レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

メディアテクノロジーシリーズ 13

Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

インターネットとWebの基礎から,機械学習,自然言語処理,情報検索・推薦,大規模言語モデルまでを幅広く解説。現代のWebサービスを支える情報処理技術の全体像を,基礎から手法・応用例まで一冊で学べる入門書。

発行年月日
2026/08/03
定価
4,840(本体4,400円+税)
ISBN
978-4-339-01383-2
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 N/M 様 (業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】

掲載日:2026/07/27

本書は「メディアテクノロジーシリーズ」の13巻目に位置する書籍である.本巻では「Webテクノロジー(Web技術)」と書名の通り,Webにまつわる関連技術についての記述がなされている.

また,本書は全6章で構成されている.Web技術の基礎と仕組みから始まり,サブタイトルにもある自然言語処理,(情報)検索,(情報)推薦,大規模言語モデルについて,それぞれ独立して記述されているため,興味のある章から読めるという自由度の高さも特徴の一つである.

1章では,Web技術の基礎と各種バックグラウンド技術の仕組みについての解説がなされている.個人的には,OAuth (Open Authorization) の仕組みが大変興味深かった.X(旧Twitter)で企業アカウントがPRや新商品・サービスの拡散のために行う「RTするとその場で当たるプレゼントキャンペーン」に応募した際,よく見かける「アプリにアカウントへのアクセスを許可しますか?」という画面の裏側で動いているのがまさにこの技術だと気付かされた.

3章では,自然言語処理 (Natural Language Processing; NLP) についての解説がなされている.「自然言語処理」という言葉自体はなんとなく知っていたものの,具体的にどのようなものかまでは理解していなかったため,本書で学ぶ機会が得られたのは非常に良かった.日本語のように単語間にスペースがない言語では,テキストの前処理としてまずトークン化を行い,形態素解析,構文解析,意味解析といった順を追う手順があるのだと知ったことは大きな発見であった.

また,3章で扱われるNLPを応用した技術が,6章で解説される大規模言語モデル (Large Language Model; LLM) であり,これは生成AIでも中心的な役割を果たしている.そしてそのバックグラウンドでは,2章で学ぶ機械学習の技術も同様に大きく貢献している.

残りの4章と5章では,情報検索および情報推薦に関する技術についての解説がなされている.情報検索で有名なPageRankの仕組みや,ネットショッピングでよく見かける「この商品を買った人は,この商品も買っています」といったおすすめを表示する仕組みについても書かれており,大変参考になった.

また,5章の情報推薦に関しては本章のまとめにも紹介があるが,本書と同じコロナ社から出版されている『基礎から学ぶ推薦システム- 情報技術で嗜好を予測』(https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029284/)が大いに役立つだろうと思う.こちらの書籍に関しても僭越ながら私がレビュさせていただいており,購入に際して参考にしていただければ幸いである.

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマー)】

掲載日:2026/07/21

本書は1990年12月に公開された世界初のWebサイトから始めて、現代的なLLMの応用で終わるという、Web技術通史である。まず第1章で、インターネットとWebのそもそもの原理と従来型のWebシステム開発の歴史を通観したあと、第2章からは機械学習の登場以降の話題をまとめている。

基本的な歴史観として、機械学習の登場によって、システム開発における大きな変化があったという認識がある。つまり、「ルール」と「データ」を入力し、アルゴリズムに基づいて結果を得るという従来型のシステム開発から、コンピュータがデータからルールを作るというアプローチに変化した。特に、従来は専門知によって人間が「ルールの発見と実装」を行っていたが、その本質的な部分に変化があった。(pp.37-38)

この転換をフックにして、従来型のWebシステム開発技術の話題と、機械学習以降のWebシステムの在り方を、一気につなげてしまうという構成になっている。話題が広い分、ひとつひとつのテーマの掘り下げが深いとはいえないが、理工書として基礎技術に軸足を置いた記述が一貫している。

従来型のWebシステム開発の文脈と、機械学習の文脈は、実務では密接に関係しているはずだが、パラダイムとしては前述のように本質的な変化があるので、文献上は別々に語られがちである。両者を並べて、通史的に見通す視点を提示した点が、本書の面白さであると思う。

LLMを中核とする生成AIの進展によって、Webサービスの設計と実装の前提が大きく変わりつつある、まさにその変化の先端をとらえて教科書としてまとめるのが本書の意図するところである。そのためにWebシステムの基礎から説き起こして、機械学習によってなにが変わるのか、その延長上にあるLLMとは何なのか、という議論の進め方をする。

読者としては、従来的なWebシステムの基礎を踏まえたうえで、機械学習以降の技術によってなにが変わり、なにが可能になったのかを見極めて、積極的に新しいシステム開発へと進んでいくことが求められているのだと思う。個人的に、ぼんやり認識しているものの、はっきりと捉えられていなかった時代認識と課題なので、大変刺激になった。