レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

農業・食料生産分野における バイオマス利用工学 - 循環型社会のための生物資源利用 -

農業・食料生産分野における バイオマス利用工学 - 循環型社会のための生物資源利用 -

バイオマス利用の基礎理論と,特にマテリアル利用とエネルギー利用のための実際の技術,生物資源の生産や収穫などに関わる機械作業や乾燥操作,食の安全,環境影響評価,SDGsとの関わりなど,社会実装に至る話題を取り上げた。

発行年月日
2023/04/20
定価
5,280(本体4,800円+税)
ISBN
978-4-339-06665-4
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

廃棄物資源循環学会誌 Vol.34 No.4 2023

掲載日:2023/09/05

読者モニターレビュー【 N/M 様 (専門分野:総合情報学(情報科学))】

掲載日:2023/04/13

本書は,タイトルにもある通り,農業・食料生産分野におけるバイオマス利用工学についての記述がなされている.最近何かと耳にする機会が多い,SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)や,某議員が急に取り上げてSNS等で賛否両論はあるがコオロギ等の昆虫食等,環境・資源・農業・食糧生産分野に関する話題を考えるきっかけにもなるのではないかと思われる.

なお,本レビューを書いていている私自身,学生時代に本書に関連のある分野として,一般教養科目「環境学入門」を一応学習はしているが,農学・食品生産分野の専門的な知識は全く持ち合わせていないので,その点,詳しくは言及できないことを予め断っておく.とは言いつつ,このように書いたものの,前提知識がなくても基礎から順を追って解説がなされているため,理解は比較的にしやすい部類の書籍であろうと思われた.

本書の特徴の一つとして,「生物資源利用の基礎」と「生物資源の応用技術」という2編構成になっている.先程挙げたように,基礎から学びたい読者にも,基礎知識はある程度既に持ち合わせており,応用技術から深めたい読者にも応じられるようになっており,取捨選択して読むことができるようになっている.更に,関連知識を深めたい読者にも応じられるように,各章末には,引用・参考文献リストも洋書や和書,各種論文等も数多く記載されている.

Ⅰ編の第1章から,中学・高校の理科でも出てくるであろう,生物資源の循環の話から始まり,地球環境などの一般常識的にも知っておいた方がいい問題から紐解き,生物資源利用の歴史やバイオマスエネルギー・再生可能エネルギーなど,ニュース記事等で耳にする機会が多い用語が次から次へと出てくるので,それらの用語の理解とイメージは比較的理解しやすいのではとも思った.

まえがきに『本書を読んだ多くの方々が本書から生物資源利用の課題解決の手がかりを得ることを期待している』と記述されているように,本書に取り上げられる各種用語の意味や原理を理解しつつ,生物資源利用の課題解決を考える際のガイドブック(参考書)として充分に活用できる,ちょうどいい情報量なのではないか,と個人的には思った次第である.