
例題で学ぶ化学プロセスシミュレータ - フリーシミュレータCOCO/ChemSepとExcelによる解法 -
フリーの化学プロセスシミュレータCOCO/ChemSepを使った化学工学全般の例題解説集。関連データをWebにて公開。
- 発行年月日
- 2018/11/22
- 判型
- A5
- ページ数
- 234ページ
- ISBN
- 978-4-339-06647-0
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
フリーの化学プロセスシミュレータCOCO/ChemSepを使った化学工学全般の例題解説集。単なる教本にならないようExcel解法を併記。チュートリアルビデオをYouTubeに掲載,関連データをWebにアップした。
化学工学の教育カリキュラムは化学工学量論に始まり,移動現象論,単位操作とつづく体系としてすでに確立しており,その内容は長年変わっていない。しかし最近のプロセス設計の現場では,Aspen, HYSYS, PRO/IIなどの化学プロセスシミュレータの使用が一般的となっている。シミュレータには化学工学の基礎事項の多くが内部に組み込まれ,コンピュータ画面上でプロセスを構成するだけで,設計計算とプロセスのシミュレーションが可能である。
筆者は化学工学教育者として,このようなプロセスシミュレータの普及による「化学工学のブラックボックス化」に危機感を抱いていた。化学工学の基礎事項がシミュレータの内部にブラックボックス化することは,化学工学を知らなくてもプロセス設計ができるということであり,化学工学技術者の専門性を脅かすことになる。これからの化学工学技術者は化学工学の理論・原理がわかった上で,プロセスシミュレータも使いこなせなくてはならない。そのためにシミュレータの使用を前提とした化学工学の教育方法を考える必要がある。
最近ではプロセス設計演習など上級科目でシミュレータの実習を行っている大学もあり,化学工学会主催でプロセスシミュレータによる「プロセスデザイン学生コンテスト」も毎年実施されている。しかし未だ化学工学教育の全般でシミュレータが活用されているとはいえない。これは実務経験のある教官が少なく,シミュレータを十分に教育できないこと,および商用シミュレータが実務向けで,システムが大きく,教材としては使い勝手の点でやや問題があったためと思われる。
しかし最近の化学プロセスシミュレータCOCO/ChemSepにより,シミュレータの教育利用が身近なものになってきた。COCO/ChemSepはフリーソフトである。システムも小さく手軽に各自のパソコンにインストールできる。しかしフリーソフトであるだけに,試そうとしても,サポートもなく資料も乏しい中での自習にならざるを得ない。
そこでこのCOCO/ChemSepの登場を契機に,化学プロセスシミュレータを学ぶ講座を企画し,「パーソナル化学プロセスシミュレータCOCO/Chem-Sepで学ぶ化学プロセス計算」として化学工学会誌「化学工学」に連載した(2017年9号~2018年8号)。この連載講座では本格的なプロセス設計を目指すというよりは,むしろ基礎的な「化学工学量論」,「単位操作」,「反応工学」科目中の各種例題について,COCOシミュレータによる解法を紹介した。その際,同じ例題解法を従来の化工計算(Excelによる解法)と比較することを心掛けた。この形式により,プロセスシミュレータの使い方を習得すると同時に,その内部の化学工学の基礎事項を再確認して,シミュレータのブラックボックス化を防ぎたいという意図があった。
本書はこの連載を基にさらに例題を加え(連番途中に追加した例題の例題番号には,その前の例題番号にa, b, c, … を付けた),解説を詳しくしてまとめたものである。各例題解法ファイルはコロナ社ホームページからダウンロードでき,COCO/ChemSepを各自のパソコンで修得できるよう詳しくガイドした。しかし,実際には紙面によるソフトの実習・習得には困難が伴う。そこでほとんどの例題解法についてチュートリアルビデオを制作してYouTube上に掲載してあるので,本書と併用して活用していただきたい。
本書が化学工学教育全般で化学プロセスシミュレータを取り入れる契機となり,化学工学の基礎知識をマスターした上でシミュレータを使いこなせるケミカルエンジニアの育成に役立つことを願っている。
化学工学誌連載にあたっては関口秀俊氏(東京工業大学),渕野哲郎氏(東京工業大学),佐々木正和氏(東洋エンジニアリング),および原稿の校閲をいただいた化学工学誌編集委員の滝澤正規氏,平岡一高氏にお世話になった。記して感謝申し上げます。
2018年9月 伊東章
1. COCO/ChemSepの使い方と機能
1.1 COCO/ChemSep入門
【例題0】オルダーショウ蒸留器によるメタノール水溶液の蒸留
1.2 COCO/ChemSep活用法
1.2.1 物性値モデルの選択
1.2.2 フローシート全体の物性値モデルとUnitの物性値モデルの違い
1.2.3 リサイクルとパージを含むプロセス
1.2.4 反応器モデルの選択
1.2.5 Parametric Study
2. 気体のPVTと熱化学
【例題1】気体のPVT
【例題2】混合ガスの冷却
【例題3】相変化を伴う加熱
【例題4】改質反応の反応熱(反応率反応器Fixed conversion reactor)
3. 反応プロセス
【例題5】燃焼ガス温度(反応率反応器Fixed conversion reactor)
【例題6】平衡組成(ギブス反応器Gibbs reactor)
【例題6a】平衡組成(平衡反応器Equilibrium reactor)
【例題6b】複合反応の平衡組成
【例題7】リサイクル・パージプロセス
4. 熱交換器
【例題8】熱交換器(並流)
【例題9】熱交換器(向流)
【例題10】内部で相変化のある熱交換器
【例題11】熱交換器システム
【参考例題】冷蔵庫のモデル(冷凍サイクル)
5. 蒸留
【例題11a】2成分系フラッシュ蒸留(エタノール/水系)
【例題11b】3成分系フラッシュ蒸留(炭化水素系)
【例題11c】断熱フラッシュ
【例題11d】単蒸留
【例題12】2成分系蒸留(エタノール/水系)
【例題12a】充填塔による2成分系蒸留─物質移動モデル─
【例題12b】2成分系精密蒸留
【例題12c】空気蒸留
【例題13】多成分系蒸留(C4-C9炭化水素系)
【例題13a】3塔による蒸留系列(C2-C5炭化水素系)
【例題14】圧力スイング蒸留(エタノール/ベンゼン系)
【例題15】共沸蒸留(エタノール/水/ベンゼン系)
【例題15a】抽出蒸留(アセトン/メタノール/水系)
6. 調湿
【例題16】断熱増湿
【例題17】圧縮除湿
【例題18】水による空気の冷却
【例題19】冷水塔(1)
【例題19a】冷水塔(2)
7. 抽出
【例題20】単抽出(水による酢酸の抽出)
【例題21】向流抽出(スルホランによるベンゼンの抽出)
【例題22】並流多段抽出(エーテルによるエタノールの抽出)
【例題22a】酢酸水溶液の酢酸エチルによる向流抽出
8. ガス吸収
【例題23】単成分蒸気の吸収操作(エタノール蒸気の水による吸収)
【例題23a】単成分ガスの吸収操作(SO2ガスの水による吸収)
【例題23b】単成分蒸気の吸収操作(気相支配)(アンモニア蒸気の水による吸収)
【例題23c】放散操作(廃水中のVOC放散)
【例題24】多成分蒸気の吸収操作(炭化水素蒸気の洗浄)
【例題24a】吸収-放散プロセス(1)(水によるCO2吸収)
【例題24b】吸収-放散プロセス(2)(TEGによる天然ガスの除湿)
9. 反応工学─CSTRとPFR─
【例題25】CSTRとPFR(液相1次反応)
【例題26】CSTRとPFRの組合せ(液相自触媒反応)
【例題27】気相PFR(気相1次反応)
【例題27a】気相PBR(触媒層反応器)
【例題28】回分反応(BR)(液相逐次反応)
10. 反応工学─非等温反応器─
【例題29】非等温CSTR─液相ブタン異性化反応─
【例題29a】非等温PFR─液相ブタン異性化反応─
【例題30】非等温PFR─気相アセトン分解反応─
【例題31】非等温PBR(1)─メタンの改質反応─
【例題32】非等温PBR(2)─ベンゼンの水素化反応─
11. Excelとの連携
【例題33】管内流れの圧力損失
【例題34】ガス分離膜モジュール(ソルバー使用例)
12. プロセス設計
【例題35】多重効用蒸発
【例題36】トルエンの脱アルキル化プロセス
【例題37】エチレングリコール製造プロセス
【例題38】メタノールプロセス
引用・参考文献
索引
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掲載日:2023/11/02
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掲載日:2022/01/06
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掲載日:2021/10/04
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掲載日:2021/02/17
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掲載日:2020/11/02
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掲載日:2020/10/20
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掲載日:2019/10/01
関連資料(一般)
- COCO,ChemSep,Exceデータのアーカイブ
- 例題解法データとYouTubeチュートリアルのリンク