電気設備の絶縁診断の現場において,見いだした経験を主体としてまとめたものである。

1章(江原由泰)では絶縁劣化診断の基礎として,絶縁材料の特性や劣化の要因,各電気設備に共通する代表的な診断技術などを解説した。2章(末長清佳)では,各電気設備の絶縁構造と劣化現象や診断技術の最新動向,そして絶縁抵抗試験の注意事項なども解説した。3章(江藤計介)では,実際に起こったトラブル事例を基に,現場で適用されている絶縁診断方法を解説し,絶縁劣化以外のトラブル事例も紹介している。さらに,各章には絶縁診断に関係する豆知識や,著者らが不思議に思ったことをコラムとして記載している。

2022年10月
著者一同

1.絶縁劣化診断の基礎
1.1 絶縁材料
 1.1.1 絶縁材料の特性
 1.1.2 気体絶縁材料
 1.1.3 液体絶縁材料
 1.1.4 固体絶縁材料
 1.1.5 複合絶縁
 1.1.6 絶縁破壊
1.2 劣化の要因
 1.2.1 電気的劣化
 1.2.2 機械的劣化
 1.2.3 熱的劣化
 1.2.4 環境的劣化
 1.2.5 よくある劣化現象
 1.2.6 部分放電劣化
1.3 絶縁劣化診断(各機器に共通する代表的な診断技術)
 1.3.1 直流特性
 1.3.2 交流特性
 1.3.3 部分放電特性
 1.3.4 ガス分析
 1.3.5 オフライン診断,オンライン診断

2.電力機器・ケーブルの絶縁診断
2.1 電力ケーブル
 2.1.1 電力ケーブルの絶縁構造と劣化
 2.1.2 電力ケーブルの事故統計
 2.1.3 電力ケーブルの診断技術
 2.1.4 電力ケーブルの故障点標定技術
2.2 変圧器
 2.2.1 変圧器の絶縁構造と劣化
 2.2.2 変圧器の事故統計
 2.2.3 変圧器の診断技術
2.3 回転機
 2.3.1 回転機の構造と劣化
 2.3.2 絶縁診断技術
2.4 ガス絶縁開閉装置
 2.4.1 ガス絶縁開閉装置の絶縁構造と劣化
 2.4.2 GISの事故統計
 2.4.3 GISの診断技術
2.5 遮断器および配電盤
 2.5.1 絶縁抵抗
 2.5.2 部分放電
 2.5.3 化学的絶縁劣化診断法

3.電気設備のトラブルと診断の実際
3.1 ケーブル
 3.1.1 ケーブルの現場におけるトラブル事例
 3.1.2 ケーブルの劣化要因と劣化プロセス
 3.1.3 ケーブルの現場における診断方法
3.2 変圧器
 3.2.1 変圧器の現場におけるトラブル事例
 3.2.2 変圧器の劣化要因と劣化プロセス
 3.2.3 変圧器の現場における診断方法
3.3 回転機
 3.3.1 回転機の現場におけるトラブル事例
 3.3.2 回転機の劣化要因と劣化プロセス
 3.3.3 回転機の現場における診断方法
3.4 ガス絶縁開閉器
 3.4.1 ガス絶縁開閉器の現場におけるトラブル事例
 3.4.2 ガス絶縁開閉器の劣化要因と劣化プロセス
 3.4.3 ガス絶縁開閉器の現場における診断方法
3.5 遮断器および配電盤
 3.5.1 遮断器および配電盤の現場におけるトラブル事例
 3.5.2 遮断器および配電盤の劣化要因と劣化プロセス
 3.5.3 遮断器および配電盤の現場における劣化診断技術

引用・参考文献
索引

amazonレビュー

江原 由泰

江原 由泰(エハラ ヨシヤス)

1980年~1984年 三恵技研工業株式会社
1984年~2022年 東京都市大学 (旧武蔵工業大学)
現在,東京都市大学名誉教授
博士(工学)

大学では,高電圧工学やプラズマ応用工学特論を講義担当しました。主として,高分子絶縁材料の劣化や,大気汚染物質の放電プラズマによる除去に関する研究をしています。電気学会技術調査専門委員会や機械学会環境部門技術委員会の幹事,委員長を歴任し,絶縁劣化現象や絶縁診断技術を調査・研究しています。

江藤 計介

江藤 計介(エトウ ケイスケ)

1974年~現在 出光興産株式会社
出光興産徳山工場 電気主任技術者 (1993~2005年)
出光興産 生産技術センターエンジニアリング室(2005~現在)
技術士(電気電子),電気学会 プロフェッショナル認定
樋口賞(2017),澁澤賞(2021),電気保安功労者経済産業大臣賞(2022)受賞

電気主任技術者時代は電気ユーザー会である山口県電力協議会技術部会委員長などを歴任し,全国の電気関係ユーザー会と連携し電気主任技術者の育成や,保安技術向上のための啓蒙をしてきました。現在の本社勤務では社内各事業所の技術支援や技術伝承などの電気技術の向上に努めています。社外では電気学会技術調査専門委員会活動や日本電気協会,日本電気技術者協会での講演を数多く行い,国内の電気保安技術向上に努めています。

末長 清佳

末長 清佳(スエナガ キヨカ)

1976年~2018年 JFE スチール株式会社 
(2007~2015年)同 西日本製鉄所倉敷地区 電気主任技術者
2021年~現在,一般社団法人電気科学技術アカデミー代表理事
電気学会プロフェッショナル認定

JFEスチール勤務時代は,受変電設備や発電設備の建設から保守・運用まで幅広く担当し,海外の診断技術導入や,診断装置の開発も積極的に展開してきました。退職後は,老朽化が進む電気設備と格闘する若い電気技術者を側面支援するべく,電気科学技術アカデミーを創設し,絶滅危惧種と揶揄される電気技術者の保護活動に力を注いでいます。

掲載日:2023/03/20

令和5年 電気学会全国大会プログラム広告

掲載日:2022/10/27

日刊工業新聞広告掲載(2022年10月31日)

掲載日:2022/10/21

「電気学会誌」2022年11月号広告

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一般社団法人 日本電気協会のHP

https://store.denki.or.jp/frontend/seminar/detail/128