レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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保存環境や食品の内因的な要素の情報をもとにして食品中の細菌数を予測しようとする予測微生物学は,ICT技術の発展により飛躍的に研究が進歩した。本書は食品予測微生物学と銘打ち,現代の予測微生物学を体系的にまとめた。
- 発行年月日
- 2024/08/26
- 定価
- 3,520円(本体3,200円+税)
- ISBN
- 978-4-339-06764-4
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読者モニターレビュー【 黄昏 様(業界・専門分野:特別公務・調査)】
掲載日:2024/08/20
先ず、モニターレビューに応募した理由に、生きていく上で必要な食物摂取における理論的見解を学術的観点から知りたかったからです。現在は調査業務に就いているため、高校時代に使った数学の教科書を傍らにして通読しました。
さて、初心者でありながらも、構成が順序立てられており、素直に読み込むことができました。基本理念で、予測微生物学について分かりやすく説明されています。身近にありながら、普段の生活を送るにあたって気にする機会が少ない分野を、直接的な表現で説いていると思いました。
さらに、数多のモデルケースを挙げて、方程式を用いながら実際の症例を交えて読者視点も鑑みながら展開していると感じます。モデル概念で基本を記しつつ、構築に至る過程が丁寧に書かれています。興味深く読み込みました。
また、比較をする場面では図や表で視覚的に展開が成されてあり、見て分かる構成により、一層理解し易く感じました。読了してからもう一度読み返した事で、微生物学の核心に迫る事が出来て、更に見聞を深めることができました。専門書として学ぶだけではなく、門外漢でも理解できる構成であると再認識しました。
この度の事をきっかけに、食品学に関する分野に興味が湧きました。今後、意識しながら生活を送ります。
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読者モニターレビュー【 西井 貴恒 様 奈良県立医科大学(業界・専門分野:医学生)】
掲載日:2024/08/20
自分はあまりこの手の指数関数を主に用いた数理モデルを用いることの少ない医療の分野にいるのだが、細菌の動態は患者の健康や命と隣り合わせの現象であるだけに関心は持っていた。読んでみると、さまざまな予測モデルが実測値とfitすることに対して感心する一方、モデルの式が元々は単純な形から始まっていて、それらを変形してある程度複雑な形になっても妥当性を保つことに、数理モデルの機能美を感じた。
個人的に目を引いたのは、「9. モンテカルロシミュレーションによる確率論的予測」の章にある、死滅挙動のばらつきをWeibull分布で予測する手法や、増殖の挙動を予測するに際し消化管内での食物の移動と菌の小腸への到達を対応させた上で感染確率を算出する手法である。菌だけでなく、それを取り込む人間の体もそれぞれ個性を持ちそして生きて動くものであり、動的で多元的な推移をみせていて、その推移を数理で追うことができるという事実には嘆息を禁じ得ない。
また、「5. 増殖/非増殖境界モデル」において、複雑な環境下や高圧処理後で、予期せぬ増殖をみせる菌に対し、新たなモデルを用いてfitさせる手法も面白かった。冒頭に書いてある通り、さまざまな状況下でのシミュレートが、日々新しく可能になっているのだとわかった。
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『月刊 フードケミカル』2024年8月号(食品化学新聞社)
掲載日:2024/08/09
「新刊紹介」欄に掲載されました。