レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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第Ⅰ部は,初学者向きに水理学の全体像を解説し,第Ⅱ部は,流体力学的視点から水理学で扱う公式や現象を詳しく解説することで,現象の本質まで詳しく知りたい学生,水工学の研究や実務の参考としたい研究者や技術者まで対応した。
- 発行年月日
- 2021/10/21
- 定価
- 3,300円(本体3,000円+税)
- ISBN
- 978-4-339-05277-0
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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「土木学会誌」2022年1月号
掲載日:2022/01/12
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amazonレビュー 978-4-339-05277-0 水理学 - 試験対策から水理乱流現象のカラクリまで -
掲載日:2021/10/25
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読者モニターレビュー【 小柴 孝太 様 京都大学防災研究所(ご専門:学術・水工学)】
掲載日:2021/10/15
本書の読者として「とにかく単位がほしい学生」と「現象の本質まで詳しく知りたい人」とが想定されており, それに応じて, 本書は第I部と第II部とから構成されている. よって, このレビューでも各対象に分けて記述する.
「とにかく単位がほしい学生」へ
本書では, 水理学の要点が第I部(70ページ)にコンパクトに収まっている. 難解な理論への寄り道をせず, 最短距離で水理学をマスターするにはもってこいであろう. 特に演習問題(21問, 解答付き)はよく練られていると思う. 多くの演習問題に少し捻りが加えられており, 少ない問題数で網羅的に試験対策ができるように作られている. ぜひ, 切羽詰まっていても演習問題を全て解いて欲しいと思う.
試験対策が目的であっても, 第I部を読んでいて「問題は解けるけど今ひとつ釈然としないな」と思ったら是非第II部を覗いてみることを薦める. 第I部と第II部の繋がりは明確にされているし, 疑問への回答があるはずである.
「現象の本質まで詳しく知りたい人」へ
第II部では, 流体力学・乱流力学の内容も含め解説されている. やはり, ナビエ・ストークス方程式(N-S式)はおさえておきたい. 数学的に高度とはいえ, 最低限の添字表記を使うなど易しく書かれている. また, 第I部で中心的な役割を果たしたベルヌーイの定理や, 実務で頻出する浅水方程式のN-S式に基づく導出が与えられている. たとえN-S式を完璧に理解できなかったとしても, 8, 9, 10章を一読しておくと, ベルヌーイ式や浅水方程式に課せられた適用条件の理解度が全然違ってくると思う.
特筆すべきは, 乱流に関するコンテンツが充実している点であろう. 事実, 本書の約1/3が乱流力学に割かれている. 発展的な内容(乱流における微小擾乱の発展や, 組織構造など)が扱われており, 決して数式も少なくないが, 図を多用するなどして実現象との繋がりしっかり想像できるように書かれている. 乱流は著者の専門分野であるだけあり, そのダイナミックな様子が生き生きと記されており, たとえ数式が理解できなくてもワクワク読める内容となっている. 流体力学をマスターしている人でも, 本格的な乱流力学の入門書として本書を一読する価値は十分にあると思う.
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読者モニターレビュー【 なくてななくせ 様(ご専門:農業水利学)】
掲載日:2021/10/12
本書の一番の特徴は,第Ⅰ部「水理学の試験対策編」と第Ⅱ部「水理学のカラクリ編」の2部構成である.その対象読者は,第Ⅰ部が単位取得が主目的の学生,第Ⅱ部はそれに物足りず水理学の背景を覗きたい人となっている.私がこれまで見たことがある初学者向けの水理学の教科書では,主に本書の第Ⅰ部の内容のみを扱うものが多く,そのため「なんでこうなるんだろう?」と思ったときに一歩先に踏み込めない,流体力学に基づいた解釈に容易にたどり着くことができない.一方,流体力学を基に構成された水理学の教科書はこれまでにも複数あるが,総じて中身がぎっしりと詰まっており,初学者が相手にするには少々骨が折れる.さらに理学系の流体力学の本になると偏微分やベクトル解析のオンパレードであり,工学系の人間にとっては物理の前に数学で息切れしてしまうことも多かった.このような現状の中で,特徴的な2部構成をもつ本書は,水理学への入門書として非常に優れたバランスを持つ1冊になっている.
第Ⅰ部では学部で学習する水理学の教科書として必要十分な解説がなされている.さらに例題や演習問題が多数収録されており,解いて身に着けることが可能である.演習問題の解答が省略なくすべてに用意されていることもうれしい.本書のまえがきでは第Ⅰ部と第Ⅱ部の対応関係が示されているため,第Ⅱ部を頭から読んでいく必要は必ずしもなく,第Ⅰ部で詳細が気になった部分だけをつまみ読みすることも可能である.第Ⅱ部では特に乱流について詳しく扱われており,式による説明と文章による説明のバランスが良く,また理解に効果的な図が多数収録されている.
本書の欠点を挙げるとするならば,第Ⅱ部の演習問題がないことだろうか.これに関しては第Ⅱ部で扱っている内容から致し方ないことかと思われる.
総じて,これから水理学に入門する人全員に強くおすすめできる一冊である.
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読者モニターレビュー【 水野 オサム 様(ご専門:土木)】
掲載日:2021/10/11
本書は第Ⅰ部「水理学の試験対策編」と第Ⅱ部「水理学のカラクリ編」から構成されています。基本事項やポイントは第Ⅰ部にまとまっており、その背景や詳細は第Ⅱ部で解説されています。私の経験として、水理学に限らず、大学の講義内容について自習を行う際、わかりやすい入門書を読むと確かに書かれた内容は比較的容易に理解できても本当に習得したいレベルまでは解説されておらず、また、詳細に解説された専門書を見ると難解な部分が多く、結局、疑問が解決できない、ということがあります。しかし、本書は第Ⅰ部、第Ⅱ部に分かれており、学習したい範囲は同じでも自分の理解度に応じてどちらを読むかを選択でき、疑問が解決しやすくなっています。また、第Ⅰ部と第Ⅱ部の対応関係も明示されているうえ、言葉や数式だけでなく図も多用されており、視覚的にも理解しやすいよう工夫がされています。
《第Ⅰ部について》
第Ⅰ部「水理学の試験対策編」は水理学の全体像をつかんだり、定期試験などの試験対策を行ったりするのに役立ちます。学部生の私としては、水理学などの授業で習った内容が説明されており、理解しきれていない部分や忘れてしまっている部分の復習に役立つ、と感じています。随所に例題が用意され、詳細な解答も用意されています。また、各章の最後には演習問題も掲載されており、その解答、解説も掲載されているため、自習時に演習を行うのにも大変役立ちます。
《第Ⅱ部について》
第Ⅱ部「水理学のカラクリ編」は第Ⅰ部で解説された内容に対する導出方法や学術背景など、より発展的な内容が扱われており、本書の前書きで「卒業研究や修士論文の一助にもなる」と案内されています。やや発展的な授業で学習した内容が含まれているほか、学部生である現時点では聞いたことのない内容も多くなっています。扱っている内容としては発展的ですが、例えば「あらためて複素数とは?」というタイトルの部分もあり、発展的で難解な内容だけを扱うのではなく基礎から発展的内容に導いてくれるような説明となっています。
水理学の内容が一冊にまとめられているため、学習したい範囲にあたる箇所を見つけやすく、疑問点を解決したり、必要な部分を復習したりするのにとても便利な一冊だと思います。
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読者モニターレビュー【 tokudy 様(ご専門:熱工学)】
掲載日:2021/10/08
水理学の勉強は初めてで,流体力学に関しては,学部で流体力学の講義を受けた以来,久しく遠ざかっていた.本書を通して水理学の理解が容易かは,個人差があるため言及は避ける.しかし,豊富な図解,式行間の記載など,とにかく”丁寧”であると感じた.恐らく,学部で初めて勉強する人や,大学院進学で必要になる人想定で手厚い解説内容になっていると思われる.
本文は大きく2パートで構成されていて,前半部は問題が多めの解説,後半部はその背景を重視した解説になっている.水理学の全貌を詳細に説明するのではなく,初学者や再学習者に焦点を充て,かなり情報を取捨選択している (と思われる).“13章 開水路の乱流”は本書に含まれていて楽しく読むことができた.一方,読者想定からか土砂に関しての記載はない.
最後に,基礎的であっても曖昧な理解のままだった事項が,再勉強によってクリアになったのは良かった.特に,”11章 層流と乱流”,”14章 複素速度ポテンシャルによる流れの表現”は改めて勉強になった.豊富な図解,丁寧な説明が必要な読者にはおすすめできる1冊である.