熱エネルギー・環境保全の工学

機械系 教科書シリーズ 13

熱エネルギー・環境保全の工学

本書では,エネルギーの資源・変換技術・環境保全の工学的役割について述べている。さらに,熱源を輸送,貯蔵に利用する冷熱技術,環境化学の立場からは環境保全対策についても述べている。

ジャンル
発行年月日
2002/11/28
判型
A5
ページ数
240ページ
ISBN
978-4-339-04463-8
熱エネルギー・環境保全の工学
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本書では,エネルギーの資源・変換技術・環境保全の工学的役割について述べている。さらに,熱源を輸送,貯蔵に利用する冷熱技術,環境化学の立場からは環境保全対策についても述べている。

私たちが営む社会はその生活や文明を維持,発展させるために多くのエネルギーを消費することによってまかなわれている。その大部分は化石燃料すなわち石油や石炭, 天然ガスの燃焼反応により取り出された熱エネルギーの変換によっている。

しかし,私たちの社会を支えるための多量のエネルギー消費は, エネルギー資源の枯渇問題を浮上させると同時に,一方では自然が回復できる許容範囲を上回る廃棄を繰り返すことにより,規模の大小を問わず自然を汚染しつつ, さらには破壊に至っている。

一次エネルギー資源から得られる熱エネルギーの利用は幅が広い。身近なところでは,内燃機関にあるように機械的エネルギーに変換し動力源として, また都市ガスのような熱源として, あるいは電気エネルギーへ変換し電化製品の動力源などに利用されている。しかし,利用形態は変わっても, 一次エネルギー資源から熱エネルギーへ変換する過程において,その際に生じる燃焼過程によるCO2や核分裂反応による核廃棄物などの排出は避けては通れない。

エネルギーの消費に伴うCO2などによる温暖化対策が国際政治の場で初めて取り上げられたのは,1988 年のトロン卜サミットである。

1992 年の国連環境開発会議(地球サミット)でこれが具体化され, 187 カ国により「環境と開発に関するリオ宣言」が発せられるまでに至った。その行動計
画として, 「アジェンダ21」 ,「森林保全などに関する原則声明」,「気候変動枠
組み条約」, 「生物多様性条約」が採択された。

これにより世界各国は「アジェンダ21」 などに織り込まれた40の項目について行動計画を着実に実行していくこととなっており,国際連合のCommission on Sustainable Develop ment がこれを支援する形になっている。

日本では, 1990 年に環境と経済発展の両立を図るいわゆるSustainable development (2.4 節で詳しく述べる)の理念に基づき,地球温暖化防止を目的とした地球再生計画(TheNew Earth 21) が初めて提唱された。これは五つの柱よりなっている。

1.世界的な省エネルギーの推進
2.クリーンエネルギーの大幅導入
3.革新的な環境技術の開発
4.CO2吸収源の拡大
5.次世代を担う革新的エネルギ一関連技術の開発
これらはいずれも「熱エネルギ一変換と環境保全」に関連した諸問題を解く鍵となるもので,その精神については各国で異存のないもののはずで、あるが,具体的な実施策となると, 国家間で考えが異なり利害が対立したりする。例えば, 1997 年に開催された地球温暖化防止京都会議(COP3) では,2000 年以降の地球温暖化対策のあり方を規定する議定書が採択されたが, 200 1年11 月に,ボンで行われたCOP7 では, その運用ルールが妥協の上採択されたが,一部の国が加わらず,実効性に問題を残している。

この背景にはエネルギーの安定供給(energy security) を確保し,一定の経済成長(eco nomic growth) を見込みつつ,地球環境の保全(environmental protection) を図るという,いわゆる3Eをいかに同時達成するかについて,国家聞の考えの違いがある。

本書では,これらの問題を考えていく手がかりとして,熱エネルギー源とその変換および地球環境保全のメカニズムとそれらに関連した諸問題について幅広く解説を試みた。浅学の著者らを超える最もホットな課題ではあるが, できるだけ客観的な解説を試みたつもりである。ご教示, ご意見など賜れば幸いである。

2002 年9月
著者

1.緒論
1.1  エネルギーとは…1
1.2  熱エネルギーと環境保全…3

2.エネルギーを巡る諸問題
2.1  エネルギー資源とそのゆくえを巡って…5
2.2  エネルギーと地球環境保全を巡って…8
2.3  エネルギーと社会システムを巡って…10
2.4  持続可能な発展を巡って…14

3.従来型の熱エネルギーとその資源
3.1  エネルギー資源量と各国のエネルギー構成…19
3.2  熱エネルギー資源とその特性…22
 3.2.1 石油エネルギー…22
 3.2.2 石炭エネルギー…27
 3.2.3 天然ガスエネルギー…30
 3.2.4 原子力エネルギー…31
 3.2.5 自然エネルギー…37
 3.2.6 その他の熱エネルギー…41
3.3  エネルギー消費の変化…41
 3.3.1 最終エネルギー消費とエネルギー消費原単位…41
 3.3.2 産業部門によるエネルギー消費…45
 3.3.3 運輸部門によるエネルギー消費…46
 3.3.4 民生部門によるエネルギー消費…49

4.  冷熱技術と空気調和
4.1  冷凍の方法…50
4.2  蒸気圧縮式冷凍サイクルの構成と標準冷凍サイクル…51
4.3  多段圧縮サイクル…54
4.4  冷媒について…56
4.5  吸収式冷凍機と太陽熱冷房…61
 4.5.1 吸収式冷凍機の原理…61
 4.5.2 ガス冷蔵庫…63
 4.5.3 臭化リチウム吸収式冷凍機と太陽熱冷房…64
 4.5.4 吸収式冷凍機の性能評価…67
4.6  熱電冷凍機…68
4.7  空気調和の考え方と方法…69
 4.7.1 空気調和…69
 4.7.2 湿り空気の性質と湿り空気線図…70
 4.7.3 湿り空気の状態変化と湿り空気線図の使い方…74
 4.7.4 空気調和の熱負荷計算…79
演 習 問 題…80

5.省エネルギー技術と高効率技術
5.1  エクセルギー…84
 5.1.1 エクセルギーとは…84
 5.1.2 熱源のエクセルギー…85
 5.1.3 閉じた系のエクセルギー…89
 5.1.4 開いた系のエクセルギー…90
 5.1.5 定常流動系のエクセルギー…91
 5.1.6 熱効率とエクセルギー効率…91
5.2  コージェネレーションシステム…・92
 5.2.1 コージェネレーションとは…92
 5.2.2 各種のコージェネレーションシステム…95
 5.2.3 マイクロガスタービン…97
5.3  エネルギーベストミックス…98
5.4  複合発電システム…101
演 習 問 題…102

6.将来型の熱エネルギーとそのシステム
6.1  再生可能エネルギー…105
 6.1.1 再生可能エネルギーとは…106
 6.1.2 再合成燃料を作るために必要な一次エネルギー源の開発…108
 6.1.3 再合成燃料の技術開発…109
 6.1.4 合成ガス(H2,CO2)の技術開発…109
 6.1.5 合成燃料のエネルギーシステム…111
6.2  バイオエネルギー…112
 6.2.1 バイオエネルギーとは…112
 6.2.2 森林系のバイオエネルギー…114
 6.2.3 光合成…115
6.3  メタンハイドレート…116
 6.3.1 メタンハイドレートとは…116
 6.3.2 メタンハイドレートの熱特性…119
6.4  クリーンコールテクノロジー…121
 6.4.1 クリーンコールテクノロジーとは…121
 6.4.2 石炭のガス化技術…123
6.5  ・水素・循環型エネルギーシステム…125
6.6  燃 料 電 池…126
演 習 問 題…129

7.エネルギー変換と環境保全
7.1  私たちを取り巻く地球環境の仕組み…131
 7.1.1 大気圏の仕組み…132
 7.1.2 水域圏の仕組み…135
 7.1.3 土壌圏の仕組み…136
7.2  自然システムと熱エネルギーバランス…140
 7.2.1 地球上のエネルギーバランス…140
 7.2.2 地球環境の自己調整システム…142
7.3  地球環境汚染とそのメカニズム…143
 7.3.1 大気圏での環境汚染…143
 7.3.2 水域圏,土壌圏での環境汚染と放射能汚染…151
7.4  エネルギー変換と環境対策…155
 7.4.1 従来型発電システムと環境対策…155
 7.4.2 運輸・交通システムと環境対策…161
 7.4.3 地域・生活における環境対策…162
演 習 問 題…163


8.1  化学物質による環境汚染…164
 8.1.1 各種環境汚染の因果関係…165
 8.1.2 有害化学物質の種類と排出の現状…167
 8.1.3 化学物質の毒性・安全性と環境への影響評価…174
8.2  フロン,ダイオキシン類と環境ホルモン…178
 8.2.1 各物質の特性と汚染メカニズム…178
 8.2.2 環境や生体への影響…187
8.3  有害廃棄物の無害化技術とリサイクル技術…190
 8.3.1 リサイクルの必要性…190
 8.3.2 無害化・リサイクル技術…193
8.4  環境基準と環境保全…195
 8.4.1 環 境 基 準…195
 8.4.2 環境保全の方法-環境保全に関する法規など-…196
 8.4.3 環境負荷の低減に対する国内外での取組み…199

付録…201
  付1 モリエ線図…201
   付1.1 冷媒R22のモリエ線図…201
   付1.2 冷媒R134aのモリエ線図…202
   付1.3 冷媒アンモニアのモリエ線図…203
  付2 湿り空気線図…204
  付3 地球再生計画…205
  付4 おもなエネルギー関連サイト…207
  付5 関連単位…208
   付5.1 10nの単位のSI接頭語…208
   付5.2 化学物質や毒性・安全性などに関する単位…208
   付5.3 放射線に関わる単位…209
 参考文献…210
 演習問題解答…214
 索引…224

井田 民男

井田 民男(イダ タミオ)

1962年(大阪府)生まれ。学部の卒業研究は、レーザ計測を開発し、乱流拡散火炎構造の実験的研究に携わり、研究の面白さ、奥深さを体験し、師の導きもあり研究者への道へと進んだ。研究では、レーザ診断による乱流拡散火炎構造の解明で博士号を取得し、マイクロフレームと言うミクロな燃焼科学へと発展していった。が、人生の岐路を契機にバイオエネルギーの研究開発に従事し、バイオコークスへと導かれ、国内初の固体バイオエネルギーを研究する近畿大学バイオコークス研究所創設に至った。大学時代は、ヨット部に所属し、セーリングとバイクツーリングを楽しんだ。座右の銘「堪え難きを耐え、忍び難しを忍ぶ」「脱常識」を尊び、自然の中にある真理を見つめる研究を楽しんでいる。

木本 恭司(キモト キョウジ)