ロボット運動計算論

ロボット運動計算論

  • 山本 江 筑波大教授 博士(情報理工学)
  • 鮎澤 光 産業技術総合研究所上級主任研究員 博士(情報理工学)
  • 石垣 泰暉 東京理科大助教 博士(情報理工学)

6次元の演算を用いてロボットの運動学,動力学の計算理論を体系化することを目指す。

ジャンル
発行予定日
2026/04/中旬
判型
A5
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-339-04723-3
ロボット運動計算論
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定価

4,290(本体3,900円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

【本書の特徴】
本書ではおもにロボットの運動計算理論に焦点をあて,日本語のロボティクスの教科書では扱われることが少ない6次元の速度,加速度,力のベクトルの演算を用いることでロボットの運動学,動力学の計算理論を体系化することを目指す。剛体の回転と並進の運動を合わせた6次元のベクトルを空間ベクトルと呼び,これによってArticulated Body Algorithm (ABA) のような高速な計算アルゴリズムを見通しよく記述できる。このような高速なアルゴリズムにより,ロボットの将来の状態を繰り返し予測することが可能となり,ヒューマノイドロボットのような大自由度を有する複雑なロボットにおいても非線形モデル予測制御が実時間に近いスピードで適用されつつある。また,アルゴリズムの高速化はGPU 上での並列実行によって加速され,現在では,GPU を搭載したラップトップPC 上においてヒューマノイドロボットの二足歩行制御器を強化学習により数十分~数時間程度で学習することが可能となりつつある。
強化学習や最適制御を筆頭に,近年,特に2020 年代以降ではロボットの制御は「運動を最適化する」問題として一般化された形で解かれつつある。このようなロボットの運動の最適化には,評価関数の勾配を計算する必要があり,そのために必要な解析的微分を計算する枠組みを提供するシミュレータは「微分可能な」シミュレータと呼ばれる。本書では発展的内容として位置・速度・加速度の計18次元の運動を包括的に扱う枠組みやそれを用いた運動最適化,ソフトロボットの力学モデルへの応用例等についても解説する。

【本書のキーワード】
ロボティクス,運動学,動力学,リー群

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

ロボットの運動計算理論はおよそ2000年代までにその運動学・動力学についての基礎が体系化された。多くのロボットの身体は金属などの材料で構成されることから,その運動を表すのに各身体部位を剛体とみなすリンク系のモデルが用いられ,ロボットのみならず人間の筋骨格モデルにも応用されている。現在までに数十以上の自由度をもつヒューマノイドロボットや環境との接触を伴うロボットの力学シミュレーションがリアルタイムに実行できるようになってきた。

ロボット,特にヒューマノイドロボットのような複雑なシステムの制御は,二足歩行における倒立振子モデルのような低次元化モデルにおいて制御則を考え,それを全身運動に分解する階層的な手法が成果を挙げてきた。一方で,ロボットの力学シミュレーションの高速化に伴い,近年,特に2020年代以降ではロボットの制御は「運動を最適化する」問題として一般化された形で解かれつつある。例えばヒューマノイドロボットのような大自由度を有する複雑なロボットにおいても非線形モデル予測制御が実時間に近いスピードで適用されつつある。非線形モデル予測制御もしくは最適制御問題は将来のロボットの状態をシミュレーションすることを繰り返して最適な入力を求める。これは力学シミュレーションの高速化と最適化のアルゴリズムにおいて必要となる評価関数の勾配計算によって可能になってきた。特に,剛体リンク系の速度や加速度,その一階微分である躍度といった解析的微分を計算する枠組みを提供するシミュレータは「微分可能な」シミュレータと呼ばれ,オープンソースのシミュレータがだれでも利用できるようになっている。これらのシミュレータはGPU上での並列実行によって強化学習と統合され,現在では,GPUを搭載したラップトップPC上においてヒューマノイドロボットの二足歩行制御器を強化学習により数十分~数時間程度で学習することができつつある。

このようにロボットの制御や学習においてその運動を計算し高速にシミュレーションすること,それに基づき効率的に運動を最適化することがますます重要になってきている。そこで本書ではおもにロボットの運動計算理論に焦点をあて,日本語のロボティクスの教科書では扱われることが少ない6次元の速度,加速度,力のベクトルの演算を用いることでロボットの運動学,動力学の計算理論を体系化することを目指す。剛体の回転と並進の運動を合わせた6次元のベクトルを空間ベクトルと呼び,これによってarticulated body algorithmのような高速な計算アルゴリズムを見通しよく記述できる。

なお,空間ベクトルやその座標変換の背景にはリー群という数学的な性質が存在するが,本書ではそれらについて*を付けたセクションで補足的に説明し,リー群についての知識がなくとも大学高学年~大学院生であれば読み進められるように工夫した。同様に,読み飛ばしても構わないような高度に専門的な説明の箇所には*を付けた。一方で,一般的なロボティクスの教科書で解説されるアクチュエータやセンサといったメカトロニクスや減速機などのロボットの構成要素についてはおもには扱わないため,初めてロボット工学を学ぶ人は基本的な教科書(例えば文献1)~6)など)も適宜参考にすることを推奨する。

本書の執筆に際して多くの方にご協力いただいた。青野達人氏には本書の表紙イラストを作成いただいた。東京大学力学制御システム研究室の菊竹潤氏,早見星吾氏,工藤大和氏,秋吉拓真氏には原稿の校正に協力いただいた。また,コロナ社の皆様には執筆段階から出版までご尽力いただいた。ご協力いただいた方々に深く感謝する。

最後に,長年ご指導いただいた中村仁彦先生に深く感謝申し上げます。先生の著書を通じてロボティクスの基礎を学ぶとともに,ロボットの力学・制御・知能に関する最先端の研究を通して多くの示唆をいただきました。本書は,その学びの積み重ねの上に成り立っています。

2026年3月
山本江,鮎澤光,石垣泰暉

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.ロボットの機構と運動計算の基礎
1.1 ロボットの機構 
 1.1.1 関節とリンク 
 1.1.2 多リンク系 
1.2 平面2自由度マニピュレータを例にとって 
 1.2.1 順運動学 
 1.2.2 逆運動学 
 1.2.3 ヤコビ行列と特異姿勢 
1.3 本書で用いる記号 
章末問題

2.順運動学
2.1 座標系による多リンク系の運動の記述 
 2.1.1 世界座標系と局所座標系 
 2.1.2 姿勢行列とSO(3) 
 2.1.3 座標変換と相対姿勢 
 2.1.4 同次変換行列とSE(3) 
2.2 運動の自由度と一般化座標 
 2.2.1 自由度と一般化座標 
 2.2.2 剛体の自由度と一般化座標 
 2.2.3 対偶の自由度と関節変位量 
2.3 運動学 
 2.3.1 順運動学 
 2.3.2 コンフィグレーション/タスク空間と冗長性 
2.4 姿勢のそのほかの表現方法 
 2.4.1 オイラー角 
 2.4.2 剛体回転に関するオイラーの定理 
 2.4.3 単位クォータニオン(オイラーパラメータ) 
章末問題

3.微分運動学
3.1 角速度ベクトル 
 3.1.1 角速度ベクトルとso(3) 
 3.1.2 SO(3)とso(3) 
 3.1.3 局所座標系から見た角速度ベクトル 
3.2 速度に関する順運動学 
 3.2.1 座標系間の角速度・並進速度の変換 
 3.2.2 空間速度とse(3) 
 3.2.3 多リンク系の空間速度の計算 
3.3 ヤコビ行列 
 3.3.1 ヤコビ行列と微分運動学 
 3.3.2 基礎ヤコビ行列 
3.4 リー群 
 3.4.1 群と多様体 
 3.4.2 リー群とリー代数 
 3.4.3 随伴表現 
章末問題

4.逆運動学
4.1 逆運動学と特異姿勢/冗長性 
 4.1.1 逆運動学と微分逆運動学 
 4.1.2 特異姿勢と冗長性 
4.2 微分逆運動学 
 4.2.1 微分逆運動学の解 
 4.2.2 特異姿勢にロバストな微分逆運動学 
4.3 逆運動学の数値計算 
 4.3.1 ニュートン・ラフソン法による逆運動学 
 4.3.2 非線形最適化による逆運動学 
章末問題

5.剛体リンク系の運動方程式
5.1 ラグランジュの運動方程式 
 5.1.1 ラグランジュの運動方程式の概要 
 5.1.2 運動エネルギーとポテンシャルエネルギー 
 5.1.3 空間レンチとオイラーの運動方程式 
5.2 剛体リンク系のラグランジュの運動方程式とその性質 
 5.2.1 ラグランジュの運動方程式の導出 
 5.2.2 ラグランジュの運動方程式の性質 
5.3 外部環境との接触を伴う場合の運動方程式 
 5.3.1 仮想仕事の原理とダランベールの原理 
 5.3.2 浮遊リンク系の運動方程式 
 5.3.3 拘束を伴う運動 
章末問題

6.ニュートン・オイラー運動方程式と逆動力学計算
6.1 空間加速度と空間レンチの座標変換 
 6.1.1 空間加速度とその座標変換 
 6.1.2 空間レンチの座標変換 
6.2 剛体リンクのニュートン・オイラーの運動方程式 
 6.2.1 リンク重心座標系におけるニュートン・オイラー運動方程式 
 6.2.2 リンク座標系におけるニュートン・オイラー運動方程式 
6.3 逆動力学計算 
 6.3.1 漸化的ニュートン・オイラー法 
 6.3.2 接触力を含む逆動力学計算 
章末問題

7.順動力学シミュレーション
7.1 順動力学の数値計算アルゴリズム 
 7.1.1 単位ベクトル法による順動力学計算 
 7.1.2 Articulated Body Algorithm (ABA) 
7.2 加速度・速度の数値積分 
 7.2.1 離散化と数値積分 
 7.2.2 数値積分 
 7.2.3 姿勢の積分 
7.3 外部環境との接触を伴うシミュレーション 
 7.3.1 ペナルティ法 
 7.3.2 Operational Space Formulation (OSF) 
 7.3.3 完全非弾性衝突モデル 
 7.3.4 相補性条件 
章末問題

8.ロボット制御の基礎
8.1 コンフィグレーション空間におけるフィードバック制御 
 8.1.1 位置制御と力制御 
 8.1.2 ロボットのPD制御とその安定性 
 8.1.3 計算トルク法 
8.2 コンプライアンス制御/インピーダンス制御 
 8.2.1 機械インピーダンスとコンプライアンス 
 8.2.2 手先のコンプライアンス 
 8.2.3 アドミッタンス制御 
8.3 分解加速度制御とOperational Space Control 
 8.3.1 分解加速度制御 
 8.3.2 Operational Space Control(OSC) 
 8.3.3 分解加速度制御とOSCの関係 
章末問題

9.最適化のための包括的運動計算と剛から柔への展開
9.1 運動の包括表現 
 9.1.1 6次元から18次元へ 
 9.1.2 包括運動変換行列 
 9.1.3 包括運動変換行列の微分 
 9.1.4 包括運動変換行列の数学的性質 
9.2 運動の包括微分 
 9.2.1 運動学計算の微分 
 9.2.2 動力学計算の微分 
9.3 運動の最適化 
 9.3.1 運動最適化問題 
 9.3.2 多リンク系の物理量に関するヤコビ行列 
 9.3.3 時間軌道関数 
 9.3.4 運動最適化の例 
9.4 ソフトロボットの運動計算 
 9.4.1 ソフトロボットとその連続体モデル 
 9.4.2 区分的一定ひずみモデル(PCSモデル) 
 9.4.3 PCSモデルの動力学 
付録
A.1 ベクトル・行列の演算に関する基礎 
 A.1.1 2次形式 
 A.1.2 行列の正定値性 
 A.1.3 ベクトルの微分 
 A.1.4 2次形式の微分 
 A.1.5 最適性の条件 
 A.1.6 特異値分解 
A.2 SO(3)とSE(3)に関する性質 
 A.2.1 R∈SO(3)の性質 
 A.2.2 [𝓍x]の性質 
 A.2.3 [𝓍x4]と[𝓍x6]の指数写像の計算 
 A.2.4 角速度と角軸ベクトルの関係式 
 A.2.5 角加速度と角軸ベクトルの関係式 
引用・参考文献
索引

山本 江

山本 江(ヤマモト コウ)

2004年東京大学工学部機械情報工学科卒業. 2009年 6月同大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻博士課程修了.東京工業大学産学官連携研究員,名古屋大学助教,東京大学助教,特任講師を経て 2017年11月から同大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻准教授となり現在に至る.博士(情報理工学).2012年10~12月までスタンフォード大学客員助教,2024年2月~2025年1月までスタンフォード大学客員准教授.ヒューマノイドロボット,ソフトロボットの力学計算,機構開発・制御やヒトの運動解析,群集シミュレーション等のロボティクスの研究に従事. Mike Stilman Paper Award in 2018 IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots, 日本ロボット学会第33回学会誌論文賞等受賞.

鮎澤 光

鮎澤 光(アユサワ コウ)

2006年東京大学工学部機械情報工学科卒業.2011年同大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻博士課程修了,博士(情報理工学).2011年4月より2014年3月まで同研究科において特任研究員を経て特任助教.2014年4月より産業技術総合研究所知能システム研究部門研究員,現在同人間社会拡張研究部門上級主任研究員.令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞.主にロボットの力学・システム同定,ヒューマノイドロボットの運動計画・制御,ヒトの運動計測・解析に関する研究に従事.

石垣 泰暉

石垣 泰暉(イシガキ タイキ)

2019年,横浜国立大学理工学部機械工学・材料系学科を卒業.2024年3月,東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻にて博士(情報理工学)を取得.同研究科において特任研究員を経て,2025年4月より東京理科大学研究推進機構総合研究院嘱託助教となり,現在に至る.
これまでに,日本ロボット学会第5回優秀研究・技術賞(2023),日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会ROBOMECH表彰(学術研究分野)(2024),第31回ロボティクスシンポジア賞優秀賞(2026)を受賞.主に,剛体から柔軟物までの運動計算論の構築と,それに基づくヒトやロボットの運動解析,動作計画および制御の研究に取り組んでいる.