機械工学のための数理モデリングと現象解析入門

機械工学のための数理モデリングと現象解析入門

機械工学の基礎科目の知識を応用力学との関係性の中で創造的に再配置して現象をモデリング

ジャンル
発行予定日
2026/08/下旬
判型
A5
予定ページ数
240ページ
ISBN
978-4-339-06137-6
機械工学のための数理モデリングと現象解析入門
近刊

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3,740

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
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本書ではまず数理モデルとは何かという問いからスタートし,現象をよく表す方程式をいかに発見するかということについて述べる。また,現象を理解するには多変数の関係性を捉えることが不可欠であり,偏微分方程式を中心に解説する。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

自然科学を教養として学び身につけ,自然の中でひとや社会との関係性を考えることが工学の一つの役割である。機械はひとが道具を作ること思いついたときに始まり,ひとがその自律化を希求し続けることにより発達してきたが,科学技術が急速に進歩する中,機械に関連するトピックを扱う工学である機械工学の概念も大きく変化しつつあるように思われる。自然の摂理が普遍であるとしても,自然の法則の表現,あるいは自然観と同様に,ひととの関わりで,見え方,認識のされ方と密接に関係する現象も時代とともにも変化する。したがって機械工学を教える者も学ぶ者も変容が求められる。

一方,モデリングや現象解析の根底にある多様な方法論の根幹は昔も今も変わらないように思われる。万能の天才レオナルド・ダ・ビンチが「力学は数理科学の楽園である」と記しているとおり,応用力学者の先達は,貪欲ともいえる好奇心で,ありとあらゆる現象を数学モデルで表現できるはずだという信念に基づいて選り好みせず仕事をしていたように思える。そういった探求心がいつの世にも学問を発展させてきた。

本書は,変革の時代にあっても機械工学に携わる技術者・研究者が教養として知っておきたい応用数学の基礎を応用力学との関係性の中で学ぶための教科書を想定して,教室での経験に基づいて講義資料を書き改めたものである。微積分学,線形代数学,および連続体力学や,熱・流体・固体・機械力学,設計・生産・制御工学などの機械工学の基礎科目を一通り学んだ理工系大学の学部高学年からの読者を想定し,科目ごとに深化されて理解された知識の復習とそれらを創造的に再配置する契機の一助となることを期待している。

まず数理モデルとは何かという問いからスタートし,現象をよく表す方程式をどのように発見するのかといったモデリングの概念を述べる。つぎに現象を理解するには多変数の関係性を捉えることが不可欠であること,また見通しのよいモデルによって複雑な現象を表現できることを踏まえて偏微分方程式を中心に述べる。その際にまず一階の偏微分方程式について基礎を丁寧に述べ,進んだ内容を静的・定常的な現象と,動的・時間発展する現象,その安定性という観点で整理している。また数理現象解析に欠かせないコンピューターシミュレーションについても,簡単な計算コードを例示し,計算力学への入門として理解しやすいように配慮している。

クーラン・ヒルベルト『数理物理学の方法』(1924),カルマン・ビオ『工学における数学的方法』(1940),『ソビエト科学アカデミー版数学通論—数学:その内容,方法,意義—』(1956)』といった不朽の名著がある中,新たに書を著す意義はと自身に問うとき,ありきたりではあるが今は21世紀でありコンピューターの発達を中心に私達を取り巻く環境が当時とは本質的に異なっているというもっともらしい事由をまず思いつく。もう一つは,著者自身はこれらの知の巨人の肩どころか足元にも及ばないだけでなく,むしろ不器用で人一倍努力して勉強しても不足が思うように補えない苦い経験ばかりをしてきたことである。工学教育の現場でむしろこのような学者の経験からの応援メッセージも何か学生諸氏のモチベーションを高め,未来を担う世代の若者の奮起を促すのに役立つのではないかと考える。

本書は入門書ではあるが,卒業研究・高専専攻科特別研究・修士論文・博士論文研究を行う際,あるいは社会貢献されている幅広い層のエンジニアの皆様のリカレント学習などの際に,ガイドブック・読本としても手にとっていただけるように広範性と啓発性を意識している。数学が持つ厳密性の提示を省略して話を進めているところは多く,浅学から考察に至らない点もあること承知している。言い訳が過ぎるかもしれないが,歴史的に見れば誤謬は大切なプロセスであり矛盾点の考察を経て多様な価値観を尊重した包括的な理解が進むことによって学問は発展してきたことを盾にさせていただきたい。よく知られた定理の証明はAIに尋ねれば的確に教示してくれる時代であることを考えて,検索のきっかけが知識の引き出しになるように留意するとともに,随想に近い筆者の直感や独自の価値観に基づいた記述もなるべく記し,さまざまな読み方で能動的な考察の動機づけや将来の課題発見につながる思考力の育成,未来の技術者の知的生産活動の契機として役立てていただけるのならば,本書の執筆目的に適うものである。

また理工系の学生向けの偏微分方程式の教科書や参考書として活用していただけることを念頭に,基礎的な事項を丁寧に記すように心がけたが,例題が浅学の筆者にとってはまだ多少心得のある材料力学や計算力学に関係する内容に偏ってしまっている。もし工学教育にご関係の先生方にお願いできるのであれば,講義や研究指導では参考文献に挙げさせていただいている多くの良書などのご紹介とともに必要に応じて数学的な厳密性を補っていただき,ご自身の見識で良問に置き換えて活用いただけると幸いである。

なお付録に「ギリシア文字」「接頭辞」「無次元量」の表を示している。ギリシア文字はネット検索がユビキタスの時代とはいえ役立てていただければと,読み方や綴り方の一覧を記した。接頭辞は用語の性質や概念を豊かに表現する修辞の魔法であり,無次元数はゆかりの科学者の名とともに変化を見極める現象解析の羅針盤になる重要な役割を演じていることから,2表には未来を担う若者達が新しい理論や用語の名付け親になるような「機械工学の達人」を目指してほしいとの願いを込めている。

末筆になりましたが,本書の執筆の機会を下さり,企画段階から辛抱強く激励下さいましたコロナ社の関係各位に深く御礼申し上げます。

2026年7月

中谷彰宏

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます


1.数理モデリングとは何か—現象解析序論—
1.1 序説—ひと・物理機械・情報機械の共存の時代の機械工学— 
1.2 数理モデルを通して「もの」を見る 
1.3 モデリングと現象解析の役割と分類 
1.4 モデリングのフィロソフィー 
 1.4.1 オッカムの剃刀でシンプルに 
 1.4.2 内と外の境界をどこに設けるか 
 1.4.3 不完全な外延/内包としてのモデル 
 1.4.4 物理量・局所モデルと大域モデル 
 1.4.5 モデリングに方法論はあるのか 
 1.4.6 モデリングの検証と妥当性確認 
1.5 数式モデルとデータ科学 
 1.5.1 数式モデルによる関数近似 
 1.5.2 データによる関数近似として見た機械学習 
1.6 物理法則と構成関係のモデリング 
 1.6.1 力学現象を扱う学問体系—運動学と力学— 
 1.6.2 連続体モデルの保存則を基礎とする輸送現象論 
 1.6.3 構成関係式—システムの固有の特性を表すモデル— 
章末問題

2.物理量の関係性—次元解析と無次元数—
2.1 物理量の次元と次元解析:次元でみる物理量の関係性 
 2.1.1 知識の共有のための物理量 
 2.1.2 次元・単位と次元解析によるモデルの精緻化 
 2.1.3 テンソルの不変量で普遍的な法則を見つける 
2.2 無次元化によって本質を見つけ出す 
 2.2.1 バッキンガムのπ定理と無次元数 
 2.2.2 減衰振り子の問題に現れる時間の定数 
章末問題

3.システムの状態の偏微分方程式による記述
3.1 システムの状態を表現する変数の空間 
3.2 偏微分と偏微分方程式 
 3.2.1 偏微分と変数空間の幾何 
 3.2.2 偏微分方程式 
3.3 1階偏微分方程式の特徴と物理的意味 
 3.3.1 準線形方程式の特性曲線と一般解—曲線の集まりとしての曲面— 
 3.3.2 一般的な非線形方程式と完全解 
3.4 多様な現象を記述する2階偏微分方程式 
 3.4.1 解の存在と一意性 
 3.4.2 線形方程式の重ね合わせの原理 
 3.4.3 2階線形偏微分方程式の分類と標準形 
3.5 ラプラス方程式 
 3.5.1 ラプラス方程式とその境界値問題 
 3.5.2 2次元ラプラス方程式と解析関数 
章末問題

4.発展方程式による未来予想
4.1 時間の矢と先読み未来予想のためのモデル 
4.2 力学系の発展方程式と偏微分方程式の関係 
 4.2.1 力学系と常微分方程式の初期値問題 
 4.2.2 相空間の時間発展とハミルトン系の性質 
 4.2.3 力学系の背後にある偏微分方程式 
4.3 波動伝ぱの問題 
 4.3.1 運動学的波動方程式 
 4.3.2 交通流と交通渋滞の問題 
 4.3.3 衝撃波とランキン・ユゴニオ条件 
4.4 波動方程式 
 4.4.1 波動方程式の導出 
 4.4.2 ダランベールの解とストークスの公式 
 4.4.3 依存領域と影響範囲 
4.5 熱伝導・拡散方程式 
 4.5.1 熱伝導・拡散方程式 
 4.5.2 無次元化と相似解 
4.6 フーリエの方法 
 4.6.1 波動方程式についてのフーリエの方法 
 4.6.2 熱伝導方程式についてのフーリエの方法 
4.7 積分変換による解法 
章末問題

5.隠れた系の存在と力学の安定性問題
5.1 エネルギー地形と配置力と現象解析の関係性 
 5.1.1 現象の駆動力とエネルギー地形 
 5.1.2 汎関数の停留問題 
 5.1.3 特異点の運動—結晶体の格子欠陥から台風の目からまで— 
 5.1.4 移動界面のフェーズフィールドモデル 
 5.1.5 マルチスケールモデリング 
5.2 グリーン関数 
 5.2.1 線形演算子と随伴演算子 
 5.2.2 線形演算子のグリーン関数 
 5.2.3 グリーン関数と行列の対比 
 5.2.4 偏微分方程式のグリーン関数法 
 5.2.5 偏微分方程式の基本解 
5.3 ルジャンドル変換・ラグランジュ関数法と双対性 
 5.3.1 ルジャンドル変換と双対性 
 5.3.2 熱力学ポテンシャルと駆動力 
 5.3.3 ラグランジュ関数法 
5.4 不安定現象のモデリングと解析 
 5.4.1 力学系の安定性 
 5.4.2 周期解の安定性と積分可能性 
 5.4.3 非保存系の安定性 
 5.4.4 構造不安定性と材料不安定性 
 5.4.5 カタストロフ理論による不安定性の分類 
 5.4.6 不安定現象を積極的に利用する技術 
章末問題

6.コンピューターによる現象解析
6.1 時間発展方程式の数値計算 
 6.1.1 差分と差分商 
 6.1.2 時間積分器 
 6.1.3 熱伝導・拡散方程式の解 
 6.1.4 波動方程式の解 
6.2 2次元ラプラス方程式の数値計算 
 6.2.1 離散化による解法 
 6.2.2 離散ラプラシアンと差分法 
 6.2.3 ランダムウォーク—モンテカルロ法— 
 6.2.4 有限要素法 
 6.2.5 境界要素法 
 6.2.6 解法の適用と結果の可視化 
6.3 AI共生時代のモデリングと現象解析の未来 
付録
引用・参考文献
章末問題解答
索引