土木系 大学講義シリーズ 17
都市計画 (五訂版)
コンパクトシティ実現化に向けた立地適正化計画を含め,都市計画関連法制度の改正を反映
- 発行年月日
- 2022/03/08
- 判型
- A5 上製
- ページ数
- 200ページ
- ISBN
- 978-4-339-05553-5
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
本書の特徴は、大学で都市計画を初めて学ぶ学生だけでなく、実務において初めて都市計画を担当する人にも、都市計画の理念や思想を理解し、実際に都市計画を立案し展開できる基礎を提供することを目的としています。伝統的な都市計画の仕組みを、忠実に理解できるようにしています。都市計画法において、都市計画とは「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画」と定義されています。土地利用・都市施設の整備・市街地開発事業が、都市計画の3本柱と言われており、本書はこの3本柱を踏まえた構成となっています。また、これまでの都市の成り立ちを踏まえ、過去からのアプローチに重点をおいて展開しているだけでなく、今回の改訂版では、近年の都市再生特別措置法に基づく都市再生施策及び新たな都市計画の展開についても、第4章の4.6〔5〕においてコンパクト・プラス・ネットワークと立地適正化計画、同4.6〔6〕において街路空間の再構築とウォーカブルな都市の構築として、新たに書き加えています。また、近年の激甚化する自然災害に対する都市計画としての対応として、第12章には12.1.5災害ハザードエリアにおける土地利用のあり方を書き起こし、土地利用の規制誘導による災害に強い都市づくりの方策や流域治水について示し、災害リスクを踏まえた都市計画の必要性について述べています。なお、五訂版刊行までに行われた都市計画に関連する法制度の改正を反映し、データ集は、最新のものに更新しています。
2019年には、わが国に都市計画法が制定され100年を迎えました。次の100年に向けて、都市づくりに終わりはありません。本書が、次の100年の都市を築く礎になれればと願っています。
五訂版のはしがき
パリのルーブル宮殿から凱旋門に至るシャンゼリゼー通りとラ・デファンスまでの軸線,数々の歴史的建築物・広場・モニュメント等を見ると,パリは都市計画に基づき,計画意図を持って周到にデザインされた都市であることを実感する。ヨーロッパには,小規模ながら歴史のある個性的・魅力的な都市が数多く存在しているが,そこにも長い時間をかけて自然・農業・牧畜等と調和させつつ街づくりを行ってきた都市計画の理念を見てとることができる。アメリカにおいても,ニューヨークやシカゴの碁盤目に区切られた市街地や摩天楼群は,機能性と象徴性を追求した近代都市計画の所産であることを示している。
わが国では,平城京・平安京などの条坊制の古代都市や近世の城下町のように計画的な都市形成がなされた時代があり,かつては都市計画が社会的に大きな力を持っていた。一方,現在の東京や大阪等の大都市では,その活力・便利さ・治安の良さは世界のどの都市にもひけをとらないが,狭小な住宅・混雑する道路や鉄道・緑やオープンスペースの不足等の都市問題が山積している。また,地方都市においても,統一性のない建築物・市街地が広がっていて,都市の個性や魅力に乏しく,なかでも中心市街地の衰退が深刻である。つまり,経済的に世界有数の水準に達しているが,都市環境については欧米の水準にいまだ及ばず,今日の都市計画が十分な機能を果たしていないといえる。
また,1997年に気候変動枠組み条約(COP3京都議定書)が締約されたように,地球環境問題の制約は厳しくなり,加えて,わが国においては人口減少・高齢社会への対応が早急に求められている。今こそ限られた時間のなかで,都市の構造・交通体系・居住形態を大胆に改革していく必要がある。また,1995年の阪神淡路大震災・2011年の東日本大震災・たび重なる豪雨被害は,われわれに都市の防災性向上が重要であることを再確認させた。これらの体験を通じ,都市計画は都市の効率性や利便性を求めるだけでなく,住民の生命や財産の安全を何よりも優先していかなければならないという貴重な教訓を得た。
ところで,21世紀は世界的にも都市の時代といわれており,先進国はもとより開発途上国における都市化の波は,かつて経験したことのない規模と速度で進展するものと考えられている。そこでは気候風土・政治・経済・文化等が多様なだけでなく発展段階も異なるから,これまで経験したことのない複雑で,深刻な都市問題が噴出するものと予想され,都市計画をわが国の視点のみで論ずることはできなくなっている。
このように21世紀に入り,高齢化・成熟化・国際化・情報化時代にふさわしい新たな都市計画のパラダイムが求められているが,今後の都市型社会に対応し地方分権を進めるため,都市計画法の抜本的改正も2000年5月に行われ,地方の役割や裁量の幅がより高められた。その後も,2004年の景観法や2005年の国土形成計画法の制度など,都市計画をめぐりさまざまな法制度上の改正が行われた。『都市計画』は1998年の初版発行後,重版を経て2001年に改訂版としたが,法改正に対応させるべく改訂を行い,三訂版を経て四訂版とした。その後,2014年には都市再生特別措置法の改正により立地適正化計画の策定が位置づけられ,コンパクトシティ実現化に向けた具体的な道筋が示された。そのため,この立地適正化計画を含め,都市計画関連法制度の改正を反映した五訂版を作成した。
本書は都市計画を学ぼうとする学生諸君に対して,都市計画の歩み・都市計画の立て方・事業手法等の基礎知識を提供することを目標としている。本書を通じて都市計画の理念や思想を理解するとともに,都市計画は現実の都市において日々実現していかなければならない実学であることも学んでいただけることを期待している。なお,五訂にあたり,四訂に引き続きデータの更新と修正には,岸井・大沢研究室の吉野ゆう子さんに大変お世話になった。
また,具体的事例やプランをできるだけ同一の地域から選ぶことにより,都市計画の重要な要素である即地性および総合性を学べるよう試みている。対象としておもに千葉県を取り上げることとしたが,資料の提供に快く協力いただいた方々に心から謝意を表したい。
2022年1月
著者
1.序論
1.1 都市計画・国土計画の定義
1.1.1 都市の範囲と定義
1.1.2 都市計画・国土計画の関係と定義
1.2 都市計画と都市計画技術者の役割
1.2.1 都市計画・国土計画の役割
1.2.2 技術者の役割とあり方
2.都市・国土の歴史
2.1 古代・中世の都市
2.2 近世・近代の都市
3.近代都市計画の思想
3.1 ユートピア思想
3.2 田園都市
3.3 近隣住区
3.4 多様な理想像
3.4.1 居住環境地域
3.4.2 さまざまな新都市の提案
4.日本近代都市計画の歩み
4.1 明治維新から市区改正へ
4.2 都市計画法の制定
4.3 関東大震災と震災復興
4.4 第二次世界大戦と戦災復興
4.5 新都市計画法(1968年法)の誕生
4.6 1968年法以降の動き
5.都市計画の調査
5.1 調査の意義と範囲
5.1.1 調査の目的と位置づけ
5.1.2 調査の範囲と対象
5.1.3 地図
5.2 基礎的な統計
5.2.1 指定統計等
5.2.2 都道府県等による統計
5.3 その他の基礎的調査
5.3.1 都市計画基礎調査
5.3.2 実態調査の必要性
6.都市計画の立案と実現
6.1 マスタープランの役割
6.1.1 総合計画とマスタープラン
6.1.2 マスタープランと法定都市計画
6.2 法定都市計画の範囲と制度
6.2.1 法定都市計画の範囲
6.2.2 都市計画に関連する法制度
6.3 法定都市計画の内容と手続き
6.3.1 都市計画の種類と内容
6.3.2 都市計画の手続き
6.4 都市計画の規制と事業
6.4.1 都市計画の規制
6.4.2 都市計画事業
6.4.3 市街地整備基本計画
7.土地利用の計画
7.1 土地利用の実態と課題
7.1.1 人口の都市集中と土地利用の実態
7.1.2 土地利用の主要課題
7.2 都市の類型と土地利用計画
7.2.1 土地利用の分類
7.2.2 都市の構造と類型
7.2.3 土地利用計画の役割
7.3 土地利用計画の立案
7.3.1 土地利用計画立案のプロセス
7.3.2 フレームの予測
7.3.3 土地利用面積の推計
7.3.4 配置計画
7.4 土地利用の規制と誘導
7.4.1 土地利用の実現方法
7.4.2 都市計画による規制・誘導
8.都市交通施設の計画と整備
8.1 都市交通の実態と特性
8.1.1 都市交通問題の背景と実態
8.1.2 都市交通の特性
8.2 都市交通施設の種類と計画
8.2.1 都市交通施設の種類と特性
8.2.2 都市交通施設計画の考え方
8.3 都市交通計画の立案
8.3.1 都市交通計画のあり方
8.3.2 都市交通計画立案のプロセス
8.4 都市交通施設の整備事業
8.4.1 社会資本としての都市交通施設
8.4.2 施設別事業の概要
9.公園・緑地の計画と整備
9.1 公園・緑地の分類と特性
9.1.1 公園・緑地の意義
9.1.2 公園・緑地の種類
9.2 公園・緑地の計画立案と事業
9.2.1 計画目標量と配置基準
9.2.2 公園・緑地整備の事業
10.供給処理施設の計画と整備
10.1 供給処理施設の種類と特性
10.2 供給処理施設の計画立案と事業
10.2.1 上水道施設
10.2.2 下水道施設
10.2.3 廃棄物処理施設
11.市街地整備の計画と事業
11.1 新市街地の開発整備計画
11.2 既成市街地の再整備計画
11.3 市街地整備の事業
11.3.1 概説
11.3.2 市街地開発事業制度の流れ
11.3.3 土地区画整理事業
11.3.4 新住宅市街地開発事業
11.3.5 市街地再開発事業
11.3.6 多様な手法
12.防災・環境に関する計画と事業
12.1 都市防災
12.1.1 防災計画の考え方
12.1.2 防災に関する事業
12.1.3 東日本大震災
12.1.4 多様なリスクを意識した防災都市計画
12.1.5 災害ハザードエリアにおける土地利用のあり方
12.2 都市環境
12.2.1 都市環境問題の現状
12.2.2 環境アセスメント
12.2.3 都市景観
13.全国総合開発計画
13.1 全国総合開発計画
13.2 新全国総合開発計画
13.3 第3次全国総合開発計画
13.4 第4次全国総合開発計画
13.5 第5次全国総合開発計画(21世紀の国土のグランドデザイン)
13.6 国土形成計画
14.大都市圏計画・地方圏計画
14.1 大都市圏の計画の変遷
14.2 地方圏の計画の変遷
15.諸外国の都市計画・国土計画
15.1 イギリス
15.2 ドイツ
15.3 フランス
15.4 アメリカ
16.都市計画の今後の課題
参考文献
索引
-
掲載日:2024/04/01
-
掲載日:2023/12/19
-
掲載日:2023/09/29
-
掲載日:2022/12/21
-
掲載日:2022/11/01
★ お知らせとお詫び ★
2023年1月に重版で作成した「初版第17刷」において、表紙のみ『都市計画(四訂版)』となってしまったものが一部あります。
2022年4月以降に小社が販売している書籍はすべて「五訂版」の内容となっておりますので、安心してご利用いただきたく存じます。
ご購入された方にはご迷惑をお掛けしてしまいお詫び申し上げます。
表紙訂正用シールを準備していますので、ご希望の方はこちらから「件名」と「お問い合わせ内容」欄に下記をご入力のうえ、ご連絡いただければ幸いです。
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