送配電工学 (改訂版)
新しい送配電技術や運用方法について引用しつつ,内容の大幅な変更は避け,再編を行った。
- 発行年月日
- 2020/02/28
- 判型
- A5
- ページ数
- 232ページ
- ISBN
- 978-4-339-00931-6
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
送配電系統を学ぶ学生向けに,内容を送電系統と配電系統の2編に分け,基礎的な事項を解説し,装置や特性の現象的な理解に心がけた。内容の大幅な変更は避け,社会情勢に応じて内容の追加,訂正,記述事項の移動など再編を行った。
改訂にあたって
本書は初版の発行から20年が経過し,その聞に送配電技術の進歩に加え,電力自由化に伴う産業構造の変化により電力の安定供給にも影響を及ぼしている。特に,2011年東日本大震災による原子力発電所事故を境に,電力の需給状況や技術動向は大きく変化している。それに伴い,新しい送配電技術や運用方法について引用しつつ,また,教科書として採用していただいた方々のご意見をもとに改訂版を出版することにした。改訂版においては,内容の大幅な変更は避け,社会情勢に応じて内容の追加,訂正,記述事項の移動など塩野が再編を行った。スマートグリッドや電力広域的運営推進機関の発足など情報化社会の進歩による取組みが拡大している中でも,電気工学を学ぶ学生にとっては送配電工学の基礎をしっかり学んでほしいものである。
2019年11月
著者一同
まえがき
本書は,大学の工学系において電気工学を学ぶ学生のための,送配電工学の講義用教科書として執筆したものである。
電力は,現在の社会活動を支える主要な基盤的要素であり,供給の中断が社会に与える影響は大きく,一時的といえども避けなければならない。そのため,供給においては高い信頼性が要求されている。送配電系統は,電力システムにおいて発電から変電を経て電力の利用段階までを結ぶ流通機構であり,その存在によりはじめて電力系統をシステムとして成り立たせるもので,系統内の変動や擾乱に対応して,つねに電力の流通を健全に保つ使命を担っている。
最近の発電所は,大都市圏からの遠隔地に大規模に建設される傾向があり,そのための長距離大電力送電線路は故障やそれに伴う送電停止の危険にさらされるため,そのような事態を避けるような対策がますます重要になっている。
一方,わが国の電力系統におけるネックであった50Hzおよび60Hzからなる東西二通りの周波数の地域間と,北海道・本州間は,それぞれ直流系統により結ばれるに及んで,北海道・本州・四国・九州の電力系統は,相互に電力融通が可能な広域的系統に発展している。さらに,長距離大電力輸送のため,100万V送電線路も建設され,間もなく実用されようとしている。また,半導体素子の発展とともに,交流系統内にそれらを利用した直流連系装置や無効電力供給装置などを導入して制御性能を向上させたり,分散形電源として太陽光発電や風力発電,燃料電池発電などの導入や連系も促進されている。送配電系統は,このように技術的にも高度化し,形態も多様化しつつある。
本書は,このような送配電系統を工学的に理解するとともに今後の発展に携わろうとする学生の勉学に役立つことを意図したものである。執筆にあたっては,基礎的な事項を定量的に把握するための計算方法や,装置や特性の現象的な理解のための説明を心がけた。そのため,複雑な回路網からなる送配電系統の特性や故障などの基本的な計算方法に多くの紙面を割いている。また送配電特性には,電線路だけではなしそれに接続する装置も深く関係しており,必要に応じてそれらについても述べている。最近の新しい技術や動向についてもできるだけ取り入れるように心がけたが,紙面の都合で割愛せざるをえないものも多かった。
計算方法などの理解のために取り入れた例題あるいは演習問題としては,本書のために作成したものと,電気主任技術者の資格試験の問題から引用したものがある。本書を利用した学生や技術者が,送配電の分野において大いに活躍されることを期待している。
執筆にあたっては,第I編の1~5章,8章後半,11章を小山が,第I編6~7章,8章前半,10章を鈴木が,第I編9章と第II編を木方が担当した。
最後に,著者らが勤務する日本大学においてつね日頃ご協力をいただいている塩野光弘氏と東京都立工業高等専門学校の進藤康人氏,資料の提供をいただいた東京電力(株)の原口芳徳氏および近藤宏二氏に深く感謝いたします。
また,本書を刊行するにあたり,多大なご支援とご協力を賜った(株)コロナ社の関係各位に対し深く感謝いたします。
1999年5月
著者一同
I編 送電系統
1.総論
2.送電方式と送電系統構成
演習問題
3.送電線路の構成要素
3.1 送電系統の構成
3.2 送電線路の構成
4.送電線路定数
4.1 架空送電線路
4.2 地中送電線路
5.送電特性
5.1 送配電系統の解析のための基本的方法
5.1.1 系統図の表現法
5.1.2 単位法
5.2 定常時送電線路の特性
5.3 電力方程式と電力円線図
5.4 調相
6.電力系統の安定度
6.1 安定度の分類
6.2 安定度の概念
6.3 定態安定度
6.4 過渡安定度と等面積法
6.5 発電機モデル
6.6 安定度の向上
6.6.1 発電機に対する系統の直列リアクタンスの減少
6.6.2 発電機の入出力の平衡化
6.6.3 発電機の端子電圧または系統電圧の適正制御
6.6.4 故障の高速除去
6.7 電圧安定性
演習問題
7.故障計算と中性点接地方式
7.1 対称座標法
7.2 対称分インピーダンス
7.3 故障計算
7.4 対称分回路とインピーダンス
7.5 断線故障
7.6 中性点接地方式
7.7 一線地絡時の健全相電圧
演習問題
8.異常電圧
8.1 異常電圧の種類
8.2 開閉サージ
8.3 短時間過電圧
8.4 雷現象と避雷
8.4.1 雷現象
8.4.2 送電線路上の進行波伝搬特性
8.4.3 避雷装置
8.5 絶縁協調
演習問題
9.電力系統の保護
9.1 送電線の保護継電方式
9.2 配電系統保護方式
9.2.1 高圧配電線の保護方式
9.2.2 特別高圧配電線の保護方式
9.3 配電線の事故時自動制御方式
9.4 開閉現象
9.4.1 交流電流の遮断
9.4.2 開閉装置
9.4.3 交流遮断器の種類
10.誘導障害とコロナ
10.1 電磁誘導障害
10.2 静電誘導
10.3 コロナ
10.3.1 コロナ開始電圧
10.3.2 コロナ損
10.3.3 コロナ雑音とコロナ騒音
10.3.4 コロナ軽減対策
演習問題
11.直流送電
11.1 直流送電の背景と概要
11.2 直流送電系統の構成
11.3 直流送電の動作原理と制御方式
11.4 直流送電の導入状況
演習問題
II編 配電系統
12.配電系統の構成
12.1 樹枝状方式
12.2 環状配電方式(ループ式)
12.3 一次ネットワーク方式
12.4 二次(低圧)バンキング方式
12.5 二次ネットワーク方式
12.6 地中配電
12.7 配電電圧の高圧化
12.8 配電系統の標準電圧
12.9 配電方式
12.9.1 単相3線式
12.9.2 三相3線式
12.10 配電線路の銅量比較
13.配電線の電気的特性
13.1 電圧降下
13.2 電力損失
13.3 力率調整
演習問題
14.配電計画
14.1 需要予測
14.2 需要の時間的・地理的分布の扱い
演習問題
15.配電線路の機械的設計
15.1 架空配電線路
15.2 電線の弛度,電柱に働く力,電線の振動防止
15.3 荷重の大きさと計算
15.4 支持物の強度
15.5 支線・支柱の強度
16.屋内配線
16.1 屋内配線の電気方式
16.2 屋内電路の対地電圧の制限
16.3 屋内配線の裸電線の使用制限と使用電線
16.4 配線方法
16.5 屋内電路の保護装置
参考文献
演習問題解答
索引
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掲載日:2020/10/21
-
掲載日:2020/06/24