
機械系のための関数論入門
重要な関数論を理解できるよう,数学的基礎,力学的応用,ベクトル解析まで三部構成で解説。
- 発行年月日
- 2019/11/28
- 判型
- A5
- ページ数
- 176ページ
- ISBN
- 978-4-339-06118-5
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
機械系学科の学生にとって重要な関数論について正しく理解できるよう,関数論の数学的基礎をおさえたうえで流体力学や熱力学への応用を学び,最後に本論を補うかたちでベクトル解析などについて理解を深める三部構成となっている。
★読者対象★
本書は機械系学科向けの関数論入門書であると同時に,企業で日々設計に携わっているエンジニアの方,機械構造設計の研究をされている方,あるいは,もう少し普遍的な原理から現象を捉えてみたいと思っている方などを対象にした関数論の初等的な解説書である。
★書籍の特徴★
本書の大部分は,近代数学の父といわれるAugustin-Louis Cauchy(コーシー,1789~1857年)により確立された内容である。Cauchyは解析学全般の厳密な形式化を行い,Cauchy-Riemann の方程式,Cauchyの定理,Cauchyの積分公式,Cauchy列,Cauchyの収束原理等々,Cauchyの名がついた定理や原理は枚挙にいとまがない。生涯に執筆した論文数は,じつに789にものぼっている。狂信的なカトリック信者であったCauchyが,2019年4月15日(現地時間)大火災にみまわれたノートルダム寺院に足しげく通ったであろうことを思うと,200年以上の歳月は経ているもののごく身近に感じられる存在ではある。
機械系の学生やエンジニアにとって,流体力学や熱力学は身につけるべき必須の学問分野である。これらの分野で展開される複素ポテンシャルにおいて,関数論の正則関数や等角写像の概念が重要な役割を果たすのである。しかし,わが国の工学部での数学教育においては,関数論がやや軽視されがちな感は否めない。そこで, 著者らはこれらの流体力学や熱力学の専門科目へスムーズにつながるような内容の構成を計った次第である。
具体的には,工学部機械系学科の低学年が初めて複素数関数を扱うときに混乱が生じないように,まず,応用を前提とした基礎を解説し,そのうえで流体力学と熱力学への関数論の展開にページを割いた。一般の数学書が重点的に書いている積分論や解析接続などについては,必要最小限の解説にとどめた。本書は3部構成であり,それぞれ,I. 関数論の数学的基礎,II. 流体力学と熱力学への応用,III. 付録(本論の内容の補遺)である。応用上,正則関数の等角性はきわめて重要な位置を占めており,この部分に紙数を割いた。
【章末問題と解答】
各章の末尾には章末問題を施した。読者はこれを解くことにより,理解を深めることができるであろう。解答はコロナ社のホームページに掲載。
本書は機械系学科向けの関数論入門書である。一般的に,わが国の工学部での数学教育は,初年度の微・積分学や線形代数に始まり,2,3年時に微分方程式論,フーリエ解析学,ベクトル解析,確率・統計などを習い,関数論はやや軽視されがちである。しかし,機械系の各学科において,流体力学は必須の科目であり,そこで展開される非圧縮渦なし流であるポテンシャル流のなす複素ポテンシャルは,Cauchy-Riemannの方程式を満足する。すなわち,2次元ポテンシャル流において,関数論の正則関数や等角写像の概念が重要な役割を果たすのである。片や,熱力学は流体力学と並ぶ重要科目であり,ここでも複素熱ポテンシャルが定義できて,ポテンシャル流と同様の議論ができる。
本書の大部分は,近代数学の父といわれるAugustin-Louis Cauchy(コーシー,1789~1857年)により確立された内容である。Cauchyは解析学全般の厳密な形式化を行い,Cauchy-Riemannの方程式(定理3.3),Cauchyの定理(定理5.3),Cauchyの積分公式(定理5.7),Cauchy列,Cauchyの収束原理等々,Cauchyの名がついた定理や原理は枚挙にいとまがない。生涯に執筆した論文数は,じつに789にものぼっている。狂信的なカトリック信者であったCauchyが,2019年4月15日(現地時間)大火災にみまわれたCath´edraleNotre-Dame de Paris(ノートルダム寺院)に足しげく通ったであろうことを思うと,200年以上の歳月は経ているものの,ごく身近に感じられる存在ではある。
さて,著者らは本書において,工学部機械系学科の低学年が初めて複素数の関数を扱うときに混乱が生じないように,まず,応用を前提とした基礎(1~7章)を解説し,そのうえで流体力学と熱力学への関数論の展開にページを割いた(8~11章)。一般の数学書が重点的に書いている積分論や解析接続(5章および6章)などについては,必要最小限の解説にとどめた。
本書は,第I部として関数論の数学的基礎を解説し,第II 部にて流体力学と熱力学への応用を表し,さらに,第III部では,付録として本論の内容を補うという構成になっている。第I部は,関数論の基礎となる複素数について復習し,その後,正則関数へと進んでいく。複素関数が1回微分できれば,すなわち,正則ならば何回でも微分可能であるという実関数にはない著しい特徴を有することに気づくであろう。さらに,複素積分ではCauchy の定理が根本的な役割を果たし,正則関数の性質がここに帰結することが理解できよう。応用上,正則関数の等角性はきわめて重要な位置を占めており,この部分に紙数を割いた。早く応用を知りたいと思う読者は,1~3,7章を読み終えた後,8~11 章に進まれるとよい。また,各章の末尾には章末問題を掲載したが,読者はこれを解くことにより,理解を深めることができるであろう。論旨の展開でやや込み入った箇所には脚注で解説を付したが,読み飛ばしてもいっこうに構わない。また,歴史上の数学者についても参考のため脚注を施した。
謝辞
本書の企画段階から編集・校正に至るまで,コロナ社には大変お世話になったこと,ここに改めて謝意を表します。執筆分担は古田が5~7章を担当し,そのほかは野原によります。内容の責任は野原にありますが,解説の不備・不足など読者の叱責を賜るしだいです。最後に,本書がこれから専門科目を学ぼうとする学生諸氏や,昨今話題になっているリカレント教育として改めてこの分野を学び直そうとするエンジニアの方々へのよき海図になることを念じます。
2019年9月 著者を代表してしるす野原勉
第I部 基礎
1.複素数
1.1 複素数と複素平面
1.2 極形式
1.2.1 極形式
1.2.2 積と商
1.2.3 deMoivreの定理
1.2.4 n乗根
1.3 三角不等式
章末問題
2.複素関数の極限と領域
2.1 複素関数
2.2 領域
2.3 極限と連続性
章末問題
3.正則関数
3.1 導関数
3.2 微分法則
3.3 正則関数
3.4 Cauchy-Riemannの方程式
3.5 Laplaceの方程式
3.6 Laplaceの方程式の極座標表現
章末問題
4.初等複素関数
4.1 多項式,有理関数
4.2 指数関数
4.2.1 指数関数の定義
4.2.2 指数関数のいくつかの事実
4.2.3 指数関数の写像
4.3 三角関数
4.3.1 三角関数の定義
4.3.2 三角関数のいくつかの事実
4.3.3 三角関数の写像
4.4 双曲線関数
4.4.1 双曲線関数の定義
4.4.2 双曲線関数のいくつかの性質
4.5 対数関数
4.5.1 対数関数の定義
4.5.2 対数関数の正則性
4.5.3 対数法則
4.6 べき関数
章末問題
5.複素積分
5.1 実変数複素数値関数の微分と積分
5.2 複素平面上の曲線
5.3 複素積分
5.4 Cauchyの定理
章末問題
6.関数の展開
6.1 数列と級数
6.2 べき級数
6.3 Taylor展開
6.4 正則関数の性質
6.5 解析接続
6.6 Laurent展開
6.7 特異点の分類
6.8 留数
章末問題
7.等角写像
7.1 等角写像
7.2 1次変換
章末問題
第II部 流体力学と熱力学への応用
8.流体力学の基礎
8.1 流体の分類
8.2 Navier-Stokes方程式
8.3 Eulerの運動方程式
9.ポテンシャル流
9.1 非圧縮渦なしの流れ
9.2 流線
9.3 複素ポテンシャル
章末問題
10.2次元ポテンシャル流れ
10.1 一様流
10.2 円柱まわりの一様流
10.3 Joukowski変換
10.3.1 平板
10.3.2 Joukowski翼
章末問題
11.熱力学への応用
11.1 熱方程式
11.2 複素熱ポテンシャル
章末問題
第III部 付録
12.円柱まわりの一様流(循環が0のとき)の複素速度ポテンシャルの導出
12.1 流線関数
12.2 速度ポテンシャルと複素速度ポテンシャル
13.ベクトル解析の基礎
13.1 ベクトルの内積
13.2 ベクトルの外積
13.3 勾配,発散,回転
13.3.1 スカラー界とベクトル界
13.3.2 勾配
13.3.3 発散
13.3.4 回転
13.4 重要な公式
章末問題
引用・参考文献
索引
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掲載日:2020/02/05
-
掲載日:2019/12/01
関連資料(一般)
- 章末問題の略解・ヒント