
土木・環境系コアテキストシリーズ B-3
コンクリート構造学 (改訂版)
用語の定義・使い方,設計の考え方・手法の変化,新技術の取込みなど全体を見直した改訂版
- 発行予定日
- 2025/02/下旬
- 判型
- A5
- ページ数
- 240ページ
- ISBN
- 978-4-339-05617-4
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
【読者対象】
想定する読者は、大学や高専など学校でコンクリート構造を勉強し、これから社会に巣立っていく学生はもとより、既に社会に出て建設分野で活躍している若手の技術者で、コンクリート構造に関する基礎をしっかり習得しようという意欲・熱意を持った人たちです。
本書では、コンクリート部材をどういう手順でどう設計したらよいかについて記述していますが、設計と施工は相互に関連しており、設計者のみならず施工を担当している実務者にも役立つよう、記載内容を工夫しています。
【書籍の特徴】
近年では、計算機の利用により、設計プログラムに設計条件を入力すると計算結果が出てくることも多々あり便利になりました。しかし、計算過程もよく分からないブラックボックスの状態となり、計算機任せになってしまいがちで、計算結果の妥当性を判断できない懸念があるとの声も聞きます。
本書は、コンクリート構造物の設計における力学的原理や計算の流れを理解し、合わせて、一般構造細目などの順守すべき決まり事についての基本的な知識を身につけて貰うことを目的としています。
現在、合理的・経済的設計を目指して安全係数を数種類考慮する限界状態設計法が主流となってきていますが、これまで計算の単純化を目的に、材料または荷重に対する安全係数1種類のみ考慮する許容応力度設計法や終局強度設計法が長年活用され、膨大な数の構造物が構築・供用されてきました。そこで、設計法の変遷をも理解するため、それら3種類の設計法の長所や短所を明確にした上で、それぞれの設計法を紹介しています。なお基本的には、どの設計法も力の釣合いをもとに安全性を判断する点において大きな相違は無く、安全率をどこに見込むかの違いともいえるので、その点を理解して貰いたいと思っています。
【学習の対象範囲】
本書は全13 章の構成とし、設計において代表的な曲げを受ける部材ならびにせん断力を受ける部材のほか、ねじりや軸圧縮力、繰返し荷重を受ける部材、さらにはプレストレストコンクリートの基本まで勉強できるようにしており、コンクリート構造物に関する設計上想定される項目をほぼ網羅しています。
また、各章での記載内容の理解度を高めるため、それぞれにおいて例題と演習問題を配置しており、本書を通して、コンクリート構造物の設計における基本的な考え方、安全性、使用性、耐久性等の照査手法をしっかり習得できるようにしています。
【著者からのメッセージ】
主として、学校での授業に活用して頂くことを想定していますが、さらには、社会に出てからコンクリート構造物の設計・施工に携わった際にも、設計や施工の業務における参考書として本書を活用して頂ければ有難いです。
【キーワード】
コンクリート構造物の設計、安全性、使用性、限界状態設計法、許容応力度設計法、終局強度設計法
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
コンクリート構造物はわれわれの生活の中で当たり前のように存在している。
コンクリートはさまざまな形状の構造物を造り出すことができる材料である。近年では,計算機の利用による高度な構造解析が容易にできることから,これまで以上に複雑で斬新な構造形式のコンクリート構造物を目にすることが増えてきた。ただ,変わった形状の構造物を安易に志向するのは適当ではない。構造物に最優先で要求されるのは構造安全性である。安全が担保されて初めて,その構造形式は認知される。鉄筋コンクリートがどのようなものか,一般の人も漠然と理解できるであろう。しかし,一歩踏み込んでみてみると,例えば,はりの場合,鉄筋がなぜ,下の方に配置されているのか,またいろいろな太さの鉄筋を使っているのはなぜかなど,わからないことだらけであろう。それを解決するために,これから勉強しよう。
コンクリート構造物の建設は,さまざまな職種の技術者により分業で行われている。工程でみると,想定荷重を定め構造形式を決定する計画段階,構造物の形状・寸法や耐荷性能を確保できるよう構造計算する設計段階,その結果の設計図をもとに構造物を実際に建設する施工段階に分かれているのが一般的である。さらには供用期間中に耐久性を維持しつつ安全に構造物を運用する供用段階も重要である。
分業による効率化は誰もが認めるところではあるが,肝心の構造物を設計耐用期間にわたって安全に供用できる構造物とするための注意が不可欠である。そのためには,設計者は施工時の段取りを,施工者は設計者の思いを理解して,それぞれの業務を行わなければならない。すなわち,コンクリートの打込みを確実にできるよう,鉄筋の配置方法に関する取り決めが構造細目として規定されているが,その知識も含めて施工時の状況をイメージしながら設計を行える人が本来の設計者である。また,施工者は設計者の意図する耐荷性や耐久性を実現しようとする工夫や思いを読み取り,それを実現しなければならない。そう考えると,今後,設計業務を仕事にしようと考えている学生はもとより,ものづくりは好きだが設計は苦手だという学生も,設計の基本をしっかりと理解しておかなければならない。
本書は,コンクリート構造物の設計に関する基礎的知識を身につけて貰うことを意図して作成した。日頃,私が接している学生たちのコンクリート構造に関する専門知識の習得能力ならびにその速度を参考に,将来,読者がコンクリート構造物の建設業務に携わった時にも一人の技術者として活躍できるレベルとしたつもりである。なおもちろん,高専で土木・環境系の勉強をしている学生やすでに社会人として建設分野で活躍している技術者にとっても,コンクリート構造の設計法の習得に役立つものと自負している。
内容的には,現在一般に利用されている数種類の設計法を取り上げて説明しており,理解度を高めるために例題と演習問題を配置している。本書は全13章の構成とし,曲げモーメントならびにせん断力を受ける場合のほか,ねじりや軸圧縮力を受ける場合まで勉強するようにしており,コンクリート構造物に関する設計上想定される項目をほぼ網羅している。
本書を利用し最後まで頑張って勉強することで,コンクリート構造物の設計における基本的な考え方や,安全性,使用性,耐久性等の照査手法を習得できるものと確信している。
2012年1月
宇治公隆
改訂にあたって
本書の初版の発行から12年が経過し,「土木学会コンクリート標準示方書[設計編]」(2022年)や鋼材のJIS改正を踏まえて,言葉の定義・使い方,設計の考え方・手法の変化,新技術の取込みなど全体を見直した。
2025年1月
宇治公隆
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
1.コンクリート構造の基本
.1 コンクリート構造の種類
1.1.1 コンクリート構造の分類
1.1.2 コンクリートと鋼材の役割
1.2 コンクリート構造の特徴
1.2.1 コンクリート構造の成立条件
1.2.2 コンクリート構造の長所および短所
1.2.3 設計法の変遷
演習問題
2.材料の性質
2.1 コンクリート
2.1.1 強度の特性値
2.1.2 強度の設計用値(設計強度)
2.1.3 応力-ひずみ関係
2.1.4 コンクリートの諸性質
2.2 鋼材
2.2.1 鉄筋
2.2.2 PC鋼材
演習問題
3.限界状態設計法
3.1 設計の原則
3.2 設計耐用期間
3.3 特性値および修正係数
3.4 材料強度と作用の設計値
3.5 安全係数
3.6 安全性の照査
演習問題
4.曲げを受ける部材の耐力
4.1 曲げ部材の変形挙動
4.2 曲げ破壊機構
4.3 耐力算定における設計上の仮定
4.4 曲げ耐力の算定
4.4.1 等価応力ブロック
4.4.2 単鉄筋長方形断面
4.4.3 複鉄筋長方形断面
4.4.4 T形断面
4.5 安全性の照査
演習問題
5.軸圧縮力を受ける部材の耐力
5.1 軸圧縮力のみを受ける柱部材
5.1.1 横補強筋の種類と効果
5.1.2 中心軸圧縮力を受ける柱部材の耐力
5.2 偏心軸圧縮力を受ける部材
5.2.1 偏心軸圧縮力を受ける部材の耐力
5.2.2 軸圧縮耐力と曲げ耐力の相互作用図
5.2.3 曲げと軸圧縮力を受ける部材の安全性照査
演習問題
6.せん断力を受ける部材の耐力
6.1 はり部材に生じる応力と耐荷機構
6.1.1 せん断応力
6.1.2 はり部材の破壊形式
6.2 棒部材のせん断補強
6.2.1 せん断補強鉄筋がある場合の耐荷機構
6.2.2 棒部材の設計せん断耐力
6.2.3 せん断補強鉄筋の配置に関する設計規定
6.3 面部材の押抜きせん断
6.3.1 押抜きせん断破壊機構
6.3.2 押抜きせん断耐力の算定
演習問題
7.ねじりを受ける部材の耐力
7.1 ねじりひび割れ
7.1.1 ねじりせん断応力
7.1.2 ねじりを受ける鉄筋コンクリートはり部材の挙動
7.2 ねじりに対する設計の基本事項
7.3 純ねじりに対する耐力算定式
7.3.1 ねじり補強鉄筋のない部材
7.3.2 ねじり補強鉄筋のある部材
演習問題
8.使用性の検討
8.1 ひび割れ幅の限界値
8.2 応力の算定
8.2.1 曲げ応力の算定
8.2.2 せん断応力の算定
8.2.3 付着応力の算定
8.3 ひび割れ幅の検討
8.3.1 曲げモーメントによるひび割れの検討
8.3.2 せん断ひび割れの検討
8.3.3 水密性とひび割れ幅の設計限界値
8.4 変位・変形の検討
演習問題
9.繰返し荷重を受ける部材の検討
9.1 繰返し荷重
9.1.1 荷重の種類
9.1.2 疲労破壊に対する照査
9.1.3 変動応力
9.2 疲労破壊
9.2.1 疲労限界
9.2.2 グッドマン図
9.3 設計疲労強度
9.3.1 コンクリートの設計疲労強度
9.3.2 鉄筋の設計疲労強度
9.4 疲労破壊の検討方法
9.4.1 マイナー則
9.4.2 等価繰返し回数
演習問題
10.一般構造細目
10.1 かぶり
10.1.1 かぶりの最小値
10.1.2 かぶりに関する補足
10.2 鉄筋のあき
10.3 鉄筋の配置
10.3.1 軸方向鉄筋の配置
10.3.2 横方向鉄筋の配置
10.4 鉄筋の曲げ形状
10.5 鉄筋の定着
10.5.1 軸方向鉄筋の定着
10.5.2 横方向鉄筋の定着
10.6 鉄筋の継手
10.7 はりまたは柱の配筋
10.7.1 はりの配筋
10.7.2 帯鉄筋柱の配筋
演習問題
11.プレストレストコンクリート
11.1 プレストレストコンクリートの分類
11.2 材料
11.3 定着方法
11.4 プレストレス力の算定
11.4.1 導入直後のプレストレス力
11.4.2 設計荷重作用時の有効プレストレス力
11.5 安全性に関する照査
11.5.1 曲げに対する検討
11.5.2 せん断に対する検討
11.6 使用性に関する照査
11.6.1 曲げに対する検討
11.6.2 せん断に対する検討
演習問題
12.許容応力度設計法
12.1 許容応力度
12.1.1 コンクリート
12.1.2 鉄筋
12.1.3 許容応力度の割増
12.2 曲げ部材の設計
12.2.1 計算上の基本仮定
12.2.2 長方形断面
12.2.3 T形断面
12.3 せん断応力の検討
12.3.1 せん断応力の計算
12.3.2 斜め引張鉄筋の計算
演習問題
13.耐震設計法
13.1 コンクリート構造物の地震時挙動
13.2 骨格曲線
13.3 復元力特性
13.4 設計地震動と耐震性能
13.4.1 地震動の種類
13.4.2 応答スペクトル
13.4.3 耐震性能の照査
13.5 耐震設計法
13.5.1 震度法と修正震度法
13.5.2 地震時保有水平耐力法
13.5.3 構造モデル
演習問題
付録
引用・参考文献
演習問題解答
索引