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ネットワークシステムの分散協調制御

シリーズ システム・制御のニューフロンティア D-1

ネットワークシステムの分散協調制御

ネットワークシステムでは,複数の動的サブシステムがネットワークで接続されたサブシステムの情報のみを利用してネットワーク全体の目的を達成することが求められる。本書ではこのような分散協調制御を網羅的に解説した。

発行年月日
2026/05/28
定価
4,290(本体3,900円+税)
ISBN
978-4-339-03404-2
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 MSat 様 (業界・専門分野:情報通信、自動車)】

掲載日:2026/06/08

ネットワーク化された動的システムが社会のあらゆる場面に浸透しつつある現在、その協調動作をいかに設計し、いかに安全に運用するかは、もはや一部の研究者だけの関心事ではない。『ネットワークシステムの分散協調制御』は、この広大で複雑な領域を、受動性とエネルギーに基づく統一的な基盤理論によって貫き、同期制御・分散最適化・被覆制御といった主要テーマを一望できる形に整理した意欲的な一冊である。

20年以上にわたり枝分かれしてきた研究の流れを「どこに共通の本質があるのか」という視点から再構成する本書は、分散協調制御を学ぶ者にとって、単なる入門書でも専門書でもなく、“地図”として機能する稀有な書籍として位置づけられる。一方で、本書が同期制御、分散最適化、被覆制御、制御バリアなど、2000年代以降に急速に発展した多様なトピックを統一的に扱おうとしたがゆえに、個々の技術的背景──とりわけ数学的な部分──については、やや割り切った説明にとどまっている印象も受ける。たとえば、同期制御におけるグラフラプラシアンの導入はやや天下り的であり、分散最適化で扱われる交互方向乗数法(ADMM)も微分可能な関数の例に限定されているなど、背景知識のない読者には誤解を招きかねない箇所も散見される。

もっとも、これらは本書の目的が「個別技術の深掘り」ではなく、「分散協調制御を統一的に理解するための視座を提供すること」にあると考えれば、ある程度は必然的なトレードオフとも言える。個々の技術については、コロナ社から出版されている入門書──たとえば永原正章著『スパースモデリング』や田中雄一著『グラフ信号処理の基礎と応用』──を併読することで補完できるだろう。

いずれにしても、ネットワークでつながった制御対象を数理モデルとしてどのように捉え、どのように解析していくべきかについて、本書は多くの示唆を与えてくれる。分散協調制御に興味を持つ読者が最初に手に取る一冊として、十分に推奨できる内容である。

最後に蛇足ながら、本書評はネットワーク分野での経験は長いものの、制御分野についてはほとんど知識のない読者によるものであることを付記しておきたい。近年は複数分野にまたがる学術書や研究が増えているが、本書の主題である「ネットワークシステム制御」という語には、Control over Networks と Control of Networks の二つの意味がある。本書が扱うのは前者であり、後者──すなわち情報通信ネットワークの運用・管理──を意図したものではない点を明確にしておきたい。

読者モニターレビュー【 SOGO 様 (業界・専門分野:機械工学)】

掲載日:2026/06/08

本書の魅力は,種々の分散協調制御問題を統一的な基盤理論のもとで理解できる点にあります.私を含め,初学者は全ての内容を理解することが難しいかもしれませんが,第1章を通して分散協調制御の大枠を俯瞰するだけでも本書を手に取る価値があります.また,第2章以降は数式を用いて議論が展開されるため,大学数学や制御工学の基礎知識があると読み進めやすいです.

読者モニターレビュー【 ぬぺ 様 (業界・専門分野:制御理論)】

掲載日:2026/06/08

本書は,ネットワークシステムの分散協調制御について,受動性を基盤とした統一的な視点から体系的に学ぶことができる一冊です。対象としては,制御工学を学ぶ学生だけでなく,マルチエージェントシステム,分散最適化,安全制御などに関心をもつ研究者・技術者にも有用な内容だと感じました。
本書を読み進めるうえでは,基礎的な制御工学の知識があると,数式や議論の流れをよりスムーズに理解できると思います。一方で,受動性については丁寧に導入されており,その考え方を軸として同期制御,分散最適化,被覆制御へと展開されるため,各トピックを単独の手法としてではなく,相互に関連した理論として理解できる点が印象的でした。
特に,受動性という共通の枠組みから,分散協調制御の代表的な問題を見通せる構成は本書の大きな特徴だと思います。これまで個別に学んできた同期制御や分散最適化の考え方が,より大きな理論的背景の中で整理されていく感覚があり,分野全体を体系的に捉えるうえで非常に勉強になりました。
また,制御バリア関数に関する記述が充実している点も本書の魅力です。制御バリア関数を日本語でまとまって学べる書籍はまだ少ないため,安全性を考慮した制御に関心のある読者にとって貴重な参考書になると思います。導入的な内容から発展的な話題まで丁寧に説明されており,分散協調制御の文脈で学びたい読者はもちろん,制御バリア関数を体系的に習得したい読者にとっても有用な一冊です。
総じて,本書は分散協調制御の基礎から近年の安全制御に関わる話題までを,一貫した視点で学ぶことができる良書だと感じました。当該分野にこれから取り組む学生や,研究・実装のために理論的な土台を整理したい研究者・技術者におすすめできる一冊です。

読者モニターレビュー【 ひろ 様 (業界・専門分野:制御工学(産業応用))】

掲載日:2026/06/08

近年,ドローンや自律型ロボットが広く普及しており,ネットワークシステムの研究も盛んに行われている。本書は,この分野で第一線で活躍されている先生方によって執筆されたものである。合意制御や被覆制御といった学会のプログラムでよく目にする制御問題を,エネルギーに基づく制御理論を基盤として統一的に扱っている点が大きな特徴であり,ネットワークシステムに興味を持つ学生・社会人にぜひ薦めたい一冊である。
本書は全6章から構成されており,第1章〜第4章までが前半,それ以降が後半となっている。前半では,受動性や安定性について丁寧に論じられたのち,テレオペレーションシステムや合意最適化などを例として,受動性(エネルギー)の観点からどのように安定性を示すかが説明されている。基盤となる受動性についても懇切丁寧に述べられており,マニピュレータ系や移動ロボットといったネットワークシステムで扱われることの多い系に対し,どのように受動性を示すかが解説されている。この内容は,本書の理解にとどまらず,受動性や安定性そのものの理解にも大いに役立つと感じられる。
また,第4章では最適化の基礎から合意最適化までが,受動性を絡めつつ丁寧に展開されている。基礎から段階的に説明されているため,初学者にも理解しやすい構成であるという印象を受けた。
後半の第5章と第6章では,被覆制御と制御バリア関数が扱われている。いずれも学会の予稿などで目にする機会の多い制御問題であり,それらが体系的に説明されている点も本書の大きな特徴である。被覆制御においては,ボロノイ図の説明から複数の具体的な制御手法までが,図を用いて丁寧に説明されており,本章を読むことで十分な知識を習得できると思われる。
また,「はじめに」にて「第6章は一部に高度な数学を含むが…」と述べられているが,数式の間に日本語による丁寧な解説が挿入されており,理解を着実に深めることができる構成となっている。個人的には,これまで制御バリア関数について学会誌や予稿集だけでは十分に理解できなかったが,本書によって体系的に内容を把握でき,さらにネットワークシステムへの具体的な活用方法を理解できた点は,非常に有意義であった。
近年盛んに研究されているネットワークシステムのトピックについて,非常に丁寧に解説された書籍である。ネットワークシステムに関心のある学生・社会人に広くおすすめしたい一冊である。