水理学 - 試験対策から水理乱流現象のカラクリまで -

水理学 - 試験対策から水理乱流現象のカラクリまで -

水理学の単位がほしい学生から,研究や実務の参考としたい研究者や技術者まで,この1冊で

ジャンル
発行年月日
2021/10/21
判型
A5
ページ数
230ページ
ISBN
978-4-339-05277-0
水理学 - 試験対策から水理乱流現象のカラクリまで -
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本書の読者の方々は,水理学の単位がほしい学生から,現象の本質まで詳しく知りたい学部生や大学院生,そして水工学の研究や実務の参考としたい研究者や技術者までさまざまであることを想定し,その目的に応じて学習がしやすいように2部構成とした。

第I部は水理学の全体像をつかんでもらえるよう,1章「静水力学」,2章「完全流体の力学」,3章「管路流れ」,4章「開水路流れ」,5章「次元解析・相似則」,6章「ポテンシャル流理論」の順に,それぞれポイントを整理し,例題を通して理解を深めることができるようにした。また,章末の演習問題には詳細な解答,解説を用意し,習熟度の確認および自習がしやすいよう配慮した。水理学の単位取得が目的であれば,この第I部を「水理学の試験対策編」として活用していただくのが有効である。

第II部は「水理学のカラクリ編」として,7章「静水の科学」,8章「完全流体の微分形表示」,9章「粘性流体の微分形表示」,10章「積分型水理公式の導出」,11章「層流と乱流」,12章「管路乱流」,13章「開水路乱流」,14章「複素速度ポテンシャルによる流れの数学的表現」の順に,流体力学的な視点から水理学で扱う公式や現象を詳しく解説した。例えばベルヌーイの定理など通常は暗記で済ます式形も,その導出や学術背景について述べ,水理学の理解をさらに深める内容とした。また乱流の基本的な考え方について,基礎方程式やその発生メカニズムなどについても扱った。とくに付録も含めて式展開も記載しているので,卒業研究や修士論文の一助にもなるだろう。第I部だけでは物足りない読者の方々には,関心のある章だけでも読んでいただくなど,第II部をおおいに活用していただきたい。

水理学で扱う水は流体で,その運動には変形を伴うため,力学的な扱いが難しい。またアプローチ法もさまざまで,種々の仮定や近似を使ったり,複雑な微分方程式も用いる。このことが初学者の理解や学習意欲を阻む一因となっている。完全流体の仮定,渦なし,粘性や抵抗の考慮など,場面によって与えられる条件が異なるため,「水理学の中で,自分がどこの何を勉強しているのかがわからない」といった学生の悲痛な叫びをよく聞く。著者自身も学生時代に苦労したから,気持ちは大変よくわかる。

本書は,著者が大学の学部・大学院で教育した多くの学生から受けた質問や要望を反映させた教科書である。本書を手に取る読者の目的はさまざまであろう。とにかく水理学の単位がほしい学生から,現象の本質まで詳しく知りたい学部生や大学院生,そして水工学の研究や実務の参考としたい研究者や技術者までさまざまな読者層を想定している。

そこで図(a)のように2部構成とした。第I部は「水理学の試験対策編」である。水理学のポイントを整理し,例題と演習問題によって理解を深められるよう工夫した。暗記事項を随所に明記するなど,自習しやすい内容とした。第I部で水理学の全体像をつかむことが期待できる。第II部は「水理学のカラクリ編」として,流体力学的な視点から水理学で扱う公式や現象を詳しく解説した。図(a)には第I部と第II部の各章のつながりを示したので参考にしてほしい。

単位取得が主目的の学生は第I部のみの勉強でよいが,それに物足りない読者は第II部の関心のある章だけでも読んでほしい。ベルヌーイの定理など通常は暗記で済ます式形も,第II部ではその導出や学術背景について述べ,水理学の理解をさらに深める内容とした。また第II部は乱流の基本的な考え方について,基礎方程式やその発生メカニズムなどについても扱った。とくに付録も含めて式展開も記載しているので,卒業研究や修士論文の一助にもなるだろう。

図(b)に水理学および関連する流体力学の体系と本書の構成をまとめた。ここには各章の位置づけも示すので,読者が勉強している箇所が水理学のどこに位置づけられているのかが一目でわかる。見通しがよく不安なく学習できると期待できる。本書が,水理学そして関連する流体力学の魅力を知るきっかけとなることを切に願っている。

著者が自身の研究で行っている水理実験の経験も,本書の執筆に大きな影響を与えた。所属研究室の京都大学工学研究科教授・戸田圭一先生,同助教の岡本隆明先生には,心より感謝したい。また,学生時代から基礎水理学や乱流力学を親身になってご指導頂いた恩師の京都大学工学研究科名誉教授・禰津家久先生,名古屋工業大学名誉教授・冨永晃宏先生,九州工業大学工学部教授・鬼束幸樹先生には,深甚なる謝意を表したい。さらに所属研究室の修士課程・松本知将君には原稿の校正確認をお願いした。最後に本書の出版については,コロナ社に大変お世話になった。併せて感謝したい。

2021年8月
山上路生

第Ⅰ部 水理学の試験対策編
1.静水力学
1.1 静水圧
 1.1.1 静水圧とは
 1.1.2 鉛直平板に作用する静水圧
 1.1.3 曲面に作用する静水圧
1.2 相対的静止
1.3 浮体の安定
 1.3.1 浮体の傾きと傾心(メタセンター)
 1.3.2 浮体安定性の判定式
演習問題

2.完全流体の力学
2.1 完全流体とは
2.2 完全流体の3大保存則
 2.2.1 完全流体の保存則
 2.2.2 連続式(質量保存則)
 2.2.3 ベルヌーイの定理(エネルギー保存則)
 2.2.4 運動量式(運動量保存則)
演習問題

3.管路流れ
3.1 管路流れとは
3.2 定常管路流れの基礎式
 3.2.1 連続式
 3.2.2 エネルギー式
 3.2.3 運動量式
3.3 損失水頭
 3.3.1 形状損失
 3.3.2 摩擦損失
3.4 壁面せん断応力とエネルギー勾配
3.5 流速公式
3.6 並列管路
演習問題

4.開水路流れ
4.1 開水路流れとは
4.2 基礎方程式
 4.2.1 開水路の連続式
 4.2.2 比エネルギーとエネルギー損失
 4.2.3 比力と運動量保存則
4.3 等流
 4.3.1 等流とは
 4.3.2 抵抗則と流速公式
4.4 不等流1―漸変流と水面形―
 4.4.1 水面形方程式
 4.4.2 等流水深
 4.4.3 限界水深
 4.4.4 常流と射流
 4.4.5 限界水深と水面形の分類
4.5 不等流2―急変流と跳水―
演習問題

5.次元解析・相似則
5.1 次元解析
 5.1.1 レイリーの方法
 5.1.2 バッキンガムのπ定理
5.2 相似則
 5.2.1 実物と模型の相似
 5.2.2 水理学でよく使う無次元数
演習問題

6.ポテンシャル流理論
6.1 流れの可視化と流線
6.2 渦度と速度ポテンシャル
6.3 流れ関数と連続式
6.4 複素速度ポテンシャルによる流れの表現
 6.4.1 複素速度ポテンシャルの定義
 6.4.2 極座標表示
演習問題

第Ⅱ部 水理学のカラクリ編
7.静水の科学
7.1 静水に作用する力
7.2 静水圧の大きさと方向
7.3 表面張力
 7.3.1 界面
 7.3.2 ぬれと接触角
 7.3.3 毛細管現象

8.完全流体の微分形表示
8.1 流体運動の微視的表現
8.2 連続式の微分形表示
 8.2.1 縮約表記と座標系
 8.2.2 連続式の微分形表示
8.3 運動方程式の微分形表示(オイラー方程式)
 8.3.1 流体運動の観察と加速度の表現
 8.3.2 運動方程式の微分形表示

9.粘性流体の微分形表示
9.1 粘性流体の運動方程式
9.2 せん断応力
9.3 垂直応力
9.4 微小流体塊に作用する粘性応力
9.5 ナビエ・ストークス方程式
9.6 粘性係数と動粘性係数
9.7 粘性と渦なしの解釈

10.積分形水理方程式の導出
10.1 ベルヌーイ式の導出
 10.1.1 質点系のエネルギー保存則に基づく方法
 10.1.2 運動方程式からの導出(定常仮定)
10.2 水深積分方程式(浅水方程式)の導出
 10.2.1 準備
 10.2.2 浅水方程式の導出
 10.2.3 非定常ベルヌーイ式の導出
参考文献

11.層流と乱流
11.1 層流と乱流について
11.2 乱流の基本的特性
 11.2.1 乱流の性質
 11.2.2 乱流の発生
 11.2.3 乱流の拡散
 11.2.4 乱流のスケーリング事例
 11.2.5 マルチスケール特性と最小渦
11.3 乱流の運動
 11.3.1 エネルギー勾配と流速の関係
 11.3.2 乱流の運動方程式(RANS方程式)
 11.3.3 レイノルズ応力
 11.3.4 渦動粘性モデル
11.4 境界層理論1―壁面の影響がどこまで及ぶか?―
 11.4.1 レイリーの問題(一定速度で動き出す平板上の流れ)
 11.4.2 層流境界層への応用
11.5 境界層理論2―境界層近似―
 11.5.1 境界層厚さの定義
 11.5.2 境界層近似と境界層方程式
 11.5.3 カルマンの積分方程式
11.6 境界層理論3―乱流境界層と乱れの発生―
 11.6.1 層流境界層から乱流境界層への遷移
 11.6.2 乱流境界層の発達
 11.6.3 乱流の発生―オア・ゾンマーフェルド方程式とレイリーの変曲点
不安定理論―
 11.6.4 ケルビン・ヘルムホルツ不安定理論

12.管路の乱流
12.1 管路の流速分布
 12.1.1 層流の場合
 12.1.2 乱流の場合
12.2 乱れによる摩擦損失
 12.2.1 層流の場合
 12.2.2 乱流の場合
12.3 乱れによる形状損失
 12.3.1 急拡の場合
 12.3.2 急縮の場合

13.開水路の乱流
13.1 開水路と境界層
13.2 開水路乱流の基礎式(鉛直2次元)
13.3 混合距離モデル
13.4 流速分布
 13.4.1 壁法則
 13.4.2 内層
 13.4.3 外層
13.5 乱れの構造
 13.5.1 乱れ統計量の水深方向分布
 13.5.2 平均流と乱れの輸送方程式
 13.5.3 水深方向の乱れエネルギー平衡
13.6 組織構造
参考文献

14.複素速度ポテンシャルによる流れの表現
14.1 流れの数学的表現
14.2 複素関数とコーシー・リーマンの関係
 14.2.1 あらためて複素数とは?
 14.2.2 数直線
 14.2.3 複素平面
 14.2.4 オイラーの公式
 14.2.5 複素関数の描画
 14.2.6 複素関数の微分可能性とコーシー・リーマンの関係式
14.3 流線の定義と流れ関数
14.4 渦度の定義と速度ポテンシャル
 14.4.1 渦度の概念
 14.4.2 速度ポテンシャル
 14.4.3 渦度と速度ポテンシャルの関係
 14.4.4 等ポテンシャル線と流線の関係
14.5 複素速度ポテンシャルによる流れの表現
 14.5.1 複素速度ポテンシャル
 14.5.2 基本的な流れ場の例
 14.5.3 重ね合わせによる複雑流れの例

付録
A.1 断面2次モーメント
A.2 せん断応力とひずみ角の関係
A.3 ライプニッツ則
A.4 ケルビン・ヘルムホルツ不安定理論
A.5 レイノルズ分解
 A.5.1 レイノルズ平均
 A.5.2 連続式のレイノルズ平均
 A.5.3 ナビエ・ストークス方程式のレイノルズ平均(RANS方程式の導出)
 A.5.4 縮約表記
演習問題解答
索引

読者モニターレビュー【 小柴 孝太 様 京都大学防災研究所(ご専門:学術・水工学)】

本書の読者として「とにかく単位がほしい学生」と「現象の本質まで詳しく知りたい人」とが想定されており, それに応じて, 本書は第I部と第II部とから構成されている. よって, このレビューでも各対象に分けて記述する.

「とにかく単位がほしい学生」へ
本書では, 水理学の要点が第I部(70ページ)にコンパクトに収まっている. 難解な理論への寄り道をせず, 最短距離で水理学をマスターするにはもってこいであろう. 特に演習問題(21問, 解答付き)はよく練られていると思う. 多くの演習問題に少し捻りが加えられており, 少ない問題数で網羅的に試験対策ができるように作られている. ぜひ, 切羽詰まっていても演習問題を全て解いて欲しいと思う.

試験対策が目的であっても, 第I部を読んでいて「問題は解けるけど今ひとつ釈然としないな」と思ったら是非第II部を覗いてみることを薦める. 第I部と第II部の繋がりは明確にされているし, 疑問への回答があるはずである.

「現象の本質まで詳しく知りたい人」へ
第II部では, 流体力学・乱流力学の内容も含め解説されている. やはり, ナビエ・ストークス方程式(N-S式)はおさえておきたい. 数学的に高度とはいえ, 最低限の添字表記を使うなど易しく書かれている. また, 第I部で中心的な役割を果たしたベルヌーイの定理や, 実務で頻出する浅水方程式のN-S式に基づく導出が与えられている. たとえN-S式を完璧に理解できなかったとしても, 8, 9, 10章を一読しておくと, ベルヌーイ式や浅水方程式に課せられた適用条件の理解度が全然違ってくると思う.

特筆すべきは, 乱流に関するコンテンツが充実している点であろう. 事実, 本書の約1/3が乱流力学に割かれている. 発展的な内容(乱流における微小擾乱の発展や, 組織構造など)が扱われており, 決して数式も少なくないが, 図を多用するなどして実現象との繋がりしっかり想像できるように書かれている. 乱流は著者の専門分野であるだけあり, そのダイナミックな様子が生き生きと記されており, たとえ数式が理解できなくてもワクワク読める内容となっている. 流体力学をマスターしている人でも, 本格的な乱流力学の入門書として本書を一読する価値は十分にあると思う.

読者モニターレビュー【 なくてななくせ 様(ご専門:農業水利学)】

本書の一番の特徴は,第Ⅰ部「水理学の試験対策編」と第Ⅱ部「水理学のカラクリ編」の2部構成である.その対象読者は,第Ⅰ部が単位取得が主目的の学生,第Ⅱ部はそれに物足りず水理学の背景を覗きたい人となっている.私がこれまで見たことがある初学者向けの水理学の教科書では,主に本書の第Ⅰ部の内容のみを扱うものが多く,そのため「なんでこうなるんだろう?」と思ったときに一歩先に踏み込めない,流体力学に基づいた解釈に容易にたどり着くことができない.一方,流体力学を基に構成された水理学の教科書はこれまでにも複数あるが,総じて中身がぎっしりと詰まっており,初学者が相手にするには少々骨が折れる.さらに理学系の流体力学の本になると偏微分やベクトル解析のオンパレードであり,工学系の人間にとっては物理の前に数学で息切れしてしまうことも多かった.このような現状の中で,特徴的な2部構成をもつ本書は,水理学への入門書として非常に優れたバランスを持つ1冊になっている.

第Ⅰ部では学部で学習する水理学の教科書として必要十分な解説がなされている.さらに例題や演習問題が多数収録されており,解いて身に着けることが可能である.演習問題の解答が省略なくすべてに用意されていることもうれしい.本書のまえがきでは第Ⅰ部と第Ⅱ部の対応関係が示されているため,第Ⅱ部を頭から読んでいく必要は必ずしもなく,第Ⅰ部で詳細が気になった部分だけをつまみ読みすることも可能である.第Ⅱ部では特に乱流について詳しく扱われており,式による説明と文章による説明のバランスが良く,また理解に効果的な図が多数収録されている.

本書の欠点を挙げるとするならば,第Ⅱ部の演習問題がないことだろうか.これに関しては第Ⅱ部で扱っている内容から致し方ないことかと思われる.

総じて,これから水理学に入門する人全員に強くおすすめできる一冊である.

読者モニターレビュー【 水野 オサム 様(ご専門:土木)】

本書は第Ⅰ部「水理学の試験対策編」と第Ⅱ部「水理学のカラクリ編」から構成されています。基本事項やポイントは第Ⅰ部にまとまっており、その背景や詳細は第Ⅱ部で解説されています。私の経験として、水理学に限らず、大学の講義内容について自習を行う際、わかりやすい入門書を読むと確かに書かれた内容は比較的容易に理解できても本当に習得したいレベルまでは解説されておらず、また、詳細に解説された専門書を見ると難解な部分が多く、結局、疑問が解決できない、ということがあります。しかし、本書は第Ⅰ部、第Ⅱ部に分かれており、学習したい範囲は同じでも自分の理解度に応じてどちらを読むかを選択でき、疑問が解決しやすくなっています。また、第Ⅰ部と第Ⅱ部の対応関係も明示されているうえ、言葉や数式だけでなく図も多用されており、視覚的にも理解しやすいよう工夫がされています。

《第Ⅰ部について》
第Ⅰ部「水理学の試験対策編」は水理学の全体像をつかんだり、定期試験などの試験対策を行ったりするのに役立ちます。学部生の私としては、水理学などの授業で習った内容が説明されており、理解しきれていない部分や忘れてしまっている部分の復習に役立つ、と感じています。随所に例題が用意され、詳細な解答も用意されています。また、各章の最後には演習問題も掲載されており、その解答、解説も掲載されているため、自習時に演習を行うのにも大変役立ちます。

《第Ⅱ部について》
第Ⅱ部「水理学のカラクリ編」は第Ⅰ部で解説された内容に対する導出方法や学術背景など、より発展的な内容が扱われており、本書の前書きで「卒業研究や修士論文の一助にもなる」と案内されています。やや発展的な授業で学習した内容が含まれているほか、学部生である現時点では聞いたことのない内容も多くなっています。扱っている内容としては発展的ですが、例えば「あらためて複素数とは?」というタイトルの部分もあり、発展的で難解な内容だけを扱うのではなく基礎から発展的内容に導いてくれるような説明となっています。

水理学の内容が一冊にまとめられているため、学習したい範囲にあたる箇所を見つけやすく、疑問点を解決したり、必要な部分を復習したりするのにとても便利な一冊だと思います。

読者モニターレビュー【 tokudy 様(ご専門:熱工学)】

水理学の勉強は初めてで,流体力学に関しては,学部で流体力学の講義を受けた以来,久しく遠ざかっていた.本書を通して水理学の理解が容易かは,個人差があるため言及は避ける.しかし,豊富な図解,式行間の記載など,とにかく”丁寧”であると感じた.恐らく,学部で初めて勉強する人や,大学院進学で必要になる人想定で手厚い解説内容になっていると思われる.

本文は大きく2パートで構成されていて,前半部は問題が多めの解説,後半部はその背景を重視した解説になっている.水理学の全貌を詳細に説明するのではなく,初学者や再学習者に焦点を充て,かなり情報を取捨選択している (と思われる).“13章 開水路の乱流”は本書に含まれていて楽しく読むことができた.一方,読者想定からか土砂に関しての記載はない.

最後に,基礎的であっても曖昧な理解のままだった事項が,再勉強によってクリアになったのは良かった.特に,”11章 層流と乱流”,”14章 複素速度ポテンシャルによる流れの表現”は改めて勉強になった.豊富な図解,丁寧な説明が必要な読者にはおすすめできる1冊である.

amazonレビュー

山上 路生(サンジョウ ミチオ)

京都大学工学研究科社会基盤工学専攻准教授。大阪府立茨木高等学校から京都大学工学部交通土木工学科,京都大学大学院工学研究科環境地球工学専攻博士後期課程を経て,現在に至る。専門は,乱流水理学,実験水理学,流体観測デバイスの開発。主に水路実験や観測を通して、水の運動の解明(基礎研究)や、実河川の観測ロボットの開発(実用研究)を進めている。特に河川の乱流現象に興味があり、水域環境や洪水対策における乱流の役割について日々研究している。

(読者への一言)水理学は難しい!という声を多くの学生から聞きます。私も学生時代は苦手でした。水理学は、中学の理科で学ぶエネルギー保存則等にもとづく論理的な学問で、暗記一辺倒の科目ではありません。あきらめずにじっくりと基礎を学んで本質を理解すれば、様々な水理現象を正しく洞察できるようになるでしょう。

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掲載日:2021/12/20

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掲載日:2021/11/01

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