鋼構造学

鋼構造学

基本的内容が現実の構造物の設計や施工にどのように反映されているかを具体例を示し解説

ジャンル
発行年月日
2020/03/10
判型
A5
ページ数
256ページ
ISBN
978-4-339-05269-5
鋼構造学
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◆「平成29年度 道路橋示方書」対応!!◆
「平成29年度 道路橋示方書改定」により,道路橋設計規準において性能規定型の技術基準に基づく「限界状態設計法」,照査式としては国際標準的な形での「部分安全係数法」(荷重・抵抗係数法)への移行に伴う大改訂が行われた。
これに際し,1985年の発行以来,改訂・増補を重ね,今日までロングセラーを続けてきた『改訂 鋼構造学(増補)』(機械系 大学講義シリーズ)をベースとして新たな単行本として発行した。

内容・構成は前著を踏襲。最低限必要な基本的内容を説明し,そのことが主に橋を具体例として現実の構造物の設計や施工にどのように反映されているかを示した。例示した設計基準の数値よりも,それが導かれた背景を理解し,現象の基となる事柄を強調している。


<「平成29年度 道路橋示方書」改定のポイント>(国土交通省資料より抜粋)
①多様な構造や新材料に対応する設計手法の導入
・橋の安全性や性能に対しきめ細やかな設計が可能な設計手法を導入
⇒「部分係数設計法」および「限界状態設計法」を導入
②長寿命化を合理的に実現するための規定の充実
・設計供用期間100年を標準とし、点検頻度や手法、補修や部材交換方法等、維持管理の方法を設計時点で考慮
・耐久性確保の具体の方法を規定
③その他の改定
・熊本地震を踏まえた対応等

はしがき
鋼構造はコンクリート構造とともに土木・建築構造物の主役である。とくに軟弱地盤と耐震性が問題となるわが国では,材料である鋼材の優れた特性と多様な品種,粘り強い構造特性などを買われて,諸外国と比べ使われる機会が多い。土木工学の分野における鋼構造の代表的な用途は橋梁であるが,そのほかにも水門,管路,容器,鉄塔,海洋構造物など,多種に及んでいる。構造物の種類こそ違え,鋼構造として共通の基本的課題があるのはコンクリート構造などの場合と変わるところはない。また鋼構造を学ぶことによって,アルミニウム合金など他の金属材料でつくられる構造物にもその知識を応用することができよう。

本書の出自は1985年初版が誕生した,筆者伊藤の単著に成るコロナ社の土木系大学講義シリーズの中の「鋼構造学」である。その後,技術の進歩,変遷に伴って改訂,増補を重ね,多くの大学で教科書として採用していただき,また実務に携わる多くの技術者の方々の座右にも置いていただき,幸い30年を超えるロングセラーを続けてきた。

薄肉構造物としての鋼構造の基本的な理論背景には変わるところはないが,その材料,接合技術,そして設計方法などは時代とともに改革がなされてきた。とくにこの度,道路橋設計規準において性能規定型の技術基準に基づく限界状態設計法,照査式としては国際標準的な形での部分安全係数法(荷重・抵抗係数法)への移行に伴う大改訂が行われた。そこで,この機会に本書も新たな姿での再出発を図ることとした。幸い,橋梁設計技術者としての経歴を経て大学での教育研究者となられ,一時筆者の同僚でもあった奥井義昭教授に共著者として加わっていただき,それを実現することができた次第である。

引き続き本書を,大学教育の教科書としてのみならず,大学院生,実務技術者諸氏の参考書として利用していただければ幸いである。

2020年4月   伊藤 學

序章 鋼構造の変遷と現状
1.橋にみる鉄鋼構造の歴史
2.事故の教訓
3.土木構造物における鋼構造の適用

1.総説
1.1 構造物の要件
1.2 鋼構造の特徴
1.3 鋼構造物のライフサイクル
 1.3.1 一般
 1.3.2 調査・計画
 1.3.3 構造設計
 1.3.4 鋼構造の施工(Ⅰ)──工場製作
 1.3.5 鋼構造の施工(Ⅱ)──現場架設
 1.3.6 維持管理

2.構造材料としての鋼材
2.1 構造用鋼材
 2.1.1 鋼材の性質を支配する要因
 2.1.2 鋼材の種類
 2.1.3 鋼材の欠陥
2.2 鋼材の力学的性質
 2.2.1 静的強さ
 2.2.2 衝撃強さ
 2.2.3 疲労強さ
 2.2.4 遅れ破壊
2.3 高性能鋼
2.4 腐食とその対策
 2.4.1 腐食の原因
 2.4.2 さびの対策
2.5 材料としての設計強度
2.6 疲労に対する照査
2.7 鋼種の選定
演習問題

3.鋼材の接合
3.1 一般
3.2 溶接
 3.2.1 溶接の特徴
 3.2.2 溶接法の分類
 3.2.3 おもな溶接法
 3.2.4 溶接部の構造
 3.2.5 溶接の影響とその対策
 3.2.6 溶接継手の種類
 3.2.7 溶接継手の有効断面
 3.2.8 溶接継手の強度
 3.2.9 溶接継手の設計
3.3 高力ボルト接合
 3.3.1 一般
 3.3.2 摩擦接合
 3.3.3 支圧接合
 3.3.4 引張接合
3.4 リベット接合
3.5 ピン結合
 3.5.1 一般
 3.5.2 ピン
 3.5.3 ピン孔を有する板要素
演習問題

4.部材の耐荷性状とその設計
4.1 部材の種類
4.2 引張材
 4.2.1 設計規範
 4.2.2 部材の断面構成
4.3 圧縮材(柱)
 4.3.1 圧縮材の耐荷力
 4.3.2 板要素の局部座屈
 4.3.3 局部座屈と全体座屈の連成
 4.3.4 圧縮材の設計規範
 4.3.5 部材の断面構成
4.4 曲げ材(桁)
 4.4.1 薄肉断面梁の応力
 4.4.2 鋼桁の構成
 4.4.3 曲げ材の耐荷性状
 4.4.4 設計規範
 4.4.5 鋼桁の設計手順
4.5 軸力と曲げを受ける部材
 4.5.1 一般
 4.5.2 塑性崩壊強度
 4.5.3 曲げによる変形の影響
 4.5.4 梁-柱の耐荷力
 4.5.5 設計規範
 4.5.6 耐震性向上をめざした鋼製脚柱
4.6 ねじりを受ける部材
 4.6.1 一般
 4.6.2 ねじりによる応力
 4.6.3 鋼構造部材のねじり
4.7 特殊な構造部材
 4.7.1 鋼床版
 4.7.2 鋼管部材
 4.7.3 曲面板
 4.7.4 合成桁
4.8 部材の連結
 4.8.1 桁とほかの部材との連結
 4.8.2 トラスの格点構造
演習問題

終章 結びとして

付録:鋼構造物の製図

参考文献
演習問題略解
索引

伊藤 學

伊藤 學(イトウ マナブ)

 1930年12月22日生まれ。
 1953年東京大学工学部土木工学科卒。大学院,米国留学を経て,1959年 工学博士,東京大学講師に任官。1961年 助教授,1972年 教授,1991年 定年,名誉教授。引き続き埼玉大学工学部建設工学科教授。更に1997年から4年間拓殖大学工学部工業デザイン学科教授。
この間,1988年から3期9年日本学術会議会員(総理府),1981年より1年 (社)土木学会理事,1993年から4年間(社)日本鋼構造協会副会長,1997年から5年間(社)日本工学アカデミー理事・監事,2006年から1年 (社)日本橋梁建設協会会長,80歳を超えてからの5年間は(一財)橋梁調査会理事長を務めた。また国際的には2001年から3年間 IABSE (国際構造工学会)会長を務めた。
 上記大学における専門は橋及び鋼構造工学で,研究の主力は吊形式橋梁の設計にかかわる諸問題,特に風による振動,並びに安全性評価や造形を含めた橋梁の設計論であった。また学外では,長大吊形式橋梁の建設がさかんな時期に遭遇し,横浜ベイブリッジ及び鶴見つばさ橋(首都高速),名港トリトン(道路公団),多々羅大橋(本四公団)という,それぞれの時点で我が国最大の斜張橋の技術検討委員会の委員長を委嘱され,本州四国連絡橋の建設に当たっては技術委員会及び景観委員会に加わった。更に海外では,ザイール共和国(当時)に日本の援助で建設されたアフリカ最大の吊橋マタディ橋の技術検討委員会委員長,サンフランシスコ・オークランド東橋および香港ストーンカッターズ橋のデザインコンペ審査委員,完成時世界最長の斜張橋であった中国揚子江の蘇通大橋の建設技術顧問を委嘱された。
 これらの業績に対し,ザイール共和国からシェバリェ賞,日本風工学会,土木学会,IABSEからはそれぞれ功績賞が与えられ,1983年には瑞宝中綬賞の叙勲を受けた。

「建築技術」2020年8月号 掲載日:2020/07/16


掲載日:2020/10/30

「土木学会誌」2020年11月号広告